タイトル:RUNの適正クラスは?マスター:竹科真史

シナリオ形態: ショート
難易度: やや易
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2007/12/09 03:32

●オープニング本文


 メトロポリタンXの陥落から逃れ、人類最後の拠点となった巨大な浮遊島『ラスト・ホープ』。
 映画館、広場、ショッピングモールの他に、アミューズメントパークも存在している。
 そこにあるゲームコーナーには、ガンシューティングゲーム、縦スクロールシューティングゲーム、フライトシミュレーション、ヴァーチャル剣術、格闘ゲーム等、あらゆるゲームをワンコインでクリアする天才ゲーマーがいるという噂がある。
 そのゲーマーは性別、年齢は不明でランキングネームが『RUN』ということしか知られていない。

 休日を利用し、巷で話題のアミューズメントパークに行ってみたUPC士官のソウジ・グンベは、好奇心からか、その天才ゲーマーに会ってみたいと思った。
 実力が噂どおりに確かなものなら、傭兵として即戦力になると考えての行動だった。
 休日、ということもあり、順番待ちをやギャラリーが大勢いた。
 その中でも人だかりが多かったのは、ゾンビの巣窟と化した廃墟の研究所を舞台としたガンシューティングアクションゲームの周辺だった。
 どんな奴がプレイしているんだ? と思い、ソウジはギャラリーに紛れ込み様子を窺った。
 プレイしていたのは、15、6歳くらいの大きな瞳、セットがやや乱れた髪、背中に竜虎の刺繍が施されているサイズが大きめの黒のジャケットを着た少年だった。
 少年の銃捌きはかなり手馴れたもので、突然物陰から出現したゾンビを一撃で倒した。ゾンビは次から次へと大量出現したが、アイテムである手榴弾を使うことなく素早くリロード(弾充填)を繰り返し、目にも止まらぬ銃撃で蹴散らした。
「さすがはRUNだな!」
「ああ、すげぇよ!」
 ギャラリーの会話を聞き逃さなかったソウジは、少年が天才ゲーマーRUNであることを確信した。
 数十分後、ゲームクリアした少年は手馴れた手付きでランキングネームを入力した。
 画面には『RUN』の三文字が。

「あいつがそうか‥‥。プログラム実行コマンド『RUN(ラン)』をランクネームにするたぁ、相当コンピュータに精通しているな」

 次のゲームコーナーに移動しようとしたRUNを、ソウジは引き止めた。
「キミが噂の天才ゲーマー、RUNか?」
「おっさん、誰?」
 おっさん‥‥! と内心憤るソウジだったが、少年であるRUNにしてみれば、20代後半であるソウジはおじさんと呼ばれても仕方が無い年齢だ。
「お兄さんと呼べ。俺はUPC士官のソウジってもんだ。先程のガンシューティングゲームの腕前、拝見させてもらった。見事なもんだったぜ。その腕だが、能力者になって活かす気はないか?」
「能力者って‥‥エミタとかいうモノを埋め込んだヤツのことだろ? 俺にその適正があるってこと?」
「適正があるかどうかは、検査を受けてみないとわからん。検査は無料だから、受けてみるだけ損は無いと思うが」
 ソウジの説得に負けたRUNは、受けるだけなら‥‥と渋々引き受けた。

 RUNこと元基駆(もとき・かける)の適性検査の結果は『陽性』だった。
「命がけのゲームか‥‥。それも悪くないかもしれないな。俺、能力者になる!」
「家族と相談しなくてもいいのか?」
 ソウジがそう訊ねると、駆は仕事人間であり、家庭にいないも同然の父親と二人暮らしなので相談する必要は無いと言った。
 こうして、傭兵名『RUN』が誕生したのは良いのだが‥‥問題は、クラス決めだった。
 アルゴリズム(電子文書プログラム)を読み取る能力は優れているものの、機械工作が苦手なのでサイエンティストは除外。
 残るはファイター、グラップラー、スナイパーのいずれかになる。

「駆、どのクラスにするか決めたか?」
「ん〜どうしよう‥‥。いっそのこと、実戦シミュレーションで俺の適正を試してみるってのは?」
「実戦シミュレーションって‥‥! ゲーム感覚で適正クラスを決めるのかよ!?」
 もち! とやる気マンマンの駆。

