タイトル:【入学式】月見衣装披露マスター:竹科真史

シナリオ形態: イベント
難易度: やや易
参加人数: 9 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2008/09/28 09:36

●オープニング本文


 カンパネラ学園入学式での部活説明会が近いということもあり、各部の部長はどんなところをアピールしようかものすごく悩んでいた。
 運動部は模擬試合、模範演技などがあるので何とかなるだろうが、文化部ともなるとワンパターンになりがちなのが問題である。
 文化部の中でもっとも悩んでいるのは、部員数が少ない手芸部部長だった。
 テーマは毎年『秋の衣装』と決めているのだが、部員達がこの日のために作成した衣装は数が少ない。
 困った手芸部部長は、食堂のおばちゃんである稗田盟子に相談してみた。盟子は肝っ玉母ちゃん気質ということもあり、生徒達の母親代わりのような存在だ。
「部活説明会の衣装のバリエーションを増やしたいのね〜? 私に任せて〜。こういうのにうってつけの人がいるから〜」
 盟子はそう言い出すと、エプロンのポケットから携帯電話を取り出してある場所にかけた。

 ラスト・ホープにある『ヒエダ貸衣装店』は、6月から毎月行っているコンテストの企画会議中だった。
「はい〜『ヒエダ貸衣装店』‥‥って、メイちゃんじゃな〜い? どうしたの〜?」
 携帯に出たのは『ヒエダ貸衣装店』の店主、ヒエダ夫人こと稗田令子。盟子と令子は従姉妹である。
「今度、うちの学校で入学式があるのよ〜。そこでね〜レイちゃんに協力してほしいことがあるのよ〜。レイちゃんとこの貸衣装店で〜6月の結婚式、7月の浴衣、8月の水着のコンテストやってたでしょ〜? 評判いいって話じゃな〜い? 9月も何かするんだったら〜うちの学校の子に協力してくれな〜い?」
 そう切り出すと、盟子は本筋である『手芸部の衣装に協力してほしい』という話を。
「今ね〜今月のコンテストをどうするか悩んでいるのよ〜。テーマは『お月見』なんだけど〜」
「お月見〜? あら〜今の時期にちょうど良いじゃな〜い。だったら〜コンテストをうちの学校でやってくれな〜い? いろんな子がいるから〜モデルには困らないわよ〜?」
 悪い話ではないと判断したヒエダ夫人は「楽しそうね〜♪」と盟子の申し出を承諾した。
「決まりね〜♪ 学園長や先生方には〜私が説明するわ〜。じゃ〜ね〜♪」
 こうして、部活説明会の一環としてカンパネラ学園の体育館を借りて『9月の衣装コンテスト』が行われることになったが‥‥。
「コンテストはまずいわね〜。そうだわ〜、衣装披露会にしましょう〜♪」
 参加者が楽しみやすいよう、ヒエダ夫人は『コンテスト』を『衣装披露会』に変えた。
 そうと決まれば、早速準備して行くわよ〜! と張り切ったのは良いが‥‥カンパネラ学園の場所がどこにあるかわからないので、ULTにそこまで連れてってとお願いする羽目に。
 ついでにと言わんばかりに、UPC本部のとある人物にも依頼要請。
 その人物とは‥‥。

 UPC本部内のデスクで始末書を書いているのは、UPC軍中尉のソウジ・グンベ。
 彼宛てに携帯メールが届いた。差出人は言うまでもない。
『ソウジ君へ
 毎度お世話になってます。『ヒエダ貸衣装店』店主の稗田令子です。
 9月某日、カンパネラ学園で当店主催の衣装披露会を行うことになりました。
 今回もソウジ君に司会を頼みたいので、ご都合の良い日をご連絡ください』

「今月もやんのかよ‥‥」
 携帯ディスプレイを見ながら、ソウジはふか〜い溜息をついた。
 その様子を見た上官は、今月も引き受けておあげなさいと言ったが、その言葉はソウジにとって悪魔の囁きに思えた。

 カンパネラ学園で行われる衣装披露会では、どのような衣装が見られるのだろうか。

●参加者一覧

/ リュイン・グンベ(ga3871) / 百地・悠季(ga8270) / 門屋・嬢(ga8298) / ユーリ・ヴェルトライゼン(ga8751) / 天(ga9852) / 朔月(gb1440) / 千祭・刃(gb1900) / 釧(gb2256) / 高岡・みなと(gb2800

