●リプレイ本文
●意気込み
「キメラっていうのは、本当に多種多彩だわ。グラビアアイドルを狙うものまでいるとはね‥‥。どういう概念で、こいつがバグアに作られたのかってのを教えて欲しいもんだってぇの」
はぁ、と溜息をつき呆れるブラスト・レナス(
gb2116)。
「夏の海、なのに泳げないのが何か癪ですね。グラビアアイドル達が羨ましいです」
慌ててシミュレーションに参加希望したヴェロニク・ヴァルタン(
gb2488)は、海で泳ぎたかったようだ。
「グラビアアイドルの水着を切り裂くなんて‥‥ヘンタイだね、このキメラ。こういうのもいるんだ」
ブラスト、ヴェロニクのプロポーションをチラ見し、体型にコンプレックスを感じながら高岡・みなと(
gb2800)が率直な感想を述べた。
「キメラとはいえ、女の人を泣かすなんて最低です! シミュレーションですが絶対に倒します!」
千祭・刃(
gb1900)は、拳を握り締めてキメラ退治に燃えている。養父から「女を泣かす奴は最低だ」と教えられた影響がかなり強い。
「これはマーヤーさんの第二の挑戦状ですね、しっかと受け取ったです!」
小さなドラグーン、ヨグ=ニグラス(
gb1949)はやる気マンマン。
「前回に引き続き、シミュレーションに参加致します。宜しくお願い致します」
名家のご令嬢ということもあり、礼儀正しく挨拶する天小路桜子(
gb1928)。
●戦闘準備
シミュレーションとはいえ、真夏の気温は実際に体感することになっているので桜子を除く女性ドラグーンはAU−KVの下に水着を着ることに。
彼女達の着替えが終了すると同時に、全員AU−KVを装着していつでもシミュレーションに臨めるようスタンバイ。
「皆さん、準備ができたようですね。再度、シミュレーションのご説明を致します。8月某日、グラビアアイドルのDVD撮影中に大量のカニキメラが現れたかと思うと合体し、全長5メートルほどの巨大カニに変身しました。特徴のひとつに『甲殻』がありますので、ハサミや甲羅部分の攻撃は難しいものとお考えください。8月の気温は実際に感じます。女性参加者の方の水着着用は許可しておりますので、問題はありません。というよりは、賢明な判断です」
アプサラスは再確認するようにシミュレーション説明をすると、バックのスクリーンに舞台となる無人島を映し出した。
「ここが、戦闘場所となる無人島です。出現するのは『ヘイケガニ』1体のみ。グラビアアイドル、スタッフ達は既に避難しているので完全な無人ですので戦闘に専念してください。バイクの使用も許可しますが、騎乗攻撃は不可能なのをお忘れなく。質問はありますか?」
おずおずと挙手し、ヴェロニクが質問した。
「‥‥ところで、日焼け止めクリームは必要なんでしょうか?」
「実際に日焼けしませんので不要です」
AU−KVを一旦装着解除し、既にクリームを塗っているヴェロニクにキッパリ回答するアプサラス。
「熱中症、脱水症状で倒れた人が出たら、日陰に連れていき介抱しても良いのでしょうか?」
「温度は実際に体感しますので、そのような症状でダウンした方は日陰で休ませたほうが良いです。ミネラルウォーターですが、無人スタッフのクルーザーの冷蔵庫にありますのでそこから失敬して水分補給するようにしてください」
仲間思いのチェスター・ハインツ(
gb1950)に、アプサラスはそれも傭兵としての役目ですよと感心した。
「質問は以上ですね。では、シミュレーションを開始致しますので各自準備願います」
●シミュレーション開始
『それでは、シミュレーションを開始します。ドラグーンはシミュレーションルームに入室してください』
アプサラスは全員入室したのを確認後、シミュレーションルームを南国の無人島の場面に切り替えた。
