●リプレイ本文
●仮想実戦訓練参加者の気持ち
「仮想なんだか、実戦なんだか‥‥ややこしい訓練だな」
女性に間違われることもある整った顔立ちと長髪、クールな嵐 一人(
gb1968)は苦笑しながら「どっちなんだ?」と首を傾げた。
何故なら、シミュレーションであるに関わらず、参加するドラグーン達が実際に乗っている『ナイトフォーゲルHA−118翔幻』を地下演習場に持ち込み、実際に騎乗して行うからであるからだ。
「さて、何処までいけるかな」
翔幻の機体ポテンシャルが何処までなのか興味がある、という理由で参加の御門 砕斗(
gb1876)。
「今回が始めての依頼参加なもので、仮想実戦訓練とはいえ、少々緊張してしまいますよ。周りはみんな若い子ばかりですしねぇ。それに、この歳で学生をやるとは思いませんでしたし」
参加者最年長の須磨井 礼二(
gb2034)は、苦笑しながら「しないほうが良かったかも‥‥」と少し後悔しているようで。
「年齢なんて関係ないよ! さぁ! 訓練訓練! シミュレーション、思いっきりやるぞ!」
礼二を励ますのは『爆裂元気娘』の異名を持つしのぶ(
gb1907)。
ケンカ友達の高橋 優(
gb2216)には、とある一件でちょっと意識気味だがそれは内緒。仲良しの紫藤 望(
gb2057)も参加している。
「望ちゃん、シミュレーションだからって手抜かないで、真剣にやりなさいよー? それとー、ユウちゃんが私に勝てる日なんて、来るのかなぁ〜? ふっふ〜ん」
しのぶのおかげで、礼二はやる気が出たようだった。
望は、友人の砕斗、鮫島 流(
gb1867)、遠見 一夏(
gb1872)、一人、先程まで話をしていたしのぶと優が参加しているので大張り切り。
「皆様、シミュレーションとはいえ私は初の戦闘依頼参加ですので、今回はよろしくお願いいたします」
一夏が挨拶すると、参加者達は「こちらこそ」と軽く挨拶をした。
「俺達全員の力で、敵キメラの駆逐をしようぜ!」
人一倍、シニュレーション意欲に燃える流。
「腕に差があるかもしれない‥‥。けど、ボク達にはボク達の戦い方がある」
いずれは他の能力者達と共にたくさんの依頼に行くため、足手纏いにはなりたくないと思っている優は、誰よりも強い意志でシミュレーションに挑もうとしている。
「皆さん、集まりましたね。シミュレーション内容は前もって話してあるので説明を省きます。シミュレーションとはいえ、実際に皆さんの翔幻で行ってもらいますので実戦だと思い真剣に行ってください。幻霧発生装置を使用する場合は、その分練力が消耗しますので使用する時は良く考えてください」
アプサラス・マーヤー(gz0032)の説明後、対キメラ作戦を行った。
「孔雀明王と孔雀戦ですが、2班に分かれて各キメラと戦闘というのはいかがでしょうか? 基本は2体のキメラは引き離して、各個で対処しましょう。一方の班が担当のキメラ撃破後は、他班の支援に加わるということで」
天小路桜子(
gb1928)の作戦に「異議なし」と声を揃えて同意するドラグーン達。
話し合いの結果、以下のとおりに。
A班・対孔雀:流、一夏、しのぶ、桜子、礼二、優
B班・対明王:砕斗、チェスター・ハインツ(
gb1950)、一人、望
●シミュレーション開始
「話し合いは終わりましたか? 今回は、全員同時に離陸していただきます。10分後にシミュレーションを開始しますので、それまで各機メンテナンスを行ってください。兵装を貸与希望の方はいますか?」