●リプレイ本文

●説明会開催数日前
 入学式だが、大規模作戦の影響により延期されることとなった。
 これに内心ホッとした部活はいくつかあり、そのひとつに手芸部もあった。
 手芸部員達は、入学式の翌日に行われる部活説明会で『自分達がこれまでに作った衣装を披露する』ことに決めたがどう説明して良いのかわからずに困っていた。
 手芸部部長は食堂のおばちゃん、稗田盟子に相談したところ
「あたしの従姉妹がね〜貸衣装店の店主やっているの〜。協力してくれるかどうか聞いてみるわね〜」
 そう言うと、盟子が携帯を取り出して従姉妹の稗田令子の携帯にかけた。
 数分後、令子が協力OKという返事が。
「良かったわね〜」
「ありがとうございます!」
 こうして、令子が店主の『ヒエダ貸衣装店』の協力を仰ぐこととなった。
 手芸部が作成した衣装や小物では披露するのには物足りないが、『ヒエダ貸衣装店』の協力があれば稗田盟子にお玉、もとい、鬼に金棒だ。
 本来の主催は手芸部なのだが、協力してくれる『ヒエダ貸衣装店』主催に変更。
 手芸部部長は、部員達にこのことを伝えると「私たちも衣装を何点か出しましょう」と衣装選びを始めた。
 テーマは『月見』なので、月夜に似合いそうなものを探すのは苦労した。
 
 手芸部の細かいことを説明していなかったので、簡単に説明しよう。
 和裁、洋裁といった裁縫全般(コスプレ衣装含む)、編み物、アクセサリ(コスプレの小道具含む)等、多種多様なものを作成、デザイン考案が主な活動内容だ。
 さすがに全部は説明しきれないので、代表的な『洋裁』『衣装デザイン』の2点を紹介することに。
 説明会を行う学園講堂ステージで行うことにしたが、説明会の最中では狭いので終了後に行うことに。
 この件に関しては、手芸部部長が頭を下げて申請した甲斐あって受理された。

●打ち合わせ
 衣装披露会前日、協力者であるヒエダ夫人こと稗田令子と司会担当のUPC軍中尉、ソウジ・グンベ(gz0017)が学園を訪れた。
「稗田令子店長とソウジ・グンベ中尉ですね? お待ちしてました」
 手芸部部長は2人を出迎えた後に部室に案内しようとしたが‥‥『ヒエダ貸衣装店』の荷物が多いので手芸部作成の衣装合わせは部室、貸衣装の衣装合わせは隣の空き部屋で行うことに。
 部長は携帯を取り出すと、部室で待機している部員の1人に「2部屋に分かれて打ち合わせをします」と伝えた。
 荷物を別室に置いてきた後、部長とヒエダ夫人、ソウジの3人が部室に着いた。
「衣装披露会に参加希望された皆さん、明日はどうか宜しくお願いします。私の隣にいる方は『ヒエダ貸衣装店』店主の稗田令子さんで、後ろにいる方はUPC軍のソウジ・グンベ中尉です。ソウジ中尉には、披露会の司会を担当していただくことになっています」
 宜しくお願いします! と声を揃え、ヒエダ夫人とソウジに頭を下げる手芸部員達。

(「本っ当に忙しい男だな、ソウジは‥‥」)
 参加者の中で唯一ソウジと親しい存在のリュイン・カミーユ(ga3871)は、7月から『ヒエダ貸衣装店』主催の衣装コンテストの司会を担当しているソウジを見てそう思った。ソウジ自身断りたいのだが、運悪く上官に司会を頼む場面のモニターを見られているので強引に引き受けざるを得ない状況だった。ああ、厳しく、悲しい上下関係‥‥。
(「ヒエダ夫人に頼まれて司会をやっていると分かっていても、付き合ってるのだから仕方ないのだが‥‥ヒエダ夫人、ジェラシー‥‥。ソウジ、司会指名料を請求して我に何か奢れ」)
 手芸部部長、ヒエダ夫人と共に当日の演出プランについて話し合っているソウジを見て心の中で憤るリュイン。
 ソウジの衣装だが、ヒエダ夫人の強い要望で白いウサギの着ぐるみに。当然、臼を持つことに。
「何でそんな格好なんだ!」
 俺をお笑いキャラにしたいのか? という疑問を抱きつつ驚くソウジに対し「月にはウサギがいてお餅をつく、って言うじゃな〜い? だから〜それに合わせたの〜」とあっけらかんと言った。

