タイトル:巨大蛙を撃退せよ 前編マスター:トーゴーヘーゾー

シナリオ形態: シリーズ
難易度: 普通
参加人数: 6 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2009/09/30 10:03

●オープニング本文


●闘技場建設資材の調達
 ラストホープにあるULT社屋の一室。
 数人が集まって会議を行っていたが、その中で熱く語る一人がいる。
「色々とありましたが、極東ロシアにおける敵戦略目的の打破、同地域の解放、すなわち勝利に傭兵の多大な尽力があったことは間違いありません。なら、傭兵達にその勝利を目に見える形で還元することは、傭兵の士気向上に大きく寄与します!」
 2009年3〜4月に行われた大規模作戦「ダイヤモンドリング」の成功によって、広大な極東ロシアの解放につながった。
 しかし酷寒の永久凍土の戦略的価値は、実利を得られるまでに数年を要するであろうと予想されていた。厳しい自然環境に加えて、三方を競合地域に囲まれており、輸送コストも大きくなることが予想される。
「だからこそ、今、積極的に投資しなければ極東ロシアの地下資源は宝の持ち腐れになってしまうんです。できるだけ短期間のうちにインフラを整備して資源を戦略的に活用できる状態にします! その為に‥‥」
 熱く語る男が提示した資料は、カンパネラ学園に建設される予定のKV用闘技場建設のものであった。
「このプロジェクトに使用する資材は、可能な限り極東ロシアから調達します! KVがチームで暴れまわれる闘技場です。建設に必要な資材需要の大きさは、極東ロシア開発を軌道に乗せる牽引役になります!」
 いわばULTによる大規模な公共事業といった趣である。
 採掘資源の輸送ルートは、ウラジオストックを経由する海運輸送が提案された。
 極東ロシアに最も近い不凍港であり、これより北方の港は冬季には凍結してしまうからである。
 問題があるとすれば、ウラジオストックまでの道のりがかなりの区間に渡って、未だ競合地域のままである中国東北部(満州)と隣接していることであった。

●水面下の問題
 海上を進むUPC軍の艦艇で、乗員がせわしなく働いている。
「今のところは順調かな‥‥」
「それはそうだろう。順調なところを優先して進めているんだからな」
 同僚のつっこみにに、青年が顔をしかめる。
「わざわざ、混ぜっ返すなよ。成果が出ていると考えた方が気分もいいだろ」
「気持ちはわかるが、問題点を先送りしてるだけだ。後になって困るのは自分達なんだ」
「わかってるよ」
 そんな会話をしながら、ふたりは電子機器の表示を元に図面を埋めていく。
「‥‥上の連中はいいよなぁ。命じただけで仕事が終わったつもりなんだから」
 どのような輸送経路を取るにしろ、その航路の構築には様々な準備が必要となる。
 方針を定めただけで仕事が終わるはずもなく、現場レベルでは様々な課題が山積しており、彼等の仕事もそのうちのひとつであった。
「だが重要な任務だ。定期的な運搬を可能とするためには、航路の安全が不可欠だからな。バグアの勢力圏に近かった事もあって、どんな危険が潜んでいるかわからない」
 UPC軍では周辺海域の安全を確保するために、ソナーや水中用KVを持ち出して情報収集に努めていた。
「だけどなぁ。あの辺りは海流も早いし、海底の起伏も激しいから危険すぎるぞ。1機しかないテンタクルスを壊すわけにいかないだろ?」
「テンタクルスそのものが海底で故障したら、救助も満足にできなくなるか」
「だから、後回しにするしかないんだよ」
「俺達に難しいなら、傭兵に頼むというのはどうだ?」
「おいおい。そんな金がどこから出るんだ?」
「どこからと言っても、現状では調査が難しい。『調査できませんでした』で済まない以上、別の手段を講じるしかないさ」
「上にはお前から頼んでくれるんだろうな?」
「‥‥お前との連名ならな」

