タイトル:【Woi】突撃騎兵マスター:トーゴーヘーゾー

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2009/09/16 22:27

●オープニング本文


「やっかいなものだな。充分な攻撃力を持ちながらゲリラ戦を仕掛けてくるとは」
「後手に回るのは悔しいですが、兵力そのものが少ないわけですから、運用方法としては間違っていないでしょう」
「それでは、応じられない私達が力不足だと?」
「失態ではありますが、まずはこれからの方策を考えるべきかと思います」
「そうだな。せめて奴等を排除しておかねば、兵士も安心して戦えまい」
 彼等を悩ませているのは、地上を移動するゴーレムとキメラの集団であった。
 キューブ・ワームを従えており、こちらのレーダー網をくぐり抜けて、その馬蹄で兵士達を踏みつぶす。
 一度は間に合ったKVが応戦を試みたものの、敵の突撃を阻む事はできなかった。
 敵は6体のユニコーン型キメラ。
 指揮官と思われるゴーレムは、その内の1体に騎乗していた。
 ファランクスのような角による突撃は、組織的な運用を前提とする軍事組織にとって厄介なものと言えた。
「それならば傭兵に頼むか。ゲリラ戦にはゲリラ戦だ。私達よりも彼等の方が向いているだろう」

●参加者一覧

シャロン・エイヴァリー(ga1843
23歳・♀・AA
ザン・エフティング(ga5141
24歳・♂・EL
柊 理(ga8731
17歳・♂・GD
レイヴァー(gb0805
22歳・♂・ST
嵐 一人(gb1968
18歳・♂・HD
ランディ・ランドルフ(gb2675
10歳・♂・HD
ウラキ(gb4922
25歳・♂・JG
キヨシ(gb5991
26歳・♂・JG

●リプレイ本文


●偵察

「嵐さん、よろしくお願いしますね」
 阿修羅に搭乗する柊 理(ga8731)が、相棒となる嵐 一人(gb1968)に挨拶する。
「ああ。こっちこそな」
 傭兵達は敵影を探すために、2機ずつ組んで索敵を行っていた。
「同じ銀河重工製KVとは言え、嵐さんのミカガミとは性能も違う為、嵐さんの足を引っ張る事の無い様に頑張ります」
「一人で突出したりしねえから、安心してくれ。そっち側の偵察をよろしく頼むぜ」
「はい。左側は任せてください。決して見逃しません」

 空を飛翔するアヌビスとロビン。
「アングラー小隊の時を思い出すな、頼りにしているぜシャロン」
「久しぶりにザンの腕前、拝見させてもらうわよ」
 ザン・エフティング(ga5141)とシャロン・エイヴァリー(ga1843)は元同僚であった。
「常時移動してゲリラ戦を仕掛けてくる騎馬部隊か厄介な奴らだな。バグア側に侍みたいな騎馬部隊使っている所があるって聞いたがそいつらの一部なのかね?」
「実体を見てみない事には、なんとも言えないわね」

「不意打ちが彼等の騎士道‥‥悪くないジョークだ」
 そうつぶやきながらも、ウラキ(gb4922)は笑顔を浮かべてなどいない。
「不意打ちの前に見つけるとしましょう。骸龍の能力ならば、大体の方向ぐらいはわかるはずです」
 レイヴァー(gb0805)が骸龍の特殊電子波長装置γを操作しながら、反応を探っていた。
「レイヴァー機。何か反応は?」
「まだ此方に反応ありません」

「一応、無理やり翔幻を改修型に改造してきたけど、やはり雷電とかの上級機にはかなわだろうな。早く改修費用を手に入れて、次出てくるコンペで決まる機体に期待したいや」
 自機への懸念を口にしていたランディ・ランドルフ(gb2675)は、新規開発の機体に思いを馳せる。
「敵さんはどこかいなぁっと」
 電子煙草をくわえながら、キヨシ(gb5991)は気楽に雷電のシートから窓外を見下ろした。
 彼のつぶやきに応じたかのように、通信機が欲する情報を伝えた。
 聞こえてきたのはレイヴァーの声。
「ジャミング発生源を感知しました。7時から8時方向。一番近いシャロンさんとザンさんで調査をお願いします」

