●リプレイ本文
●意外な結果に
カンパネラ学園教官のアプサラス・マーヤー(gz0032)と、ドラグーン達と1対1で勝負することになったUPC軍中尉兼カンパネラ学園教師のソウジ・グンベ(gz0017)は、事前参加希望者が全員女性であることに驚いた。
希望者は最年少の雪代 蛍(
gb3625)を筆頭に、セキア=ミドラジェ(
gb3549)、高岡・みなと(
gb2800)、これが初依頼となる最年長の梓・弓鶴(
gb3856)の4名。
「希望者が全員女性、しかも10歳の少女が志願するとは‥‥」
参加者名簿を見て、どうしてこうなったのでしょう? と頭を捻ったアプサラス。
ソウジは「だったら、俺がそいつら全員相手するってのは?」と提案したところ「あなた1人でドラグーン4人を相手に対戦ですか!?」とアプサラスは驚いた。
軍人であり、能力者であるソウジはかつては数多くの依頼をこなしてきたので腕前はそれなりだが、1人で集団戦は初めてのことである。
「仕方ありませんね‥‥。では、急遽対戦方法を変更致しましょう。参加希望者には私が当日伝えますので」
「ああ、頼まぁ」
アプサラスが職員室を後にしようとすると同時に、1人の生徒が彼女とばったり会った。
「アプサラス教官、ちょうどいいところで会ったね。ソウジ中尉との対戦だけど、まだ希望者募集中かな?」
黒羽・ベルナール(
gb2862)は、瞳を輝かせてソウジとの対戦を楽しみにしていた。
「残念ながら、希望者募集は既に終了しました」
「そ、そんなぁ〜!」
がっかりするベルナールとアプサラスの様子が気になったソウジは、2人のもとに近づいた。
「キミ、何をがっかりしているんだ?」
「あ、ソウジ中尉‥‥。中尉と対戦したくて、アプサラス教官に参加希望って言ったんだけどもう締め切ったって‥‥」
しょげるベルナールを見て、ソウジは「彼も参加者に追加しておいてくれ。これで締め、ということにしようや」とアプサラスに言うソウジ。
「そうなると‥‥5人との一斉勝負になりますが」
「俺は構わない。それだけ楽しみが増えるってもんだろ?」
そう言うとニィと笑い、待ち遠しいといわんばかりの表情になったソウジを見て「わかりました、そう致しましょう」と呆れたアプサラサスだった。
「あなた、名前は?」
「黒羽・ベルナールだ!」
ベルナールの名前を参加者名簿に付け足すと、アプサラスは職員室を立ち去った。
こうして、ソウジ・グンベ中尉対5人のドラグーンの模擬戦が決行されることに。
●模擬戦当日の驚き
当日。参加者5名が揃ったところで、アプサラスは対戦方法変更の説明を始めた。
「1対1だったのが、急に1対多数に変わるなんて‥‥。俺達、なめられたもんだね。それが教官命令なら従うけどさ」
手加減しないよ! と挑発する弓鶴。
「当初の希望者が全員女性、しかも初戦って人もいるから急遽ソウジ中尉対ドラグーン全員になっちゃったんだ。ボクはそれでもいいんだけど、ソウジ中尉、大丈夫?」
みなとの心配に「俺を誰だと思っている? UPC軍中尉、ソウジ・グンベだ」と腕組みして宣言するソウジ。
「わかった。とりあえず、よろしくお願いします。ボク、やるからには本気でいくからね!」
ベルナールは「ソウジ中尉! 手加減なしでかかってこいっ!」と強気で生意気に挑発。
これだけ言っておけば、攻撃を避けないでソウジが本気で相手してくれるかと思っているようだが、上には上がいた。
「はじめまして、雪代 蛍です。よろしくお願いします」
感心と礼儀正しく挨拶する蛍に感心するソウジだったが、次に口にした言葉で唖然。
「あたしは1番年下だけど、絶対に役に立ってみせる。あたしはもう、何もできなかった頃とは違う。だから、中尉には絶対に負けないからね」
