●リプレイ本文
●大丈夫?
「コスプレでキメラ退治‥‥ね。撮影されるから、堂々と立ち回らないとなぁ‥‥。上手くできればいいけど、戦闘に本当のキメラを使う辺りなんともはや、ですが」
フィオナ・フレーバー(
gb0176)が心配するのは無理もない。
能力者をヒーロー、キメラを怪物に見立てたショー仕立て依頼は多数あったが、ヒーローのコスプレをして実際のキメラ退治依頼遂行というのは前代未聞だろう。
「色んな依頼があるのですネ。ほむ、子供達の希望の為にご協力致しますっ♪」
赤霧・連(
ga0668)は楽しみなご様子。
「偶にはこういう夢一杯な企画もいいものですね。子供達に少しでも希望を与えられるなら、こんなに素晴らしいことはないでしょう」
子供好きなリディス(
ga0022)は喜んで参加。
「超人ヒーローと戦隊物が混ざった設定だな、コレ。隊員に戦隊風味付けがあるのが不思議だ」
龍深城・我斬(
ga8283)が不思議がるのは無理も無い。『ホープマン』に戦隊要素が含まれているのは、原作者の趣味なのだから。
「はじめまして、千祭刃です! 宜しくお願いします!」
敬礼しながら緊張して挨拶する千祭・刃(
gb1900)。
「初めての依頼だからって緊張すんなよ、兄ちゃん。ガチ撮影なんて大丈夫?」
刃同様初参加で、最年少の八坂・佑弥(
gb2037)も不安がる。
「これもれっきとした依頼だ。配役決めるから、各自やりたい役言ってくれ。ピンク役の武器は銃と決まっているからな」
隊員服とヘルメットを持ってきたソウジ・グンベが仕切る。
●配役決定
「私はピンク隊員役を担当します。オペレーター兼隊員でしたよね?」
「ああ」
連演じるピンク隊員・モモカは普段は司令室でオペレーターとして隊員達のサポート役だが、ピンチの時は前線で戦うという設定が。
「ソウジさん、協力お願いしますね? キメラが出現したら、私だけでは指示出せませんし」
そうだな、とソウジは連の頼みを聞くことに。
「我は隊長役を希望する」
漸 王零(
ga2930)演じるのは『アース・ガーディアン』隊長。
「ソウジ、彼女ができたそうだな? おめでとうを言わせてもらう」
「キミは結婚したそうだな? 遅くなったがおめでとう」
互いに「おめでとう」と言い合うおかしな雰囲気を破るかのように、王零は隊長の衣装を持ってきたと言った。
「衣装持参かよ!」
彼らの隣では、リュイン・カミーユ(
ga3871)が髪を纏めている最中だった。
(「我の傍でそのような話をするな、デリカシーの無い馬鹿共が」)
彼女と言われて悪い気はしないが、からかい口調で言われたのが不快だったようで。
「イエロー隊員は男だから、胸はなるべく締め付けておいたほうが良いのだろうか?」
「ああ、そうしてくれ。CG処理でペタ胸にもできるが、スタッフの負担を減らしたいからな」
「わかった。激辛カレーは大好物なので後で奢れ」
イエロー隊員の好物が激辛カレーという設定に惹かれ、リュインはこの役を希望したのだろう。
「撮影終わったら委員会に奢ってもらえ」
ソウジはそう言いながら、リュインにイエロー隊員の隊員服とヘルメットを手渡す。
「俺はスーツアクターを希望したいんだけど、撮影現場で着替えたほうがいいかな?」
ホープマンスーツアクター役希望の鳥飼夕貴(
ga4123)の質問に、スーツアクターはそのカッコの上から着るから現地で着替えると説明するソウジ。
今は暑いので、サウナスーツ代わりになるかもしれない。
「俺はレッド隊員のアカシ担当だな。生真面目なリーダー格か。きっと、隊長の命令を復唱したりして行くぞ! とかいった掛け声をかけたりする役だな。戦闘に入るまでは演技をしてたほうが後のアフレコは楽だと思うんだけど、ソウジさんどう思う?」
我斬の質問に「自由に演技して構わんぞ」と答えるソウジ。
ホープマン製作委員会から聞いた話だと、序盤はそれを元に脚本を製作するとか。
「私は、グリーン隊員担当です。よ〜し、頑張ろう〜! 支援は、グリーン隊員に任せてくださいっ!」
グリーン隊員の衣装とヘルメットを受け取ったフィオナは、早くも役作り。
隊員で残っているのはホワイト隊員とシャドウ隊員ウスイだけだが、最年少の佑弥がホワイト役、刃がウスイ役と決まった。23歳の刃が小柄なホワイト役は無理がある。
「僕が主役!? 影が薄い新人という設定とはいえ、ぶっつけ本番撮影ガチキメラ戦なんて無茶ですっ!!」
「往生際悪いよ、刃兄ちゃん。俺なんて無口、無愛想な役なんだからあまり喋れないんだよ?」
生真面目な刃とお喋り元気少年佑弥は、無事演じられるのだろうか?
