タイトル:夏の渚の地雷原マスター:トーゴーヘーゾー

シナリオ形態: ショート
難易度: やや易
参加人数: 10 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2009/08/07 10:10

●オープニング本文


 夏の砂浜と言えば何を連想する?
 私ならキメラ退治ね。
 え? おかしいかしら?
 でも、そんな依頼を受けた人は少なくないでしょ?
 今回の依頼もその法則に則ったものよ。
 倒すべきはイソギンチャク型キメラ。
 海底の砂の中に隠れているけど、上を人が歩くと触手を伸ばして捕まえようと動き出すの。
 人間を獲物としているためか、海面の深さが1.5m程までの範囲にいるようね。
 正確な潜伏場所は不明だし、キメラの総数もわかってないの。
 だから、海の中を歩き回ってキメラを見つけ出すことから始めてくれる?
 触手に捕まってしまうと、逃げ出す事もできないし、戦うのも無理だと思う。
 捕まった場合なんだけど、えっと、その‥‥、ちょっと困った状態になるらしいのよ。
 いつもざっくばらんな人間ならまだいいんだけど、寡黙で人格者な人ほどダメージが大きい‥‥らしいわ。
 お約束だけど、戦闘後は砂浜で遊んでくる事。
 表向きの理由は、キメラの討ち漏らしがいるかも知れないから、その警戒のためって事でよろしくね。

 これが、オペレーターのしのぶが口にした情報だった。

●参加者一覧

藍乃 澪(ga0653
21歳・♀・SN
マクシミリアン(ga2943
29歳・♂・ST
三島玲奈(ga3848
17歳・♀・SN
遠石 一千風(ga3970
23歳・♀・PN
時枝・悠(ga8810
19歳・♀・AA
ゴールデン・公星(ga8945
33歳・♂・AA
佐倉・咲江(gb1946
15歳・♀・DG
レイチェル・レッドレイ(gb2739
13歳・♀・DG
九条・嶺(gb4288
16歳・♀・PN
シャイア・バレット(gb7664
21歳・♀・SF

●リプレイ本文

●海水浴場

 背の低い順で番号を振るなら、こちらは1班という事になる。
「海で遊ぶって言ってたのに‥‥」
「うん♪ 『海で』『遊ぶ』のは間違ってないよ。うふふ〜、今日はサキと一緒に海へ遊びに来ましたー♪」
 納得のいかない佐倉・咲江(gb1946)に対して、レイチェル・レッドレイ(gb2739)が満面の笑みで答える。
「海には違いないけど、キメラ退治じゃない。レイチーに見せるために新しい水着着てきたのに‥‥」
 肝心な情報を伏せられていた咲江は、騙されたと不満顔だ。
「嘘は言ってないわよ。遊び以外にもやる事があるってだけ♪」
 にっこり笑うレイチェル。
「とりあえず、キメラ倒せば遊べるんだよね?」
 咲江はいつものごとく、レイチェルに押し切られてしまう。
「そうそう。早く退治しようねー♪」
 レイチェルのお楽しみは、まだまだこれからなのだ。

 続いて2班。
 三島玲奈(ga3848)は砂浜で集めた石を抱えて海に入った。海底に潜むキメラへこの石を当てて、おびき出そうというわけだ。
「うまく行きそうか?」
「‥‥予想と違った」
 時枝・悠(ga8810)の問いかけに、玲奈は悔しそうにつぶやいた。
 ひと抱えもあった石が、波や水の抵抗で腕から転げ落ちてしまったのだ。
 さらに、かろうじて残った石は少なく、すぐに弾切れとなってしまう。
「拾い直して使うのか?」
「すごく面倒じゃない?」
 悠と藍乃 澪(ga0653)が悲しい現実を指摘する。
「ま、まあ、いい。それなら自分の手で直接見つけてやる」
 なんとか精神の再建を図り、玲奈が戦意を回復させる。
 キメラ用の対策はまだ他にもあるのだ。
「心頭滅却すれば磯巾着など敵でない」
 彼女はそう思っていたのだ。‥‥この時は。

 そして、3班。
「海底って聞いたんで、もうちょっと深いかと思ってたんだがなあ」
「マックスは4班に混じりたいの?」
 マクシミリアン(ga2943)を愛称で呼びながら、シャイア・バレット(gb7664)が尋ねる。
「ダイビングを始めたところだから潜りたいって思っただけさ。あの程度じゃあまり変わらないだろ」
 4班とは10メートルほど離れて探索を開始する。
 イソギンチャクキメラが男性的思考を持っているなら、不要な装備を外した白ビキニのシャイアも、右が黒で左が白の大胆なスリングショットを着用した九条・嶺(gb4288)も、絶好の獲物となるに違いない。
 傭兵が3人いる事を考えれば、全員が同時にキメラに捕まる可能性は低いため、シャイアは余裕綽々といった態度だ。
 腰に手を当て胸を張りながら堂々と歩みを進める。
「さあ、捕まえれるものなら捕まえてごらん♪」
 彼女はそう思っていたらしい。‥‥この時は。

