タイトル:甘い日4マスター:とりる

シナリオ形態: ショート
難易度: やや易
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2012/02/26 13:43

●オープニング本文


 ここはラストホープの商店街。その一角に軒を構えるメイド喫茶。
 お店の名前は『フェルマータ』という。
 あまり大きな店舗ではないものの、常連客に支えられ、
 ご主人様の笑顔のために今日も元気に営業中。

 ***

「ねえねえ、店長店長」
 カウンターの椅子に座り、両肘をつき、両手を頬に当てたメイド服姿の女性が言った。
 彼女はフェルマータの筆頭メイド、栗色の綺麗な髪が特徴的な美人さん、
 ミカ・プライエルである。にこにこと、見る者を癒すとびきりの笑顔を浮かべている。
「あら、どうしたのミカちゃん? そんなに嬉しそうにして」
 皿をきゅっきゅと磨きながら、店長(オカマちゃん)が答える。
「だって、だってですよ! もうすぐ『あの日』じゃないですか!」
 テンション高めのミカ。うきうき気分が溢れている。
「あの日?」
「そう、あの日‥‥女の子が男の子へ想いを告白する日、あるいは恋人達が愛を確かめ合う日‥‥」
 ミカはぽわわわ〜とした‥‥なんだろう、乙女脳全開? で語る。
「ああ、バレンタインデーね。そういえばもうすぐね」
「はい! というわけで、今年もアレをやりましょう!」
 店長は『アレ』と言われて、しばし思案‥‥。
 そしてぽんと手を叩く。
「なるほど、アレね。チョコレートを使ったお菓子作り講座‥‥というかお菓子作り会ね」
「その通りであります! 準備のほう、よろしくお願いします!」
 ミカは立ち上がり、ビシィ! っと敬礼。
「うんうん、アレはお店の良い宣伝になるしね。いいわ、やりましょう」
「やった〜!」
 ミカは1人で両腕を上げ、喜びをあらわにする。
「それじゃ、ULTに依頼しておくわね」
「はい! お願いします! 聞くところによると宇宙やらで色々大変みたいですが‥‥、
 たまには息抜きにラブラブしたい傭兵さんもいるはずです! きっと!」

 そんな感じで、今年もフェルマータにて、
 チョコレートを使ったお菓子作り会が開かれることとなった。

●参加者一覧

石動 小夜子(ga0121
20歳・♀・PN
神崎・子虎(ga0513
15歳・♂・DF
弓亜・優乃(ga0708
18歳・♀・FT
新条 拓那(ga1294
27歳・♂・PN
終夜・無月(ga3084
20歳・♂・AA
勇姫 凛(ga5063
18歳・♂・BM
夜十字・信人(ga8235
25歳・♂・GD
夏目 リョウ(gb2267
16歳・♂・HD

●リプレイ本文

●フェルマータへようこそ!
 メイド喫茶『フェルマータ』での、お菓子作り会の依頼を受けた傭兵達。
 例によって参加者の大半がカップル。そんなわけで、まずは待ち合わせ。

 広場にて恋人を待つ、アイドル傭兵の勇姫 凛(ga5063)。
(宇宙で会った時は、あんまり長くは一緒に過ごせなかったから、
 今日は思う存分2人の時間を過ごすんだ‥‥)
 勿論、今日のデートに合わせて、彼はばっちりおめかしして来た。
 ‥‥ただ、気合を入れ過ぎたのか、かなり早く待ち合わせ場所に着いてしまった。
 久しぶりのちゃんとしたデートにドキドキしつつ、凛は恋人を待つ‥‥。
 
