タイトル:能力者ばあちゃんと共にマスター:竹科真史

シナリオ形態: ショート
難易度: やや易
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2007/12/05 00:47

●オープニング本文


 とある田舎町にある本郷家。
 そこで悠々自適に隠居する80歳のスズ子ばあちゃんは、毎年欠かさず遠く離れた大学付属病院に健康診断を受けに行っている。
 一週間後に送られた検査結果は、すべて異常無し。高齢者としてはかなりの健康状態だった。
 検査結果を見た家族は、目玉が飛び出るほど驚いた‥‥りはしなかった。
 毎度のことなので「今年も健康で良かったね」と喜んでいる。

 その頃、スズ子ばあちゃんが健康診断を受けた大学付属病院では‥‥。
 彼女の全身レントゲン撮影を行った医師が、それを見て驚いていた。信じられないことに、高齢にも関わらず十代の若者と大差ないほどなのだ。
「老婆のものとは思えない! これは、もしかすると‥‥」
 レントゲン写真を手にした医師は、恩師でもある外科医教授の元に向かい、それを見せた。
「これは‥‥本当に80歳女性のものなのかね!?」
「はい。僕も、これを見て驚きました。外見は歳相応なのですが、骨は現代の若者より丈夫なのです!」
 長時間話し合った二人が出した結論は、スズ子ばあちゃんに能力者適性があるかも、ということだった。

 翌日、二人は本郷家を訪れ、スズ子ばあちゃんに当病院で能力者検査を受けてくださいと頼んだ。
 家族は反対したが、スズ子ばあちゃんは「受けるのはええが、タダじゃろな?」と、診察料の心配を。
 適正検査は無料ですので‥‥という医師の言葉を聞きなり、スズ子ばあちゃんは快く受けることにした。
 どうせ能力者になれるワケがないと高を括った家族は、スズ子ばあちゃんの意思を尊重し、検査を受けることを承諾した。

 三日後。速達で届いたスズ子ばあちゃんの結果は‥‥家族の予想を大きく裏切った。

「これを見よ!」
 得意気に、検査結果を家族に見せるスズ子ばあちゃん。
 そこには、細かいことを省いて見ると「陽性」書かれていた。
「私は、能力者になることに決めたのじゃ! お国の役に立つためにな!」
 突然の爆弾宣言に吃驚仰天した家族は、暫くして落ち着きを取り戻すと同時に必死に止めた。
 必死に抵抗するスズ子ばあちゃんだったが、疲れたのか大人しくなり、能力者になることを諦めた‥‥かに見えた。
「私は、絶対に能力者になると決めたんじゃ」
 深夜。
 安心して枕を高くして眠る家族の様子を確認したスズ子ばあちゃんは、荷物をまとめると、書き置きを残さずにこっそり家を出た。
 その後、遠く離れた都会の医療施設でエミタを体内に埋め込んだスズ子ばあちゃんは、晴れて能力者の一員となった。

 その翌日。
 UPC支部にある依頼斡旋モニターを見て、どの依頼を引き受けようかと悩むスズ子ばあちゃん。
「これなんか良さげじゃのう」
 スズ子ばあちゃんが選んだ依頼は、近畿に出没しているカラス型キメラ退治だった。
 この依頼を選んだのは、近畿に三年前に亡くなったじいちゃんと初めて会った思い出の地があるからだ。
「絶対にこの化け物を退治して、じいさんとの思い出の場所を守るんじゃ!!」
 
 スズ子ばあちゃんはやる気十分だが、実戦経験は当然ゼロだ。大丈夫なのだろうか?