リディスは、スタッフの1人として参加することに。
スタッフとして、色々と駆け回ることになるだろうが余裕がないこと、メイクやタイムキーパー、差し入れやスケジュール管理等、やることはたくさんあるだろうと思い志願したのだろう。
特にメイクは画面の映りにも直接関わってくるので、気合を入れて行うことに。
義妹がIMP所属のアイドルなので、勝手がわかっている。
「妹にこういうのに参加してみたらどうか、なんて聞いてみましょうか」
●キャスト
シャドウ隊員ウスイ:千祭 刃
レッド隊員アカシ:龍深城・我斬
グリーン隊員リョク:フィオナ・フレーバー
イエロー隊員キヤマ:リュイン・カミーユ
ホワイト隊員シハク:八坂・佑弥
ピンク隊員モモカ:赤霧・連
アース・ガーディアン隊長:漸 王零
ホープマン(スーツアクター):鳥飼夕貴
スタッフ:リディス
●撮影開始
出演者達が着替えを済ませ、キメラが出現するまで待機していた時、タイミング良く出動要請が。
『都合良すぎ!!』
ハモッって突っ込むソウジとリュインの息がピッタリ!
モニターには、ロサンゼルス郊外のビル街を破壊しまくっている上半身は半裸の長い黒髪の女性、下半身はクモというキメラだった。
「裏を返せば、それだけキメラの被害が頻繁だということか。キメラとはいえ上半身裸とは‥‥! ソウジ、凝視してたら後で殴るぞ」
指をポキポキ鳴らしてそう言うリュインに「は、はいっ!」と震えるソウジ。
「お、王零っ、出番だっ!」
ソウジの合図と共に、基地内という設定でUPC本部前での撮影が開始。
王零の衣装は、四聖獣の刺繍入りのゴールドの制服にサングラスという中国人隊長。
「アース・ガーディアン諸君、作戦を忘れず尽力を尽くせ! 総員出動!」
モニターを指し示しながらの出動命令に『ラジャー!』と敬礼し、出動する隊員達。
隊長はサングラスを外してからインカムを片手で抑え、ディスプレイに映るキメラを睨みながら隊員達に指示を行うことに。
『カーット!』
出動シーンの撮影終了。
「皆さん、次はキメラ退治です。張り切ってくださいね」
スタッフは明るく言うが、能力者達の苦労は彼らの倍だ。
●ガチ戦闘
出現地に着くなり、皆で撮影スタッフと共に撮影に適した場所探しを始めた。場所はキメラから離れたところに位置する大通りに決定。
場所取りが終わると、リディスを含めた撮影スタッフ、出番が終盤まで無い王零、クライマックスのみ出番の夕貴、フィオナは慌しく準備を始めた。
撮影準備と同時に、フィオナは盾代わりになるものを探していた。
『撮影始めるぞ! スタート!』
カチンコが鳴ると同時に、撮影+キメラ戦開始。
撮影が始まったというのにまだ盾代わりになるものを探していたフィオナだったが、運良く分厚い鉄板を発見。屈みながら移動すれば、十分盾になる大きさだった。
「重い‥‥ですが、これなら中距離で立ち回れますし、攻撃が防げますね‥‥」
盾を両手で持ちながら、警戒しながらキメラを探索するフィオナ。蜘蛛だけに、上からの急襲も予測されるので要注意だ。
「手伝うよ」
佑弥は、何時の間にかフィオナの隣にいた。
「監督、あれいいんですか?」
スタッフの言葉に「兄弟という設定だから構わん」と撮影続行を命じる監督。