 暫くして、彼の恋人、チェラル・ウィリン(gz0027)が到着。
「ごめーん! 待った?」
「全然、今来たばかりだからなっ!」
 などと、定番のやり取り。
 実際凛は1時間近く待ったのだが‥‥。
「チェラル、今日はありがとう。その服、よく似合ってる。
 折角の休みだし、今日はずっと一緒に過ごそうね」
 ――チェラルは迷彩柄のロングパーカー、デニムのショートパンツ、
 黒タイツ、カラフルなスニーカーという出で立ち。
「凛くんありがとっ♪ ま、普段着なんだけどさっ。あははっ」
 ころころと笑うチェラル。それから「良い日になるといいね〜」と言った。
 2人は手を繋いで歩き出す。凛はアイドルなので一応サングラスを装着。
「そういえば凛、あんまりお菓子作りってやった事無いんだけど、チェラルは?」
「ボクもあんまり経験ないね〜。主に食べるの専門っ♪」
 ぺろりと舌を出すチェラルであった。

 ***

 2組目のカップル。弓亜・優乃(ga0708)は神崎・子虎(ga0513)を待つ。
(子虎君はキチンとした男の子らしい服装で来るっていうし‥‥)
 普段はパンツスタイルの優乃だが、今回はスカートを穿き、
 女の子らしい服装をして来た。自分なりに。
 周りからの視線に赤面しつつ、もじもじしていると――
「お待たせ☆」
 との声。子虎が到着。いつものセーラー服姿ではなく、男っぽい服装。
 愛らしい容姿に変わりは無いので、中性的に見えてしまうが。
「優乃さん、今日はなんだか綺麗‥‥というか可愛いね〜♪
 いつもは凛々しくて格好良いけど☆」
「ありがとう‥‥子虎君も中々似合ってる。
 恥かしいけど、今日はこの格好で楽しむ事にするわ」
 2人は互いの手をしっかりと握り、フェルマータへ。
 店に着くと、レディーファーストという事で、
 子虎は扉を開けたまま、先に優乃を店内に入れた。

 ***

 3組目のカップル。夏目 リョウ(gb2267)は恋人の早乙女・美咲(gz0215)を待つ。
(この間は美咲に心配かけてしまったからな‥‥。
 そのお詫びの気持ちも込めて、楽しい時間を一緒に過ごしたい)
 と、考えていると――美咲の姿が見えた。
 リョウは手を振る。それに気づき、美咲がこちらへやって来た。
 まずは礼を言う。
「今日は時間を作ってくれてありがとう。楽しい一日にしような」
「うん、そうだね」
 にこにこと笑う彼女。
「美咲は忙しそうだし、お菓子作りとか、普段は中々出来ないかと思って、
 予約を入れて置いたんだけど、良かったかな?」
「勿論良いに決まってる! チョコを使ったお菓子、楽しみだな〜」
 美咲がぽわわんとしていると‥‥
「あ、そうだ。ええと‥‥この間は心配かけてごめんな」
 リョウが言い難そうに、切り出した。
 この間の依頼で、リョウは撃墜されてしまったのだ。
「それはもう許した。これからは自分を大事にしてね?」
 人差し指をリョウの鼻先に向ける美咲。
 リョウは苦笑し「うん、解ってるよ」と言った。

 ***

 フェルマータに、4組目のカップルが来店。
 石動 小夜子(ga0121)と、両手に大荷物を抱えた新条 拓那(ga1294)だ。
「今日は久々に‥‥拓那さんとのんびり過ごせそうです」
「一緒に何かを作るバレンタインの過ごし方、って言うのもいいね。
 何か、ほんわかした幸せを感じるよ」
 メイドさん達にお出迎えされつつ、2人は顔を見合わせ、微笑み合う。
(拓那さんは大切な人、です‥‥)
 小夜子は大好きな人の顔をじっと見て、頬を染めた。
 その後――
(あの方は弓亜・優乃さん‥‥確か、友人のお姉さん、ですね)
 優乃の姿を発見。
「いつも妹さんにはその‥‥色々とお世話になっています」
 近づいて、挨拶。
「ああ、色々と‥‥ね。迷惑をかけてないといいんだけど」
 汗を垂らす優乃。小夜子は「いえいえ、そんな」と返す。
「ふふ、ともあれ、今日1日、宜しくお願いします」
 小夜子はにこりと淑やかに笑みを浮かべ、
 フェルマータに集まった傭兵達と、店員に挨拶した。