 UPC上層部に相談した結果、駆の案が採用され、能力者との実戦シミュレーションを行ったうえで彼の適正クラスを決めることとなった。 

●参加者一覧

銀野 すばる(ga0472
17歳・♀・GP
安藤 諸守(ga1723
16歳・♂・SN
流 星之丞(ga1928
17歳・♂・GP
橘・朔耶(ga1980
13歳・♀・SN
雪子・レインフィールド(ga3371
20歳・♀・FT
セージ(ga3997
25歳・♂・AA
葵 宙華(ga4067
20歳・♀・PN
エイト・マインド(ga4373
24歳・♂・ST

●リプレイ本文

●協力者集結
「天才ゲーマーかぁ。実戦をゲーム気分でやっていきそうだね。実戦をあたしなりに教えますか。荒療治になるかもしれないけど」
 銀野 すばる(ga0472)は、先輩として実戦の厳しさを教えるようとする。
「僕は半ば成り行きで能力者になったから‥‥後悔しないように、力を貸してあげたい」
 交通事故に遭い、病院に搬送最中に謎の組織にさらわれ、強制的にエミタを埋め込まれて能力者となった流 星之丞(ga1928)は、駆に能力者になったことを後悔して欲しくないと願う。
「シミュレーションでも、容赦なく本気で攻撃をするべきだ。俺は本気でいく」
 人懐こく、明るく陽気な笑顔で橘・朔耶(ga1980)が言う。
「朔耶君の意見は賛成。ヴァーチャルとの違いと現実の重みを叩き込んであげたい。以前参加した依頼で、人が死んだのを目の当たりにした僕としては『どちらがどれだけ差を付けて勝つか』を試したいね」
 安藤 諸守(ga1723)は、命の重み、依頼の重要性を実戦を通じて教えたいと思った。
「戦いの厳しさ、楽しさを教えて自分の適性クラスを見つけさせるか。新人に現実と虚構の違いを教えてやろう。実戦の楽しさもな」
 セージ(ga3997)も、実戦の厳しさを教える方針のようだ。
「後輩イジメ、一度やってみたかったの♪ 楽しそうだから、この依頼受けたんだけどね」
 さらりと言う葵 宙華(ga4067)。
「皆、結構やる気あるんだなぁ。俺は楽そうだから来たんだが、そんなこと言える雰囲気じゃねぇな。この依頼に参加した理由? 偶然目に付いたから。でも真面目にやるから大丈夫」
 面倒臭がりのエイト・マインド(ga4373)はかったるそうな態度だが、やる気は十分ある。

「待たせたな。協力、感謝する」
 依頼人であるソウジが、集まった能力者達に礼を述べる。
 隣にいる駆は「宜しくな!」と挨拶したところ、ソウジに「挨拶はキチンとしろ」と窘められた。
「実践シミュレーションの説明を行う。対戦形式は一対一、時間無制限一本勝負。駆の体力を考慮しながら行うため、翌日に持ち越す場合もある。覚醒使用は各自の自由。駆が本気を出した時は、すぐにわかる。以上」
 説明後、実践シミュレーション施設に移動した。

●VSすばる
 トップバッターはすばる。駆のクラスはグラップラーを選択。
「手加減しないぜ!」
 指をポキポキ鳴らしながら挑発する駆。

『シミュレーション開始』

 機械音声が聞こえると同時に、二人は駆け出した。
 すばるは『疾風脚』を使いつつ、機動性重視のヒット&アウェイで駆の攻撃をいなし、少しずつダメージを与えた。わざと駆を怒らせ、頭に血が上がるように仕向けるという戦法だ。
 相手が人間ということもあり、すばるが次にどう動くか読めない駆はいらついてきた。しばらくは攻撃を大人しく受けつつガードしていたが、顔面に一撃を食らったことでキレた。
「あったまきたぁ!」
 思惑通り怒った駆は、すばるに強烈な回し蹴りをお見舞いしようとしたが、カウンターで返しつつ『瞬天速』で素早く懐に飛び込むと羽交い絞めに。駆は振り解こうと必死になるが、すばるの「実戦とゲームは違うよ」という威圧感漂う一言に圧倒された。
「場合によっては戦いよりも優先しなくちゃいけないこともあるし、守らなくちゃいけないものもある。ゲームと違って、実戦は少しのミスが死に繋がるんだよ。頭に血が上っちゃ、いつか取り返しのつかない事になる‥‥少し頭を冷やそうか」
 そう忠告すると駆を話し、全力のコークスクリューブローを腹部に叩き込んだ。

