タイトル:【LP】99%安全な仕事マスター:トーゴーヘーゾー

シナリオ形態: ショート
難易度: やや難
参加人数: 10 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2010/12/26 05:07

●オープニング本文


●北京包囲網小基地の攻略
 北京包囲網八門は陥落したが、それ以外の無数の小基地はいまだ残存していた。もともと、この地域に存在した数百にのぼるという民間空港のうち、どれだけの数がバグアの小基地となっているのか仔細は定かではない。一つ一つの戦力は、大きくともワームが10機以下程度、小さいものだとキメラの小プラントが設置されているだけという物もある。
「地下にもぐられた場合、取り返しがつかん。その全てを、勝っている内に破壊していくのだ」
 UPCは難民の受け入れや解放した八門の維持に忙しい。かくて、傭兵達への依頼が新たに本部に並ぶ事となった。

●小基地における傭兵達の災難
 ULTからの指示を受けて、傭兵の一団がとある基地を訪れた。
「確かに敵はいないようだな」
 敷地内を見て回った一人が、確認も兼ねて口に出した。
「オペレーターが言っていた通りだな。『敵の撤退は確認できているし、99%の確率で危険はない』と‥‥」
 この基地がバグア側に利用されないよう、しばらく警戒に当たり、UPC軍へ引き渡せば彼等の仕事は終了となる。
「張り合いがないとも言えるが、大規模作戦中に休めるのはありがたいと思っておくべきかな」
 のんびりとUPC軍の到着を待っていた彼等は、事態の急変に巻き込まれることとなる。
 北東にある基地から撤退してきた部隊が、この基地へ接近してきたのである。
 これに前後して、北西からはバグア側の援軍までが到達した。

 移動中だったピョートルは、この交戦を知ってほくそ笑む。
「こんな小せぇ基地でなにやってんだ? ‥‥ま、行きがけの駄賃てやつだ。ついでに潰しておくか」
 緑色のHWとそれに追従する12機のHWが、基地へ向けて進路を変えたのだった。

●参加者一覧

地堂球基(ga1094
25歳・♂・ER
新条 拓那(ga1294
27歳・♂・PN
レア・デュラン(ga6212
12歳・♀・SN
アリエイル(ga8923
21歳・♀・AA
Anbar(ga9009
17歳・♂・EP
ネージュ(gb9408
12歳・♀・HG
ライン・ランドール(gb9427
23歳・♂・SF
秋月 愁矢(gc1971
20歳・♂・GD
ドゥ・ヤフーリヴァ(gc4751
18歳・♂・DF
タイサ=ルイエー(gc5074
15歳・♀・FC

●リプレイ本文

●空の基地

「まあ99%安全なら僕みたいのが行っても、さして問題はない筈だ。うん。99%安全な筈だよな‥‥。フ、フヒヒ‥‥」
 臆病なドゥ・ヤフーリヴァ(gc4751)は、自分に信じ込ませるかのように言葉に出した。
「やれやれと‥‥。大掛かりな任務の合間に奪還した基地の維持かな。まあ、周りは大方抑えてる事だし、そう面倒な波風立たずに引渡しは可能だろうね」
 地堂球基(ga1094)は空いた時間を何に使おうかと頭を巡らせる。
「手持ちぶさただし、皆の機体を念の為に整備しようか‥‥」
 球基が行動を起こすよりも先に、タイサ=ルイエー(gc5074)は愛機のノーヴィ・ロジーナに乗り込むと、機体のモニターや各部分の出力、無線の感度などといったチェックを進めていた。
「それにしても‥‥静かだな‥‥」
 警戒にあたっているライン・ランドール(gb9427)が感想を漏らす。
 平穏と見るか、別の意味を見いだすかは、人によって異なるところだ。
「99%安全な仕事‥‥。まぁ、周囲の様子を見た限り、どうやら本当のようですね」
 引き渡しまでの短い時間ではあるが、アリエイル(ga8923)もまた警戒のために機体を出していた。
「小隊の皆さんに必ず帰ると約束しましたし、なるべく早く引き渡して戻りたいものですね」
「99%安全か‥‥。残り1%で危険と。嫌な予感がするな、もしかしたら1%が来るかもしれないな」
 うますぎるように思えて、秋月 愁矢(gc1971)はかえって不安を感じているらしい。
「油断してるとやばいかも知れない‥‥とりあえず、俺も警戒しとくか」
 ゼカリアをブルドーザー替わりに扱い、レア・デュラン(ga6212)は戦車壕を堀り進めている。
「この前よんだ、ひいおじいちゃんのフランス軍教本にはこうする様にって‥‥」
 第一次世界大戦時代の知識を元に、簡単な砲兵陣地を構築していく。
「よいしょっ、と‥‥。しっかり作っておけば、こんどのペキン開放戦でも使えますよね!」
 長期的に運用に備えて弾薬・燃料を運び込むと、次なる塹壕の製造に取りかかった。