我斬は、演技を入れ役になりきって戦闘に臨む。
「キヤマ、危険な任務だが君が適任だ。頼んだぞ!」
「任せておけ」
相手は地面、粘着糸を利用した壁移動を得意とするクモキメラなので、警戒しながらの探索となる。上からの急襲も予測し、十分注意したリュインは『鬼蛍』での受けか飛び退き回避が無難だろうと陽動を開始。
「こっちだ、キメラ!」
その声に反応したのか、ビル階下に張り付いていたジョロウグモが地面に下り、速度を上げてリュインに近づいた。
陽動作戦に成功した囮役のリュインを守るべく、フィオナと佑弥は徐々に接近。
「フィオナ姉ちゃん、俺、援護するから盾持ってて!」
佑弥は『スコーピオン』で援護攻撃中、鉄板を支えているフィオナに質問した。
「クモの足、何本だっけ?」
「8本です〜」
突然の質問に答えるフィオナに「サンキュー」と礼を言った後、佑弥は『ヴィア』で二刀流、といきたいところだけど無理かもと判断。
「俺、脇役っぽいし」
子供ながら、自分の立場を弁えている佑弥であった。
我斬は、囮役のリュリンがジョロウグモを戦いやすい場所におびき出したのを双眼鏡で確認。
(「ジョロウグモが来たら、全員で足狙い、動きを止めた後ギリギリまで痛めつけた後ホープマンに止めを刺してもらうか」)
そう考えていたところ、リュインとジョロウグモが接近。各隊員は、各々の配置についてジョロウグモ攻撃に備えている。
「全員配置に付いたな。アース・ガーディアン、アタック!」
その合図で一斉攻撃!
我斬はジョロウグモに対し十字砲火ができる体制をとり、左右の足をニ方向から『デヴァステイター』で射程ギリギリからの同時攻撃をしかけ、僅かだが動きを止めることに成功。
「こんなの、僕に倒せるのでしょうか?」
演技なのか、地なのか分からない刃の台詞。
「隊員達へ通達です、イエローが敵と接触しました。至急援護願います!」
連が素早く指示するが、ソウジの手助けがあるのは内緒。
リュインは、ジョロウグモが壁に張りついて移動したので『瞬天速』で壁を疾駆し追跡。その勢いを利用して『刹那の爪』の蹴りと『鬼蛍』で攻撃後、宙返りして体制を立て直して着地。
「クモが落ちた! 下へ行け!」
フィオナ以外の能力者がジョロウグモに駆けつけた途端、刃が蜘蛛の糸に絡め取られた。
「助けてくださーい!」
「刃っ!」
助けようとしたリュインだったが、彼女も絡め取られた。
過去、蜘蛛キメラと戦ったことがあるリュインはSES武器でも斬れないが、熱に弱いことを知っているのでライターを持っている仲間に糸を焼き切るよう頼んだ。
盾で糸を防いだフィオナは、ジッポライターで刃とリュインの糸を焼き切った。
「援護遅れてすみません〜!」
そう言うなり、フィオナは隊員役能力者全員に『練成強化』を施し、ジョロウグモを『練成弱体』で弱めた。
「夕貴さんと交代するしかないようですね‥‥」
刃は隊員達がジョロウグモと応戦している隙に現場を去り、誰にも見られないような場所でホープマンに変身した。
『ホープマン・チェンジ!!』
説明しよう! シャドウ隊員ウスイは天に向かってガッツポーズのとることでホープマンに変身するのだ!