 最後に4班。
 こちらは一番深い区域を担当する長身コンビだ。
 獲物を殺すような凶悪なキメラでは無さそうだが、背の低い傭兵が捕まって事故があってはまずい。
 そんな事情から、身長が180センチを越えるふたりが受け持った。
「あれを目印にするのはどうだ?」
 ゴールデン・公星(ga8945)が目をつけたのは、遊泳禁止エリアを区分けするブイだ。
 海底に沈めている重りを動かして、捜索すべきエリアに添ってロープを張り直す。
 遠石 一千風(ga3970)とゴールデンがそれぞれ、水中剣『アロンダイト』で海底探査を始めた。
 ゴールデンはもう少し長めの道具を望んでいたのだが、使ってみた流木はやや太めだったし、浮力が強くて扱いづらかった。結局持参した剣を使用する事になった。
「バグアもまたろくでもないキメラを‥‥」
 以前に遭遇した大蛸キメラの記憶が頭をよぎり、一千風が顔をしかめた。
「だが、あんな醜態を二度もさらすわけにはいかない」
 彼女はそう思ったんじゃないかなぁ。‥‥この時は。

●阿鼻叫喚

「でもキメラ、こんなことで見つけられ‥‥ぇ?」
 咲江の言葉を、なまめかしい声が遮った。
「んぁっ♪ っは、すごぉい‥‥♪」
 乳白色の触手が伸びてレイチェルの身体に絡みついている。
 事前情報を制限されていた咲江は、目の前の光景に驚いて棒立ちとなっていた。
「本当は‥‥、サキに試して、もらいたかったのにぃ」
 本人の期待とは裏腹に、自分が先に捕獲されてしまった。
「これは、これで、‥‥いいかもぉ」
 触手に翻弄されるレイチェルを、咲江が頬を染めて眺めていた。
 彼女へ見せつけるように、胸の谷間やお尻の谷間に自ら触手を誘導している。
「いっ、今助ける」
 我に返った咲江が、慌てて『アロンダイト』で斬りかかった。

「あんっ、しまったわ‥‥動けない‥‥」
 触手を絡みつかせたシャイアが現状を告げる。
『アロンダイト』で斬り飛ばそうとした嶺だったが、彼女もまた別の個体に捕縛されてしまった。
「あ‥‥い、いや‥‥こんな‥‥こんな、のっ‥‥」
 艶めいた声が嶺の唇から漏れる。
「う‥‥、んぅ‥‥、吸われちゃぅ‥‥んぅ!」
 負けずに響くシャイアの声。補足しておくと、吸われるのはあくまでも練力である。
 触手の外観が苦手だったマクシミリアンは、消極的だったのが幸いし未だに健在だった。
「おやおや、楽しげですなあ。まあ死ぬことはないそうだから暫くエンジョイしなよ〜」
 捕まった仲間の姿を眺めるのは楽しいらしく、ニヤニヤしながら言葉を投げかける。
「可愛いクマノミちゃんが隠れてたりはしないかな〜?」
「AU−KVさえあれば‥‥、こんな、雑魚キメラなんかに‥‥」
 シャイアが悔しげにつぶやいたのは、触手を警戒させないためにAU−KV装備を見合わせたためだ。彼女だけでなく、今回参加しているドラグーン達は皆、生身で任務に臨んでいる。
「ちょっ、ちょっと‥‥そんなトコ‥‥」
 これはシャイア。
「はひっ、ひゃん? ふぁぁ‥‥ら、らめぇぇぇぇぇ」
 こちらは嶺。
 ふたりの様子を堪能したのか、ようやくマクシミリアンが救出に動いた。

「あ、こら! やん! どこ触ってるの‥‥よ!」
 澪の黄色い悲鳴が上がる。
「待ってろ。すぐに‥‥」
 駆けつける悠まで別な触手に捕まった。
「カメラも無いのに‥‥。ちょっと、そこは、入っちゃ‥‥あぁー、入っちゃったぁぁ」
 澪の水着の内側にまで入ってしまったのだ。それならば悲鳴を上げても仕方がない。
「ひゃあぁ」
 らしからぬ声を上げた悠は、慌てて掌で口を抑えるが手遅れである。
 玲奈に助けられた彼女は、己の憤りを全てキメラにぶつける。
「なますに刻んで海の藻屑だ!」
 苛立ちのままに、玲奈は二段撃を使用して紅炎と月詠を叩きつける。
 一方の澪の方は、なにがどうなったか水着を脱がされていた。ビキニならまだしも、どうやってワンピースを脱がされたのか非常に疑問である。
 玲奈に助け出された彼女は、全裸であってもまるで怯まず、水中用拳銃『SPP−1P』を乱射する。
「はぁはぁ‥‥あん、ビデオ女優をなめないでね!」
 キメラを撃退し、再び探索に戻るかと思いきや、‥‥まずは澪の水着探しだ。