 レアがサンドイッチをバスケット三つ分も持ち込んで皆に振る舞ったため、大規模作戦中でありながら一同はくつろいだ時間を過ごせていた。
 状況が変わったのは昼を過ぎてからのことだ。
「っ! さっきのは嵐の前の静けさかよ!」
 警戒中に敵機の接近を感知したラインから急報が飛んだ。
「‥‥反応あったぁぁぁあ!?」
 過剰な反応を示したのはドゥだ。
「北西と北東から襲撃!?」
 驚愕の知らせを耳にして、球基は頭をポリポリと掻きながらひとりごちる。
「まだ分解整備にまで手を付けなかったのは僥倖‥‥と。これだから世の中当てにならない」
「ちくしょう! 何が99%危険はないだ! これじゃあ割に合わないぜ。無事に戻ったら、報酬の上乗せを要求してやる!」
 苛立ちを見せるAnbar(ga9009)に、アリエイルが嘆息する。
「まさか、1%を引き当てるとは‥‥。これは破格な仕事になりそうです!」
「お客さんが到着だって? 丁度いいね。あんまり何もないから、少し退屈してたとこだし遊ばせて貰おうか」
 わずかなりと喜びを持って受け入れたのは、新条 拓那(ga1294)ぐらいだったかもしれない。

●敵襲来

「嫌な予感は当るもんだな。他の皆は陸戦で行くのか‥‥俺は空へ上がる」
 愁矢が自機のスカイセイバーに乗り込むと、組む予定のドゥに指示を出す。
「万が一敵の増援が空から来るとやばいからな。緊急離陸して先行、敵戦力の分析だ」
 球基のシュテルンは垂直離着陸能力を活かして真っ先に離陸を終えると、率先して北西へと向かった。
 タートルワーム部隊を補足するなり、PRMシステムを攻撃用に振り分けて、搭載していたランチャーをぶっ放す。撃ち出されたロケット弾はTW群の出鼻を挫くように、その先頭へと着弾した。
 それでも進軍を続けるTWに対し、愁矢機の重機関砲が唸りを上げ、ドゥ機からは8発ずつロケット弾が撃ち込まれる。
 空対地攻撃で足止めをしているところへ、陸戦担当機も駆けつけた。
 ドゥからの報告を受けてタイサが一人ごちる。
「判っている敵の数だけなら、なんとか持ちこたえられそうだな」
 回避を優先する拓那のペインブラッドが、危うくプロトン砲の直撃をかわす。
「確実、迅速に余裕を持って行いたいところだな」
 上空からの攻撃にあわせて、拓那はヒットアンドウェイを繰り返す。
 TWのプロトン砲に対し、Anbarは超伝導AECを稼働させるその照射に耐えた。
 Anbarは高分子レーザー砲で甲羅に穴を穿つと、シラヌイ改の腕をそこへ突き入れた。握っていた機槍「宇部ノ守」がさらに深くまで届き、TWの内臓を貫いて沈黙させることに成功した。
 KVの接近を拒むようなプロトン砲を、タイサのノーヴィ・ロジーナは装備したハード・ディフェンダーで耐えると、さらに足を進める。複数搭載していた90mm連装機関砲のうちの一門を、TWの頭部に向けタイサが引き金を引く。
 重なった発射音が轟音となって響き、200発もの砲弾がTWの顔面をぐずぐずに破壊した。
「亀は鈍いと言うが、攻撃力は高そうだな」
 続いて、隣にいたTWの甲羅部分へレーザーアイを撃ち込んだタイサは、敵の懐でハード・ディフェンダーを横薙ぎにして、TWの足を半ばまで両断する。
 足の止まったところへ、アリエイルのアンジェリカがSESエンハンサーで強化したレーザーガン「フィロソフィー」で撃ち抜いた。甲羅に詰んであったプロトン砲の誘爆もあり、体を貫通するような大穴が空く。
「陸戦部隊だけならともかく、これで空戦部隊が追撃してきたら泣きだよなあ」
 あくまでも冗談として口にする球基であった。