●参加者一覧

セシリア・D・篠畑(ga0475
20歳・♀・ER
七瀬 帝(ga0719
22歳・♂・SN
クラリッサ・メディスン(ga0853
27歳・♀・ER
二階堂 審(ga2237
23歳・♂・ST
青山 凍綺(ga3259
24歳・♀・FT
亜鍬 九朗(ga3324
18歳・♂・FT
御影 柳樹(ga3326
27歳・♂・GD
蒼仙(ga3644
27歳・♂・FT

●リプレイ本文

●ばあちゃん傭兵の初陣
「すっごく緊張するのぉ‥‥」
 近畿を訪れた高齢新米傭兵の本郷スズ子は、長弓を強く握り締め、初めての依頼に緊張気味である。
「そのお気持ち、わかります。私も初めての依頼ですから。どうぞ、宜しくお願いします」
 スズ子と同じく、これが初陣となるセシリア・ディールス(ga0475)も緊張を隠せない様子。
「いくつになっても、若さを忘れないスズ子さんには感心しますわ。私も、ああいう風に年を重ねたいものです。宜しくお願いしますね」
 クラリッサ・メディスン(ga0853)は、スズ子の行動力に感心している。
「共に戦う仲間として頑張ろう、スズ子さん」
 実戦経験が無いとはいえ、スズ子を能力者の一員として認めた亜鍬 九朗(ga3324)は、能力者として登録されているのなら問題無いと思った。
「今回の依頼は近畿に出没するカラス型キメラの殲滅か‥‥」
 了解、と誰にも聞こえないように呟く九朗は、戦闘態勢を整える。
「蒼仙(ga3644)だ、宜しく。ファイター‥‥まぁ、サムライかね? 今回は、銃を使うけどね」
 簡単に自己紹介を済ます蒼仙に、スズ子は、今時のサムライは随分ハイカラじゃのぉと思った。
「ん〜カラスキメラも、やっぱりゴミとか荒らしてるさ〜? 三本足のカラスだし『ヤタガラス』って呼んどくさ〜。自己紹介がまだだったさ〜。はじめましてさ〜スズ子さん。僕は御影 柳樹(ga3326)って言うさぁ〜。同じく実戦は始めてかな? 宜しくお願いするさ〜」
 握手を求める巨躯のエセ琉球弁の道産子、柳樹に戸惑いつつ握手するスズ子。
 柳樹がカラスキメラを『ヤタガラス』と名付けたのは、日本神話に登場する八咫烏をモチーフに作られたキメラと推測したからだろう。柳樹の言葉から、能力者達はキメラを『ヤタガラス』と呼ぶことにした。
「お前さん、八咫烏を知っているのかい?」
「だいたいだけどさ〜」
 若いのに日本神話を知っておるとは感心じゃと柳樹を褒めるスズ子だったが、寒さが身にしみているのか、全身をブルッと振るわせた。
「これをつけてください。あったまりますよ。俺は二階堂 審(ga2237)、宜しく」
 その様子に気づいた審は、あったか手袋を貸した。「事前準備の鬼」の称号を持つ彼ならではの準備の良さだ。スズ子が手袋を気に入ったようなので、あげることにした。
「今回のキメラは、光り物に反応するようなので、金属の類は外しておいたほうが良いですよ」
「金歯は大丈夫かのぉ?」
「さ、さあ‥‥口を開けなければ大丈夫じゃないか?」
 困った審は、誰か話題を振ってくれよと心の中でぼやいた。
「金歯は大丈夫だろうね。僕は、存在そのものが光りモノの美形スナイパー、七瀬 帝(ga0719)。スズ子さん、皆、どうか宜しくお願いするね」
 優雅に礼をしながら自己紹介する帝。
「派手な点と自己陶酔な点を除けば、若い頃のじいさんにそっくりじゃ」
「え? そ、そうかい?」
 そう言われた帝は、美しさをちょっとだけ崩された。
 青山 凍綺(ga3259)は、頑固な一面があるスズ子に、幼い頃によく遊んでくれた自分の祖母の面影を重ね、どこか似ている気がすると気づく。
「青山 凍綺です。宜しくお願いします、スズ子さん」
 スズ子の安全を確保しつつ、気が済むように頑張ってもらいたいと思う凍綺は、祖母孝行をするつもりで今回の依頼に参加した。