 十分ほどでシャロンからの結果報告が入る。
「レイヴァー、騎兵団を見つけたわ」
 現在地を告げたシャロンは、敵進路上にある着陸に向いた地点も告げた。
「了解! 嵐さん、僕等も待ち伏せ場所へ急ぎましょう」
 理は一人を促して進路を変更する。ランディとキヨシも同様だ。
「レイヴァーとウラキは、敵が進路を変えないか見張ってくれ」
 ザンの要望に応え、2機だけがそのまま偵察を続行する。
「‥‥こちらの存在は敵にも見えているはずですよね?」
「それはそうだろう。エンジン音だって聞こえているはずだ」
 ウラキの答えに、レイヴァーは首を捻る。
「警戒して進路を変えるようなら、囮として誘導する事も考えていたんですが‥‥」
「いいんじゃないか? 問題があるわけじゃないさ」

●激突

 時間を惜しんだウラキは、垂直離着陸機能をでノーヴィ・ロジーナを味方機の側に着陸させる。
「情報だ‥‥もうじき来るよ。ありがたい事に進路は変えなかった」
 ウラキの言葉を受けて、楽しそうにキヨシが応じる。
「さて、お仕事お仕事」
 このふたりに加え、ザンが前衛担当となる。
「頼むぞ、『ドギー』」
 彼は愛機のアヌビスに呼びかけた。
 歩行形態のKV8機が待ち受ける戦域に、敵ユニコーン6体が怯むことなく進軍する。
 優れた守備力を活かして盾役を引き受けた3機だったが、敵との間合いが離れているうちは、中距離兵器を使わざるを得ない。
 肉迫するキメラ集団に対して、KV陣営から銃弾や砲弾が降り注ぐ。
 敵は近接武器しか攻撃手段を持っていないようで、現状では動く的に過ぎなかった。
 砲弾の雨をかわそうともしないが、その代わりに一直線にこちらへ向かってくる。

「まずはサイコロから転がってもらうか!」
 一人はスナイパーライフルRでCWを狙う。相棒である理もCWの撃破を最優先に考えてMSIバルカンRの銃撃を集中させる。
 15mほどの高さを浮遊していたCWが、煙を吹たなびかせながら地に落ちた。
「まったく、いつもいつも迷惑掛けやがって」
 不平を口にしながら放ったランディの長距離バルカンが続けてCWを撃墜する。
「これで、3体目よ」
 ロビンのアリスシステムを起動させていたシャロンは、知覚力を犠牲にしながらも、命中率を引き上げたレーザーバルカンでCWを撃破した。
 そして、とうとう敵の切っ先がKVに届く。

 前衛が支える間に、残りの5機は支援とCW破壊に動く。
「頑丈な機体でも攻撃は当たらないほうがいいでしょう? だったらこれは有効なはずだ!」
 敵の先陣に接近したランディが、翔幻の幻霧発生装置が作動させてあたりを霧で包み込んだ。
「煙幕を展開します。敵機通過後には背後から反撃を!」
 ランディに呼応して、レイヴァーが煙幕弾発射装置で敵の視界を遮った。
「くっ、この頭痛‥‥、このっ!」
 痛みを押した理のMSIバルカンRが1体、そして、レイヴァーのMSIバルカンRがもう1体のCWを落とした。
 この間に壁となっていた3機だったが、キメラの角を幾度も突き立られ、ゴーレムの槍でなぎ倒され、さらには体当たりもくらって、陣形をこじ開けられてしまう。
 KVの壁を突き破った敵は、勢いを止めることなく前方への突進を続ける。
 無防備である敵集団の後方から、傭兵達は再び砲撃を行って、後方に配置されていた3機のCWの撃破に成功した。
 だが、キメラ群は未練を感じさせることなく、戦場を離脱していく。

「どういう事だ?」
 皆の疑念を代表するように、ランディがつぶやく。
「魚鱗の陣ではUターンに向きませんからね。これが向こうの攻め手なのでしょうか?」
 レイヴァーの指摘だけが理由とも思えなかった。
「ボク達と戦うよりも、優先すべき事があるんでしょう」
 理の言葉を受けて、一人にも察しがつく。
「奴等の目的はあくまでもUPC軍ってわけか‥‥」
「それなら、今度こそ逃がすわけにはいかねえな」
 ザンの言葉に、ウラキとキヨシが頷いた。
 地図をチェックしたレイヴァーが提案する。
「この辺りが待ち伏せに適切かと思われますが、いかがでしょう?」
「‥‥OK。じゃあガツンと叩いちゃいましょう!」
 シャロンのみならず、皆が彼の案に乗った。