 ほとんどがTW迎撃に向かい、レアは基地付近での拠点防御にあたるため、ラインが単機で北東側の部隊と対峙することになった。
 地上を這い進むアースクエイクを視認して、スラスターライフルを発砲する。アサルトフォーミュラAで威力を増大させた銃弾が命中する。
「ほ、砲撃支援を行います、座標を指示してください」
 バンカー内にゼカリアを潜ませたレアは、ラインの通信を受けて砲塔を旋回させる。
「仰角よし、射角よし! ファイア!」
 巨大な砲身が火を噴くと、数秒遅れで爆発音と振動がレアの元に届く。
 EQがスカイセイバーにのしかかると、体表に生えた刃が装甲を削って耳障りな音を立てた。
 接近戦を嫌ったラインは、蹴り飛ばしながら間合いを開き、スラスターライフルの連射でとどめを刺す。
 しかし、残る三体は地中へ潜ってしまい、ラインは追撃の手を失ってしまう。
「ほ、北東から敵が接近!」
 自分へ向かってくるEQを検知して、レアは慌ててゼカリアを後退させた。それまでゼカリアが乗っていた地面を割って、EQが地上へ這い出てきた。
「ひぅ‥‥ば、バンカーが‥‥」
 崩れかけたバンカーに見切りをつけ、レアは一つ後方のバンカーへゼカリアを後退させる。
(流れ弾や、敵の砲撃なんかが弾薬や燃料が満載のバンカーに直撃すれば‥‥)
 そこまで考えたレアは、敵の一撃を待つまでもないと気づいた。
『退きがけ』の駄賃として、レアはバンカー内を狙って引き金を引き、バンカーそのものを地雷としてEQを爆発に巻き込んだ。
 援軍として駆けつけたAnbarが、1体のEQへ挑みかかる。
 巨大な口腔を狙ってグレネード弾を撃ち込んで、内部からも大ダメージを与えてると、スラスターライフルによって弾幕射撃を加えてとどめを刺した。
「地面からどかーんっての、もういい加減ネタが割れてんのよ。そろそろバリエーション増やさないと飽きちゃうぜ?」
 拓那が射撃を加えながら誘導したところへ、上空を旋回していた球基のシュテルンからロケット弾が降り注いで、TWを火だるまにする。