アプサラスがそう訊ねると、流は主兵装にソードウィング、副兵装にMSIホーミングミサイル、砕斗は副武装に機剣「黄龍」を、望は主兵装に8式螺旋弾頭ミサイル、アクセサリに高性能サブアイシステム2つを貸与希望したので、アプサラスは整備士に装備品を持ってきてくれるよう頼んだ。
各自の装備点検が済んだところで、離陸準備を行われた。
「しのぶ、この前は負けたけど今度こそ負けないからな! この前はまぐれだろ? シミュレーションでしくじったら、後ろから撃つからな!」
優は憎まれ口を叩き、しのぶに声をかけた。
「少人数での作戦となると、大規模作戦と違う緊張がありますね」
若干緊張気味の一夏。
「皆、俺のTACネームは『Kaiser(ドイツ語の「帝」)』だ。宜しく頼む」
御門→帝、ということでつけたのだが、我ながら単純な付け方だと思う砕斗。
「いくよ、翔幻。キミに命を吹き込んであげる!」
カンパネラ学園での初シミュレータに参戦ということもあり、実戦とは一味違う少し怖い機動を試したいと意気込む望。翔幻とは魂で通じあっているので、強敵だからと怖気付いたりせず全力で戦闘に挑めるだろう。
「行きましょう、翔幻。これが、私達の第一歩です」
皆の足手まといにならぬよう、盾になれるよう頑張ると誓う桜子。
『離陸5秒前。4、3、2‥‥各機、発進せよ!』
アプサラスの号令で、各機一斉に離陸した。
「皆さん、例の作戦を実行しましょう」
桜子の合図と同時に、A班、B班に分かれて倒すべくキメラのもとに飛んだ。
●孔雀との空中戦
礼二は、20mmバルカンで孔雀を徹底的に攻撃しているが、B班のもとに孔雀が向かわないよう、射程角度には十分注意している。
「ユウちゃん、一気に片付けてあっちに合流しようっ!」
「OK!」
礼二の射撃で孔雀の注意がそれた所を、しのぶは8式螺旋弾頭ミサイルを狙い定めて発射。
「‥‥ちゃ〜〜んす♪」
目をキラーン☆ と輝かせ、一瞬の隙を突いたしのぶは「くらえ! 必殺ドリルミサイル!!」と叫んで発射。見事、孔雀の右足にヒット!
それに慢心することなく、引き続きH−044短距離用AAM、突撃仕様ガドリング砲で攻撃。注意をそれた部分だけでなく、背後や下方等、死角になる方向からの攻撃も意識している。
「ユウちゃん! ちゃんと敵を引き付けて!」
「わかってる。さあ、こっちに来い‥‥相手してやるし」
優は孔雀明王から孔雀を引き離すように遠距離からホーミングミサイル、H−112長距離バルカンバルカンで牽制。
「ダメージ与えられればよし、当たらなくても注意をこちらに向けさせればOKだし」
桜子は、孔雀に陽動の攻撃を仕掛けながら孔雀明王を引き離すよう仕向けて攻撃。
(「孔雀がムキになり、追ってきてくれれば良いのですが‥‥」)
その作戦が功を奏したのか、孔雀は桜子に接近しつつある。
敵、味方の位置や各状態を常に気を配り戦域全体を把握しながら、流は仲間と連携しながら孔雀を攻撃している。前衛に位置し、一撃離脱戦法においてホーミングミサイルとMSIホーミングミサイルで撹乱しながら至近距離まで接近し、孔雀の右翼を狙い、ソードウィングで攻撃。
「これでどやっ!」
容赦なくミサイルを発射する流。
一夏の基本は後方支援。距離を置き、味方の援護に当たっている。牽制担当の礼二の攻撃には、スナイパーライフルRで援護射撃し、突撃時はホーミングミサイルを連射し支援。
「続けて行きます! これでどうですか!」
一夏の援護攻撃、その他のドラグーンの攻撃は孔雀に大ダメージを与えた。
空中で格闘攻撃された礼二は、機体依存特殊能力『幻霧発生装置』を使い孔雀との距離を取った。
「どんな機動も逃がしませんよ」
ニコニコと笑いながら、とどめと言わんばかりに射程内に入ったのを確認した後、20mmバルカンを乱発!
