タイトル:【MTP】花冠の乙女3マスター:とりる

シナリオ形態: ショート
難易度: 難しい
参加人数: 10 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2012/02/03 06:22

●オープニング本文


 乙女隊駐屯基地・ブリーフングルーム――。
 α−01部隊、およびα−02部隊の総員16名が集合していた。
「よし、全員居るな」
 乙女隊の創設者であり総指揮官である高ノ宮・茜中佐が乙女隊の面々を前にし、口を開いた。
「では任務の内容を伝えよう。‥‥諸君らにはモルディブへ遠征してもらう」
「ええっ!? またまたバカンスですか?!」
 反射的に声を上げてしまうα−02部隊所属の岩崎・智里。
 その瞳は期待に満ち、キラキラと光っている。
 ――真剣な高ノ宮中佐の表情を読み取れずに‥‥(普段からクールな表情ではあるが)。
「ほほう、岩崎は真冬だというのに頭が沸いているようだな。冷却が必要か?」
 表情は笑顔ながらもこめかみに青筋を浮かべてげんこつを見せる、
 高ノ宮中佐の補佐――片瀬・歩美少佐。
「ひぃぃ!? すみません! 結構です!」
 智里はがくがくと震えながら縮こまった。
「‥‥ごほん。説明を続けるぞ」
 高ノ宮中佐は少々呆れつつ咳払い。
「今回は言葉通りの意味で『遠征』だ。戦闘任務である。
 モルディブタワー計画についてはある程度話していたな?
 その建設予定地付近へ近頃、頻繁にワームが飛来しているらしい。
 ‥‥どうやら、バグアも計画に気付いたようだ。妨害行動と思われる。
 UPCインド軍から増援の要請があった。
 現在、インドでは『デリーの夜明け作戦』が展開中であるゆえ、手が足りない。
 そこで我々の出番というわけだ。質問は?」
 高ノ宮中佐が乙女隊の面々を見回すと‥‥手が上がった。
 α−02部隊の隊長、横山・利瀬。高ノ宮中佐は名を呼ぶ。
 利瀬は起立。しっかりと高ノ宮中佐の目を見て質問を始めた。
「モルディブタワーの建設予定地の場所は聞かされていませんが‥‥、
 恐らく洋上ですよね? 空戦になるのですか?」
「その通りだ」
「あの‥‥我々は陸戦部隊であり‥‥空戦は‥‥」
「確かに、α−01および02部隊はこれまで陸戦主体であったが、
 陸戦専門の部隊と言った覚えは無いぞ?
 KV部隊である以上、陸戦と空戦、両方こなせて当然だ」
「はい‥‥申し訳ありません。了解しました‥‥」
 利瀬は少し塞ぎこんだ様子で、着席する。
 それを見た高ノ宮中佐は‥‥ちらりと青い髪の少女に視線を送る。
 ――α−01部隊の隊長、早乙女・美咲。
 美咲は「ハッ!?」と視線に気付くと、利瀬のほうを向いた。フォロー開始。
「だ、大丈夫。ちゃんと訓練はしてるでしょ?
 前回モルディブへ行った時も空中の哨戒はしたし――」
「空戦の経験はありません‥‥」
 やはり不安なのだ。気持ちはわかる。
「私達だって空戦の経験は数えるほどしかないよ。私も怖い。
 でも日頃の訓練を信じて。ね?
 むしろ『空戦だってこなせるんだ』って、見せ付けるチャンス!」
 そう言い切り、美咲はドヤ顔でぐっと拳を握った。
「‥‥わかりました。自分を信じてみます。
 ありがとうございます、先輩。
 そこまで自信満々に言われると、こっちまで変な自信が湧いてきました」
「へ、変なって‥‥」
 微笑む利瀬と、複雑な表情を浮かべる美咲。
(ふむ‥‥)
 早乙女も先輩らしく、上官らしくなってきたか? と考える高ノ宮中佐。
「ともかく、諸君らなら大丈夫だ。それは訓練の結果が証明している。
 例により片瀬少佐、傭兵も同行する。心配するな」
 と、高ノ宮中佐は言うが、
「しかしながら‥‥飛来するワームの数は日に日に増えているそうだ。
 そろそろ本星型や強化型タロスなどの精鋭機が出張って来る可能性が高い。
 これまでのバカンス気分ではいかん。気を引き締めろよ」
「了解!」
 高ノ宮中佐の激励に、乙女隊の面々は一斉に敬礼した。

 ***

 東南アジア某所。バグア基地。
 薄暗い室内に話し声が響いている――
「やっぱりここ、何かあるね」
「何かって何さ?」
「あるっていうか、何かを作ろうとしてるみたい」
「なら、もっとちょっかいかけてみる? 今度は本格的にさ」
「そうだね。それもいいね‥‥」