●包囲下

「ほ、北西に別なTWを見つけた‥‥」
 飛翔するディスタンに乗るドゥが、さらなる敵の接近を告げた。
 彼の乗機を含めた飛翔する3機のKVを狙って、長射程のプロトン砲が幾条も空中を走り抜ける。
「‥‥まさかここまでの戦力が向かってくるなんて‥‥」
 残存するTWと交戦しながら、アリエイルが眉をひそめる。
「目標クリア! 次弾装填‥‥3、2、1、ファイア!」
 ゼカリアの援護射撃を受けながら、アリエイルは敵へ相対距離を縮めていく。
「SESエンハンサー‥‥起動! 煌めけ一刃!」
 強化させた練剣「白雪」がTWの頭部を切り落とす。
「敵の数を減らせるだけ減らしておかないとな」
 タイサがそんな余裕を持てたのもここまでだった。
 今度の嫌な情報は、球基だった。
「HWを発見! 数は十機以上」
 3機のKVは銃撃を受け、否応なしに空中戦へ持ち込まれてしまう。
「嫌な予感だったが、それ以上だ。色付きとは‥‥厄介だな」
「‥‥色違いのヘルメットワーム。‥‥指揮官機ですか!?」
 愁矢とアリエイルの言葉が重なった。
「‥‥これ以上は‥‥まずいな」
 被害状況を見たラインもこちらの不利を明確に悟った。
「‥‥だ、ダメです! これ以上敵が増えるようなら、この人数では対処できません!」
 レアも同様の思いを抱いている。
「覚えておけよ。お前等を殺すのは『蜥蜴座』だからな」
 おそらく敵指揮官のものと思われる声が、通信機越しに腹立たしい言葉を投げつけてきた。
 1対4もの戦力比による空戦で、せわしなく操縦桿を動かしながら、愁矢は皆に撤退を促した。
「各機の離陸や撤退が完了するまで時間を稼ぐぜ」
 愁矢のスカイセイバーがHWに挑みかかり、ロッテを組むドゥのディスタンが、打ち合わせ通りに援護に回った。
 スカイセイバーのホーミングミサイルと、ディスタンのレーザー砲がHWの包囲を崩そうとする。
 ドゥの機体はどうしても速度が劣っていたが、先行する愁矢が分断を避ける意味もあり、速度を調整して交戦している。
 HWからの空対地攻撃を嫌ったAnbarが急いで機体を離陸させる。
「‥‥まったく冗談じゃない。これは絶対追加の報酬を貰わないとな!」
 と、Anbarは戦闘前の言葉を再び繰り返すが、おそらく彼の願いはかなわない。
「悔しいですが‥‥撤退するしかないようですね‥‥」
 アリエイル機に続き、タイサ機が離陸していく。
 飛行タイプのKVに比べ、地上用のゼカリアでは移動速度が比較にならない。
 レアを孤立させないために、ラインと拓那がこれに随伴して撤退を支援する。
「死んで英雄になるより、卑怯者でも生きて帰った方がマシだよね」
 生き残ることを優先した拓那は、ペインブラッドを後ろ向きで走行させ、HWの追撃に備えていた。
 HWの射程を逃れたかと一息ついたところへ、HWが2機追いすがった。
 ラインが空に向けたスラスターライフルで牽制するが、HWはまるで意に介さず高度を下げる。無人のHWは射撃でなく、自爆を敢行することで撃破を狙っていたのだ。
「頼むぜ神様。俺や皆を無事に帰して下さいよ、っと!」
 拓那が願いを向けたのはいわゆる神ではなく、ある相方からもらったお守りだった。
 フォトニック・クラスターの広角射程に2機が侵入したところで、拓那はブラックハーツを稼働させて、高出力のフラッシュを照射する。
 そこへ、ゼカリアのスナイパーライフルとスカイセイバーのスラスターライフルが火を噴いて、2発の銃弾が急降下中のHWをそれぞれ撃破した。
 空の方でも、援軍のTWから撃ち出されるプロトン砲をかいくぐりながら、ドッグファイトが繰り広げられている。
 撃ち込まれたミサイルを、愁矢はバレルロールで回避に成功するが、別方向からプロトン砲を撃ち込まれてしまう。
 狙い撃ったのは、緑色のHWである。速度を落とさないためにと、多用していたバレルロールによる軌道を読まれたのだ。
 蜥蜴座機に後方へ回り込まれた愁矢は、再びバレルロールに突入する。ただし、その途中でエアロダンサーを起動させ、強引に重心を狂わせることで標準的な軌道から逸脱させてしまった。
 オーバーシュートしたHWに、アサルトフォーミュラを稼働させた愁矢が重機関砲を叩き込み、再び戦闘機形態へと変形する。
 微妙に位置をずらした蜥蜴座機のプロトン砲は、眼前のスカイセイバーだけでなく、後衛につこうとしたディスタンにまで損傷を与えた。
「頃合いか。ケツ撒くって逃げるぞ」
 地対空砲火も激化してきたことで、タイサが皆へ告げる。
 追撃しようとした蜥蜴座機の鼻先へ、球基が弾幕を張って出足を後らせた。
 追撃しようとするHWに対し、牽制しながら6機のKVは離脱を成功させた。
 危機を脱したところで、ドゥが後方を振り返る。
(こんな所で、これだけの戦力を投入した理由は何‥‥?)
 知り合いの顔を思い浮かべることで、ドゥにはその答えがわかったような気がした。
「忘れるな! お前らの事はいつか必ず倒せる位強くなって見せる!」
 所詮は捨てゼリフ。通信を傍受しているとも限らない。それでも彼は叫んでいた。
 それが、彼の精一杯だった。