●参加者一覧

里見・さやか(ga0153
19歳・♀・ST
ドクター・ウェスト(ga0241
40歳・♂・ER
高村・綺羅(ga2052
18歳・♀・GP
Loland=Urga(ga4688
39歳・♂・BM
フィルト=リンク(gb5706
23歳・♀・HD
ソリス(gb6908
15歳・♀・PN

●リプレイ本文

●傭兵さんいらっしゃい

「カンパネラでKV闘技場が開催される運びになったから、資材調達をシベリアから行う訳か」
 耳にした情報を確認するLoland=Urga(ga4688)。
「この辺りに来るのは、ダイヤモンドリング以来ですね。あの場で得た勝利を、私達自身が形にするというのも良いものです」
 フィルト=リンク(gb5706)だけでなく、作戦参加者ならば同様の感想を持つことだろう。
「今回は流通経路の安全を確保するための調査ってわけだ。まあ、頑張るしかねえだろうな」
「‥‥調査ですか。お借りできるようになったアルバトロスの試運転には丁度いいかもしれませんね」
 真新しい機体をソリス(gb6908)が見上げる。
「水中戦は初めて‥‥。しかも、この海域はバグアの勢力圏にも近い。気を引き締めて備えなければ」
「いつも陸上戦を主体として動いているんだけど、海中戦にも慣れておかないと」
 里見・さやか(ga0153)や高村・綺羅(ga2052)も似たような動機で参加したようだ。
「それに‥‥この子にも」
 綺羅がポンと自機を叩いて愛着を見せた。

 傭兵達が頭をつき合わせて地図を覗き込み、調査ルートの検討を行っている。
「西寄りルートから順番に進めてはどうでしょうか? ルートが広くて比較的通りやすそうですし」
 さやかの提案にドクター・ウェスト(ga0241)も頷いた。
「調査なのだろうし、対象海域は全部まわるのだろう。それなら端からでいいと思うがね〜」
「囲まれたE4を優先して潰すのはどうだ? その後で、E1へ大回りして戻ってくる。その後でJ13へ向かうんだ」
 Lolandが調査ルートを、図面上を鉛筆で書き込んでいく。
 反対意見が出る事もなく、基本方針はそれで決まった。

●ただいま調査中

 最初に潜行するのはA班である。
「よろしく頼むな」
「こちらこそ、よろしくお願いします」
 Lolandとさやかが愛機に搭乗した。
 今回の班編制はKVの機種で選別されており、A班はビーストソウルを使用する2名となっていた。
 2機のビーストソウルがソナーで海底の隆起を確認し、動力と航路のデータを記録して潮流の影響を算出する。
「哨戒のチームが2班なので調査期間がかかりそうですね」
 海面下へ潜行する2機を眺めて、綺羅がつぶやいた。

 2時間経過したため、調査チームが入れ代わる。狭い機体に閉じ込められるストレスや疲労を考慮しての事だ。
 B班の使用機体はアルバトロス。水中用機体としては最新鋭機である。
「うん。私の方は準備OK。いつでもいけるよ」
 綺羅の声に続き、別な報告が通信機から届いた。
「‥‥ソリス機も準備できました」
『誰?』
 本人が名乗っているにも関わらず、皆が不思議そうにつぶやいた。
「‥‥しかし、いつまでも慣れませんね、この声‥‥」
 覚醒による影響で中年男性の声に変わる事を、ソリス自身も不満に思っている。自然と口数が減るのもそれが理由だった。
「では行きましょうか」
 フィルトが促して、3機が深く静かに沈降していく。

 A班とB班で5機が稼働しているわけだが、そうなると1機が余る計算となる。
 ウエストが所有している雷電だった。
「緊急時にすぐ対応できるよう、人型で待機していたほうがいいね〜」
 今回の仕事で機種による班分けを行ったのは、移動速度などを統一するのが目的だった。
 水中用キットを装備したとは言え、移動力は確実に劣る。それを考えれば組み合わせの都合から留守番となるのも仕方がないだろう。
「立っていたら船が安定しないだろう〜? だから座らせているのだよ〜」
 体育座りというポージングもあって、仲間はずれの雷電は、どこか哀愁を漂わせているように思われた。