「店長さんも、今年もよろしくなのだ☆」
 その横で店長に挨拶する子虎。「こちらこそよろしくぅ☆」と小指を立てる店長。
 ――その時、カランカランと来客を告げるベルが鳴った。

 ***

 少し前。
「また、来てしまった‥‥」
 フェルマータの店の前に立つ、軍服を纏った、
 ある意味場違いな男、夜十字・信人(ga8235)。
 ‥‥彼はふと、頭を抑える。前回この店を訪れた際の記憶が曖昧だ。
「イカンな、敗北は認める主義なのだが」
 などとぼやきつつ、扉を開いて店内へ。
「‥‥ん? チョコ作り?」
 出迎えた筆頭メイド、ミカより説明。
 本日はお菓子作り会の為に貸し切り、との事。
(んー。じゃあ、隊の仲間にでも配るか)
 信人はUPC本部まで戻って手続きを済ませ、改めてフェルマータへ。

「俺のレシピで喜んで貰えると良いのですが」
 最後に終夜・無月(ga3084)が来店し、いよいよお菓子作り開始。

●お菓子作り その1
 小夜子と拓那が作るのはチョコレートケーキ。
 2人で食べ切れるくらいのサイズを予定。
 それとチョコレートフォンデュも作る。

 チョコレートを刻んだり、材料を計ったり、
 息を合わせてテキパキと作業をこなす2人。
「以前練習したので、去年より腕は上がっていると思うのですが‥‥」
「うん、小夜ちゃん前より手際が良くなってる」
「そうですか? うふふ」
 褒められて小夜子は少し頬を染める。
「あ、拓那さんはこれをお願い出来ますか」
「これとこれを混ぜればいいんだね? 了解♪
 そういう仕事なら、俺でも何とかできそうだ‥‥っと!」
 拓那は卵を割ったり、生地を混ぜたりするのを担当。
「2人でお料理していると‥‥なんだか、新婚さんみたい、ですね‥‥」
 自分で言い終えて、小夜子はまた頬を赤くした。
「そ、そうかもね。あはは‥‥」
 彼女の言葉に、ちょっぴり動揺する拓那。
 これはもしや遠回しな催促‥‥?
 まあ、はたから見れば現時点でも間違いなくそれである。
 2人は調理をしつつ、幸せな時間を過ごす。

 ***

 凛とチェラルが作るのはチョコレートケーキ。
 ついでにチョコレートパフェも。
 チェラルも一般的な女の子の例に漏れず甘いものが大好きなので、
 ノリノリで調理を行うが、軽い性格ゆえに、ちょっと荒っぽい。
 そんなチェラルを凛が慣れた手つきでサポート。
「おぉっ!? 凛くん上手だね〜」
「ケーキは、この間丁度、TV番組の収録で作り方を習ったんだ」
「へ〜、そうなんだ。そういえばアイドルがゲストのオーダーに答えて、
 料理を作る番組とか見た事あるかも‥‥。
 なんでもこなせるアイドルって凄いねっ♪」
 にっこり笑顔のチェラル。ベタ褒めされて、凛の顔は真っ赤。

「‥‥あっ、チェラル、生クリーム付いてる」
 チョコパフェを作っていたチェラルであったが、
 やはり手つきが荒っぽいので周りに飛び散ってしまっていた。
 その顔に付いた生クリームを、凛が顔を近づけ、ぺろりと舐め取る。
「あははっ、くすぐったいよ凛くん!」
 チェラルは楽しそうに笑う。
 そんな彼女の愛らしい表情を見て、凛の胸がきゅんとなる。

 ***

 恋人達のラブラブによって熱せられた店内。
 仏頂面の傭兵の額に汗が伝う。
「‥‥むせる」
 よっちーこと、夜十字・信人は肩身の狭い思いをしながらも、
 せっせとチョコレート作りに勤しむ。
 基本、自炊派なので、料理はそれなりに出来た。

