タイトル:【AP】空想特撮シナリオマスター:トーゴーヘーゾー

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2010/04/20 07:26

●オープニング本文


 都市部に撃ち込まれた一本のミサイルは、不発かと思われた。
 しかし、折りたたまれていた腕木が展開すると、ミサイルはまるで十字架のような形に変わった。
 この装置の正体を知ったUPC軍に衝撃が走る。
 重力波を乱し素粒子レベルの微細な振動を発することで時空間に干渉し不思議パワーが‥‥云々。
 具体的な説明は省略するが、この装置の影響下においては全てのSES装置が稼働しなくなる。つまり、『アンチSESシステム』とでも呼ぶべき装置だったのだ。
 ゴーレムや巨大キメラが接近し、この町は確実に滅ぶかと思われた‥‥。

「カカカカカ!」
 この状況に置いて高笑いするのは、安国寺天善。
 彼が導き出した結論は非常に単純だった。
 SES兵器が使えないならば、SES兵器を使わずに戦えばいいじゃない。
「そんなこともあろうかと‥‥」
 彼がトレーラーで運んできた代物は人工練力注入装置。読んで字のごとく、人工の練力を注入する装置である。
 手っ取り早く説明するなら、エミタに過負荷を与えて過剰反応を引き起こすことで、能力者の細胞を爆発的に強化するための装置だ。
「‥‥問題点があるとすれば、細胞が巨大化してしまうことだが、ゴーレムや巨大キメラを相手に戦うならば、願ってもないことだろう。ただし、効果が発揮されるのはあくまでも自分の身体のみ。持っている武器のサイズまでは変わらん。格闘戦のみでの戦いとなることを覚悟しておけ」
 この言葉には、当然のごとく質問が出た。
「服は‥‥どうなるんだ?」
「話を聞いていたならわかるだろう。服まで大きくなるなどというご都合主義は存在せん」
「素っ裸で巨大化とは、なんて露出プレイ!?」
「そんなこともあろうかと‥‥」
 天善が取り出したのは、銀や赤で配色されたウェットスーツらしき衣装だ。
「これは伸縮率が異様に高いエミトラスーツ。これを着れば体積が1000倍になろうとも、着ていて破れたりはせん」
「それはご都合主義では?」
「これは用意周到と言うのだ。よく覚えておけ」
 天善が堂々と主張する。
「さあ、変身して、キメラどもを蹴散らすがいい。エミトラマン達よ!」

 ※このシナリオはエイプリルフールシナリオです。実際のWTRPGの世界観に一切関係はありません

●参加者一覧

藤田あやこ(ga0204
21歳・♀・ST
雪ノ下正和(ga0219
16歳・♂・AA
鷹司 小雛(ga1008
18歳・♀・AA
UNKNOWN(ga4276
35歳・♂・ER
弧磁魔(gb5248
15歳・♂・ST
小野坂源太郎(gb6063
73歳・♂・FT
月明里 光輝(gb8936
17歳・♀・DG
ソウマ(gc0505
14歳・♂・DG

●リプレイ本文


●大問題

「ふむふむ‥‥」
 すでに時代遅れであるパンチカードを、深刻な表情で解読する藤田あやこ(ga0204)。
「‥‥ぬわにぃっ!?」
 驚愕を見せた彼女は電算室を慌てて駆けだしていった。

 SES無効化現象という異常事態について、安国寺天善(gz0322)の説明を聞く傭兵達。その中にはあやこの姿もあった。
 天善曰く、SESが動かないのだから、代わりに巨大化して戦えばいいじゃない。
「ふぅ‥‥巨大娘と言うのもややマニアックですが素敵ですわよねぇ‥‥」
 鷹司 小雛(ga1008)はどこか陶酔したようにつぶやいた。
「と、そういう話では無いのでしたわ。巨大生物との格闘戦‥‥燃えますわね!」
「巨大変身ヒーローになれる日が来るとは‥‥、これもキョウ運のせいかな?」
 ソウマ(gc0505)の口元には期待感から笑みがこぼれた。
 荒唐無稽な展開だが、雪ノ下正和(ga0219)はむしろ意欲的に参加を望んでいる。
「みんな、巨大化した時の名前とかポーズとかは考えてるの?」
 興味津々な態度にも積極的な姿勢が現れていた。
 この展開に心当たりがあると、弧磁魔(gb5248)は口にする。
「あれは三日前の事でした。研究室での実験中、私は突如として光に包まれて出会ったのです。赤いエミタの巨人、エミトラマンコジマに‥‥」
 という夢を見たらしい。おそらく、予知夢と呼ばれる類の。
「頑張れエミトラマン。地球を焦土にするまで‥‥」
 これは、ナレーションではなく、UNKNOWN(ga4276)のつぶやきだった。
「‥‥いや、ちょっと違ったか」
 天善からは、さらに巨大化時に使用するエミトラスーツも提示された。
「成る程これがそのスーツ、多い日も安全‥‥って、一寸待てーっ!」
 ノリツッコミを見せたのはあやこだ。
 筋骨隆々なボディビル体型の小野坂源太郎(gb6063)は、身をかがめてスーツに手を加えている。チョキチョキと裁断しているのは、スパッツ型の形状に作り変えるためだ。
「‥‥伸縮性が高い、という事は着ればピチピチかもっこり、か。少し恥ずかしい、な。うん」
 UNKNOWNが分析する。