●障害は向こうから

 休憩中のB班は、気分転換も兼ねて甲板で海風に吹かれていた。
 ソリスは少し寒そうだったが、フィルトや綺羅はわざわざ厚着を着込んだだけあり気にしていないようだ。
 フィルトが傍らの雷電を見上げるが、彼女の目から見ても、夕日を浴びて黄昏れているように思えた。
「そろそろ、お腹減らない?」
 綺羅に話を向けられて、フィルトが応じる。
「そうですね。用意があるならそれで良いですし、材料があるなら作っても良いですが‥‥」
「カレーはどうでしょうか? ‥‥辛いのは苦手なので甘口で‥‥」
 ソリスから要望があがった。
「わかりました」
 他に調理希望者がいなかったため、フィルトが調理を引き受け、ソリスの意見を採り入れる事にした。
「それなら、私も紅茶を入れにいこうかな」
 綺羅もまた彼女と共に調理室へ向かった。

 雷電が艦上待機だからといって、ウェストまで遊んでいるわけにはいかない。
 彼は潜水班との通信や、データ整理に駆り出されていた。
 処理室の机の間を縫って、綺羅は作業者達の机にカップを配っていく。
「御疲れ様」
 彼女の入れた紅茶で喉を潤し、彼等は再び作業に臨む。
『‥‥いまのは?』
 不審そうなさやかのつぶやきをマイクが拾い、ウェストが通信機で問いかけた。
「何かあったのかね〜?」
『何かが動いたように見えました』
「Lolandの方はどうかね〜?」
『ん〜? ソナーの信号が乱れてよくわからねぇ。魚じゃねぇのか? うわっ!?』
 驚きの声と共に衝撃音が鳴った。
『なんだ今のは? 岩でもぶつかったのか?』
『私が確認します』
 さやかが確認する結果を、海上ではただ待つ事になる。
「会話しかできないのは、もどかしいものだね〜」
 ウェストが不満を漏らしたところに、さやかの返答が届く。
『敵です』
 遭遇は北側のG3地点で発生した。

●水中から水上へ

 敵と断じた影がLolandの機体に組み付いていた。
 海中で組み付かれたため、Lolandはビーストソウルを変形させて、高分子レーザークローで応戦する。
 魚とは違って四肢のあるシルエットが、ライトに照らされた。
「こいつ‥‥蛙かよ!?」
 KVに匹敵するサイズの蛙がふたりの敵であった。
「敵は蛙型キメラが1体。Lolandが攻撃を受けて応戦中です」
 海上への報告を行うと同時に、さやかはガウスガンを蛙に向けて発砲する。
 蛙もまた爪があるらしく、ビーストソウルの装甲を削る音がLolandの耳に届く。
 蛙が口を開くと牙の存在まで確認できたが、蛙の攻撃は牙ではなかった。
 圧縮された水の弾がビーストソウルに直撃する。
「くっ。最初の攻撃はこいつか!」
 Loland機が離れたチャンスに、さやかが重量魚雷を叩き込んだ。
 つづけて、Lolandのガウスガンが弾丸を吐き出していく。
 穴だらけになった蛙キメラが動きを止めて、海底に沈んでいった。
「敵の撃破に成功しました」