●参加者一覧

ノエル・アレノア(ga0237
15歳・♂・PN
時任 絃也(ga0983
27歳・♂・FC
百瀬 香澄(ga4089
20歳・♀・PN
瑞浪 時雨(ga5130
21歳・♀・HD
龍深城・我斬(ga8283
21歳・♂・AA
風間・夕姫(ga8525
25歳・♀・DF
夏目 リョウ(gb2267
16歳・♂・HD
ティリア=シルフィード(gb4903
17歳・♀・PN
樹・籐子(gc0214
29歳・♀・GD
秋姫・フローズン(gc5849
16歳・♀・JG

●リプレイ本文

●島々の花輪へ その3
 依頼を受けた10名の傭兵達は作戦地域――モルディブへ向かう前に、
 乙女隊の駐屯基地を訪れ、彼女達と合流。軽くミーティングという名の雑談をしていた。

「今回はバカンスじゃなくて戦闘‥‥空戦‥‥。
 精鋭機が出張ってくる可能性が高いんですよね。
 気を抜かない様にしないと‥‥!」
 と、浅黄色の髪をした少年、ノエル・アレノア(ga0237)はぎゅっと拳を握り、気合を入れる。
 ‥‥彼の容姿は一見少女と見紛う程であるが、激戦を重ねるうちに戦士としての実力、経験、
 そして自覚を持つに至り、現在ではれっきとした『歴戦の勇士』である。
「ね、ティリアさん?」
 そんな彼は『必ず自分の手で守る』と心に決めた最愛の恋人‥‥、
 空色の髪のボーイッシュな少女、ティリア=シルフィード(gb4903)の方を見て、声をかけた。
 ‥‥しかし、彼女は上の空。何やら思案している様子である。
(う‥‥モルディブって聞いて、またバカンスなのかとボクも一瞬思ってしまいました)
 ティリアは少し焦った表情をして、頬に汗を浮かべた。
「? ティリアさん? 具合でも悪いんですか?」
 ノエルは尋ねるが、返事は無い。
 ティリアの頬をつんつんしてみる。
 やはり反応は無い。
「‥‥っ」
 ノエルはごくりと唾を飲み込む。
 ここまで反応が無いのならば、こんな事をしてみても‥‥?
 指先でティリアの頬をぷにぷに。
「‥‥歩美少佐に怒られる前に気を引き締め直さないと‥‥!
 一応、重体明けの身でもありますし」
 ティリアは急に言って、表情を引き締め、両手をぎゅっと握る。
 ――そして自分の頬を指先でぷにぷにしているノエルに気付いた。
 首を回し‥‥彼と目が合う。
「!? ノエル‥‥さん‥‥?」
「!? ‥‥いえ! あの! これは!」
 慌てて手を引っ込めるノエル。
「ええと、その‥‥話しかけてもティリアさんが無反応だった物で‥‥」
「あ、ああ‥‥そうでしたか。すみません。ちょっと考え事をしていた物で‥‥」
 2人して真っ赤になった。
 ノエルは欲望のままに「ほっぺにちゅー」等をしなくて良かった、本当に良かった。
 と、心から安堵するのだった。
 暫く2人は顔を赤くしたまま沈黙。

 顔面の冷却を終えた後、ティリアはα−02部隊の4人の方へ。
「空での戦いは敵味方入り乱れての乱戦になりがちですから、
 孤立しない様、自機の位置取りには気を付けて。大丈夫、皆さんならやれますよ」
 初めての空戦で不安を感じているらしいと聞いたので、勇気付けるという意味でも声をかけた。
 4人は「ありがとうございます。参考になります」等と言い、ぺこりと頭を下げた。

 ミリタリーな服装をした巨躯の傭兵、時任 絃也(ga0983)――。
 彼もノエルと同じく『歴戦の勇士』と言えるだろう。
 しかし絃也は長身かつ、鍛えられた肉体をしており、寡黙。
 貫録という意味では年齢的な要素もあり、やはり絃也のほうが上だろうか。
「記憶が確かなら彼女らは空戦の経験がほぼ無かった気がしたが‥‥、特にα−02は」
 顎に手を当て、呟く。
 ‥‥誤解無き様に言っておくが、乙女隊の任務はULTに出される依頼だけではない。
 傭兵の与り知らぬ所でも乙女隊の面々は出撃し、日々戦いを繰り広げている。
「まぁ、遅かれ早かれ経験することだし、このタイミングであったことを好機と捉えるべきか」
 と言い、絃也は前向きに捉える事にした。

「久しぶりだね、冴。元気にしてたかい?」
 優美な雰囲気を纏う長い金髪の女性、百瀬 香澄(ga4089)が、
 深い関係にある九条・冴(α−01部隊、B小隊長)の傍に寄り、声をかけた。
「はい。元気です。香澄さんのほうは何か変わった事は?」
「ん、特にないかね。‥‥それよりも冴に会えなくて、少し寂しかったかな‥‥」
 香澄は冴の肩に手を回し、抱き寄せる。
「‥‥香澄さん‥‥。私も、寂しかったです」
 冴は香澄から漂う香水の香り、そして愛する人の温もりにうっとりとした表情を浮かべる。
「ふふ、さっさと任務を片付けて楽しみたい所だね」
 相変わらず妖しい雰囲気を漂わせている2人であった‥‥。

