●リプレイ本文
●何故
「戦闘機のプラモデルばかり壊されるだぁ? 何だかなぁ‥‥。バグアの考えがわかんねぇ」
須佐 武流(
ga1461)は、何故キメラにプラモデル店を襲撃させているのかと考えたが答えは出なかった。
「私は他人の趣味にケチつもりはないけど、迷惑をかけるのなら話は別よ」
趣味は個人で楽しむべき、と意見を付け加える緋室 神音(
ga3576)。
「わざわざ戦車や戦闘機のある店舗を狙う‥‥。最初に襲われたおもちゃ店の店長が怪しい気がしますね」
事件が起きたら第一発見者を疑うべきと考える周防 誠(
ga7131)。
「プラモデルのキメラですか‥‥最早、何でもありですね。合成生物とかのレベルを遥かに超えている感じがします。被害も出ていますし、手早く片付けるとしましょうか」
鳴神 伊織(
ga0421)が言うように、様々なキメラが出現しているのは確かである。
「さってと‥‥メンドいけど仕事しないとね。それにしても、初仕事でいきなりバグアとご対面するかもしれないなんてねぇ‥‥」
ついているのか、いないのかわかんないねとぼやきながらも戦闘準備にとりかかる望月 神無(
gb1710)。
●情報
藤田あやこ(
ga0204)は、監視のため客として店長にモーションをかける作戦に。
「この車、愛嬌あって可愛いですよね〜。XF−85もいいな〜。私、これのクッション作ったんですよ〜」
あやこの言葉に、店番をしていた店長の耳がピクリと動いた。
「お嬢さんも戦闘機がお好きなんですか?」
「はい。クッション作るほどですから」
クッションと戦闘機。何ともアンバランスな組み合わせだが店長と直に会話することが出来たので、内心「やりぃ!」と喜んだあやこだった。
店長との会話を終えたあやこは、店員にも話を聞いてみることにした。
「店長が変貌? ん〜変わった点は特に無いよ。戦闘機マニアっぷりが増したかな〜? ってカンジはするけど」
「プラモデル専門店の襲撃が始まってからでね? 店長ちょいと変わったの」
襲撃事件発生、更に磨きがかった店長のマニア振り。
これは怪しいわ、と睨んだあやこは店員に礼を言うと仲間に無線機で店長の様子を報告した。
「そうですか‥‥わかりました、ご苦労様です」
あやこの報告を聞いた誠は、自分達がすべきことは周辺店舗の護衛、店長がバグアに寄生されている確証を得ることが先決という結論に達した。
襲撃事件を起こしているキメラを撃破するのは、それからでも遅くは無い。
「周辺店舗といっても、私達だけで護衛しきれないほどの数ですよ? でしたら、各店舗を寄せ集めて『戦闘機・戦車プラモデルフェア』を行うという方法が良いのではないでしょうか? 嘘の宣伝をすれば、敵は自ずと姿を現すはずです」
バグアと化したかもしれない店長、戦闘機キメラをおびき寄せるには伊織のアイデアは効果的かもしれない。
「良く考えてみれば‥‥襲撃されてるのってこの近隣の玩具屋だけなんだよな? その店全部集めりゃ、残るは問題のあの店だけ。ほぼ確定‥‥ってことになるな。昼間の様子はあやこが窺っていたようだから、俺は閉店後の容疑者(店長)に探りを入れるとするか。閉店後にも、店に残っているだろうしな」
閉店後の様子見を買って出る武流。
「武流、店長の監視は任せるわ。残ったメンバーで周辺店舗の護衛を兼ねたフェア開催の交渉に行くから。連絡は、無線機で定期的にしてちょうだい」
「OK! んじゃ、俺は店に行くぜ!」
ダッシュで件の店に向かう武流を見て「大丈夫かしら‥‥」と呟く神音。
●宣伝
伊織は、プラモデル戦闘機襲撃理由を考えてみた。
考えられる理由としては、プラモデルが原因で妻と離婚したことが原因ではないか? ということだった。
戦闘機好きな店長がバグアと化したのなら、戦闘機がキメラというのは納得がいく。