●決戦

 かくて、戦いは2ラウンド目に突入する。
 新たに陣を敷いた傭兵達は、愚直に進軍する敵へ一方的に砲撃を加え、CWの守りを失ったキメラに多くの傷を負わせた。
 敵の戦線を支えるため、前衛の3機はまさに壁となって敵の足を押しとどめなければならない。

「さて、暴れよかぁ! 『ヴァイシュラヴァナ』!」
 キヨシの雷電は、左手の機盾『レグルス』で角の先端を受け流し、右手の機刀『玄双羽』で斬りつける。

 ザンは凶悪なまでに強化された機刀『獅子王』でユニコーンの角と斬り結ぶ。
「ザン、合わせるわ。一騎ずつ同時攻撃で仕留るわよ」
 背後にいるシャロンの言葉を受けて、ザンはアヌビスを屈ませる。
 シャロンが振り上げたビームコーティングアクスは上から、ザンが逆袈裟に振る『獅子王』は下から。上下から繰り出された同時攻撃が、多くの傷を負っていた敵キメラの命を絶った。

 ウラキは機盾『レグルス』でキメラの突進を受け止めたものの、左後方の1体が回り込み、側面からノーヴィ・ロジーナの装甲を削ってきた。
 ワイヤーを伸ばした機槌『明けの明星』を叩きつけて応戦するが、敵の追撃はそれで終わらなかった。
 騎兵ゴーレムの槍が光り、ウラキに強烈な一撃を見舞う。
 ウラキが歯噛みした。
 こちらが弱いとふんでいるならば、なおのことむざむざとやられるわけにはいかない、と。
 ウラキの危機を察して、仲間が動く。
「煙幕を展開します」
 レイヴァーはウラキへの支援だけでなく、側面のキメラへ機槍を抱えて突っ込んでいく。
 さらに、騎兵ゴーレムへは一人と理が向かった。
 直面する敵の数は減ったものの、前線を受け持っていただけあって、ウラキの機体は皆に比べて損傷が酷い。
「損害過多。‥‥こんなジンクスに頼る事になるとはね」
 彼は最後の望みを賭けて、斜め四十五度の角度からコンソールを殴りつける。
 諦めない彼の姿勢は正しく報われた。
 復調したノーヴィ・ロジーナは、『明けの明星』でユニコーンの横っ面を殴り飛ばし、体勢が崩れたところへ、重機関砲で大量の銃弾を叩き込んだ。その数――。
「400発喰らえば、誰でも沈む」
 全身を穴だらけにすると、キメラの身体を支える4本の脚が崩れ落ちた。
「‥‥次だ」
 彼はレイヴァーの加勢に向かった。

 ランディの幻霧により優勢となったキヨシは、『玄双羽』で角を払いのけると、伸びきった首に向けて切っ先を振り下ろす。
「よっと、コイツはこれでおしまいっと」
 がつんという手応えと共に、『玄双羽』はユニコーンの頭部を斬り飛ばした。
 右後方にいたキメラはランディが一人で支えていた。
「今までディフェンダーナイフしか持てなかったからな! 改修型の性能評価試験と行こうか!」
 ランディはようやく装備できるようになった喜びに、勇んでディフェンダーを構える。
 しかし、自機の短所はよく知っているため、無闇に斬りつけるような真似はしない。
「翔幻改修型は装甲が薄いんだからな。お前さんたちの相手は向こうの厳ついベテランエースの皆さんにお任せしたいんだよ!」
 彼の誓願に応じるように、一体目を屠ったキヨシが援軍に駆けつける。

 一人のミカガミが高分子レーザー砲を放ちながら、機刀『大般若長兼』でユニコーンへ斬りつける。
「ユニコーンなんて勿体ないな。こんな奴ら、角馬で充分だ!」
 接近した一人を援護するために、理は阿修羅のサンダーテイルでゴーレムを牽制する。
 一人が言うところの角馬に斬りつけると、彼は角をかわしながら間合いを外す。
 そこへ、シャロンが飛び込んできた。
「ショウをイんとホッすれば‥‥、狙うのはっ!」
 マイクロブースターを使用したロビンが、キメラの間をすり抜ける様にして、試作剣『雪村』の一撃を叩き込んだ。
 さらに、追撃を狙ったザンはゴーレムの槍の浴びながら、それでも間合いへ踏み込み、『獅子王』とハイ・ディフェンダーで続けざまに斬りつけた。
 応戦するユニコーンの角がアヌビスを突き飛ばす。
 角の届かない後方から接近し、理はスパークワイヤーをキメラの足に絡み付かせ、一人は『大般若長兼』で斬りつける。
 ゴーレムの槍がそちらへ向いたのを確認して、シャロンは右側面からの攻撃を試みる。
「指揮官が馬から落ちちゃ、騎兵の足も止まるわよね」
 振り向いたゴーレムの槍が彼女へ伸びる。
「そんな遅い突きじゃ、私のロビンには当らないわよっ」
 そう口にしたシャロンを振動が襲った。直撃こそ避けたものの、かすめた一撃は彼女にとって十分な脅威と言えた。
 しかし、左側面からザンが接近していた。再び二刀が振るわれ、ユニコーンの身体が横倒しになる。
 大地に投げ出されたゴーレムは、身軽にその身を起こした。もともと、慣性制御を行えるゴーレムだから、機体重量を軽減させて騎乗していたらしい。そうでなければキメラは耐えられなかっただろう。