 ウェストの要望で、調査時間を終えないままA班は急遽浮上する事となった。
「海底で蛙なんてまずあり得ないし、キメラとみて間違いないだろうね〜」
 ウェストは改めて、実際に戦闘したさやかとLolandに蛙に関する質問をする。
 キメラの容姿、大きさ、能力、外見から分かる攻撃性能、フォースフィールドについて。
 各質問に応答したふたりが、蛙キメラについて総括するとこうなる。
「脅威と呼べるほど強いキメラではありませんでした」
「1対1ならなんとかなると思うぜ」
 そんな評価を元に、調査はこのまま続行される。
「キメラの肉片でもあると非常にありがたいんだがね〜」
 Loland機に貼り付いたウェストが、機体装甲に肉片がへばりついていないか調べだした。
 キメラ研究をしている事もあって、蛙キメラについても興味が尽きないのだろう。
 この仕事にとっても有用に思えるため、彼は大手を振って趣味に没頭する。
「残念ながらこの船の器材では、詳しい分析を行えないがね〜」
 彼は残念そうに肩をすくめた。
「しかし、話を聞く限り、その程度の強さでは単体で生息するのは考えづらいかな〜。まあ、他にもいると考えるのが妥当だろうね〜」
 しばらく調査を続けるうちに、彼の指摘の正しさが証明される。

●蛙が鳴いても帰らない

「魚をあまり見かけないのは、やっぱり、危険な生き物が生息してたから、かな?」
 綺羅の言葉にフィルトが頷いた。
「そうですね。ウェストさんも言っていましたが、1匹だけとは思えませんし」
「どこかに巣でもあるとか?」
「可能性はあると思います」
 ふたりの会話を聞いて、ソリスの背筋にゾクリと冷たいものが走った。
「‥‥ここは調査効率よりも安全重視を選択して、できるだけ固まって行動するのはどうでしょうか?」
「それがいいね。どれだけの数がいるかわからないんだから」
「はい。そうしましょう」
 ふたりの同意を得られてソリスが安堵する。
 ソリスはキメラに怖じ気づいたわけではない。
(「‥‥どうでもいいですけど、カエルは苦手です、カエルは」)
 蛙を嫌っただけのようだ。

 調査中に綺羅からの警告が飛ぶ。
「来たみたいだ。まさか、鯨ってことはないだろうしね」
 彼女の言葉を証明するかのように、3機を衝撃が襲う。
「これが、Lolandさんの言っていた攻撃ですね」
「敵の数は2体。私達だけでも大丈夫そうだね」
 L4地点で遭遇した事実を調査船へ報告しつつも、綺羅は油断しないように気を引き締め直した。
 敵の水弾に対して、彼女等はガウスガンやアサルトライフルで応戦する。
 敵の接近により、その姿が視認できるようになると、ソリスが不満げにつぶやいた。
「‥‥しかし凶悪なフォルムの敵ですね。‥‥早いうちに殲滅しておきたいところです」
 間近に迫る蛙キメラ目がけて、突き放すように水中用ガトリング砲を叩き込む。
 そこへ、変形したフィルト機が、側面から高分子レーザークローでとどめを刺した。
「移動力の高さといい、スムーズな変形といい、色々と便利な機体ですね」
 アルバトロスの性能の高さを、フィルトは改めて実感する。
 もう1体の蛙は、同じく変形した綺羅機と組み合っていた。
「メトロニウムシザースの威力を体験してもらおうかな」
 両腕に装備しているアルバトロス推奨装備が稼働する。
 鋏型になった両腕を蛙の腹部に突き刺して、彼女は体内の器官をゴッソリと断ち切った。

●蛙の子は蛙

 合計3体の蛙キメラと遭遇したものの、傭兵側の損害は軽微なものだった。
 調査は順調に進み、今回の仕事は無事に終了すると思われた。
「懸念があるとすれば、巣らしきものが見つからなかった事かね〜」
 ウェストの心配は現実のものとなる。

「まいったな。もうそろそろ終わるってところで」
 Lolandの口から愚痴がこぼれた。
 N5地点まで来たA班は、そのまま南下して調査を行う予定だったが、新たな障害が現れた。
 周囲への警戒を怠らなかったおかげで、今のところは被害を受けていない。
「これはさすがに私達だけでは無理ですね。応援を要請します」
「了解だ。俺達だけだと難しいだろうし、潔く退くのも覚悟ってもんだ」
 出現した蛙キメラは6体。さすがにビーストソウル2機で倒すのは難しそうだ。
「はい。みんなとの合流を優先しましょう」
 さやかが海上へ向けて、状況報告と救援要請を行う。
「そいつはいいが、幾らかでも足止めはしとくべきだな」
 敵の出鼻を挫くために、Lolandはホーミングミサイルを発射して蛙を威圧する。
「それなら、こういう手もあります」
 さやかの放った重量魚雷が何もない岩肌に着弾する。
 敵への被害はなかったが、周囲を覆った爆発音や、巻上がった砂煙が、敵の命中率を大きく損ねた。
「なるほどな」
「さあ、いまのうちです」