『勝者、すばる』

 機械音声が、すばるの勝利を宣言。
 シミュレーション終了後、すばるが普段の明るい表情と口調に戻っていた。
「あたしの言ったこと間違ってるかな?」
「‥‥違わねぇ」
 初戦から、手厳しい洗礼を受けた駆。

●VS朔耶
 朔耶が選択した駆のクラスはファイター。
「俺も傭兵としちゃ同じようなレベルだし、気軽にいこうぜ♪」
「望むところだ」
 
 機械音声の合図と同時に、朔耶の左半身全体に赤い痣が浮かび上がり、髪が腰の下まで伸びた。
「こいつは『覚醒』ってんだ。能力者は、こういうこともできるんだぜ」
 覚醒し終えた朔耶は駆との距離が離れていることを確認し、コンポジットボウをつがえると『鋭覚狙撃』を使い、頭に狙いを定めて矢を放った。
「悪いね。手加減や容赦って苦手なんだよ」
「俺もだ」
 矢をソードで薙ぎ払いながら、駆は距離を徐々に縮めた。素早さは朔耶より勝っている駆は素早く回りこんで背後から攻撃しようとしたが、先読みした朔耶は素早く反転し、左右に動きながらコンジットボウでの打撃攻撃を繰り出す。弓は、使いようによっては中距離、遠距離攻撃が可能な武器だ。
 ソードで攻撃を受け止める駆だったが、全てを受けることができず、何発か食らった。
「接近しての攻め込みは悪くは無いが、足元がお留守だぜ!」
 駆がバランスを崩した隙を狙い、朔耶はコンジットボウで転倒させ、駆の太股、足を狙って矢を放ち、確実に追い詰めた。
 実戦の場合、矢は駆の足を貫通していただろう。
 シミュレーションだが、これ以上続けたら危ないと判断した駆は降参。

『勝者、朔耶』

「楽しかったよ。縁があれば、また遊ぼうね」
 連敗したことで駆はへこんだかと思いきや「次は負けん!」と意気込んだ。

●VSセージ
「手加減はしないぞ。そんなので勝っても負けても嫌だろう?」
 最初から本気で戦うと宣言したセージ。
 甘く見ず、傭兵として扱うことにした駆の選択クラスはグラップラー。

「我は世界と共に在り、世界は我と共に在る」
 その言葉と同時にセージは覚醒。全身がより筋肉質になり、青白い仄かな燐光を纏って右手首が蒼く輝いた。
 両腕に装備したファングの刃を鳴らし、ファイティングポーズを取りつつ駆はセージがどう動くが読み終えると接近し、セージの懐めがけて攻撃を仕掛けたが、受け止められ、バランスを崩したところカウンターを入れられた。
 セージは、決して駆に合わせず、自分のペースを確実に保ちつつ逆に相手のリズムを崩し、自分に有利な流れを作りながら攻撃している。流れのイメージは疾風と流水。
 イメージ通りの攻撃と回避を繰り返しながらも、駆との戦いを楽しんでいるセージに釣られてか、駆も戦いを楽しんでいる。
 本気の攻撃を繰り広げる駆に、堅実な攻撃で応えるセージ。
 ダメージを重ねて駆の体力を消耗させつつ隙を狙い、隙が生じたら、見逃さずに容赦無いダメージを与えるつもりだ。
 頭に血が上るかと思ったが、駆にその様子は無い。一撃ずつ受け流しては、確実に反撃。
「俺の無神流、お前に捌けるか?」
 刀に一撃で仕留める程の気迫を込めたセージは駆に向かって放つ。
 駆は間一髪のところでファングが食い止めたが、刀の衝撃で吹っ飛んだ。

『勝者、セージ』

「熱くなるのもいいが、紅く燃え盛る炎より、蒼い静かな炎の方が高温だぜ? なかなかいい拳だった。実戦で背中を預けられる日も近いかもな」
 そう言うと、セージは駆に握手を求めた。

 駆の体力が尽きかけと判断したソウジは、続きは明日に持ち越すことに。

●VS諸守
 翌日のシミュレーションの相手は諸守。駆のクラスはスナイパーを選択。
「楽しみだなぁ、あのRUN君とやり合えるなんて。僕、いきなり飛ばして行っちゃうよ?」
 銃使い同士の決着はいかに?

