●リプレイ本文
●少女を訪ねて
キメラの被害にあった少女に何の用があったのか確認するために元を訪れた。扉を開ける。少女は驚いたようで、手にしていた本を落としたまま扉を見つめていた。
外見年齢が一番若い水無月 蒼依(
gb4278)が一歩前に進み、緊張を解こうと笑いながら話しかけた。
「私達はあなたが通う校舎に現れたキメラを討伐する傭兵です。どうか、詳しく話を聞かせてもらえませんか?」
少女は驚きを浮かべた表情のまま一同を見つめ小さく頷いた。
「立ち話もなんだし、俺達も座らせてもらっていいか?」
亜鍬 九朗(
ga3324)は視線を合わせようとしない少女にぶっきらぼうに聞く。
「ど、どうぞ‥‥飲み物とか必要でしょうか?」
「あら、コーヒーなんかあるのかしら? 私、コーヒーには少しうるさくて」
「イ、インスタントになってしまいますけど‥‥」
残念だわ、と呟きマヘル・ハシバス(
gb3207)はパイプ椅子に座る。そこから少し離れた位置で望月 藍那(
gb6612)は札を取り出し何かをし始めていた。
「ではすみませんが、事件当夜のことをお話ください」
水無月蒼依は少女が語りやすいように話しを促した。少女もまた意をくみとったのか、瞳をさまよわせたのちポツリポツリと言葉を吐き出した。
「もう9時近かったと思います。夜じゃないと会えないと思ったから‥‥」
「女の子1人は危険だなそれは」
亜鍬九朗は眉根を寄せていうと、少女は「すみません」と零しさらに俯いてしまった。
「夜じゃないと会えない? そんな夜更けに何に会えるっていうんです?」
少しキツメの言い方で、望月藍那は手の中の札を見つめたまま聞いた。
俯いた少女は掛け布団を握りしめる。
「キメラを倒すためには必要なことなんです、教えていただけませんか?」
躊躇う少女に必要性を訴える水無月蒼依。少女は躊躇いがちに口を動かした。
「‥‥夜に、なると幽霊が出るって噂があったんです」
「幽霊!? そんなものに会いに行っていたのか?」
亜鍬九朗は驚きの声を挙げたが、少女は微かに首を動かした。
「以前から噂が流れていたんです、夜になると音がするとか、校舎裏の砂が減っているとか」
「じゃあ、あなたは幽霊に会いたくて通っていたってことでいいのかしら?」
マヘル・ハシバスは確認するように尋ねると少女は顔をそむけ頷いた。
「‥‥それでいいと思います」
「その時何か変わったものを持っていなかったの?」
「いえ、特には‥‥」
「足に絡みついたって聞いたけれど、他に特徴はなかったかしら」
「そう‥‥ですね。体全部が土から出ていたわけではないのでわかりませんが、太さは野球のバッドくらいだったと思います」
「太さは問題ないな‥‥残るは長さか」
これ以上の手がかりはつかめないと判断した4人は立ち上がり病室を出ようとしたが、望月藍那が1枚の札を選び少女に見せた。
「『審判』。私が依頼にあたって引いたタロットカードです。意味はご自分でどうぞ」
マヘル・ハシバスは病室を出たあたりから、1人ブツブツ呟いていた。3人は何も言わず進んでいたが、亜鍬九朗が彼女の肩をつかむ。
「お、おい! マヘルさん、覚醒してる、覚醒!」
マヘル・ハシバスは考えことをしているうちに、覚醒を始めていた。
「あ、ああ、ごめんなさい。つい考えに没頭してしまって‥‥」
「何を考えていたんです?」
は1枚の札を口元でちらつかせながら、聞く。
「噂のことを考えていたんです。彼女お墓に眠っている何かに会いたくて毎夜通っていたのに、あらわれたのはキメラだったなんてことを考えたらね」
「お墓に何が眠っているのか分かりませんが‥‥哀しいですね」
「そうでしょうか? 諦めがついたからいいと思いますけど。けれど、彼女が気がつかなければ、あの校舎は倒壊し多くの犠牲者を生むことになる」
「彼女1人の怪我でキメラの存在に気づけただけ、もうけもんだな」
●校舎裏にて
一時封鎖状態になっている学校に来ていた。キメラ化したミミズが食い荒らした地面を調査するため、ミミズをおびき出すために。
ヒューイ・焔(
ga8434)は地殻変動計測器を校舎周辺に設置していた。設置するたびに画面を確認するが、今のところ反応はない。
フローラ・シュトリエ(