  恋人であるソウジ中尉に華麗な衣装を来た自分を見てほしいリュイン。
 面白そうという理由で参加した百地・悠季(ga8270)。
 8月に行われた水着コンテストに相棒をそそのかして強制的に参加させた仕返し、と言わんばかりに逆強制参加させられた門屋・嬢(ga8298)。
 ユーリ・ヴェルトライゼン(ga8751)、天(ga9852)、朔月(gb1440)、千祭・刃(gb1900)は聴講生として。
 カンパネラ学園生徒の釧(gb2256)、高岡・みなと(gb2800)。
 以上9名が、衣装披露会のモデルとして参加することとなった。
 手芸部の衣装を借り、それを着用して出場するのは嬢、刃、みなとの3名。
 その他の出場者は、自前の衣装か『ヒエダ貸衣装店』の貸衣装を着ることに。
 なるべく手芸部にあるものを利用したいのだが、どうしても用意できないものもあるのでそれは『ヒエダ貸衣装店』に頼らざるを得ない。
「大丈夫よ〜。足りないものはうちで用意するから〜、手芸部の皆は〜揃えられるものを最大限に利用して〜参加者達を華麗に変身させてあげてね〜」
 ヒエダ夫人の励ましに、感謝感激の手芸部員達。
「では、衣装合わせをします。手芸部衣装を着用する方は部室に残り、貸衣装店で衣装を借りる方は、隣の部屋に移動してください」
 こうして、各自の衣装合わせが始まった。
 連日下校時間過ぎての活動+徹夜で製作した衣装、アクセサリ、バッグ等を作成した手芸部員達の血と汗と涙(大袈裟な‥‥)の努力を無駄にしないよう、全員一丸となりファッションショー感覚で行う手芸部説明を成功させようではないか!

●衣装合わせ:手芸部編
「衣装だけどさ、多種多様なものがあるんだろう? だったら、男物もある? あたしは男装をしたいんだ。モーニング、あるかい?」
 嬢の質問に「結婚式を想定した衣装もありますので、ウェディングドレスはもちろんのこと、モーニングもあります。白とグレーの2色がありますが、どちらにします?」とモーニングを手にして見せる手芸部員。
「んじゃ、白で」
 差し出されたモーニングを試着すると、袖は少し長い。男性用に作られたので当然なのだが、豊満な胸が苦しくないのが不幸中の幸い。
「それじゃ、これ借りるね。あのさ、できれば袖の長さ、調整してほしいんだけど」
「わかりました」
 頭を深く下げ、嬢にお礼を言うモーニングを勧めた手芸部員は急いで袖直しをすることに。手直しはほんのわずかだが、嬢に合わせるためだ。

「スカートの丈だけど、長いから調節できないかなー?」
 みなとが着用しているのはストラップレスタイプのワンピースだが、小柄な彼女にはサイズが大きめだったようで。その証拠として、胸はパットでかなり誤魔化している。
 スカート丈は中途半端な長さなので要調整ということもあり、部員は膝上5センチくらいの長さになるよう待ち針で止め、寸法を調整した。
「スカート丈直しをしますので、針に気をつけて制服に着替えてください」

「このマント、西洋風過ぎます。僕は和風がいいんです」
 演劇部がいずれ使用するだろうと先読みして作り置きした赤いマントを手にし、手芸部員の作品にケチつける刃は、かなり和風に拘っているご様子。
「そんなことないよ? マントの襟を立てればさぁ『サムライ』っぽくなるって!」
 そう言うと、手芸部員は刃にマントを羽織らせ、襟部分を立たせた。
「これだけじゃ物足りないかなぁ? これ、締めてみてよ」
 言われたとおりに黒の鉢金付の鉢巻を締めると、どことなくサムライに見える。
「僕のイメージしていたとおりの剣士です」
 スタンドミラーでマントの付け具合をチェックした刃は、部員の手を取るとブンブン振って喜んだ。