●大道芸

 ある疑念に思い立ったあやこが狼狽を見せる。
「死んだ細胞が巨大化しないとしたら、毛穴が巨大化して毛は抜ける。大問題じゃないのかーっ!」
「安心せい。巨大化してみればわかる」
「何という羞恥エステっ!?」
 拒む猶予はなく、彼女は人工練力を浴びせられた。

「絶対キメラ達の好きにはさせないよ! 早速変身だ!」
 月明里 光輝(gb8936)は左右交互に拳を突き出した後、左手を空に向かって突き出した。
「――ティっ!!」
 イエティとか90みたいな言葉を叫んで、彼女の体が巨大化する。

 正和は、顔出ししていることや、空を飛べないことや、何種類かの変身を使い分けできないことに、不満を覚えていた。
 それでも変身はする。喜んでする。意欲があるからこその不満と言うべきか。
 構えた左手に右手を添え、左に体をねじりつつ、下げた拳を頭上に振り上げて、正和は巨大化を行った。

「巨大化は漢の浪漫!」
 半身で腰の後ろで手を組みつつ、源太郎はロマンを達成した。サイドトライセップスのポーズで。
「エミトラマン・マッスル只今参上!」

 銀の基本色に黒い流線型を施したスーツ姿のソウマが巨大化する。
「まあ、なったからには見事に演じて魅せましょう。みんなが憧れた『正義の味方』を」
 いつもならひねくれた態度が多いのに、今回は非常にノリノリのようだ。
「今日の僕はいつもより派手にいきますよ!」

「今は僕がエミトラマンなんだ‥‥。コジマーっ!」
 気合いと共に巨大化した弧磁魔は、その勢いのまま飛び上がり、地響きと土埃を舞い上げた。

「やっぱり、身体に密着するんですのよね。‥‥胸とかお尻とか、当然強調されますわよねぇ」
 巨大化した自分の体を見下ろして、小雛がつぶやいた。悩ましげな仕草で男連中の視線を誘いつつ、小雛は女性陣のスーツ姿を眺めて目の保養を行うのだった。

 装置の前に立つUNKNOWN。
 普段は着やせしているようだが、鋼線を束ねた様な筋肉と、手足が長く均整のとれた体格をしていた。もっといろいろと見えるのは、エミトラスーツを着ているから‥‥ではなく、何も着ていないため。
 平然と煙草をくわえているUNKNOWNを、駆け寄った天善が思いっきりハリセンでひっぱたく。
「わいせつ物陳列罪でULTが訴えられるわい!」
 巨大化でもしようものなら、ダンディなものを人前でブラブラさせる羽目になっていただろう。
「‥‥たしかに、スーツは着ておくべきだった、か」
 不満を見せるでもなく、UNKNOWNは何もなかったかのように平然とスーツを着込むのだった。