●殲滅作戦
「ヤタガラス殲滅の作戦だが、囮役で誘き出し、誘き出されたキメラを長距離攻撃という感じで良いか?」
 長距離攻撃が出来る者がいれば、後方から支援攻撃してほしいと提案する九朗。
 後方での攻撃が可能なのは、スズ子を除けば帝、蒼仙が適任といえる。
「俺は、それで構わない。スズ子さん、俺と亜鍬、御影が囮としてヤラガラスを惹きつけるから、その隙を隠れて狙い、カラスを一羽ずつ撃ち落としてくれ。隠れている間にわからないことがあれば、側にいる奴に色々聞いてくれれば良い。一度撃ったらカラスは逃げるだろうが、皆とタイミングを合わせて一気に頼むよ」
 子供に言い聞かせるように、優しく丁寧な説明をする蒼仙の言葉は、自分を信頼していている証拠だと認識したスズ子は、コクンと頷いた。

「俺も同じことを考えてた。囮役がヤラガラスを『ある地点』までおびき寄せて、そこで包囲・殲滅するというものなんだがね。そのある地点に隠れられそうな場所があった場合は、残りはそこに隠れて待つ。隠れられそうな場所が無い場合は、シートとかに周辺の落ち葉とかを貼り付けてカモフラージュし、それを被って待機しておくというのはどうだい? それで、ヤタガラスがやってきたと同時に、多方向から一斉に攻撃。効率良いとは思わない?」
 審の提案は「逃げようとするヤタガラスを優先攻撃」するというものだった。
 柳樹は、辺りを見回して隠れられそうな場所を探すが、それらしき場所は見つからなかった。
「隠れる場所は、準備したほうが良さそうさ〜。僕は、こういうのは得意だし手伝うさ〜。どこまで同じか判らないけど、烏は黄色い色が見えないらしいから黄色いシートを用意して、隠れ場所を作ってもらうさ〜」
「そうするしか無さそうだな」
 後衛陣の潜伏ポイントとし、シートに木の葉や枝でカモフラージュを施せば隠れ場所として最適では、という蒼仙の提案に「それも良いさ〜」と了承する柳樹。
「シートの準備をしている間のことは、私に任せてください。戦闘の際には前線に立つ事が出来ませんが、引き寄せたヤタガラスに対して超機械を使って支援攻撃は可能です」
 その間、スズ子に万一のことがあった場合のフォロー体制準備をするクラリッサ。
 クラリッサを信頼した囮役の三人、審は、隠れ場所の作成に取り掛かった。

●スズ子との会話
「スズ子さんのクラスであるスナイパーは、作戦、武器、クラスの特性としては後衛が適当です。蒼仙さんがいうように、後方から狙いを定めて一羽ずつ仕留めてください」
 クラス特性の説明を付け加え、スズ子に支援を頼むセシリア。
「スズ子さんの思い出の場所の地形がわかれば、ヤタガラスの有効な攻撃方法がわかるかもしれないんだけど‥‥ゆっくり、話している暇は無さそうだね」
 帝はそう言うが、状況判断からして、思い出話をしている場合ではないだろう。
 本来ならば、スズ子には戦いに赴かず自分達を優しく見守ってもらいたいところだが、思い出の地がキメラに荒らされたということならば、自分で決着をつけたいという気持ちもわからなくはない。
「僕は銃使いだけど、同じスナイパー同士、力を合わせて頑張りたいね。スズ子さん」
「そうじゃな」
 凍綺は、スズ子のプライドを刺激しないよう、ガードと暴走しないよう牽制するという目的を悟られないよう気をつけながら側にいる。能力者になったのは最近でも、豊かな人生経験を持った先輩、という敬意が窺える。
(「傍にいる理由は、囮役の方々が万が一倒れたら一緒に駆けつける為に後方に待機‥‥とでも言いましょうか」)
 フッと微笑み、セシリア、帝と会話をするスズ子を見る凍綺。
 クラリッサは、スズ子が緊張しすぎない程度に彼女の話し相手になり緊張を和らげている。戦法話の合間に、スズ子は亡き夫の昔話と今回の依頼が、スズ子の新たな思い出になるのであれば良いと願いつつ熱心に話を聞いていた。