「‥‥」
 黒を基調としたワンピース姿の物静かな雰囲気の女性、瑞浪 時雨(ga5130)。
 ややふわりとした黒髪、銀の瞳をした、美しい容姿の彼女は――
 キャッキャウフフしている香澄と冴の様子をやや冷めた目で見ていた。
 ‥‥人見知りが激しく、積極的なコミュニケーションが苦手な時雨。
 心の奥底では目の前の2人を少し羨ましいと思う気持ちもあるかもしれない。
 だが――今回は9割方戦闘が目的でこの依頼を受けた次第である。
 残りの1割は? と問われれば‥‥それはバカンス?
 戦士にも休息は必要。という事だろう。

「え、バカンスじゃねえの? ‥‥あー、まずは仕事ね」
「がーくん、今回は真面目な依頼なんだ。あからさまにダルそうにするのはどうかと思う」
 そう話しているのは――龍深城・我斬(ga8283)と風間・夕姫(ga8525)のカップル。
 煙草を咥えた夕姫が我斬のおでこをつんと突く。2人は恋人同士であった。
 夕姫はモルディブ関連の依頼には何度か参加していたが‥‥、
 彼氏の我斬となかなか予定が合わず、やきもき。
 それでやっと一緒に参加出来たのだが‥‥今回のメインはバカンスではなく戦闘。
 まずはそれをこなさなければならない。
「す、すまん。夕たん。‥‥だよな、楽しみの為にも頑張らないと」
「ああ。後に楽しみがあるからこそ頑張れる、って事もあるさ」
 夕姫は恋人の顔を見て微笑んだ。

 長い赤髪を後ろで結わえた少年、夏目 リョウ(gb2267)は――
「モルディブタワー計画をバグアに邪魔させはしない‥‥。
 それに‥‥美咲と楽しんだあの綺麗な海も、抜けるような空も、俺は護りたいからな」
 恋人関係にある、早乙女・美咲(α−01部隊隊長)に向かってそう言った。
 美咲との思い出の場所をバグアに汚させる訳にはいかない‥‥。
 強い想いが彼の中にあった。リョウの瞳の奥は熱く燃えている。
 その様子に美咲は――
(今日のリョウくん‥‥なんだかいつもよりカッコイイ‥‥)
 といった風に、彼氏のキリリとした横顔に内心デレデレ。
 しかし。
(‥‥おっと、いけない。α−02の皆の事もあるし、隊長の私がしっかりしないと!)
 自らも表情をキリリと引き締めた。
「頑張ろうね、リョウくん」
「うん、負ける訳にはいかない」
 2人は頷き合う。

 樹・籐子(gc0214)と秋姫・フローズン(gc5849)は‥‥、
 部屋の隅っこで、小声で話している。
「タワーの建設予定地に、頻繁にワームが飛来しているから、
 それを叩け‥‥ねぇ‥‥」
 籐子は未だ明示されてない、モルディブタワー計画の意図を探ろうと考えていた。
 勿論、軍事機密には決して触れずに。
(うーん、一体何を作ろうとしているやらー)
 兎も角。
「今回は協力、お願いするわねー」
「はい‥‥わかりました‥‥任せて下さい‥‥!」
 秋姫は意気込んでいる様子。
 その健気な姿に、籐子は思わず秋姫の頭を撫で撫で。
 嬉しそうに笑みを浮かべる秋姫。

 暫くして‥‥一行は輸送機に乗り込み、モルディブへと飛び立った。

●迎撃任務 前半
 モルディブ沖へ到着した一行。現在はUPCインド軍所属の空母に乗艦。
 ‥‥一息ついていたのも束の間、哨戒機よりバグア機接近の報告。
 傭兵部隊と乙女隊、片瀬少佐はKVに搭乗し、ただちに発艦。迎撃に向かった。

 ***

 蒼穹を駆ける傭兵部隊10機、乙女隊16機、片瀬少佐機、合計27機のKV――。

 ノエルの機体はディアブロ改『ゼロ』。
(早速敵が来た‥‥。時間が経つ程、相手は焦る‥‥かな?
 でもこちらとしてもあまり探りを入れられるのは今後に響くし‥‥。
 敵指揮官を早々に撤退させるのが一番かも)
 愛機のコクピットにて、ノエルは思考する。
 統率の取れた敵を相手にするに当たり、指揮官を集中的に叩くのは極めて有効である。

 絃也の機体はR−01改。
「無理はしても、無茶はするな。空戦は360度総てが戦場だ。
 視界を広く持ち、常に仲間の存在を視界に入れておけ」
 α−02部隊へと通信、アドバイスを行う。4名から「了解」との返答。