焼けるように熱い砂浜、寄せては帰る波、照りつける真夏の太陽。
岩場の側には、無人のクルーザーが停泊してある。
『キメラはいつ出現するかわかりません。気を抜かないよう、慎重に臨んでください』
囮役として波打ち際でAU−KVをバイク形態にして騎乗して待機しているのは、レースクィーン風水着のブラスト、学園指定水着姿のヴェロニク、黒地に臙脂色ラインがサイドに入ったタイプの水着姿の依神 隼瀬(
gb2747)の3人。
「パラソルでもあれば、グラビアアイドルじゃなくてレースクィーンって感じなんだけどね。キメラが私達の水着姿の興味を示したら出てくるらしいから、そのまま戦闘態勢といきますか」
キメラ『ヘイケガニ』が自分の水着姿に興味を示し出現するのも楽しみだが、AU−KVを素肌に装着する感触がどのようなものかも興味対象だったりするブラスト。
「私は、戦闘開始後はバイク形態を利用して囮役の後方に周り、牽制の射撃でカニを誘導します。自由の利かない水中での戦闘を避ける為、なるべく浜辺へと誘導して陸上戦に持ち込むようにしますね」
「ヴェロニク、騎乗中は攻撃できないってこと忘れてないよね?」
隼瀬の言葉に「勿論です」と答えるヴェロニクは、自分の水着だけが地味なことにコンプレックスがあったが、それを必死に隠そうと打倒ヘイケガニに燃えた。
「シミュレーターの中も暑いらしいけど、俺は靴とゴーグルはそのままでいくよ。歩きにくいし、目に砂が入ったら嫌だから。あと、アクセサリもね」
その後方では、AU−KVの下に水着を着用しているみなとが3人のプロポーションを羨ましがっていた。
(「皆、スタイルいいなぁ。ボク、スクール水着でペタ胸‥‥」)
「みなと様、暑いですわね」
みなと同様、後方で待機している遠距離攻撃班の桜子も暑がっている。
シミュレーションとはいえ、依頼当時の気温31度は実感するようプログラミングされているのだ。
「たしかに暑いですが、シミュレーションをこなさないと。僕は接近戦メインなので、キメラが弱った、もしくは逃げようとした時に接近攻撃をします」
それまでは、遠距離攻撃班と共に待機中の刃。
「んと、足元確認しとくですよっ。多分歩きにくいですから感覚を掴むですっ! マーヤーさーん、これすんごい娯楽になると思うですよー!」
『ヨグさん、喜ぶのは結構ですが、シミュレーションは真剣に取り組んでください』
会話筒抜けなんですねと思いつつ、砂のリアルな感覚に喜ぶヨグだった。
真夏でも元気な小さなドラグーンの様子を見て、一瞬和んだ仲間達。
「きみ、何をしているんですか?」
砂を掘り始めたヨグを見たチェスター。
「塹壕を作るです。待機中はここに隠れるです」
笑顔で答えたヨグは「暑いです」とAU−KV装着解除すると、持ち込んだ水筒の水で水分補給。ヨグが掘った砂の深さは、座り込んで隠れられるほどだった。
「遠距離攻撃班は、囮役がヘイケガニを浜まで連れて来る間、ここで攻撃待機というわけですね?」
「すごーい、ヨグ君! ボク、そこまで考えてなかったや」
「お見事ですわ」
お姉さん達に褒められて「エヘヘ‥‥」とはにかむヨグは、待機班の皆にも水筒の水を分け与えた。コップ付きなので、間接キッスの心配は無用。
●水着切り裂きキメラ見参
「キメラが来たです!」
双眼鏡で様子を窺っていたヨグは、囮役のブラストに無線機で連絡。
「OK。ヴェロニクさん、隼瀬さん、準備いい?」
「はい」
「来たね。『シロガネ(銀)』、俺達の出番だよ」
水着を切り裂いたヘンタイガニこと5メートル近くあるキメラ『ヘイケガニ』が波打ち際に接近するのを見計らったブラストと隼瀬がバイクのエンジンをかけ、発進すると同時に砂煙が辺りに舞い上がった。