 その間、セシリアが何かを察知した。
「皆さん、ヤタガラスが来ました‥‥」

●殲滅開始!
 九朗は、囮役として行動するために理のイヤリングを装備し、光を反射させてヤタガラスを誘い出すことに。
「さて‥‥と、始めるか」
 後衛陣からやや離れた場所で待機していた蒼仙は、ポリカーボネートを構えて日光を反射させてヤタガラスを挑発した。反応たので、九朗と共に、後衛陣のいる方向へ移動し、ヤタガラスを誘導。後衛陣と合流するまで、二人は防御に専念している。
「何だか、俺を見る目が異様に怖い‥‥」
 針金等の金属を巣作りの材料としているため、カラスは光り物に反応する。キメラ化したとはいえ、本来の習性は残っているようだ。

 シート前では、走り回るということもあり、柳樹は屈伸等の準備運動をしっかり行っていた。
「スズ子さん、行ってきますさ〜。心配ないかもしれないけど僕も初めてだし、あんまり硬くならずにいこうさ〜。それじゃ、僕はヤタガラス退治に行ってくるさ〜」
 スズ子を軽く激励し、九朗の元に向かう柳樹も、理のイヤリングをつけている。念のため、スプーンとか適当な光り物も用意している。餌として、ハムを懐に忍ばせて、いざという時はこれで気を引く作戦も練ってある。カラスは雑食性なので肉も食べるので、ハムを使う作戦も有効といえる。
 目を凝らし、ヤタガラスを発見した柳樹は自分に気づくまで接近した。身に付けている理のイヤリングに気づいたヤタガラスは、全速力で彼の元に向かって来たので、仲間が待機している方角に『瞬天速』を織り交ぜて逃げながら誘導。
「ここまで来るさ〜!」

「御影さんが来たようだね。皆、戦闘準備は良いかい?」
 超機械をスタンバイさせながら、審が皆に尋ねる。
「私は、いつでも大丈夫じゃ」
 セシリアとクラリッサも、スズ子と同じくスタンバイOK状態だ。
「僕の存在自体が派手だからね。こうでもしないと、ヤタラガスが来ないかもね。いくよ、ゴージャスパワー、オーン!」
 掛け声と同時に、帝の全身が淡く光り、背中に天使の羽の形をした金色の光が纏う。
「あれは何じゃい?」
「エミタを使用し、能力者の意思で即座に能力を発現する『覚醒』というものです。あれは、七瀬さん独自の能力だと考えてください」
 右隣にいたクラリッサの説明に「すごいのぉ」と感心するスズ子。
「皆の攻撃が当たらないくらいに飛ばれたら、僕らの攻撃にかかってます。いきますよ、スズ子さん!」
 スズ子に声をかけつつ『鋭覚狙撃』を使って一羽ずつ確実に狙いを定めて攻撃する帝。
「私達も行くぞい! 神のお使いである八咫烏様を化け物にするとは、何たるバチあたりな!!」
 長弓をつがえ、狙いを定めてヤタガラスを射抜くスズ子。素早い動きで飛行するヤタガラスの羽の付け根を掠っただけとはいえ、見事な命中率だ。落下したヤタガラスは、セシリアの超機械一号により撃退された。
 スズ子、帝が的確に狙いを定めてヤタガラスを撃ち抜き、セシリア、クラリッサ、審が超機械で止めを刺しつつ『練成強化』での武器強化を行っている。

 自らのダメージを減らしつつ、後方支援の能力者の元に駆けつけた九朗は、スズ子達が撃ち落したヤラガラスの止めを刺している。
「スズ子さん、なるべく前に出ないように。スナイパーとしてのスズ子さんの技量、期待しているよ」
 わかっとるわい、と言いつつ、スズ子は長弓での攻撃を怠らない。
「おいおい、やり逃げは無しだぜ。俺を忘れてもらっては困るな」
 追いついた蒼仙は、逃げようとするヤタガラスにスコーピオンで近距離射撃して撃ち落した。
「僕も倒すさ〜。皆、頼むさ〜!」
 柳樹も、スズ子達が狙い打ったヤタガラスをファングで仕留めた。
 その間、能力者達はヤラガラスに嘴で突かれたり、鋭い鉤爪で引っ掻かれたりしたが、随時、スズ子の様子を観察し、予測できなかった事態になっても慌てず、騒がず、冷静に対処する審達サイエンティストが『練成治癒』で治療を施したため、苦にもならなかった。