 香澄の機体はロビン改『TomLady』。
「いい天気だねー、バグアさえ来なけりゃ遊び日和だってのにさ。
 さっさと追い返して一泳ぎ、と洒落込みたいもんだね」
 キャノピー越しに青く晴れ渡った空を見つめる香澄。そこへ――
「香澄さん、遊びもいいですけれど、まずは任務ですよ」
 との冴からの通信。
「わかってるさ‥‥。敵には精鋭機も混じってるみたいだし、
 気を張り過ぎても逆効果だと思ってね」
 香澄がその様に答える。すると冴は「そうですね。すみません」と返してきた。

 時雨の機体はアンジェリカ改『エレクトラ』。
「敵は殲滅する‥‥。ただ、それだけの事‥‥」
 冷たい雪を思わせる銀の瞳で――時雨はまっすぐ前を見つめている。

 我斬の機体はシラヌイS2型『剛覇』。
「空戦〜‥‥は正直苦手なんだが‥‥夕たんもいるし、あんま弱気も吐いてられんな」
 マイクを切って独り言。
 ここで退いては男が廃る! と、我斬は操縦桿を握る手に力を込めた。

 夕姫の機体は我斬と同じくシラヌイS2型『陽炎』。
「ちっ、とうとう向こうも本格的にちょっかい出してきたか」
 哨戒機からの情報によれば、敵はけっこうな大編隊らしい。
 これほどの規模となれば精鋭機も居る可能性は大きい。

 リョウの機体はスフィーダ『大宇宙(てんくう)』。
「この青い空をバグアの好きにはさせたくないよな‥‥皆、頑張ろうぜ!」
 覇気のある声で味方全機に通信を送る。各機から「了解」等と返ってきた。

 ティリアの機体はスピリットゴースト・ファントム『Merkabah』。
(ボクの役目は援護‥‥いつも通りやれば問題ない‥‥)
 心を落ち着かせつつ、ティリアは心の中で呟いた。
(それにノエルさんも居るから、絶対に大丈夫‥‥!)
 近くを飛ぶ恋人の機体をモニターのウィンドウに表示。
 エンブレムを確認し、少し口元を綻ばせる。

 籐子の機体はマリアンデール・フロリバンダ『マリーゴールド』。
(んー‥‥敵も大部隊を送り込んできたみたいねー。
 という事は大方の建設予定地を特定したって事かしらー?)

 秋姫の機体はアンジェリカ『シルフィ』。
(今は‥‥この戦いに‥‥集中‥‥!)

 そしてα−01部隊のシラヌイS2型3機、シラヌイ改9機。
 管制を担当する片瀬・歩美少佐搭乗のワイズマン改。
 その護衛を担当するα−02部隊、ミカガミB型4機。
 なお、今回傭兵には電子戦機に搭乗する者が居なかったので、
 片瀬少佐機はそちらの管制も行う。

 ***

 程無く接敵。
 予想通り、敵編隊から先制攻撃、プロトン砲による一斉砲撃が来る。
 ――傭兵部隊、乙女隊各機は回避運動、または超伝導AECで対応。
 距離があったので殆ど命中せず。

 管制を担当する片瀬少佐機より味方全機に通信。
「こちら片瀬機。敵部隊の構成は強化型タロス1、タロス5、
 本星型HW1、強化型HW20と断定。ナンバリング完了。データリンク構築‥‥完了」
 片瀬少佐のワイズマン改から傭兵部隊各機に敵機の情報が送られてくる。
「傭兵部隊は予定通りタロスの対処を頼んだ。
 α−01はHWを、α−02は私の護衛を。任せたぞ。
 通信は以上。戦果を期待する」
 片瀬少佐がそう言うと、通信が切れた。

 各機増速。傭兵部隊はタロスの編隊へ、乙女隊はHWの編隊へ向かう。
 片瀬少佐機とα−02部隊はそのまま後方に留まる。

 ***

 傭兵部隊はタロスの編隊に接近すると‥‥、
 事前に打ち合わせしたように、一斉射撃を行う。

「ターゲットロックオン‥‥ミサイル発射!」
 ノエル機、ホーミングミサイルFI−04を発射。
「やはり強化型は後方か‥‥ならば道を切り開く」
 絃也機、MM−20ミサイルポッドを発射。

「くっ、やはり先手は取られたか‥‥。なら、お返しと行こうか!」
 香澄機、UK−10AAEMを発射。
「目標を視認‥‥、叩き落とす‥‥!」
 時雨機、GP−7ミサイルポッドを発射。

「先ずは一斉射だったな、K−02を派手にぶっぱしますか」
 我斬機、目標をマルチロック。K−02小型ホーミングミサイルを全弾発射。
「これで相手の出鼻をくじければいいんだが‥‥まあ牽制とか目くらまし程度にはなるでしょ」
「初っ端からK−02全弾か‥‥贅沢だな」
 夕姫機、UK−10AAMを発射。