 急報を受けてB班が現場へ駆けつけた時、すでに2機のビーストソウルは蛙キメラに追いつかれていた。
「‥‥補足しました。援護します」
 A班に告げたソリスが重量魚雷を射出すると、長距離をものともせずに蛙キメラに命中した。
 それに呼応して、さやかもまた重量魚雷を叩きつけると、肉片となったキメラが海流に流されていった。
 敵を射程に捉えた綺羅とフィルトがA班を囲むキメラを銃弾で牽制する。
「今度はこっちからやらせてもらうぜ!」
 防戦に徹していた鬱憤を払うように、Lolandが攻勢に出た。
 レーザークローでの攻撃を加え、間合いを外したキメラに熱源感知型ホーミングミサイルでとどめを刺す。
「残りは4体ですね」
 フィルトが水弾をくぐり抜けて、レーザークローで斬りつける。
「ああ〜、これは綺羅君の機体だね〜」
 のんびりとした声が通信機から聞こえる。
 移動力に欠けるため、調査船で海上を移動していたウェストが、遅れてこの場に駆けつけたのだ。
「距離を取りたまえ、ミサイルを撃つよ〜」
 綺羅が慌てて離れると、雷電から射出された対潜ミサイルが蛙に命中する。
 再び綺羅に襲いかかろうとしたキメラに、雷電が水中用太刀『氷雨』で斬りかかった。
 これで敵の攻撃が止んだ。残っていた2体はすでに背を向けて逃走中だ。
「逃がしません」
 さやかの温存していたSC魚雷『セドナ』が高速で敵を追撃する。
「では、我輩も」
 ウェストも同等の射程を誇る対潜ミサイルを射出する。
 こうして、逃走を図った2体のキメラは、海の藻屑と消えた。

「‥‥大きい蛙というのも見た目でのインパクトはありますね。‥‥できることなら、もう会いたくないものです」
 嫌悪感を露わにするソリスだったが、残念ながら彼女の願いはかなわない。神様という存在はよっぽど意地悪な存在なのだろう。
「果たして今のキメラは、どこへ逃げるつもりだったのかね〜?」
 ウェストの口にした疑問そのものに、皆が首を傾げる。
「勝てないと感じて逃げただけだろ?」
 何を問題視しているのか、Lolandは不思議がった。
「そういえば‥‥、敵との遭遇は北側が多かったですね」
「まさか、北にある巣へ逃げ帰ろうとしてたってのか?」
 さやかとLolandの答えに、ウェストが満足そうに頷いた。
「確かめた方がいいと思うね〜」
「A班には損害も残っていますし、B班で確認してみましょう」
 フィルトが言い出すと、綺羅とソリスもそれに従った。
 本来なら次回の調査対象となる海域に踏み込んで、彼女等はキメラ達の巣を目にした。
「まさか、‥‥あれ?」
 綺羅は始め山だと感じた。
「そのようですね」
 フィルトも最初の認識を覆す。
「‥‥見たく、ありませんでした」
 ソリスが後悔と共につぶやいた。
 海底でそびえるのは、地面の隆起などではなく、巨大なキメラの身体だった。

 ――ピパピパ。和名をコモリガエルという。
 平べったい奇妙な外観を持ち、背中の皮膚内で卵を孵化させる蛙だ。
 彼女等は確かに蛙キメラの巣を目撃した。
 100mを越える全長を持ち、蛙キメラの部隊を運搬する、水中母艦ともいうべき巨大キメラを。