●衣装合わせ:貸衣装店編
「ふーん、月に因んだ衣装披露会開催か。面白そうだから参加するのもケチ‥‥じゃないわね。部員達のために気合いを入れて頑張ろうかしら。カンパネラ学園の生徒らしさを意識つつ、華やかに行くわね」
 旅行トランクを楽し気に漁りつつ、悠季は披露会に着る衣装を数点持参したものの、自前だけでは何かが足りないので『ヒエダ貸衣装店』で足りないものを借りることにした。
「衣装に合わせての化粧の準備はバッチリ! 女の子だから当然よ♪」
 胸を張り、メイクし始める悠李の衣装はバニースーツと浴衣。
「あなた、ウサギさんになるのね〜。ウサギさんの時はちょっとアップ、浴衣の時は、うなじを強調したヘアセットにするわね〜」
 余談。ヒエダ夫人の結婚前の職業は美容師なので、ヘアセットはお手のもの。
「ウサギさんみたいに可愛いあなたに〜お願いがあるんだけど〜?」
 ヒエダ夫人のお願いは『ヒエダ貸衣装店』の宣伝用プラカードを掲げ、バニーガール時は投げキッスをして店を宣伝してほしいというものだった。そのつもりの悠李は、ヒエダ夫人の要望通りに観客達に愛想を振りまくと約束した。
「足りないものを借りるんだから、これくらいのサービスは当然だわ」

 リュインが借りる衣装は、お引きずりの黒振袖と帯等、着物に必要なもの一式と下駄と足袋。
「着物を着る時は〜ブラは外してね〜。スポーツブラはつけていても大丈夫よ〜」
 ヘアセットの打ち合わせ中にヒエダ夫人がそういうものだから、少し恥ずかしくなったリュイン。
 衣装に合わせる小道具は、神楽鈴と造花ススキを借りることに。

 ユーリは『月といえば遠吠えする狼』というイメージ、白い狼を飼っていること、所属小隊名からもこもこの白い狼の着ぐるみ貸し出しを申請。衣装合わせの前に手芸部員に『白い毛並みの動物に合いそうな首輪』はないかと訊ねたところ、そういうこともあろうと思って作ったものがあると手渡された。
 ナイスタイミング! と内心大喜びのユーリ。
 説明会が終わったらペットにつけてあげたいと頼んだところ、宜しければ今日の記念に差し上げますというありがたい返事が。首輪は、後日リードとセットにして白狼の散歩用に使う予定とか。首輪が、サイズ調整できるタイプになっているのもありがたかった。
「‥‥ラグナのお散歩グッズに追加決定」
 白狼・ラグナにこれをつけてあげたいと思うと、表情は自然と微笑に。

 天は、故郷のイベントでもあるテーマに関心を示したというのが参加動機だが、釧と話す機会があまりないので、説明会は存分に楽しみたいと思っている。
 彼のテーマは『和装でおもいっきり故郷気分』。これを機に、存分に浸ってほしい。
 自前衣装はあるのだが、折角なので『ヒエダ貸衣装店』に衣装を借りることに。
 借りるのは燕尾服、インバネスコート、白手袋、モノクル等、大正時代をイメージしたような衣装をチョイス。披露会では、日本での月見をより印象深くするため覚醒。髪の色が変わっても、一般人には衣装に合わせて染めたと思われるので無問題。
 趣味は洗濯という釧は、色々な衣装や手芸品を見せてもらいたいというのが参加動機だった。手芸部部室にあった様々な衣装を手にし、つい洗濯の手法や難易度を考えてしまった。
 衣装は、天が薦めてくれた大正時代の女学生。
 衣装は矢絣の着物に藤色の袴、編みブーツと自動的に決定。巾着とススキを模した髪飾りは手芸部で借りてきた。
(「折角なので、手芸部のお手伝い、が、出来れば‥‥」)
 兵舎『青空洗濯同好会』代表として協力できることがあれば、兵舎の売込みも兼ねて披露後の衣装を洗濯したいという衝動に駆られた釧だった。
 ちょっとした染みでも、釧なら丁寧に落とせるだろう。粉石鹸と手袋は常備しているので、説明会後に寮のランドリーを借りればすぐに洗濯可能だ。漂白が必要なものに関しては、お持ち帰りということになる。
「‥‥布に携わる者同士、今後とも仲良くして行けたら‥‥」
 洗濯と裁縫。技術は違えど、共に布に関わるものである。
 この説明会を機に、釧と手芸部員達が仲良くなれれば良いのだが‥‥。