小悪魔のような笑みを浮かべて挑発する蛍に対し、心の中で「可愛くねぇガキ」とぼやくソウジだった。
「そこまで言うんだったら、減らず口叩けないよう全力でいくぜ。最年少だろううが、ドラグーンだからな」
「減らず口かどうか、模擬戦で試してみてよ」
怯えることなく、ソウジの挑発を挑発で跳ね返す蛍。
(「ああ言ったけど、ちょっと言い過ぎたかな‥‥って、何を弱気になってるんだろ。そんなんじゃ駄目じゃないか」)
心の中で、ちょっと反省した蛍。ソウジが本気100%で攻撃されたら、最初に負けるのは自分かもしれないと思ったからだ。
「それでは、ソウジ中尉対ドラグーン全員による模擬戦を開始します。ドラグーンの皆様、準備をしてください」
アプサラスの号令で、ソウジとドラグーン達は一斉に覚醒。
覚醒したソウジの姿は、外見は髪が金色に変わるだけというものだが、その後、サングラスをかけはじめた。
「ドラグーン諸君、挑まれたからには本気で戦うからそのつもりでいろ」
いつものおちゃらけ振りはどこへやら、急に真面目+クールな口調になったソウジ。
月詠と天照の柄を握り締め、漲る闘志を抑えているように見える見事なファイター振り、本邦初公開!
「えーっ? あの人、ホントにソウジ中尉ー!?」
いつものソウジ中尉じゃなーい! と驚くみなと。
「そう‥‥みたいだね。でも、それと勝負は別。皆、頑張ろうな〜!」
いつの気の抜ける様な笑みで、皆と協力して対戦に臨もうとするベルナール。
「とにかく、今は戦いの事だけを考えないと‥‥」
緊張が隠せない蛍。
「ソウジ中尉、お手柔らかに頼むよ。初心者もいるんだからね?」
アハハと笑いながら挑発し、スコーピオンと小銃「フリージア」を構える弓鶴。
「ソウジ中尉っ! 全力でいくから受け止めてねっ!」
テンションが上るとタメ口になるセキアは、でAU−KVを装着するなりそう宣言した。
「では、はじめっ!」
アプサラスが右手を挙げるのが、模擬戦開始の合図となった。
●模擬戦開始!
みなとは即座に『竜の瞳』を発動させると長弓「草薙」を番え、ソウジを接近させないように足元を狙いつつ矢を放つタイミングを狙う。
「高岡も足元狙いか、俺もだ。後衛に近づけさせない、前衛の仲間を撃たないよう注意しないといけねぇな。怪我させたら元も子もないし、怪我させたら俺が怒られるし。ここはチームワーク重視といきますか」
同じく『竜の瞳』を発動させた弓鶴が、スコーピオンと小銃「フリージア」をソウジの足元めがけて発砲!
「ボクも頑張らないと!」
弓鶴と協力しながら、矢を放ちソウジの足止めをするみなと。
「足止めといっても‥‥実戦だから、ソウジ中尉の足に攻撃が本当に当たっちゃったら怪我しちゃうんだよね?」
「それは俺達も同じだろう?」
2人が話している間を狙い、ソウジはみなとを月詠で、弓鶴を天照で攻撃しようとしたが咄嗟にそれに気づいたみなとは長弓「草薙」の柄で防いだ。
「くっ‥‥! ま、負けないんだから!」
みなとが「もう駄目〜!」と弱音を吐きへたり込むと同時に、タイミング良くベルナールが援護に駆けつけた。
「ソウジ中尉、覚悟ー!」
『竜の鱗』を発動させているので、ソウジの攻撃には耐えられる。
ベルナールの目的は、ソウジにダメージを与えることではなく、自分のほうに気を引かせること。
(「力負けして吹っ飛ばされるだろうけど、すぐ体制立て直して反撃だ!」)
頭の中で攻撃方法をシミュレートし終えたベルナールは『竜の翼』で一気に接近すると同時に『竜の爪』を発動させカデンサで攻撃を仕掛けようとしたが‥‥。
「甘いな」
ソウジはバックステップすると『ソニックブーム』2連発!