「行くぞ大宇宙、俺達の手でこの空を守る!」
 リョウ機、スナイパーライフル『稲妻』で狙撃。リロード。狙撃。

「こちらも行きます‥‥ターゲット・マルチロックオン」
 ティリア機、【ファルコン・スナイプ】を使用。
「行けぇ!!」
 ミサイルレリーズを押し込む。
 K−02小型ホーミングミサイルを全弾発射。

「開幕からすごいわねー。‥‥おっとと、乗り遅れないようにしないとー。
 行くわよー、秋姫さん?」
「了解。‥‥目標をロック。ミサイル、発射します‥‥!」
 籐子機、UK−11AAEMを発射。
 秋姫機、UK−10AAEMを発射。

 青空に爆炎とエネルギーの爆発が巻き起こる。
 だが、このミサイルと砲弾の弾幕の中で、ほぼ無傷の機体があった。
 強化型タロス――。

「あいつだけ動きが他とは明らかに違う‥‥有人機か!」
 夕姫が声を上げる。

●迎撃任務 後半
 強化型タロスの対応を行うノエル機と絃也機――。

「一気に懐に飛び込めば‥‥」
 絃也機、ブーストを使用。膨大な推力を得て一気に前へ出る。
 強化型タロスに接近しつつ、スナイパーライフルAAS−10kvを連射。
 ‥‥敵機は回避運動。だが距離が詰まっているので数発命中。砲弾が装甲を抉る。

「少しでも援護を‥‥!」
 ノエル機もブーストを使用。絃也機に追随。
 HUD(ヘッドアップディスプレイ)に表示される円が‥‥強化型タロスに重なる。
「今だ!」
 ホーミングミサイルFI−04を発射。
 ‥‥敵機は回避運動。命中せず。しかし牽制にはなった。

 強化型タロスは慣性制御を用いて体勢を立て直し、
 レーザーガンで射撃、反撃をしてきた。
 ‥‥ノエル機と絃也機は回避運動。
 ノエル機が被弾。片翼を撃ち抜かれ、バランスを崩す。
「くぅ‥‥!」
 ブーストを噴かせてなんとか体勢を立て直す。
「敵の攻撃はこちらで引き受ける。少し距離を取ったほうがいい」
「了解‥‥!」
 2機は連携し、強化型タロスに立ち向かう。

 ***

 ノーマルタロスの対応を担当するのは――
 香澄機、時雨機、我斬機、夕姫機、リョウ機、ティリア機、籐子機、秋姫機。

 香澄機と時雨機は2機のタロスを相手取り、交戦。
 香澄機、AAEMを発射、プラズマリボルバーで射撃し、牽制。
 ‥‥回避運動を行うタロス。
 そこへDR−2荷電粒子砲とレーザーカノンを撃ち込み、打撃を与える。
「観光なら海がオススメだな、今ならタダで墜としてやんよ」

 時雨機は【SESエンハンサー】を常時使用。【ブースト空戦スタビライザー】も併用。
 GP−7ミサイルポッドを連続発射。大量の知覚ミサイルで弾幕を展開。
 連続するエネルギーの爆発により身動きが取れず、もがくタロス。
 そして、タロスに照準。ロックオン。DR−2荷電粒子砲による砲撃。
「逃さない‥‥。ここで墜ちて‥‥!」
 極太の光条がタロスを貫いた。

 香澄機が撹乱し、時雨機が圧倒的火力で敵を蹂躙していく。

 ***

 我斬機と夕姫機、2機のシラヌイS2型は連携し、タロス1機を翻弄する。

 我斬機はダブルリボルバーMMで射撃しつつ、ファランクス・ソウルの弾幕で牽制。
「ちっ、ブースト吹かしっぱなしじゃ練力が持たんか。
 簡易ブーストが使えりゃ疑似慣性制御が長時間使えるんだが‥‥」
 そののちに【超伝導アクチュエータVer.2】を起動し、
 接近戦へ移行。兵装をレーザーガン『フィロソフィー』に切り替え。
 ロックオン。連射。レーザーが敵機の装甲を焼く。

 夕姫機は中距離を維持。試作型『スラスターライフル』で射撃。
 敵が隙を見せれば接近し、ソードウィングで斬り付ける。
「恋人が見てる手前、無様な姿を見せる訳にはいかないんでな!」
 【超伝導アクチュエータVer.2】を起動してヒットアンドアウェイで攻撃を行う。
 基本は我斬機をフォロー。

 片瀬少佐機より通信。敵機の損傷はかなり大きいとの事。
 ――2機は畳み掛ける。
 夕姫機がスラスターライフルで多数の砲弾を撃ち込み、敵機の動きを阻害。
 そこへ我斬機。敵機をロックオン。螺旋弾頭ミサイルを発射。
「俺と夕たんのハッピーバカンスの為にも落ちてもらうぜ!」
 螺旋弾頭がタロスの装甲に食い込み、爆発を起こした。