「おばさん、俺は頭から足まで全身を覆い隠す人間の顔や肌を出さないタイプの『ウサギの着ぐるみ』を借りたいんだけど。顔はひょうきんで、柄はパンダな」
 頭部分と体の部分は分かれているので頭部分を外せば朔月の顔は出るが、自己アピール中は着ぐるみを脱がず、ジェスチャーのみで行動することに。着ぐるみの口中部分はメッシュ素材になっているため、行動するのも、周りを見たり周囲の音を聞くのも普通にできる。着ぐるみの欠点は動きがぎこちない点だが、身軽な朔月なら大丈夫だろう。

●説明会当日
 カンパネラ学園には、運動部、文化部問わず多くの部が存在する。
 手芸部の順番は、文化部の8番目。
 説明会の順番だが、前日にくじ引きで決めたと言う秘話がある。手芸部部長は、運が良いのか悪いのかとちょっと悩んだそうで。
 説明を始める前まではロボットのような動き、ぎこちない口調だったが、徐々に凛とした表情、口調となり、手芸部創部の経緯、簡単な活動内容を説明した。

 説明終了後、手芸部部長は月見衣装披露会を行うと宣言。
「皆さん、説明会終了後に手芸部員が作成した衣装をご披露します。手芸部の衣装披露会を開催すると決まったのは良いのですが、創部まもないので『ラスト・ホープ』にある『ヒエダ貸衣装店』の店主、稗田令子女史のお力添えで実現可能となりました。この場を借り、稗田女史に御礼申し上げます」
 衣装披露会を最後にしたのは、説明を行っているステージでは狭すぎてできないという欠点があったからだ。

 数時間後、全部活動の説明が終了した時点でステージのセッティングが始まった。
 演劇部が照明係とBGM担当を申し出たので、手芸部部長は大感激で応じた。

●月見衣装披露会開催
「カンパネラ学園生徒、教師の皆様、聴講生の皆様、たいへんお待たせ致しました。ただいまより、手芸部主催の月見衣装披露会を開催致します。司会は私、ソウジ・グンベが務めさせていただきます。では、最後までお楽しみください。最初の月見衣装テーマは『月下の剣士』、モデルは千祭・刃さんです」
 紹介後、刃は満月の夜を想像させる和風BGMに合わせてキリッとした表情で剣士になりきって登場。
 ステージ中央、やや前方に着くと正面を向き、一礼してから養父直伝の居合い(と言っても空を切る程度)を披露した。
「我が行く道は修羅の道‥‥いつ果てるともわからぬ身‥‥」
 俯き加減でこう言い終えると、スタスタと退場。
 観客の中には「どこが月見用衣装?」と突っ込みたい者もいるだろうが、和風にとことん拘る彼が怒りそうなのでそれだけはご勘弁。

「続いてのテーマは『月の世界から来たお茶会ウサギ』、モデルは門屋・嬢さんです」
 ステージ上手から登場した嬢の衣装は、白のモーニングに黒の蝶ネクタイ、白い手袋という紳士的なものだった。ウサ耳は黒のカチューシャに白いウサ耳をつけたもの、胸ポケットに入っている赤いバラ一輪は手芸部員のお手製。
 靴は黒のフォーマルシューズ(男性用はサイズが大きいので女性用)。木製ステッキのみ『ヒエダ貸衣装店』の借り物である。
「皆さん、私は月ウサギと申します。紳士淑女の皆様を、月で催されるお茶会に誘いに参りました」
 嬢はステージから降りると、前方の席にいた女子生徒に赤いバラを差し出しアプローチ。
「可愛いお嬢さん、私と共に月に参りませんか?」
 声色を低くし、歌劇団の男役になりきって招待する。
「よ、喜んで‥‥」
 招待された女子生徒は、赤いバラを受け取ると嬢にエスコートされステージ中央にある階段からステージに上がり、下手に退場。
 女でありながら女心をキャッチするとは‥‥恐るべし、門屋・嬢!