 素早い動きに手間取ったものの、スズ子の的確な命中率のおかげで、十羽のヤタラガス撃退は、時間がかかったが無事終了した。
「お疲れ様でした、スズ子さん。初陣で大活躍なんてすごいですね」
 スズ子を労わるクラリッサに続き、他の能力者もスズ子を褒めた。

●じいさんとの思い出話
「お疲れ様でした。皆、スズ子さん」
 始めの挨拶同様、優雅に礼をしながら皆を労う帝。
 ヤタガラス撃退後、クラリッサがスズ子に思い出話を聞かせて欲しいと頼んだ。
「よろしければ、亡きご主人さんとどんな想い出を作ったのか、話してくださいませんか? そこまで大切なさっているんですから、さぞや素敵な想い出なんですよね」
「俺も聞きたいね。さぞ、素敵な思い出なんだろうね」
 興味津々の帝。
「そこまで言うなら、話そうかのぉ」
 遠い目をしながら、スズ子は亡きじいさんとの馴れ初めを話し始めた。

 近畿出身のスズ子と若かりし頃のじいさんと出会った場所は、八咫烏を祭神とする神社だった。じいさんは、各地の神社巡りを趣味だった。
「じいさんは、日本神話の学者だったんじゃ。その当時は神のお使いである八咫烏に関する論文を書くとかで、近畿に良く来ていたもんじゃ」
 最初は日本神話馬鹿と思っていたスズ子だったが、じいさんの話を聞くうちに心惹かれ、自ら案内を買って出たこともあった。それがきっかけで交際を始め、数年後に結ばれた。
「近畿には、八咫烏に関する神社が多いさ〜。たとえば‥‥どこだったか、忘れたさ〜」
 頭を掻きながら、豪快に誤魔化し笑いをする柳樹。
「そこのでっかい兄ちゃん、お前さんの言うことは合っとるわい。時間があれば、お前さんとは是非語り合いたいもんじゃ。知的そうじゃしのぉ」
「照れるさ〜」
 誤魔化し笑いから照れ笑いに変わる柳樹の表情に、皆は自然と微笑んだ。

「スズ子さん、ご家族の方に報告を兼ねた連絡をしてみてはどうでしょう? 聞けば、家を飛び出して能力者になられたとのこと。今頃、皆さん心配されているのではないでしょうか」
「俺もそう思うな。きっと心配していると思うよ」
 凍綺と帝の言葉に「それもそうじゃのぉ」と納得するスズ子だったが‥‥。
「そんなことなら、お前さん達の誰かに私の勇姿を撮るよう、頼んでおくべきじゃったわい!」
 しまったぁ! と悔しがるスズ子に、審は二枚の写真を見せた。
「ポラロイドで良ければあげるよ。こういうのでも良いかい?」
 差し出されたポラロイド写真に写っていたのは、一枚は凛々しい表情で長弓をつがえ、ヤタガラスに狙いを定めているスズ子の勇姿、もう一枚は、ヤタガラスを撃退して大喜びのスズ子とセシリア、クラリッサが写っているものだった。
 さすがは「事前準備の鬼」。侮りがたし!
「ありがとうよ。この写真、大切にするぞい‥‥」
 感激したスズ子は、写真を見るなり泣き出してしまった。
「スズ子さん、あんたは立派な能力者だ。自信を持て」
 スズ子の涙を拭いながら、蒼仙が励ます。
 それに続くように、皆も「その通り」と同意する。
「そういうあんたも、立派なサムライじゃ‥‥」
 まだ涙は止まらなかったが、精一杯の笑顔で蒼仙に言うスズ子。

 数日後、本郷家にスズ子からの手紙が届いた。
「おばあちゃん、元気そうで何よりだね。でも‥‥」
 同封された写真を見た家族は、金歯を見せてニカっと笑うスズ子が、背後にいるカラスに良く狙われなかったなぁ‥‥と思った。

 本郷スズ子の初依頼:成功!!