gb6204)は校舎裏に来ていた。長い棒を手に持ち地面がもろくなっていないか叩きながら確認していた。
「うわっ! ここもか‥‥」
棒がスッと中に入っていく。棒を引き抜くと穴が開いた場所に砂が流れ落ちていく。いったいどれだけの穴があいているのだろう。
「おーい、こっちは設置できたぞ!」
ヒューイ・焔は片手を振りながら、穴を調べているフローラ・シュトリエに声をかけていた。が――
「ああああ!! だ、ダメ!! ヒューイさんそこ穴!」
「わわわわ‥‥はぁはぁ。お、驚いたぜ、ありがとうフローラ」
ヒューイは片足を砂に飲み込まれた。フローラ・シュトリエは地面に目印をしているのか、迷うことなくヒューイ・焔の元にたどりつき手を引く。
「小さいけど、片足ぐらいはとられるから気をつけて」
「まったくだ」
ヨーク(
gb6300)は少し離れた場所で仲間の周囲に警戒をはらっていた。キメラは昼間には出てこないとは限らない。地面の穴を確認している中突然キメラが現れたときに対処するために。
今のところは何も起こりそうはない。
「‥‥‥何もないようだ‥‥それならばそれでいい」
呟きながらも、仲間が離れるまで静かに見守り続けた。
その隣でリィスアルク(
gb6646)は本を片手に持ち読み上げていた。
「ミミズは千切っても千切っても、死なないという話を聞いたことがあります。本を調べていくうちにわかったんですが、自切といって、トカゲが尻尾を捨てる様にキメラもソレと同じ事をするかもしれません」
これにどう対処しようか考えながら、ヨークに語りかけていた。
●夜
囮役をかって出た水無月蒼依は校舎裏に1人立っていた。状態は万全だ。マヘル・ハシバスに練成超強化をかけてもらった。後はミミズキメラが出てくるだけだ。
警護役をかってでたヒューイ・焔は屋上から双眼鏡で見守っている。他の仲間は物陰に隠れ、いつでも加勢でき状態になっている。
水無月蒼依は頷き歩きまわる。どこからいつ出てくるのかわからないが、立ち止っているよりは安全だ。棒でさしながら歩いていれば穴に落ちる心配もない。
「なかなか出てきませんね‥‥。他に回ったほうが良いのかしら?」
最初に異変に気がついたのは、地殻変動計測器の変化を捉えた望月藍那だった。
次に足元から、ジージーと鳴く声がし始めた。水無月蒼依も音を聴き逃さず棒を刺す手をとめた。その時、目の前に昼間聞いた情報ぐらいのミミズキメラが砂の中から現れた。
キメラは自分の餌場を荒らしに来たものを追い払うがごとく、水無月蒼依に突進してくる。
フローラ・シュトリエは瞬天速を使用し囮役との距離を縮めた。水無月蒼依の手を引き、昼間に調べておいた道を進む。ここで落とし穴に落ちたら手間が増えてしまう。
「あ、ありがとうございます」
「問題ないよ!」
亜鍬九朗は覚醒し姿を現したキメラ目がけスピアを突き付け豪力発現を発動。フォースフィールドを貫通し、刺さった尖端が簡単に抜けるはずもなく、亜鍬九朗は柄を軸に巴投げの要領でキメラを引きずりだす。ひきずりだされたところに望月藍那は練成弱体を使用。
「視覚的に気持ち悪いんで、弱ってもらえると嬉しいなっと!」
「また潜られると仕留めづらくなるから、ここで決めるわよ」
フローラ・シュトリエは手を放し自らも接近戦をするために、機械剣を手に持つ。
キメラの体がうねりながら、亜鍬九朗めがけ尾を叩きつける――がそれはヒューイ・焔により阻止される。フック付きロープで屋上から降りてきたヒューイ・焔は、降下しながら覚醒し流し斬りと両断剣を使用し赤いオーラが噴出し、キメラを攻撃する。
「よし! このまま攻撃し続けるぜ!」
フローラ・シュトリエもまたヒューイの掛け声に反応し、機械剣でうねる体に攻撃を当てる。
ヨークはキメラから少し離れた亜鍬九朗に近寄った。肩口から血が流れていたらかだ。
「見せろ‥‥」
「思ったよりも長かったみたいだ」
肩に手をあてスキルを使用する。傷口からしてそう深くはなさそうだが、まだ倒れていないキメラ相手を倒しに行けば傷口が開いてしまう。
「‥‥治癒、完了」」
ヨークは静かにそれ以上何も言わず、キメラを見て呟いた。
「‥‥来るぞ! 避けろ!」
ヨークの叫ぶ声に驚いたヒューイ・焔は一瞬足を止める。その為、何が起きたのか把握することができた。キメラはヒューイ・焔が攻撃する場所を落とした。