 ***

 リョウ機はスナイパーライフル『稲妻』で射撃しつつ距離を詰め――
 兵装を3.2cm高分子レーザー砲に切り替え。
 タロスとのドッグファイトに移行。
「今だ! 大宇宙! スーパーレーザー!」
 タロスに照準。ロックオン。レーザーの射撃を加える。

(夏目さんが前に出ている‥‥しっかり援護しないと‥‥)
 ティリア機はスナイパーライフルD−03による狙撃と、
 高性能長距離バルカンの弾幕でリョウ機を援護。

 リョウ機はここで一気に攻勢をかける。
「大宇宙、お前の星の輝きを見せてやれ‥‥メテオ・ブースト、オン!」
 叫びと共にブーストと【メテオ・ブースト】を使用。
「星の矢で全てを射抜け!」
 スナイパーライフルで射撃した後、レーザーの雨を降らせる。
 砲弾が敵機の装甲に突き刺さり、レーザーが敵機の装甲を焼く。
 ――だが、撃墜するには至らなかった。反撃が来る。
 今度はリョウ機に向かってレーザーの光条がいくつも飛ぶ。
「そう簡単に、当たる訳には‥‥!」
 必死に回避するリョウ機。しかし――
 レーザーに機体を何度も貫かれ、耐久力が限界に達し‥‥、
「くっ! ここまでか! 脱出する!」
 ベイルアウト。コクピットブロックが射出されると同時にリョウ機は爆散。
「夏目さん?! ‥‥よくもぉー!」
 ティリア機は【ファルコン・スナイプ】を使用。
 リョウ機の攻撃により耐久力が残り僅かとなったタロスをロックオン。
 200mm4連キャノン砲で一斉砲撃。
 猛烈な砲撃を受けた敵機は爆散。
「夏目さん? 夏目さんは‥‥?」
「こちら夏目‥‥なんとか生きてる。すまない、後で回収を頼む」
 リョウ機のコクピットブロックは無事着水していたらしい。
 通信を聞いていた乙女隊の美咲もほっと胸を撫で下ろした。

 ***

「さてー、派手に行きますかー」
(本当の目的はこっちじゃないんだけどね‥‥お仕事だし)
 籐子機は敵機をロックオン。AAEMを連続発射。
 敵の機動を阻害した上でレーザーガン『フィロソフィー』による射撃を加える。

「こちら秋姫機、援護します」
 秋姫機、【SESエンハンサー】を使用。
「見つけた‥‥逃がさない‥‥!」
 敵機をロックオン。
 AAEMを発射、Δ・レーザーライフルで射撃、小型帯電粒子加速砲で砲撃。
 敵との距離により兵装を適宜切り替える。

 かなりのダメージを負った様子の敵機。
 装甲は焼け焦げ、穴だらけな上に火を噴いている。
 そこで籐子機【ファルコン・スナイプ改】を使用。
「喰らいなさいー!」
 DR−M高出力荷電粒子砲を発射。極太の光条が敵機を貫き、撃破した。

 ***

 尚も強化型タロスと交戦中のノエル機と絃也機。

 ノエル機はスラスターライフルで射撃し、
 弾幕により敵の動きを制限し、絃也機を援護。
 絃也機はミサイルポッドで可能な限り絶え間なく大量のミサイルで弾幕を展開。
 強化型タロスは回避運動を行うも‥‥時間が経過するにつれダメージが蓄積し‥‥、
 ついに反転、撤退を開始。
「逃げた‥‥?」
「その様だな」

 片瀬少佐機より傭兵各機に通信。
「α−01部隊も強化型HW全機の撃墜に成功した。本星型HWは撤退。
 敵全機の撃墜、または撤退を確認。作戦終了。‥‥ご苦労だった」
 それから片瀬少佐が「全機空母へ帰投せよ」と言うと、通信が切れる。

「終わったか‥‥。さて、誰が乗ってたかは知らんが有人機が出張ってきた以上、
 これから先、連中のちょっかいは性質が悪くなっていくだろうな‥‥」
 少し難しそうな顔で、夕姫が言った‥‥。

●バカンス
 迎撃任務から一夜明けた昼――。
 傭兵達と乙女達はモルディブの美しい海辺へと繰り出していた。

 ***

 絃也は――ヤシの木にハンモックを張り、横になって青い空と白い雲を眺めていた。
「‥‥」
 いつか乙女隊も‥‥この空の向こう‥‥宇宙へ進出する時が来るのだろうか‥‥。
 などと、ぼんやり考えてみる。
 ‥‥戦場は徐々に宇宙へと移りつつある。
 そう、遠い話でもないのかもしれない。
 事実‥‥傭兵の中には宇宙空間での戦闘を経験した者も増えてきている‥‥。
 きっと‥‥軍のほうも‥‥。
 その内に、絃也は微睡み、夢の中へ落ちて行った‥‥。