「全力っ! 全壊っ!!」
しのぶもとどめ! と言わんばかりにH−044短距離用AAMを発砲!
共に行動していた優だったが、隊列が崩れたため『幻霧発生装置』を使用し、一度回避に専念てから隊列を元に戻し、H−112長距離バルカンバルカンで牽制+再攻撃!
「引っ掻き回されてたまるか!」
優の一撃は孔雀の翼にヒット!
桜子は、孔雀が孔雀明王から十分に引き離されているのを確認した時点で一転して孔雀を囲み、一斉に集中攻撃を掛けて撃破。
孔雀への牽制を担当し、惹き付けることに成功したところを流、一夏が同時に集中攻撃!
「多少派手になるようにした行動は、成功したようですわね」
桜子の作戦は、A班の作戦成功をもたらした。これにより、明王に致命的ダメージを与えることに成功。
「孔雀はまだ倒れたわけではありませんが、明王のもとに向かいましょう」
●美しき明王との戦い
一人は、B班のアタッカーとして明王と戦闘中。
B班は、A班がが孔雀を仕留めるまでは牽制することに決めている。艶消しの白をベースカラー、赤と黒のラインが走っているカラーリングの翔幻は、孔雀明王を倒すべく
大空を駆け抜ける。
MSIバルカンRを連射しつつ、一人は孔雀明王に妙な真似をさせないようにしている。
「余所見するなよ美人な神様! あんたの相手はこの俺だぜっ!」
うまく分断できないと判断した時は、遠慮なく攻撃するに限る!
B班内での連携としては、味方が狙われた場合MSIバルカンRの火線で妨害、ダメージを受けた場合は、位置を入れ替えて狙いを分散させ『幻霧発生装置』を使用。
「嵐さん、ここは僕に任せてください!」
「Kaiser、只今見参っ!」
チェスターは3.2cm高分子レーザー砲で牽制しながらR−P1マシンガンと並行して弾幕を張るように使い、全弾は当てられなくとも、撃った数発をかすらせることでダメージを与えていく作戦に。ホーミングミサイルは初撃に使用し、こちらが接近するための目きらまし的に使用。R−P1マシンガンは弾幕用。3.2cm高分子レーザー砲と共に弾幕を張りつつ、敵に少しずつダメージを与えるとともに、一人のKA−01試作型エネルギー集積砲の射線に追い込むように発射。
砕斗はスナイパーライフルRで孔雀明王の行動を阻害し、H−112長距離バルカン
で足止めして発射し続けた。
「ちょこまかと動くなっ! 鬱陶しいっ!」
成人女性並みの大きさとはいえ、光り輝く大きな翼を利用して翔幻の攻撃を器用に避けている。小さいとはいえ、侮れないキメラだ。
「TAC:黒猫登場だよ! 小さいからって手加減しないんだからっ!」
望は距離をとり、孔雀明王に狙われないよう対峙。牽制役二人の攻撃はH−112長距離バルカンで孔雀明王の攻撃を妨害している。
H−112長距離バルカン、ホーミングミサイルで弾幕を張り、攻撃役の命中率を揚げるべく援護した。
その時、孔雀明王が手に持っている蓮華の花に気を集中させた。
「皆、光波動が来るよ! 散開しようっ!」
望の忠告と同時に光波動が離れたたが、素早く避けたB班はかろうじて避けることができたが接近していた一人のみ僅かなダメージを受けた。
「畜生‥‥!」
悔しがる一人。
「うー、狙い撃ちなんてさせないつもりだったのに! よくも一人さんをっ!」
「望、幻霧発生装置を使うぞ! 準備はいいか?」
「俺も使用させてもらうぜ」
砕斗が二人と共に幻霧発生装置を使用しようとした時、孔雀を倒したA班のメンバーが合流した。
「幻霧発生装置ですが、僕も使いますよ」
こうして一人、望、砕斗、礼二が同時に幻霧発生装置を使いつつ、孔雀明王の注意を引き付けて一斉攻撃を行うことになった。
「孔雀明王の死角から攻撃できるようにするため、間合いを取るための隙を作ります。明王さん、ちょっとこちらを向いてくださいね」
微笑を浮かべながら、礼二は孔雀明王を誘き寄せるとG放電装置ミサイル等で孔雀明王の動きが止まった時を狙い、それを見計らった砕斗の翔幻は頭上で空中変形し、勢いをつけて黄龍を気合一閃!