「うわっ、あっぶな〜! 吹っ飛ばされるのも予想範囲内だよ!」
ソニックブームには要注意してたのでベルナールは咄嗟に避け、ソウジの気を引いて仲間が攻撃しやすいように徹することに。体力がある彼ならではの戦法だ。
「彼、なかなかやりますね」
唯一の男性ドラグーンであるためか、攻撃の要となっているベルナールに感心するアプサラス。
挑発したことを後悔していた蛍だったが、戦いのことだけを考えようと思考を切り替えると『竜の爪』を発動させてから薙刀で払い攻撃。
「挑発したのに、攻撃はその程度か?」
「くっ‥‥さすがに軍人さん。これぐらいの攻撃は読むのは簡単なようで」
天照の刃で薙刀の刃を跳ね返され、少し体制を崩した蛍。
身長差45センチという不利な状況もあり、ソウジの攻撃をかろうじて受け止めている蛍は押され気味。
蛍とソウジの鍔迫り合いを見たセキアは、ソウジに狙うを定めると『竜の咆哮』を発動させて弾き飛ばすなり『竜の翼』を発動させると斬りかかりながら後ろに回り込んで一気に斬撃開始!
「これで一気に勝負をつけるっ!」
咄嗟の不意打ちを喰らったソウジはまだ倒れこんでいたが、かろうじて月詠、天照で
攻撃を弾き返す。それを繰り返しているうち、形勢逆転!
ソウジは立ち上がると、月詠、天照で交互に斬りつけようとしたが、セキアはガードで防いだ。
(「いつまで耐えられるか‥‥なんて言っていられないっ!」)
必死に耐えるセキアのもとに、後衛にいた弓鶴が駆けつけるなりソウジの足元を狙い撃ち。
「ありがとう、助かったよ!」
「礼はまだ早い。とっとと終わらせようぜ」
「弓鶴さんの言うとおりだよ」
みなとは合流すると、セキアに「頑張ろう!」と言い、長弓「草薙」を番え直した。
弓鶴は小銃「フリージア」のリロードをしながら、楽しそうな笑みを浮かべソウジを見つめている。
「俺がいること、忘れてないよね? 残り時間はあとわずかだよ。さっさとケリつけよう!」
ベルナールの言葉に、力強く頷く女性ドラグーン達。
●勝負あり!
ダッシュでドラグーン達に接近しつつあるソウジの足元に、みなとの闘志がこもった矢が放たれた。
「皆、ボクが足止めしているうちにやっちゃってっ!」
もう一矢放とうとしたが、その前に『竜の鱗』を発動させ防御力アップ。
「ボク達ドラグーンを甘くみないでね! 弱くったって、傭兵なんだから!」
攻撃喰らったら痛いんだろうなぁ‥‥と心の中では弱音を吐いているが、決してそれを表情に出さないみなと。
みなと、弓鶴が足止めをしている間、ベルナールはカデンサで攻撃。力はソウジのほうは勝っているが、命中、敏捷性はベルナールのほうが高い。
「これ以上、先には通さない! あたしがやらなくちゃ‥‥絶対に、これ以上通しちゃいけない!」
蛍は『竜の鱗』を発動させると、ベルナールを庇うかのようにソウジの前に立ちふさがった。
「バカ! よせ!」
ベルナールの言葉は、必死に盾役をかってでた蛍に届かなかった。
「仲間思いなのは結構だが、防御だけが戦法ではない!」
情け容赦ないソウジの二刀流攻撃に、蛍はゆっくりと倒れた。
「大丈夫か?」
「ゴメン、全然役に立たなくってさ‥‥」
自分の事は顧みず、怪我の痛みを堪えてベルナールに謝る蛍は自分が泣いていることに気づいた。
「どうしたんだろ? 泣きたくなんて無いのに‥‥泣き虫なんかじゃ‥‥」
必死に堪えていたが、それ以上の言葉は出なかった。
「自分の力を過信するな。それが命取りになることもある」
冷静に言い放つソウジに対し、ベルナールと後衛の援護が来たので一旦離れたセキアは怒りをおぼえた。