 ウラキの重機関砲で大量の弾痕を刻まれたキメラは、その攻撃から逃がれる様にレイヴァーへと向かった。
 無防備に角を受けるかに見えた骸龍だったが、レイヴァーは回避と同時に全ブースターの最大出力で機体を反転させる。
 突き出した機槍がカウンターとなって、ユニコーンの頭部を粉砕した。
「チャージは貴方達だけの技ではございませんよ!」

 ユニコーン相手のランディの戦術は、基本的に脚を狙う事だった。
「これがホントの足どめってやつかな?」
 敵を倒せずとも目的を果たせるし、倒すためにも有効だろう。
 ディフェンダーの切れ味を確認しつつ、彼はキメラの足を奪う。
 強引な攻撃を望まずとも、火力という欠点を補ってくれる相棒が、ちゃんとこの場にはいた。
 キヨシは『玄双羽』の柄で打撃を加え、キメラの動きを一時的に止めると、体を回転させて遠心力を利用して剣を振り下ろす。
「これで終わりや!」
『玄双羽』が一閃すると、ユニコーンの長い角が真っ二つに両断され、その頭部まで断ち割っていた。

 敵将たるゴーレムは槍を振るって、KV4機と渡り合う。
「今の俺で何処まで通用するか試させてもらうっ!」
 ザンの繰り出した2刀の内、ハイ・ディフェンダーは槍に阻まれたが、残る『獅子王』が敵の身体に届いた。
 理は直接挑む危険性を悟り、接近を避けてクラッシュテイルを放つ。
 一人はミカガミの特殊能力である、両腕に内臓された『雪村』と接近仕様マニューバを同時に起動させて、ゴーレムへ突っ込んだ。
 槍の攻撃を受けつつも、右の雪村を袈裟懸けに一閃。間髪入れずに左の雪村で横薙ぎにする。
「‥‥2発で終わり、と言った覚えはないぜ」
 素手のパンチと思われた右腕から再びエネルギーが噴射され、3発目の『雪村』がゴーレムを貫いた。
 だが、それでも倒しきれない。
 ゴーレムの槍がミカガミに振り下ろされようとした時、一人も予想しなかった4発目が走った。
 マイクロブースターを点火させたシャロンは、手にした試作剣の『雪村』でゴーレムの背中を袈裟がけに斬りつけていた。
 これがとどめとなり、ゴーレムを完全停止に追い込まれた。
 彼等はキメラ騎兵団を殲滅したのである。
「ナイトを気取るんなら馬だけでなく」
 一人がシャロンの乗るロビンを指差した。
「お姫様も用意しておくんだったな」

●完了

「完・全・勝利♪ 皆、お疲れさまっ」
 皆を祝福するシャロンの労いの言葉。
「これで基地の皆さんも楽になればいいのですが‥‥」
 仕事を果たしたものの、心配性な一面のある理はUPC軍に対して思いを巡らせる。
「翔幻改修型はいい機体だけど火力がなあ。‥‥やっぱり次期中堅機開発計画に期待するべきか」
 作戦前にも言っていた様に、ランディは機体の乗り替えについて真面目に検討し始めた。
「フ〜、終わった終わった。結局コレ使わんかったなぁ」
 出番の無かったスナイパーライフルを取り出したキヨシは、気が緩んでいたのか暴発させてしまう。
 ウラキ機の足元には、明確な証となる弾痕が刻まれた。
「‥‥キヨシ?」
「あっ! ‥‥あはははは」
 非難する視線を感じ取って、キヨシは引きつった笑いを浮かべる。
 自分に非がある事を自覚しているだけに、うまい弁明も思いつかず、笑って誤魔化す事しかできなかった。