「でぇぇりゃぁぁぁぁ!!」
渾身の一撃は、孔雀明王の右翼をバッサリと切り裂いた!
「Auf Wiedersehn‥‥。こっちがサヨナラにはなる気はねえがな‥‥」
片翼を失っても、孔雀明王の機動力はまだ衰えていない。
「敵が小さいためこちらの攻撃は、牽制とはいえ当たりにくいと思いますので、当てるというよりも、特定の方向に誘導する感じで攻撃していきましょう。誘導する方向は、嵐さんの攻撃の射線として牽制中も嵐さんと敵の間に入らないようにし、こちらからの攻撃をしやすくします」
チェスターの案に、反対する者は誰もいなかった。
「手負いの孔雀が来たようですね。孔雀明王を撃破した後に倒しましょう」
「了解。幻霧発生装置使用者、準備はいいか?」
「翔幻で戦うには小さすぎるけど、準備OKだよ!」
「翔幻、キミに魂があるなら応えて! 皆と共に戦おう!」
「こっちは準備OKだ」
一人、しのぶ、望、砕斗が一斉に孔雀明王に狙われないよう『幻霧発生装置』を発生させ、一気に孔雀明王めがけて突進した。
「幻霧の術、なんてな」
砕斗の一撃が止めを刺したのか、孔雀明王は力尽きて落下した。
●手負いの孔雀戦
孔雀明王を倒しても、手負いながらもドラグーン達に立ち向かおうとしている孔雀が襲い掛かった。
豪雨の中、司会が悪いので6メートルある孔雀で見失う可能性があるので、全員見失わないように注意して探索している。真っ先に見つけたのは望だった。
「うー、狙い撃ちなんて絶対させないよっ!」
ホーミングミサイル、H−112長距離バルカンで容赦なく孔雀を射撃。
そこに、駆けつけた優が合流。
「人数が増えた分だけ、積極的に攻撃に加われるってもんだ。一発大きいのを当ててほしいもんだし!」
そう言うと、狙いを定めてホーミングミサイルを発射! その攻撃は、孔雀の腹部にヒットした。
「これで終わりです‥‥お逝きなさい!!」
にっこり笑いながらも、礼二がブーストと幻霧発生装置の併用で一気に孔雀に接近し、G放電装置で止めの一撃!
力尽きた孔雀は、ゆっくりと落下し、地面に叩きつけられた。
『シミュレーション終了。各自、着陸時点に戻るように』
アプサラスの終了アナウンスを聞いたドラグーン達は、離陸した位置に戻った。
●総合評価
「皆さん、お疲れ様でした。人間大のキメラと6メートルの孔雀キメラを相手に良く戦いました。機体損傷ですが、思ったより少なかったようですね。機体依存特殊能力を使用された方は、実際に練力が消耗しているのでごゆっくりお休みください。シミュレーションの結果ですが、全員『優良』とします」
その理由としては、チームワークの良さ、キメラの分析を冷静に行ったうえの攻撃、息の合った連携攻撃がポイントが高かったようだ。アプサラスは、この点はこれからも実戦の際に重視してほしいと締めくくり、結果発表が終わった。
「では、これで解散します。次回のシミュレーション開催は未定ですが、その時も参加されることを楽しみにしておりますよ」
そう言うと、アプサラスは地下演習場を後にした。
「翔幻も良いナイトフォーゲルだと思うけど、他の奴にも乗ってみたいな。AU−KV対応の新型は出ないのか?」
一人の一言に、ドラグーン達は新たなAU−KV対応のナイトフォーゲルが登場するのを楽しみにしていた。