 刻んだチョコを湯煎にかけ、空気が入らないように溶かす。
 その中に沸騰させた生クリームとバターを加えたのち、
 ゆっくりゆっくり滑らかに混ぜ混ぜ。混ぜ混ぜ‥‥

 混ぜながら、信人は思案にふける。

 バレンタインとは何か。
 チョコレートとは何か。
 金髪ツインテールとは何か。
 ピーマンとは何か。
 ふーふークリームシチューとは何か。
 傭兵とは何か。
 この店は自分にとって何か。

 魂の抜けたような表情をしながら、チョコを冷蔵庫に入れ、冷やす。
「あー、そうか。この店は、俺にとっては日常の象徴の1つだったんだな‥‥」
 どうやら彼はそのように悟ったらしい。

 そして最後に温めた包丁で一口サイズにカットし、
 ココアパウダーをまぶして、箱に詰めて完成。
「出来た。生チョコ‥‥。我ながら良い出来だ」

●お菓子作り その2
 子虎と優乃が作るのはチョコレートタルト。
 ついでにチョコクッキー。

(お菓子作り開始ね‥‥。
 何時までも子虎君に教えてもらっているわけにはいかないわ。
 私の上達ぶりを見せてあげる‥‥っ)
 何やら気合を入れている優乃。

 パイ生地の上にスポンジ状のチョコと溶かしたチョコとを乗せて作成。
「‥‥」
 真剣な表情で、作業に当たる優乃。
 その手際は、子虎が前回見た時よりも格段に向上していた。
「おお、優乃さん上手くなってる!」
「そ、そうかしら?」
「にゅふふ、こっそり練習してたね☆」
「そ、そんな事ないわよ。あはは、あははは‥‥」
 ウィンクする子虎に、乾いた笑いをする優乃。
 ‥‥家で必死に特訓して来たのだが‥‥子虎にはバレバレであった。

 順調に進むお菓子作り。しかし。
「あっ‥‥」
 優乃の手が滑る。湯煎したチョコの入ったボウルがバランスを崩し――
 調理台の上から落ち――床にチョコがぶちまけられた。
 トラブル発生。メイドのミカが瞬時に駆け付け、雑巾で床を拭く。
「わわっ!? ご、ごめんなさい‥‥!!」
「‥‥こういうドジっ子な所はやっぱり優乃さんだね」
 ミカを手伝う子虎。優乃も慌てて加わる。
「それより大丈夫? 火傷とかしてない?」
「う、うん‥‥大丈夫」 
 気遣う子虎の言葉に頷く優乃。
 エプロンが零れたチョコに染まってしまった程度だが‥‥、
 涙目。マジ凹み。
「大丈夫、これくらいなら問題ないよ〜。チョコもまた溶かせばいいし☆」
「‥‥」
 子虎に励まされつつ、優乃は作業をやり直す。
 暫く凹んでいたものの、タルトが完成する頃には優乃も復活した。

 ***

 リョウと美咲が作るのは――
 チョコレートを混ぜたスポンジにチョコレートクリームをサンド、
 外側にはビターなチョコでコーティングしたスペシャルチョコレートケーキ。
 美咲は準備する時間が無かったので、リョウのお手伝い。
「この日の為に雑誌で読んで、見よう見真似なんだけどね。
 美咲が手伝ってくれるなら必ず美味しくなる。完成が楽しみだよ」
 爽やかな笑みを浮かべるリョウ。

 作業は滞りなく進む。
「オーブンには気を付けてな」
 何かと器用にこなす彼。じっと見つめる美咲。
「あれ? 意外だった?」
「そんな事ないよ。料理が出来る男の子って魅力的だと思う」
 美咲は笑ってそう言った。
「まあこのくらいは、学園ヒーローの嗜みさ」
 少し照れつつ、ウィンクするリョウ。