水際に急接近したブラストと隼瀬は、初めての連携プレイであるにも関わらず見事に息が合っていた。
「ブラスト、いくよ!」
「まかせなさーい!」
2人は水際を走ったり、波打ち際に戻ったりしながらヘイケガニを遠距離攻撃班が待機している所まで誘導している。
「こいつ、スタミナありそうだからバイクで振り回して体力消耗は無理っぽそうだな」
「同感! 隼瀬さん、皆のところに連れて行こう」
バイクのスピードを上げると水飛沫が勢い良く撥ね2人にかかったが、そんなことを気にしている場合ではない。
「着ましたね。さあ、こちらまでいらっしゃい!」
ブラスト、隼瀬に続き、ヴェロニクもヘイケガニ誘導に加わった。
ヴェロニクは自由の利かない水中戦闘を避けるため浜辺へと誘導。皆が砂浜での戦闘に持ち込むよう試みた。
「来ましたね、作戦成功!」
思惑通りになったことを、ウィンクでブラストと隼瀬に伝達するヴェロニク。
「それじゃ、私達もアーマー装着しようか!」
「腕が鳴るね!」
「バカンス気分が楽しめないのが残念ですけど‥‥」
ブラスト、隼瀬、ヴェロニクもアーマー装着することで、浜辺に全員揃った。
「皆、カニが来たです!」
ヨグの報告に、覚醒するドラグーン達。
「品性に欠けるキメラがおいでになりましたね。きっちりと退治致しましょうか」
言い回しがおかしいですが、と苦笑する桜子。
「品性に欠けるというのは同感です。女性を泣かすのは許せませんね」
その前に冷たい飲み物をどうぞ、と遠距離班全員に冷たい飲み物を差し入れるチェスター。
「ありがとうです!」
「ボク、頑張る!」
冷たい飲み物で気合い充填することで、専用意欲が沸いてきたヨグとみなと。
「参ります!」
桜子は『竜の瞳』『竜の爪』を併用し、後方にてアンチシペイターライフルでヘイケガニに攻撃を仕掛けた。連射に若干難はあるものの、大バサミの付け根の関節部を重点的に狙い続けている。
「きみなんか、お鍋の具にしてやるんだからっ!」
ヘイケガニって食べられるのかな? と考えつつ、みなとは『竜の瞳』を発動させ長弓「草薙」を番える。
「いっけぇー!」
気合いを込めて放った矢は足の付け根部分に命中したものの、切断するほどの威力ではなかった。
「カニは、冬に鍋にして食べるのが美味しいのです!」
ヨグは遠距離攻撃班の行動が始まるなり『竜の翼』で一気にヘイケガニの側面に『竜の咆哮』『竜の鱗』使用し、甲羅と足の付け根部分をイアリスで攻撃。
みなとはヨグに当たらないよう、矢を放ち続ける。
クルメタルP−38で攻撃し続けるヴェロニクだったが、甲殻による防御力の高さに驚いた様子を見せた。
「銃弾を弾くなんて、なんて非常識な堅さなの!?」
攻撃を一旦やめ、AU−KVを再度バイク形態にしたヴェロニクは、再度、囮役になりヘイケガニの挙動を確認しながら発進。肝心な時に砂に嵌って動けないとか、車輪を取られて転倒とかは避けてもらいだいものだ。
チェスターもヨグ同様、主に側面から攻撃。
「敵はカニだけに、横歩きは得意そうですね。敵の移動速度に注意し、水弾に気をつけつつ遠距離攻撃をするのが賢明でしょう」
M−121ガトリング砲を構えると『竜の爪』を使用し攻撃力を上げたチェスターは能力を高めると距離をとり、敵のハサミや体当たりを受けるような位置につくと味方に誤射しないよう気をつけながら弾幕を張るタイミングを計った。
「今です!」
タイミング良く弾幕が張られたことで、ヘイケガニは動きを止め、突然の出来事にうろたえた。
「敵はカニ歩きだから側面攻撃するけど、あの足の長さは邪魔だね。本体へ直接攻撃するにはリーチに問題アリ‥‥と」
ブラストはまず側面に回ると足の付け根を攻撃し、大バサミは真っ直ぐ振り下ろすのか、横殴りに振るのかを見極めた後、機械剣αに『竜の角』を併用して一閃!