「くぅ、んんんっ」
 触手に確保された一千風は必死にくすぐりに耐えているものの、腋を狙われて思わず声音が変えた。
「きゃ、ふふっ、ははは」
 ゴールデンは刀身の短い忍刀『鳴鶴』に持ち替えて、彼女を傷つけないよう丁寧に触手を切断していく。
「こん、なの、振り切って‥‥」
 パートナーが男性と言う事を彼女なりに意識しており、強引に振り切ろうとするがうまくいかない。
 使用を試みた瞬天速も不発。所有していないスキルを使おうとするあたり、意外と彼女も混乱しているようだ。
 ゴールデンの手で解放されると、頬を真っ赤に染めながら、過剰な程に切っ先をキメラ本体へ突き刺した。
 仕事として必要な行為であり、正当な反撃でもあるが、照れ隠しとか八つ当たりと表現しても間違いとは言えないだろう。

 うねうねと伸びる触手が咲江の足を這い登った。
「ひゃっ! レイチー助け‥‥って、何してるの!?」
 レイチェルと違ってすかさず助けを求めるが、彼女が目にしたのは瞳を輝かせる相棒の姿だった。
「楽しそう♪」
「楽しくないっ」
「ボクは楽しかったんだよね♪ サキにも楽しんでもらわないと不公平かも」
 レイチェルは自ら進んで咲江に絡み始めた。
 触手の方はひとりで限界らしく、咲江のついでにレイチェルの手や足をなで回す程度だ。
 触手に混じるレイチェルの手が、咲江の胸を揉んだり、肌をなで回したり、軽くつねったり、首筋には唇で触れたり‥‥。やりたい放題である。
「ふふ、サキの弱い処はボクがぜーんぶ知ってるんだから‥‥♪」
 咲江の弱点にわざわざ触手を誘導する始末だ。
「あんっ、くすぐったい‥‥、ふぁ、ひゃ‥‥ダメっ!」
 咲江の痴態を堪能したレイチェルがようやく彼女を解放する。
 因果応報と言うべきか、人は等しく報いを受けるものだ。
 次なる触手の犠牲者はレイチェル。
「レイチー、今度は私がさっきのお返しする番‥‥」
 このキメラが弱いのはすでにわかっているため、咲江も安心して仕返しに臨むのだった。

 玲奈は、藻を纏って擬態したつもりだったが、キメラは地雷よろしく、踏んだ途端に反応した。
 隠密潜行のスキルも使用していたが、身を潜めて隠れるのならまだしも、自ら動いている状態では意味がない。
「この程度、じっと我慢の子であった。‥‥してみぃ!」
 ノリツッコミするのは混乱の証拠か、余裕の表れか。
 彼女は、アンダーショーツと縞縞ビキニ、レオタードにブルマ、さらにセーラーまで着込んでいる。剥いても剥いても終わらない、タマネギ的な防御方法。すべては触手耐性を上げるのが目的だった。
 これだけ完全防備しておけば、触手攻撃などなにほどの事もない。
 そう思っていた時期もありました。
 絡みついた触手は丹念に服を侵蝕し、すでに彼女の皮膚を這い回っている。
「3分もすれば、仲間が助けてくれるはず‥‥」
 救出まで3分もかからないという彼女の読みは正しい。正しいのだが、彼女が3分も耐えられるとは限らない。
「アキャー! そこはアカーン!」
 やはり耐えられなかった。
「嫌〜、そこは裾、突っ込み所が違ぅ」
 澪が鋭覚狙撃で狙い撃ち、悠がソニックブームをしかけて、キメラを始末する。
 救出された彼女は、もはや息も絶え絶えという感じだった。
「ビデオ持って来れれば、いい絵がとれたわねぇ」
「‥‥‥‥」
 澪の軽口に反論する余裕はすでになかった。