 ***

 無月が作るのはアイスケーキ『−St.Valentine−』。
 スコーンの外殻を作り、アイスの盛り付け、手早くソースを作る。
 素早くも見事な手捌きで、彼はアイスケーキを仕上げて見せた。
 パチパチと拍手が巻き起こる。

 ***

 全員のお菓子が完成。
「宜しければ、他の方々にも食べて貰いたい、です。
 チョコレートフォンデュも試して貰いたいですし‥‥、
 他の方のお菓子も参考に食べてみたい、です」
 ――という小夜子の提案で、試食会が行われる事に。
「ふふ‥‥お茶も淹れて、お茶会みたいにすれば楽しそうですね」

●試食会+お茶会
 フェルマータのメイドさんがテーブルに着いた皆のカップに紅茶を注ぎ終えると、
 試食会を兼ねたお茶会が開始。今回皆が作ったお菓子を、皆で食べる。

 小夜子と拓那。並んで座る2人。
「拓那さん、はい、『あーん』して下さい」
 勇気を出して、小夜子はフォークでケーキをすくって、拓那の口へ。
「えと、じゃあ失礼して‥‥。あーん。
 〜〜〜っ。自分で食べるより、何百倍も美味しい‥‥!」
 嬉しさと美味しさのあまり、拓那は感動。照れくささも吹き飛ぶほど。
「ありがとう、小夜ちゃん」
「こちらこそありがとうございます、拓那さん」

 ***

 凛とチェラル。
「今日は特別、特別なんだからなっ!
 ‥‥じゃあ、チェラルもなんだぞっ」
 こちらのカップルも『あーん』し、食べさせ合う。
 チェラルはにこにこ笑顔でモリモリお菓子を消費。

 ***

 益々ラブラブ度が上がった店内。信人は――
「入店禁止にされてもおかしくない程に迷惑をかけていますし」
 普段のお詫びに、と店員さん達にチョコを配った。
「何時も、迷惑をかけてすまん!」
 特に金髪ツインテールのメイドさん、エリスには頭を下げて渡す。
 エリスは「ありがとうございます。でもそんなに気にしていませんよ」と微笑んだ。
 そののち、
「また、来年のバレンタインも此処に来れると良いな」
 と、フェルマータを去ろうとした信人だったが、
 店員の皆に引き留められ、暫くお茶会に混じった。

 ***

 子虎と優乃。
「はい、『あーん』だよ〜♪ んふふ、優乃さんの作ったのが一番美味しいのだ☆」
 こちらは子虎がラブラブ攻勢。
「優乃さんについたケーキも美味しいのだぞ♪ それとも優乃さんがかな?」
 口の周りについたチョコを真っ赤な舌でぺろり。
 顔面を火照らせる優乃の様子に子虎はくすくすと笑う。

 ***

 リョウと美咲。一緒にケーキを食べる。
「美味しい‥‥これなら、毎日食べたいくらいだな」
 それをちゃんと聞いているのかいないのか、
 美咲は「うん、私もー」とケーキを黙々と食べる。
 ‥‥リョウは彼女の名前を呼び、顔がこちらを向いた所で、
 不意打ちのキス。
「いつもより、甘い味がする」
 それは、ケーキよりも甘い‥‥?

 ***

 無月は自作のアイスケーキに舌鼓を打つ。
「ふむ‥‥完璧ですね」

 ***

 そうして、楽しいお菓子作りとお茶会は終了。

 手を繋いで歩く帰り道。
「ねえ、子虎君」
 優乃が声をかける。
(あ、改まって渡そうとすると‥‥ちょっと恥ずかしいわね)
「私が好きな男の子はキミだから。ハッピーバレンタインよ、子虎君」
 笑顔でチョコを渡す。
「わぁ、ありがとうなのだ♪ 僕も優乃さんの事、大好きなんだぞ♪
 ‥‥勿論、1人の女性として☆」
 子虎も特別に包装したチョコをお返しに渡す。
 そして――2人は顔を近づけ、唇を重ねた――。