そのシーンの撮影終了後一旦カットし、入れ替わりでスーツアクターの夕貴が登場。
●真打登場
「夕貴さん、後はお任せします」
「わかった。あ、アフレコお願いしたいだけどいいかな?」
「わかりました」
刃がフレームから外れたら、タイミングを計りフレームインしたホープマン役の夕貴が颯爽と登場するなり、右手の中指で空を指し、左手を腰にあてる決めポーズを取ると決め台詞。
『この世に悪い宇宙人がいようとも、子供達の希望をパワーに変え、ホープマンは戦い続ける!』
隊員役の能力者がダメージを与え続けた甲斐あり、弱っているので今がチャンスだ!
「皆、ホープマンが来たぞ!」
我斬がホープマンを見てそう言うと皆「待ってました!」という期待の眼差しで見ていたが、佑弥のみ「あんた誰?」と言ったポカーンとした表情に。
「皆さん、期待している場合ではありません! 援護するのです! ホープマン、任せてください!」
連はそう言うと『小銃「ブラッディローズ」』を構え『狙撃眼』『即射』『二連射』を一気に使い、銃の名手というモモカの設定に恥じぬ早撃ちの二連撃で援護攻撃。
彼女に続け! と他の能力者達も反撃開始。
我斬は不規則にジグザグ機動で接近すると『流し斬り』でダメージを重ね、ホープマンの止めに繋げようと必死で、佑弥は『スコーピオン』でそれを援護。
フィオナは盾での防御を辞め『練成治療』で能力者達を回復。
隊員役と連携しながら、リュインは『疾風脚』『急所突き』で肩、肘等の関節や目潰し、斬撃、蹴りを狙いある程度弱らせた。
「皆、止めはホープマンに任せるぞ」
コクンと頷く能力者達。
いよいよ、キメラVSホープマンというクライマックスに突入。
リディス、王零、刃は撮影スタッフをキメラから守るべく身構えている。
「今だ!!」
隊員役能力者達の合図で、ホープマン夕貴は止めといくかと張り切った。
『一撃必殺! ホープ・ギャラクシィー・パァーンチ!』
夕貴は、スーツの上に装備している『メタルナックル』に『豪波斬撃』『紅蓮衝撃』『急所突き』を同時付加してジョロウグモ人間部分の腹部と蜘蛛部分の繋ぎ目めがけて必殺技を繰り出した!
『紅蓮衝撃』は全身が赤いオーラに包まれるが、ヒーローとしてはインパクトにかけるのでCG処理で炎を纏わせることに。
隊員役の能力者達の陰ながらの援護もあり、ジョロウグモはぶっ倒れた。この場面は、ジョロウグモがぶっ飛ぶ編集が行われるが。
●その後?
「お疲れ様でした」
撮影終了後、リディスは皆に消化が良い軽食、スポーツドリンクを差し入れた。
本来は撮影の合間にと思っていたのだが、バタバタしていてそれどころではなかったので慌てて用意し『瞬天速』を活用し持ってきたのだった。
「スタッフの皆さん、撮影お疲れ様でした。編集作業頑張ってください」
「美人にそう言われちゃあ、頑張らないとね!」
リディスにそう言われたスタッフの1人は、俄然張り切った。
「まだラストシーンが残っている!」
監督にそう言われ「忘れてた」と思い出すスタッフ達。
「皆、ご苦労だった。今回の反省を今後に活かすように。それはそうとウスイ、貴様、これで何度目の敵戦逃亡だっ! 戦闘中に持ち場を離れるとは言語道断! 司令室に帰ったら‥‥」
フィオナは、王零の台詞中に刃の手を取るとスタッフ達を指で示しこう言い出した。
「隊長、愛妻弁当が何者かに食べられました!」
「何!?」
「ウスイ、逃げるよ!」
ダッシュで逃げ出すフィオナと刃。
このアドリブは、面白いからと監督は即決採用。
「我の見せ場が‥‥」
格好良く決めたのに、見せ場を取られた王零は項垂れた。