「この足、一本貰ったよ!」
気合いが籠もった攻撃は、右大バサミの切断に成功。
隼瀬は使い慣れた薙刀「昇龍」に『竜の爪』をかけると、ヘイケガニの動きを止めようと遠距離攻撃班同様、足の付け根を狙い攻撃。
「カニらしく横移動してるから、移動方向の横は避けて正面か背後に回り込んでから足を狙おう」
正面に回った場合、口から水弾を吐くと知っていたので正気を取り戻したヘイヘガニオが水弾で攻撃したが、気づいた隼瀬は即回避すると、付け根目掛けて薙刀「昇龍」の刀身を突きつけた。遠距離攻撃班の援護もあり、足一本だが切断成功!
「よし、この調子で残りの足とハサミも斬るぞ!」
器用に回避しつつ、隼瀬は防御も取り入れて攻撃を再開した。
唯一の接近戦担当の刃は、勢い良くヘイケガニに突進しつつ挑発。
「女の人を泣かすなんて、きみは最低だね‥‥。そういう奴は最低だって、とーちゃんが言っていたよ。その罪は重いから、楽に倒してあげるよ」
口から吐き出された水弾を咄嗟に避けると、下部分の足の付け根を狙い、武器の名の如く乱れ斬り!
「まだまだっ!」
右側の攻撃が一通り終わると、今度は左側に回り全ての足の付け根に斬撃。
「皆で攻撃すれば一気に弱ります! とどめといこう!」
刃の言葉に「待ってました!」と人一倍張り切ったのはブラストだった。
「一気に止め刺すよ!」
『竜の鱗』を発動したブラストは、敵の前面に出て踵の車輪を用いてホイールダッシュすると大バサミの横殴り攻撃をスライディングで回避するとヘイケガニの下腹部に潜り込むとスコーピオンの弾丸を一気にぶち込んだ。
「これでも喰らえー!」
ゼロ距離フルオート射撃なので、ヘイケガニは回避しようがない。
AU−KVをアーマー形態に戻して即座に装着したヴェロニクは、近接戦闘に転じ、
機械剣αで移動力を削ぐように足を中心に攻撃。
「焼きガニにしてさしあげますわ!」
機械剣αでざっくり斬られた足は、こんがりと焼けているように見えた。
『竜の鱗』を使用し、盾で攻撃を凌いでいたヨグはヘイケガニが弱ったのを見計らうと攻撃に回り、イアリスを水弾を吐き出す口に渾身の力をこめ突き立てた。
「これで終わりですよ!」
水弾が使えなくなっただけでも、ヘイケガニの攻撃力がダウンしたといっても過言ではない。
アンチシペイターライフルのリロードを終えた桜子の攻撃、精神を集中し、足の付け根を狙い撃ちするみなと、M−121ガトリング砲を乱射するチェスターの援護攻撃もあり、ヘイケガニは南国の波打ち際にドスン! と倒れた。
ヘイケゲニ撃破:成功!
●シミュレーション終了後
「皆さん、暑い中お疲れ様でした。評価の前に、シャワーを浴びて汗を流してきてください」
アプサラスの一言に「ありがたい」と思う女性陣だった。
全員が着替え終えると、アプサラスは微笑んで評価を告げた。
気になる評価は『良』だったが、それでも達成感を得たドラグーン達。『優良』としなかったのは、一歩間違うと生命が危ういと判断したためである。
その後、アプサラスを交え桜子主催のお茶会開催。
「カニが食べたくなってきたよ」
刃の一言に「うんうん」と頷いて同意するみなと。
「カニ料理はいいんだけど、あの暑さでは勘弁だね‥‥」
「ボクもそう思うです」
アプサラス以外、カニ鍋は寒い時期に食べるのが一番だと実感。