「自切したんです! そこから生えてきます!」
次いで起こるであろうことを、リィスアルクが叫ぶ。正しいことを証明するかのようにキメラの欠けた部分が内側から生えてきた。
「離れてください!」
マヘル・ハシバスはエネルギーガンを取り出し援護射撃する。その間に仲間は体制を整える。
「‥‥縦だ」
「それだ! 縦に切れ!」
ヨークの独り言ともとれる呟きを聞き取り亜鍬九朗は叫ぶ。
「た、確かに。本には書いてありませんでしたけど、それならいけそうです」
薙刀を手にしたリィスアルクは出し走りだす。合わせるようにして皆が体に攻撃をしかける。マヘル・ハシバスはエアーガンで尾キメラの体を弱らせそこを狙い、フローラ・シュトリエが機械剣で攻撃。キメラは再び自切が再生する前に、ヒューイ・焔がそのすぐ上を攻撃。望月藍那も電波で応戦。キメラは再び自切の行為を行う。
体が短くなった。
「斬ります!」
水無月蒼依は円閃、スマッシュを使用し短くなったキメラの体を真っ二つにした。
「本当は輪切りの方が得意なんですけど」
と、縦に分かれたキメラに向かってつぶやく。
「ほとんど輪切り状態だと思いますよー」
フローラ・シュトリエは笑いながら水無月蒼依の手をとり立たせた。
「いかにもB級映画に出てきそうなキメラでしたね」
マヘル・ハシバスはいくつにも切り別れたミミズを見て笑った。
●後片付け
「あ、ここにもある」
「分かりました」
亜鍬九朗は穴の場所をマヘル・ハシバスに伝える。マヘル・ハシバスは手に持ったスコップで穴を広げていく。
「このくらいでいいですかね?」
「十分だと思う。後は学校側がなんとかするだろう」
2人は隠れた落とし穴を見つけ作業を続けた。
「不思議ですね‥‥自分で切り落とす行為は生やすことができるから、だとすれば理にあっていますけど不思議です」
リィスアルクはミミズの体を見つめながら呟いた。
「‥‥処理するぞ」
ヨークは面白そうに見つめるリィスアルクに断りを入れ、飛び散ったキメラの破片を回収し移動する。
フローラ・シュトリエは木の枝と石を手に持ち、墓を作っていた2人に声を掛ける。
「仕上げにはどっちがいいだろう?」
だが、水無月蒼依と望月藍那は困惑な表情を浮かべていた。
「どうしたの?」
「それが‥‥」
と2人は言う。土の中に眠っている何かを掘り出し、正確に墓を作ろうとしたのだが何も見つからないという。
「元から何もなかったんでしょうか」
「ええ! だって彼女夜に」
3人は少女の行動がまったくわけのわからないものになった。だが、墓に来ていたのは事実。少女にとっては何かがあるのだろうと思い、墓を作ることにした。
「お、立派な墓ができたんですね」
そこに機材の後片つけをしていたヒューイ・焔が戻ってきた。
作業を終えた他の仲間も集まってくる。墓を用意した3人はここに何も眠っていないことを告げる。告げると皆驚いた表情を上げるが、ヨークだけは違った。
「祈るだけだ‥‥」
寡黙なヨークは静かに黙とうをする。それに倣うようにして、皆が何も眠らない墓に祈りを捧げた。
●数日後
少女の元にミミズ退治の知らせが言った。その時もさして嬉しそうな顔を浮かべず「そうですか」とだけ呟いた。
夜が訪れた。少女は1人車椅子を動かし校舎裏へと向かっていた。
車椅子で進んでいく。地面が歪んでいる場所があったがこれはキメラ討伐のときのものだろう。ぎこちない動作で車いすを走らせる。目的地に辿り着く。少女は目的の場所に目を走らせる。
少女はそこにはもうないと思っていた墓を見つけた。彼、彼女達が作ってくれたのだろうか。それ以外あるはずがない。立派な墓があった。何も眠らない場所。
作ってくれた、ということは全員が気がついたことだろう。この場所に何も眠らないことを。
少女はここに自分自身を埋めていた。
普通の少女だった自分を。
エミタが適合した自分は守らなくてはいけない。その運命に慄き隠れてしまいたくて、そんな自分を埋めた場所。幽霊となっても会いたかった今までの生活。
「ありがとうございました‥‥」
自分も見習おうと思う。自分を守りこの場所を守り、墓までつくってくれた彼ら、彼女たちを。
「静かに眠ってね‥‥」
たくさんの花が飾られる中、中央に小さな花を墓の前にそえた。