「続いてのテーマは『月に向かい遠吠えする狼』、モデルはユーリ・ヴェルトライゼン
さんです」
 白狼の着ぐるみを着て、演劇部がかけてくれた曲に合わせて歌うのが彼のパフォーマンスだ。歌っているのは「遠吠えで会話する狼、月に吠える狼は、どんな気持ちで何を言っているのだろう」というカンジの歌詞の曲だった。
 女性ヴォーカリストの曲だが、キーそのままで歌うユーリは歌が物凄く上手で、ソプラノ並みの高音で歌うこともできる。
 彼が女性であれば『セイレーン』『ローレライ』とたとえることができるが、男性なので『七色の声の歌い手』という渾名が相応しいかもしれない。
 透明でのびやか、良く通る歌声で、ユーリは熱唱した。
 普段は人前で滅多に歌わないが、晴れの入学式、部活を選ぶ大切な行事ということもありたまには良いか心を込めて歌ったが、着ぐるみ姿とのギャップが凄い。
 歌い終えた後、盛大な拍手が送られたのでそのキャップは音を立てて崩れた。
 皆に楽しんでもらい、とても嬉しいユーリだった。

「続いてのテーマは『大正時代の日本の月見』、はいからさんモデルは天さん、釧さんのお2人です」
「学生気分も悪くないな。‥‥似合うな、クシロ。うん、可愛い‥‥」
 少し照れ、歩きながら釧を褒める天の衣装は、大正時代の紳士。それに対し、釧は赤い大きめのリボンをつけ、黒の編みブーツ、天見立ての三日月型の簪と手芸部員作のススキのを髪飾りを髪に刺し、天に寄り添うようにしずしずと歩いている。
 初々しい大正時代の恋人達はステージ中央に着くと会場の天井を見上げているが、これは満天の星空の中で照っている満月を見ている演技である。
 天と釧の演出は、恋愛もの好きな女子生徒や女性聴講生達に受けた。
「く、釧と、いいます‥‥。私が、所属する、兵舎『青空洗濯同好会』は、カンパネラ学園手芸部を、応援しています!」
 冷静さを意識しすぎてせいか、喋り方が変な所で途切れがちになっている。洗濯に関すること以外は常に照れ半分で、着慣れない衣装も気恥ずかしいということもあり緊張しているのだろう。
「俺、天も『青空洗濯同好会』を応援します。頑張った釧にプレゼントだ」
 そう言うと、手にしていた『月見うさぎ人形』を釧に手渡した。
「‥‥うん、似合うな」
「あ、あり、がと‥‥」
 緊張してカチコチになった釧を支えつつ退場した天の黒髪は、ターンする際にふわりと靡いた。

「続いてのテーマは『月夜のセクシーバニー』、モデルは百地・悠季さんです」
 最初の衣装は、ホワイトカラーのバニースーツ。髪をヒエダ夫人にアップ気味に整えてもらったが、色っぽいメイクは自前。バニーガールの象徴であるピンと立ったウサ耳も忘れずにつけている。モンローウォークを意識してか、お尻を少しフリフリしながら登場したので、まぁるい白尻尾が揺れている。豊満な胸は揺れていなかったので、期待していた男子生徒はガッカリ。
 ステージ中央に着くと同時に『ヒエダ貸衣装店』の宣伝用プラカードを掲げ、自己アピールとして投げキッス。
「カンパネラ学園の皆、『ヒエダ貸衣装店』を宜しくね♪」
 退場前は、胸の谷間が見える程度に前に屈みウィンクをして再度投げキッス。
 悠季のサービスは、男性陣は大興奮(ソウジ含む)!
「百地・悠季さんですが、もう1着披露する衣装がございますので後ほど改めて再登場致します。その時も、盛大な拍手でお迎えください」
 ソウジのアナウンス後、悠季は退場。

「続いてのテーマは『月光が魔力の源の魔法使い』、モデルは高岡・みなとさんです」
 手芸部員の丈直しの甲斐あり、みなとにフィットした衣装となっている。胸パット誤魔化しは変わらないが。
 魔法使い風ストラップレスのワンピースの色は、月の色を思わせる淡いレモン色。
 スカートは黄色いバラのように広がっており、生地の上にはレースが花びらのように何枚も重なっている。履物は白の編みこみブーツ、先に三日月が付いているバトンは手芸部作の小道具だ。
「ムーンライト・ウィッチ、ただいま衣装披露会にキュートに参上! はるばる、月の世界からやってきたの。宜しくね♪」
 普段はボーイッシュな口調だが、ノリノリで魔法使いになりきっているのでかわいらしい口調になっている。魔法少女好きにはたまらない演出をしているみなとだが、少女に見えるが20歳である。
「あたし、ムーンパワーが無いと魔法が使えないの。ごめんね♪」
 てへっ、と舌を出して誤魔化す仕草もかわいらしい。
「そろそろ帰らなきゃ。皆、また会おうね! 今度は、魔法を見せてあげるから」
 自己アピールを終え、スキップで退場。