 ***

 香澄と冴は海に入って水遊び。
 ‥‥香澄はオレンジ色のビキニ姿で、冴はいつもの黒のビキニ姿。
「うーん‥‥」
 香澄はふと水をバシャバシャとやる手を止め、冴の肉体を凝視。
「どうしました? 香澄さん」
「やっぱり冴はスタイルが良い。こう‥‥腰のラインとか‥‥くびれが堪らない。
 それでいて肉付きも良く、胸も形が良く大きめで――ぶはっ!?」
 冴に海水をかけられた。
「あまりジロジロと見ないで下さい! ‥‥恥ずかしい、ですから」
「別にいいじゃないか。お風呂で身体の隅々まで洗い合った仲なんだし」
 それを聞き、冴の頬が真っ赤に染まる。
「そ、そういう事ではなくて! 皆が見ている所では‥‥その‥‥」
「んん? 2人きりの時なら良いって事かな?」
 香澄はニヤリと笑い、冴の後ろに回り込み、抱き締める。
 身体と身体が密着し――
「もう! だから皆の前では、そういうえっちぃ事は少し控えて下さい!」
 水着姿で密着。確かに少し大胆。
 冴は脱出。逃亡を図る。
「こら、冴、待て〜!」
 今度は追いかけっこが始まった。

 ***

 時雨はビーチパラソルの下、日陰でのんびりとくつろいでいた。
「日差しは苦手‥‥」
 水着は黒と紫のゴシックなスカート付きの水着。
 それは時雨のきめ細やかな色白の肌を引き立てており、とてもよく似合っている。

 ***

 我斬と夕姫のカップルは――待望の、恋人同士でのバカンス。
 楽園とも言われる美しい海を、2人は全力で泳ぐ。
「ぜえ‥‥ぜえ‥‥。夕たん‥‥速いな‥‥」
「ははは、がーくんには負けないさ」
 砂浜にぶっ倒れている我斬。
 濡れた水着姿のまま仁王立ちしている夕姫。ドヤ顔。
「‥‥」
 我斬は息を整えつつ、美しく整った夕姫の肉体をローアングルからガン見。
「‥‥ふぎゅ!」
 お腹を踏まれた。
「まあ‥‥なんと言うか、がーくんも男の子だな」
 また「ははは」と笑って見せる夕姫。
 その後2人はパーカーを羽織り、近くのショッピングモールへ買い物へと出かけた。
 いろいろアクセサリやら土産物やらを見て回ったり、
 休憩の際にトロピカルジュースをカップル専用のストローで飲んだりして楽しんだ様だ。

 ***

「もう! リョウくんってば無茶し過ぎ!」
「ごめんなさい‥‥」
 一方、リョウは――美咲に怒られていた。
 ただでさえ装甲が薄めで耐久力も低めのスフィーダを、
 肉抜きして兵装搭載量を確保するという荒業。
 敵にかなりの打撃を与えたのだが‥‥一歩及ばず。
 リョウ機は撃墜されてしまった。
 宇宙キメラ等が相手ならば通用するかもしれないが、
 タロスが相手となると流石に厳しかった様だ。
「傭兵さんは機体のカスタマイズが自由だからダメとは言わないけど‥‥、
 もっと自分を大事にしてよね! リョウくんを心配する人だって居るんだからね!
 主に、ここに!」
 と、美咲は目を瞑り、ふくれっ面で自分を指さす。
「悪かったよ‥‥美咲。心配させて本当にごめん。そして‥‥ありがとう」
 絆創膏の貼られたリョウの顔。笑みを浮かべてみせる。
「わ、解ればいいんだけどっ!」
 美咲は少しだけ頬を染めた。

「‥‥この空を見ていると、さっきまでの戦いが嘘みたいに思えるな‥‥。
 そうだ美咲、来月の14日、一緒に出掛ける約束、させて貰えないか?」
 ふと、リョウは美咲に提案してみる。
「うーん、来月の14日かぁー‥‥。どうだろ、わかんない。
 急に任務が入るかもしれないし。でも、もし空いてたらOKだよ」
 と、美咲は答える。
「うん、それでいいよ。良かった」
 2人はにっこりと微笑み合う。

 ***

 籐子は水着姿で、その豊満な肉体を披露。
 ビーチチェアに横になり、完全休憩モードで心身を休める。

 一方、秋姫は可憐なメイド服姿で、
 乙女隊のメンバーや他の傭兵達のお世話をしていた。
 だが、ポケットの中には‥‥録音機。

「冷たい物を‥‥お持ちしました‥‥」
 まずは皆へ飲み物を配る。
「ご要望‥‥何なりと‥‥」
 その後、スカートの裾を持ってお辞儀をし、
 皆へマッサージやオイル塗り。
「ただ今‥‥お作ります‥‥」
 それから調理も行う。

 又、乙女隊のメンバーと話す時は情報収集。
 深くは調べず、世間話を織り交ぜる。
 会話はエプロンのポケットに仕込んだ録音機に、
 秋姫なりに『バレない様に』記録――。