 機械音声の合図と同時に二人は一斉に動き出し、呼吸を合わせたかのようにトリッキーな動きで翻弄しつつ、銃撃を開始。
「真似すんな!」
「意識して真似してるワケじゃないって‥‥」
 そう言いつつ、諸守はヒット&アウェイの連携銃撃。
「戦場じゃ言い訳は通用しないよ。わかっているよね? ゲームはやり直しがきくけど、実戦は一度きりだよ。僕がそれを教えてあげる」
 戦いながらも実戦とゲームの違いをネチネチした攻撃で追い詰めながら説く諸守に、駆はイラついた。
「そんなことわかってらぁ!」
 怒りながら攻撃したためか、狙いが外れた。そのことで、駆は完全にキレた。
「あったまきたぁ!」
 怒るように仕向けた諸守の作戦は成功。
 諸守自身に語りたがらない辛い事件があったため覚醒することはないのだが、リアルな実戦を教えたいという強い気持ち故、あえて覚醒した。
 優しい性格が一転し、嗜虐的になり、目つきが多少悪くなった。
「実戦の恐ろしさ、とくと思い知れ!」
 二人は、同時に互いの心臓めがけて発砲した。弾はどちらにヒットするのか。
 その様子を見守る能力者達は、同時にヒットしたのを見た。

『ドロー』

 機械音声は、引き分けを告げた。
「引き分けかぁ、予想外の結果だね」
 元に戻った諸守は残念そうに言うが、楽しげな表情をしていた。

●VS雪子
 雪子・レインフィールド(ga3371)が選択した駆のクラスはスナイパー。
 銃撃は一撃必殺と聞いたので『鋭覚狙撃』を使うと思っているが、駆はスキル未修得である。
「拙者は雪子・レインフィールドと申す。巷ではコスプレがどうとか言われているでござるが、これが拙者の現実でござる。いざ、参る!」
 雪子との勝負を、小銃を構えて楽しむ駆。

「不意打ち御免!」
 先手を決めたのは雪子の一振りだったが、駆のジャケット掠る程度だった。
 雪子に隙ができたことを見逃さなかった駆は、彼女の右手を狙って発砲。それにより、得物を持てなくするという戦法だ。
「なんの!」
 雪子は即座に反応し、刀で弾を弾いた。
 刀と小銃の戦いはどうなるかと、能力者達は静かに見守っていた。
 雪子が刀を振るえば駆は避け、駆が銃撃すれば、雪子は刀で受け止め、時折フェイントを交えて反撃。
 単調な攻撃にイラついた駆は乱射したが、すぐ弾切れ。シミュレーション用の小銃はマガジンが無いので装填不能である。
「隙あり!」
 雪子の攻撃が駆の腹部にヒット!

『勝者、雪子』

「良い試合でござった。今宵のおにぎりは美味でござろう」
 拳を床に叩きつけ、駆は悔しがった。

●VS星之丞
 学校帰りにゲーセンに良く行っていたことを思い出した星之丞は、駆に昔の自分を重ねた。
「こんにちは、天才ゲーマー君。きみの噂は耳にしているよ、宜しく。僕は昔、JYOというランキングネームで名を馳せたことがあるんだ」
 にっこり笑いながら選択した駆のクラスはファイター。
「今でも時々、これは本当に現実なのかなって思う時があるんだ。だから、実戦とゲームの違いを教えてあげるよ、僕が背負ってきたもので」
 十字架のようなデザインの両手剣を手に、駆が進むべき道を見定めようとする星之丞。
「はじめよう、RUN!」
「望むところだ、JYO!」

 星之丞は開始早々駆の素早さに翻弄されたが、次第に的確に攻撃を受け流した。
 駆のソードと星之丞の両手剣がぶつかり鍔迫り合いとなったが、力は星之丞のほうが勝っているため、駆の体制が崩れた。その隙を突き、両手剣でフィニッシュかと思いきや、頭に血が上った駆がすかさず反撃。
 駆が頭に血が上った時に攻撃力が上がるのは、無意識のうちに覚醒したと思っていいだろう。その反面、命中率は下がるが。
 星之丞は回避する戦法に変え、駆に隙が生じたところ連続攻撃を叩き込んだ。
「この一撃に僕の想いを!」
 カチッ! と左奥歯を噛み、瞬時に覚醒した星之丞は『豪破斬撃』で止めを刺した。