「続いてのテーマは『アーティスト・ムーンラビット』、モデルは朔月さんです」
 ドスドスと音を立てて登場したパンダウサギの着ぐるみを着た朔月は、ステージ中央に着くと一切喋らず、身振り手振りで行動している。
 手芸部員数人が協力してバルーンアート用の空気入れを持ち込むと頭をペコリと下げてお礼、早速自分で用意した風船に空気を注入。空気が入って細長くなったバルーンを曲げたり捻ったりし、何かを作っているようだ。
 何かを作っているようですね、とソウジが解説。バルーンアートが完成したかな? と皆が期待していると、朔月はいつの間にかソウジの背後にいて、彼の肩をポンと叩いて振り向かせ、振り返った瞬間にソウジの頭にバルーンアートで作った花冠を乗せた。
 ソウジもウサギの着ぐるみ着用なので、耳に通すかたちとなった。
 突然の出来事に戸惑いを隠せず、着ぐるみの中で「あわわ」状態なソウジ。
 その仕草があまりにも面白いので、朔月がドスドスとステージ上を走り回り、しばらくするとつかまらないように逃げ出したかと思うと、再度登場。
 出血大サービス! と言わんばかりに、色とりどりのバルーンアートの作成を始めた朔月。黄色い風船を使って作った月、カラフルな犬、ウサギ等の動物を観客席に向かって投げた‥‥ものの、風船なのでゆっくりと下降。
 頭がずりさがらないよう、ペコリとお辞儀をした後にドスドス歩きながら退場。

「続いてのテーマは『月に照らされし姫』、モデルはリュイン・カミーユさんです」
 静かな雅楽が流れると同時に登場したリュインがしずしずとステージ中央に歩きだすと、月明かりを思わせる淡い照明が彼女を照らし出した。
 リュインの衣装は、お引きずりの黒振袖。黒地に華やかな吉祥柄の祝いのし、色彩な雪紋がシック且つ華やかな彩りを添えているのが優雅な演出を醸し出している。
 裾裏は赤で黒地との対比をキリリと引き締め、帯は紅地に金の華模様、黒の帯留めでスッキリ。帯飾りには、部員がリュインのために大急ぎで作った華のビーズブローチをアレンジ使用。即席で作ったとは思えないほど、綺麗な華であった。
 履物は黒塗りの小町下駄で、鼻緒は紅の市松模様。小町下駄は、白足袋に艶やかな黒塗り、紅の鼻緒が良く似合う。
 髪は結ばずそのまま流した状態にしたのは、十二単を着るような感覚の雰囲気を出すため、あえてお引きずりを選んだ。実際には大分違うのだが、舞妓や結婚披露宴衣装ではそうするらしい。
 この衣装は、着こなし方次第では淑やか、はんなりな印象になるというのはヒエダ夫人談。
 裾を引き摺りながら片手にススキ、片手に神楽鈴を持ちシャランと鳴らし、雅楽のリズムに合わせて一歩一歩歩みを進め、揺れるススキ、響く鈴音で月見の緒を楽しんでもらうおうと自己アピールを始めた。
 退場する前に礼儀正しく会釈し、衣装を全体的に見せるため緩やかにターン。その余韻で、衣装はふわりと浮き上がり、長い髪が優美に靡いた。
 観客に礼儀正しくお辞儀をすると、リュインは退場。
(「ソウジ、今回も『何か言え』よ? 誰に一番見て欲しいと思ってるんだ‥‥」)
 雅な表情だが、内心は般若と化しているリュインだった。こればかりは、ソウジ次第なので何とも言えない。

「お名残惜しゅうございますが、最後の衣装をご披露いたします。テーマは『月下の浴衣美人』、再度登場の百地・悠季さんです。盛大な拍手でお迎えください!」
 悠季2度目の登場時の衣装は、持参した白地に笹格子の浴衣。各格子の間に月の満ち欠けの模様が散りばめられている浴衣を濃紺の帯で締め、髪はおろし、ヒエダ夫人にうなじ付近で一房に纏めてもらった。衣装は自前だが、履物を忘れてきてしまったので『ヒエダ貸衣装店』の借り物である。ヒエダ夫人のお見立ての草履は、悠李の着物と見事に合っている。
 バニーガール時のメイクを落とし、すっぴんに近い状態にメイクし直して清楚な感じを醸し出し、ステージ中央に向かうまで衣装を意識しつつ礼儀正しくしずしずとと歩いて品格の良さを示している。
 少しポーズをとった後、再びしずしずと歩き出して退場。