 ***

 ノエルとティリアのカップルは浜辺を訪れていた。
 戦闘の疲れもあるので、2人で、のんびりと過ごす。

 ――あっという間に、夕暮れ時となった。
 並んで夕陽を眺める2人。
「ふふ‥‥ティリアさん、何か大切な事、忘れてませんか?」
 勿体ぶる様にして、ノエルが言う。
 ティリアは首をかしげた。
「え? なんですか?」
 ノエルはふふふと笑うと、後ろに隠していた包みをティリアに差し出す。
「遅くなりましたけど‥‥誕生日おめでとうございます。これ、プレゼントです」
「!? 覚えていてくれたんですね‥‥ありがとう‥‥ございます‥‥。
 ノエルさん‥‥凄く‥‥凄く嬉しいです‥‥」
 感激のあまり、瞳を潤ませるティリア。
「あ、開けてもいいですよね?」
 ノエルは優しく微笑み、頷く。
 プレゼントは――『【OR】Blue sphere』。
 海の様な蒼の石が埋め込まれた指輪だった。
 周りには風を模した模様が刻まれている‥‥。
「ええっと‥‥もし良ければ、受け取って下さい。
 ‥‥高価な物では、ないのですけれど‥‥っ。
 優しい蒼色はきっと、貴女に良く似合います」
 早速ティリアは、指に嵌めてみる。
 蒼の石が真っ赤な夕陽に照らされて、情熱的に輝いた。
「綺麗‥‥。嬉しいです。ありがとうございます、ノエルさん。
 ずっと大事にします」
「あはは。喜んで貰えたなら、僕も嬉しいです」
 ノエルは照れくさそうに微笑む。
「あ、後‥‥今日は僕、ティリアさんの言う事、何でも聴いちゃいますね♪」
「ノエルさん‥‥」
 2人はしばし、見つめ合う。

 そしてノエルはティリアの肩を抱き寄せ、その耳元で囁いた。
「‥‥愛しています、ティリアさん。
 僕、この先ずっと貴女と一緒に暮らせたら‥‥って、思うんです」
 それを聞き、ティリアはノエルの顔を間近で見つめる。
「‥‥今日は、なんでも、言う事聞いてくれるって‥‥言いました、よね‥‥?
 それなら‥‥ボクの気持ちが、落ち着くまで‥‥そして、
 ノエルさんの言葉が、嘘じゃないって思える様に‥‥抱き締めて、貰えますか‥‥?」
 ――ノエルの答えは言葉ではなく、抱擁によって示された。
 思うままに、ただ思うままに、ノエルは愛する恋人の身体をぎゅっと抱き締めた。
 沈みゆく夕陽に照らされて、2人は改めて、愛を誓い合った。

 ***

 夜――。
 籐子と秋姫の部屋。明るい室内。
「この分だと、次は資材関係の警備かなー?
 蓄積状況から仕様が得られると良いんだけどねー」
 籐子はベッドの上でごろごろしながら情報端末を操作。
 モルディブタワー計画について、
 公開されている情報と、現場周辺の知り得る限りの地勢状況から、
 大方建てられる底辺・高さを想定しようとしたのだが‥‥。
 交戦空域から大まかな建設予定地は割り出せた物の、
 それ以外はさっぱり。タワーの規模は予測出来なかった。

 そこへ――
「あの‥‥私なりに調べてみたんですけど‥‥」
 言ったのは秋姫。
 録音機らしき物とヘッドホンを差し出してきた。
「乙女隊の方々との会話です‥‥聞いてみて下さい‥‥」
 秋姫はもじもじ。
「ちょっ!? 何してるの? それはやり過ぎ!」
 籐子は秋姫に協力を頼んだ様だが、これは想定外?
(これって不味いんじゃー‥‥)
 汗を垂らす籐子。その時。
 急に照明が落ち、部屋が暗闇に包まれた。
 そして扉が開かれる音と、軍靴の足音。
 籐子と秋姫へライトの光が向けられる。眩しい。
 目の前に居たのは――
 屈強な兵士2名を引き連れた、片瀬少佐。
「さて、そこの2人。心当たりがある筈だが?」
 冷たい声。
 2人は冷や汗。

 そこでぱっと照明が灯る。
「全くもう‥‥」
 片瀬少佐の声に優しさが戻った。
「こういうのはいけない事なのよ? 没収」
 録音機とヘッドホン。
 軍人相手に盗聴まがいの事をしてはこうなるのも仕方がない。
「機密には触れていないみたいだから見逃すけど、今後は注意してね?
 聞きたい事があったら直接聞いて。話せる事は話すから。
 後、モルディブタワーについては間もなく発表があると思うので、
 それを待ってね。それじゃ」
 退室していく片瀬少佐と兵士2名。
 ‥‥それを確認すると、籐子と秋姫はベッドに倒れ込んで心底安堵した。

 それから籐子は「悪い子にはお仕置きー!」と、秋姫に襲い掛かったそうな。
 夜遅くまで「すみません‥‥!」「きゃぁぁん!」等と、
 悲鳴やら嬌声やらが響いたらしい。