●大決戦

 ギリギリの勝負となることを考慮してGooDLuckを使用するソウマの傍らで、巨大化しての肉弾戦に心を躍らせる小雛。
 彼女は、小細工無用とばかりに、真っ向勝負でキングゴーレムへ挑む。
 金色のボディは小雛の打撃を弾き返し、逆にその拳を小雛へ撃ち込んでくる。
 前傾姿勢となったゴーレムに覆い被さり、胴体をクラッチした小雛だったが、重い。見た目より重く、体勢が悪いためにとても持ち上がらない。
 逆に、ゴーレムが身を起こしたことで、その後方へ小雛の体が放り投げられる始末だ。
 紅蓮衝撃を使用したソウマの拳が赤く光り、敵を殴ると同時に爆発音が生じる。ソウマが命名するところの『エミタナックル』だ。
 応戦するゴーレムの拳に打たれて、後方に倒れたソウマの体がビルを倒壊させる。
 小雛の体もまた紅蓮衝撃によって赤く光り、ゴーレムの腕が届かない間合いかで彼女の体が宙に浮いた。
 ドロップキック!
 全体重を浴びせられたキングゴーレムがたまらず転倒する。
 起きあがろうとするゴーレムに、上半身をかぶせる小雛。先ほどと同じ体勢から、彼女は豪力発現でゴーレムの体を引っこ抜く。
 頭の位置まで持ち上げた敵を、パワーボムで叩き落とすと、地響きを立ててその背中が地面にめり込んだ。

 シャモキメラの前に立った光輝が、両腕を上げて構えを取った。
「シュワッ! 勝負だ、怪獣!」
 キメラです。
(「こういうのはノリと勢い、生身の戦いは初めてじゃないし。折角巨大になったんだから思いっきりなりきって戦うぞ〜♪」)
 この光輝、ノリノリである。
 小手調べとして、光輝はチョップを繰り出していく。3発目は竜の爪で強化した一撃だ。
「シュワ! シュワッ!」
「キィアーッ!」
 まさに怪鳥のような声を上げて、キメラは嘴で光輝を襲う。油断したつもりはないが、見た目よりも鋭い切っ先が彼女の体をえぐった。
 身を低くした彼女は、ぶら下がるようにして首投げを決めていた。
 転がったキメラが身を起こして、光輝に向けて火炎を噴き出す。
 仲間達の戦いを、父親や長兄のごとく見守ろうと考えていたUNKNOWNだったが、彼女の危機を見かねて割って入った。
 ドロップキックと思われたその攻撃は、両脚で首を挟み込みフランケンシュタイナーに移行する。
「大丈夫かね、光輝?」

「つーか‥‥何々マンつったら鶏冠だろ」
 納得がいかずに愚痴をこぼすあやこ。
 いささか人員の振り分けが偏っており、最後の1体には4名での対応となっていた。
 地を蹴って4つ足で突進してくるトリケラトプスキメラ。源太郎は正面から受けて立とうと、キメラの角を両手で押さえ込もうとする。
「なかなかのパワーのようだな!」
 しかし、キメラの足は止まらず、頭にしがみつく源太郎ごと前方のビルへ突っ込んでいった。
「ドゥアッ!」
 キメラへ接近した弧磁魔が、殴っては蹴り、殴っては蹴り。
 そこにあやこも加わって、足を踏むわ、腹を蹴るわ、へし折ってきた鉄橋を突き刺すわ。
「アヤコリーンチ!」
 刺した鉄橋に電波増幅をかけて感電させようと試みるわ。
「アヤコボルトー!」
 悪役レスラー的なラフプレイに興じている。
 トリケラトプスも恐怖を感じたのか太い尻尾を叩きつけて、弧磁魔とあやこを張り飛ばした。
 豪破斬撃と急所突きを使った正和が、低い姿勢から接近してアッパーカットを叩き込む。1発では終わらせず、連続で叩き込んだ。
 キメラの背後へ回った源太郎は、尻尾にしがみつき豪力発現を発動させる。ぶぉんぶぉんと風切り音を立てて、キメラの巨体はハンマー投げのごとく振り回された。
「そら、行ったぞ!」
 遠心力のまま飛んできたキメラが、弧磁魔の肘に命中する。
「大地の力を受けてみろ!」
 角を握った頭部にココナッツクラッシュで膝を撃ち込むと、その衝撃によって片側の角がへし折れた。キメラがずいぶんと痛がっている。
 四股を踏んだ正和が、低空のタックルをしかけて組み合うと、豪力発現で上手投げをしかけ、体重を浴びせるようにして地面へ叩きつけた。
 ビルを抱え上げたあやこが、倒れてるキメラの頭部めがけて容赦なく振り下ろす。わずかに痙攣したキメラの体がすぐに動かなくなった。
 まさか、4人がかりでくるとは思いもしなかっただろう。