「模擬戦とはいえ、その言い方はあんまりだ!」
「私もベルナールさんと同じ意見です!」
2人の意見に対し「模擬戦は遊びじゃない。軍事訓練だ。それを忘れるな!」とソウジに言い返された。
「たしかにそうだろうけどさ、俺達は連戦練磨の軍人さん達とは違うんだよ」
「1人1人の力は弱いけど、皆が集まればそれだけ強くなれるんだ!」
弓鶴、みなとも反論。
「皆で一斉に攻撃しよう! それしか方法がないから!」
「そうしたいけど、私は蛍さんの手当てをするよ! 彼女、怪我してたから。皆、後は任せるね!」
そう言うと、蛍と共に戦線離脱したセキア。
「ボク達3人の力、見せてあげるよ!」
「覚悟するんだな、中尉さん?」
「いっくぞー!」
ソウジとドラグーン3人は、同時に間合いを詰めるためダッシュした。
「キミ達の実力、とくと見せてもらおう! 全力でこい!」
ソウジは一気に勝負をつけるべく、至近距離から『ソニックブーム』を放とうとしたが、みなとは弓でソウジの右手を思いっきり叩いて月詠を叩き落としたが、しっかり握っているので叩き落とせなかった。
「近づけさせるかよっ!」
弓鶴はスコーピオンと小銃「フリージア」を交互に使い分け、少しでもソウジの足止めをしようとしたが、本気を出したソウジは器用に避けた。
(「畜生、これまでかよ‥‥っ!」)
目を閉じ、弓鶴が観念したその時。
「それまで! 模擬戦終了です!」
アプサラスが、制限時間が来たことをソウジとドラグーン達に伝達。
「お、終わったんだね‥‥」
肩の荷が降りたのか、一気に力が抜けたみなと。
●模擬戦の評価は?
「キミ達、ご苦労さん。本気を出したのは、ちょいと大人気なかったかな?」
覚醒を解いたソウジは、カンパネラ学園生徒達が知る明るく、気さくな人物に戻っていた。
『さっき、戦っていた人と同一人物‥‥?』
ドラグーン全員、そう思った。
「では、模擬戦の評価を発表したいと思います」
結果はどうあれ、模擬戦はやれるだけ戦ったので悔いはないと思うみなと。
「本気を出したソウジ中尉相手に、皆さんよく戦いました。終盤で全員一丸となって相手になろうとした姿勢は見事でした。戦いにおいては傭兵達全員の力が必要になりますので、それを忘れないように。良く頑張りましたね」
評価が『優良』だったことに、ドラグーン達は喜び「ありがとうございました!」と声を揃えて挨拶。
「やった! チームワークの勝利!」
大はしゃぎするベルナールは、セキア、アプサラスと共に救急セットで負傷者の手当を。
「マーヤ先生ーの、おっ手伝いーっ♪」
アプサラスの隣では、模擬戦終了間際だったこともありできなかった蛍の手当てをしているセキアがいる。
「集団でも勝てないなんて‥‥さすがベテラン軍人。でも、俺達は負けたわけじゃないからな」
「キミ達も強かった。下手すりゃ、俺が負けてた‥‥」
勝負の結果はどうあれ、充実した気分の弓鶴。
「ソウジ中尉、今度は1対1で勝負だ。俺が強くなるまで待っててくれよ?」
「俺、気短かだからすぐ忘れちまうかもしんねぇ。覚えてたら相手してやるよ」
意地悪と怒る弓鶴に、暖かいココアが入ったカップを差し出すベルナールは「疲れた時は甘い物が一番!」と一言。
弓鶴とソウジに手渡した後は、残る全員にもココアを配った。
「軍人さんを甘く見ちゃいけないってこと、わかった」
「今後ある時、また頑張ろう!」
模擬戦で『実戦を甘く見ると痛い目に遭う』という教訓を得た蛍。
次も頑張ろう! と張り切るセキア。
模擬戦の結果だが、アプサラスは甲乙つけ難かったため『引き分け』と判定。