『勝者、星之丞』

 先輩には敵わねぇな、と駆は降参した。

●VS宙華
「女の子だからハンデ頂戴ね」
 可愛く言う宙華に「やだ」と断る駆の選択クラスはグラップラー。

 戦い方や癖は、見学中に掴んだので、事前に戦場配置等は考えてある。
 スナイパーの特性を活かし、宙華は遠距離攻撃を行う。彼女は、休み無く連戦を挑んで駆の持久力を推し量っている。
 近づけさせず、遠ざけさせずの攻撃できない状況に陥った駆は、イライラを募らせた。これは、駆が最も嫌う戦法だった。
「あたし達はね、他人の生死を預かってるんだよ。そのことを理解できないようじゃ、キミはスナイパーどころか、傭兵も無理だね♪」
 等、毒舌マシンガン炸裂状態で戦う宙華は覚醒し、スコーピオンの一発で止めを刺した。畏怖感で威圧させられた駆は、動けなかった。

『勝者、宙華』

「やるわね、後輩。はい、ゴホービ♪」
 コートの全ポケットから棒つき飴を取り出し、駆に差し出す宙華は「ヤな先輩だと思わないでね?」と笑って謝った。

●VSエイト
「面倒臭いから、クラスは自分で考えて」
 エイトの一言に唖然となる駆。
「シミュ戦で何か掴んだものがあるだろ? それを元に、何が良いか考えてみ。何だったら、対戦無しでもいいぞー。変な戦い方しない限り、結果は見えてるからなぁ」
 その言葉にカチンときた駆は、得意の銃撃を活かせるスナイパーを選んだ。
「俺との対戦じゃたいしたもの得られないだろうから、分析の方をちょっと頑張ってもるかな」
 対戦の合間にツッコミどころも探してみるか、とも考えるエイトは、駆なら技術的にどのクラスになっても十分やっていけると思った。

「いくぜっ!」
 機械音声が聞こえると同時に、駆の乱射が始まった。
(「どんな戦い方をしたいかっつー心の問題は、人に聞いてもわかるわけないから自分で考えるしかねーな‥‥」)」
 それは、駆も同じこと。
 問題は、どう戦うかだ。サイエンティストのエイトが、一対一の直接戦闘で敵うわけがない。玄人だったらどうにかできるだろうが、残念ながら、彼は素人同然である。
「ただで負けるわけにもいかんし、一応反撃はするか」
 駆の銃撃に、超機械で対抗するエイトは、スキルを使ったり、逃げたりするなら、ひたすら攻撃した方が勝ち目があると判断したエイトは、超機械で確実に弾をひとつずつ弾いた。
 乱射がたたったのか、素手で戦うしか無くなった駆にもう勝ち目は無い。

「それまで!」

 機械音声がエイトの勝利を告げる代わりに、ソウジの声が施設に響き渡った。
「エイト、ご苦労。勝負はキミの勝ちだ」
 納得できねぇ! と怒る駆。
「駆、おまえ、結局、どんなことがやりたいわけ?」
  朔耶の一言が、駆の頭を冷やした。
「怒った時のきみの戦い方では、近接戦は危険だと思う。一撃必殺の腕を活かしたいなら、スナイパーになることを薦めるよ」
 星之丞の言葉に「そうかも」と納得する能力者達。

「俺は‥‥ただ、カッコ良くなりたいだけだ。そこのおっさんに傭兵の見込みがあるって言われた時はすっげぇ嬉しかった」
「おっさん言うな!」
 まあまあ、とソウジを宥めるすばると諸守。
「惨敗だったけど、良い経験させてもらった。俺、マジで自分のクラスを考えてみる」
 そう言うと、駆は施設を立ち去った。

 最終的に駆が選んだクラスは、スナイパーだった。
 クラスを決めた駆は、来るべき日に備えて実戦施設で特訓中である。

「打倒! ソウジ!!」

 訓練の最中の駆の掛け声に、教官達は「ソウジ中尉のことか?」と首を傾げた。