●大団円

 キングゴーレムの攻撃を、小雛はあえて受けていた。その無防備な背後へ攻撃するのは、紅蓮衝撃を使うソウマ。そして、1体目を仕留めた正和と弧磁魔も参戦する。
 豪力発現を使用した小雛が、再びゴーレムを抱え上げ、高角度からのボディスラムを仕掛けて地面を揺らした。
 4人がかりの打撃が、金色の装甲を激しく歪ませていく。
 独特の駆動音が静まると、ゴーレムは二度と立ちあがることはなかった。

 シャモキメラ側にも援軍が駆けつけたので、UNKNOWNは腕組みして戦況を眺めていた。同じく高見の見物を決め込むHWに彼は視線を向けた。
 形勢不利と見てプロトン砲を発射するHWに、彼はエミタニウム光線で反撃した。

「あっ飛んだ! そっか、一応鳥なんだっけあのキメラ」
 ずんぐりした体型のキメラが、空に飛翔する様に光輝は驚きを見せる。
 低空を飛んで炎をまき散らすシャモキメラに、あやこはビルを千切っては投げ千切っては投げ。
「アヤコヒステリー!」
 乱暴な行動ではあったが、投じた破片を頭部に命中させてシャモキメラの撃墜を果たす。
「今だ! ‥‥シュワッ!」
 竜の翼で駆け、竜の爪を施し、墜ちたキメラに光輝が迫る。必殺のムーンサルト蹴りがシャモキメラをビルへと吹っ飛ばした。
 組み敷いた源太郎が、嘴を握って首をキュッとしめると、シャモキメラは意外にあっさりと絶命してしまった。

 練力を使い切ったUNKNOWNの代わりに、今や残りの7人が立ち向かえる状態にあった。
「一点を集中して狙い、威力を高めるぞ!」
 源太郎が促すと、宙に浮かぶHWへ皆の視線が集中する。
「とどめの光線合体技アヤコビーム!」
 あやこに続き、それぞれが光線を放っていく。
 両腕を伸ばしてL字のポーズをとった光輝が、今度は腕をL字に組んで光線を発射した。
 小雛は、右足を下げ、突き出した左掌から光線を放出する。
 弧磁魔は体の右横で腕を十字に組み、それを弧を描きながら頭の上まで移動させ、胸の前に下ろしたところで光線を発射した。
「コジマストリーム」
 ソウマの全身に生じた光は、胸の前で×字に組んだ腕に集中し始め、彼が突き出した右手から放たれた。
「必殺、エミタニウム光線ファイナル!」
 7条の光線が天空へ走る。HWの逃げ場を塞ぐように包囲を狭めていき、ついに7本全てが収束してHWを貫通し爆破に追い込んでいた。

 練力を使い果たした一同は、すでに元の体に戻っており、勝利を実感していた。
 源太郎やあやこは勝利の高笑い中である。
「わしらの勝利だな! わっはっはっは! ふんっ!」
 気合いを込めた源太郎は、腹の前で拳を打ち合わせるようなモストマスキュラーのポーズ。
「わっはっは。悪いバグアは死んだ」
 あやこの方は、腰に手を当てて胸を張っている。
「それでは皆さんご一緒に‥‥、受話っ器!」
 打ち合わせなしで唱和するのはさすがに無理だ。いささか、もの悲しい雰囲気が醸し出された。
「これで地球は救われた、さぁ帰ろうエミトラの星へ。シュワ‥‥むぎゅっ!?」
 地を蹴った光輝の体がまさか飛ぶはずもなく、彼女はボディプレスを自爆しただけに終わった。‥‥最後まで、なりきりっぱなしであった。
「西日が傾く頃、街角に太陽が見えたらソレは私です‥‥」
 あやこが情感たっぷりに別離の台詞らしき言葉を口にするも、巨大化中は顔バレしているし、この場にいる面子も傭兵仲間である。
「‥‥責任取って、嫁に貰って下さい天善」
「なにゆえ!?」
 よくわからない流れからのプロポーズに驚きを見せる天善。ここで心臓が止まっていたなら、それはあやこのせいだと言えよう。
「平和って良いですね☆」
 弧磁魔は一仕事終えた後の一杯に、改めて平和の良さを実感する。
「ミックスジュースおいし♪」
「皆で特撮番組見ながら、打ち上げでもしませんか?」
 今回の戦いを堪能した正和は、同好の士と感じる皆を誘ってみるのだった。

 なお‥‥、冒頭においてあやこが何を知ったのかは、謎のままに終わるのだった。