 らしくないと言えばらしくないし、らしいと言えばらしいとも言える。
「ぎゃははははははっ!」
 これがゴールデンの笑い声だった。
 彼はなんの抵抗も見せずに、伸びてきた触手の虜となった。
 先程の一千風を見た彼は、触手に抵抗しても無意味だと悟り、無駄な体力消費を避けようと考えたのだ。
 今回救出に回るのは一千風となる。
「今助ける、ちょっとだけ動かないで居て」
 ついさっき、キメラに味わわされた屈辱の記憶が蘇り、自然とキメラへ叩きつける剣に力が籠もる。
 解放されたゴールデンは、何事もなかったかのようにケロッとしていた。
「‥‥あなたは、あれだけ大声で笑って恥ずくない?」
「どっちも俺自身だからな。あるがままに受け止めるしかないだろう」
 ゴールデンは体格だけでなく性格もまた剛毅なようだ。
 結局、あれこれ考える者ほど精神的ダメージが大きくなるのだろう。

「ところで、嶺も色っぽい声を出すじゃない」
「触手に絡まれ襲われている時は、艶声を挙げるのが礼儀作法ですので」
「ぶわはははははははははははっ!」
「それじゃあ、わざとなの?」
「はい」
「うひひひひひひひひひひひひっ!」
「どこかのお坊さんも言っています。感じまい、感じまいとするから感じてしまう。ここは一歩進んで、感じさせてもらおう‥‥と」
「無理矢理感じさせられるのは恥ずかしいけど、自覚的にするなら耐えられるものね。わかる気がするわ」
 冷静に会話するシャイアと嶺の前で、一人の男性が悶えている。
「ぬふふふふふふ、ちょっ、見てねえで助けろ、ぶふふふふ」
 攻守ところを変え、今度はマクシミリアンが犠牲となっている。
 触手にまさぐられて、涙、鼻水を振りまきながら全身全霊で笑い転げる。
「呼吸はできていますし、心配はいりません」
「それに自業自得だと思うわよぉ?」
 無情なるふたりの返答。
「うおおお、ちょっと待て待て。俺はコレステロールもガンマGTPも、やや高めなんで美味くないぞ! うわっ!」
 とうとうキメラに対して自分が無価値であると主張し始めたため、さすがにふたりも気の毒になってきた。
 2本の『アロンダイト』が触手を斬り飛ばし、嶺の刹那でようやくキメラが動きを止める。
「こういう無様なキャラは俺の役じゃねえだろ‥‥」
 とは、救出されたマクシミリアンのお言葉。
「がはははははっ!」
 ゴールデンの笑いが響く。
「た、助けて‥‥」
 必死と言うにはいささか張りのない声は一千風のものだった。
 4班は運悪くふたり同時に捕まってしまったらしい。
 シャイアと嶺が救出に向かい、マクシミリアンもそれを追う。
 気力を失っている彼は、電波増幅で支援するだけで、後はふたりに任せてしまった。

●平穏無事

 最終的に21体のキメラを倒し、海の中を何度も往復して、ようやく全滅させたと確信できた。
「はぁ‥‥一仕事あとのお酒は美味よねぇ」
 ビール缶を片手に、澪はのんびりムードである。
 これで嶺が救急セットを持参していなかったら、皆の治療ができずに慌てる事になっただろう。
「私は磯巾着に成りたい」
 捨て鉢につぶやく玲奈は、日焼けするためにうつぶせとなっていた。
「犬に噛まれたと思って、気にしないほうが良いわよ?」
「その言い方だと、もっと酷い目にあったみたいだ‥‥」
 澪の慰めはお気に召さなかったらしい。
「誰かにオイルを塗ってもらわないとね、ふふっ」
 シャイアは色っぽく誘ったが、マクシミリアンもゴールデンも至極冷静な対応で、彼女にしてみるとからかいの対象として物足りなかった。
 ビーチボールを手にした澪が声をかけると、一千風と嶺がそれに乗る。
 澪の目的は、ポロリやわし掴みする事だったが、酔っぱらい女性のする事だから、なんらかのアクシデントがあってもきっと許してもらえるだろう。
「ひゃうっ!」
 海に入っている咲江の悲鳴が響き、傭兵達の視線が集中する。
 討ち漏らしたキメラがいたのかと、すかさず武器を手にした者もいた。
「あぁ、触手の感触思い出したらまたカラダが熱く」
「って、レイチー!? キメラの次はまたレイチーに襲われる」
 咲江の身体をまさぐっているのは、触手ではなくレイチェルの両手だった。
『なあんだ』
 皆が漏らす落胆の声。
「ええっ!? た、助けて‥‥」
 彼女の必死の訴えを誰もがスルー。
「ねぇサキ、ボクのカラダを鎮めて♪」
「い〜や〜」
 紳士淑女達は礼儀をわきまえており、ふたりの行為をごく自然に黙殺していた。