 こうして、手芸部と『ヒエダ貸衣装店合同主催の『月見衣装コンテスト』は無事終了した。

●生徒達に感謝を
 衣装披露会終了後、モデル一同と手芸部員全員がステージに登場した。
 ソウジは手芸部部長にマイクを手渡すと、耳元で「ちゃんとお礼を言うんだぞ?」と言った。
 ステージ中央に歩み寄った手芸部部長は、マイクを持ち直すと挨拶を始めた。
「以上をもちまして、手芸部による『ヒエダ貸衣装店』協力のもと行った衣装披露会を終了致します。至らない点がある作品を身にまとってくださり、衣装をアピールしてくださったモデルの皆様、最後までご覧くださった生徒の皆様、先生方、聴講生の皆様、ご協力してくださった稗田女史に感謝致します。最後までお付き合いくださり、本当にありがとうございました!」
 感激のあまり、挨拶の後に手芸部部長は泣き出してしまった。手芸部員達は駆け寄り「良くやったよ」「泣かないでください」等、手芸部部長を励ました。
 挨拶後、盛大な拍手が手芸部員とモデル達に送られた。
 やり遂げた達成感に喜ぶ手芸部員一同と、大いに楽しんだモデル達は最後まで見てくれた皆に感謝せずにはいられなかった。
 
 数日後、手芸部に何人かの入部希望者が訪れたが、ほとんどがモデル志願者だった。
 いつかきっと、衣装を作りたいという部員が来る! それまで頑張れ手芸部員達!

●おまけ・衣装披露会終了話
 刃は、鉢巻をきつく締めすぎたのか額に跡がくっきりと残っており、マントの紐もきつく結びすぎたのか、首に圧迫感が。

 みなとは魔法使い風衣装がすっかり気に入り、手芸部に「買い取るから譲って♪」とおねだりしたが、衣装披露会のお礼として差し上げますと手芸部部長のありがたい一言に「やったぁー♪」と大はしゃぎ。
「ありがとう! 大事に着るね!」

 釧は、手芸部員作の衣装を洗濯するため兵舎にお持ち帰り。
「丁寧に、心を込めて洗うから‥‥期待してね」
「はい、お願いします」
 衣装が綺麗になって戻ってくることを楽しみにしている手芸部員の1人。
 天も協力するというので、2人仲良く洗濯することだろう。

 悠季は、2度の衣装変えに満足したご様子。
「ヒエダ夫人、何か借りたいものがあったらお店に行くわね」
「そう言ってもらえると嬉しいわ〜♪ あなたの髪、セットし甲斐があったわよ〜」
 ヒエダ夫人は大喜び。

「着ぐるみ、どうもありがとうございました。とても楽しかったです」
「俺も。それにしても、着ぐるみまで置いてある貸衣装屋っておばさんとこだけじゃねぇの?」
 着ぐるみを借りたユーリと朔月は苦労した点が多かっただろうが、達成感がそれを吹き飛ばした。
 朔月の質問に「うちは何でもアリの貸衣装店なの〜」と営業スマイルで答えるヒエダ夫人。

 嬢はというと、モーニングを貸してくれた手芸部員の1人に「お姉様‥‥」と慕われてしまった。
(「相棒、無理矢理参加させられたあんたの気持ち、よ〜くわかったよ‥‥」)
 顔はあははと笑っているが、心は泣いている嬢だった。

 リュインはというと‥‥。
「ソウジ、我は汝のために参加したのだぞ? 司会を頼まれたということはギャラをもらっておるのだろう? 今日の記念として何か奢れ」
「司会料? そんなのもらってない! 上官から「受け取らないように」と言われているんだから」
 これで納得してもらえると思ったが、甘かった。
「ならば、汝のポケットマネーで奢れ!」
「は、はいぃ! 給料日の後で宜しければご馳走致します!」
 何故か敬語でご馳走するという口約束をするソウジであった。しかも、ウサギ着ぐるみのまま。

 なんだかんだと言いつつ思いつつの、終了後風景だった。