ひっかかっていたのは、何故、最初に店長の店が荒らされたのか、誰の仕業なのかだった。
寄生前のバグアはわかるが、離婚した妻はさすがにそのようなことはしないだろう。
「考えが纏まりません‥‥」
頭が痛いです‥‥と、こめかみに手を当てる伊織。短時間であれこれ考えすぎたのが頭痛の原因だろう。
「戦闘機・戦車プラモデルフェアの内容を話し合いましょう。具体的に何をするか決めないと、宣伝のしようがないわ」
神音が早く内容を固めようと急かす。
「今後、安全に商売をするためにお願いします、と頼めばいいのではないでしょうか? 下手にキメラ襲撃避けというより、そのほうが信用されると俺は思います」
「私もそう思うな。一般人は『キメラ』と聞くだけで怖がるからね」
誠のアイデアに賛成する神無。
「会場は、広めの店舗を借りますしょう。そのほうが撃破しやすいですし」
フェアの内容、説得方法が決まったのであやこ、武流を除く4人はプラモデルを取り扱っている店舗に『護衛』を隠れ蓑としたフェアの宣伝と協力を各店の店長に協力要請した。
被害を抑えるため、実際のフェア会場にはプラモデルは運ばず、いつ、どこで開催するのかという情報を意図的に教え、それ以外の情報は極力入れないようにした。
キメラが襲撃しに来る、と正直に話したら能力者の頼みであっても引き受けてくれないだろう。
店長達は店が襲撃されたら商売にならないと判断し、快く協力することに。
●監視
閉店間際に再び客として最初に襲撃された店に行ったあやこは、店長の様子を窺ったが怪しい素振りを見せようとしない。展示品の手入れを念入りにするのは、それだけプラモデルが好きな証拠だろう。
誠から無線機で聞いた偽装フェアの話を聞いたが、それは店長に知られてはいけない。知らてしまっては、これまでの計画が水の泡になる。
あやこと入れ違いに武流が来店したが、閉店ですからと断られた。
「そう言うなよ。戦闘機つながりでナイトフォーゲルのプラモデルってないか?」
「問屋がドローム社と取り引きしてなくてね。入荷予定はないよ」
それは残念、と一旦引き下がる武流だったが、閉店後の店内の様子を窺うため店内に忍び込み、店長が怪しい行動をしないか要チェック。
レジの売上金をすべて持って行ったのを見計らい、まずは店内を物色。他の売り場は散らかってままのところがあるにも関わらず、プラモデルコーナーだけは綺麗になっている。
(「プラモデル以外にも愛情注げよ‥‥。ホント、ナイトフォーゲル関連ひとつもねぇんでやんの」)
しばらくすると、店長がプラモデルコーナーに来た。
「皆‥‥また出撃してもらうよ。F−16、きみは初陣だね‥‥」
恍惚の笑みを浮かべて店長は一機ずつに話しかけながら改造を行っている。
「この周辺の戦闘機を潰したら、ここを壊して移転するか‥‥。いずれはワシントンすべてのプラモデルを破壊してやる!」
出撃、プラモデル破壊。この言葉で、店長はバグアという確証が。
偽装プラモデルフェアに食いつくかもしれないと睨んだ武流は、店長の視線がプラモデルに釘付けになっているのを確認してから明かりがついている事務所に回りこみ、裏口から逃げ出した。
店から出るとすぐに無線機で仲間に「店長はバグアに間違いない」と仲間に報告。
●決行
3日後。能力者達による戦闘機・戦車プラモデルフェア会場の準備は整った。
そう銘打ってあるものの、会場内はもぬけの殻。プラモデルはひとつも展示されていない。
通りすがりの伊織は、店前を清掃しているバグア店長にフェアがいつ、どこで行われるかの情報を意図的に教えた。
「あなたのお店では何か出品するんですか?」
出品などできるわけがない。何も聞いていないのだから。
見栄を張った店長は「当然、うちも出品してるよ」と答えた。若干焦りが見えた様子を見ると、嘘であることが一目瞭然。
「伊織です。店長がフェア会場に行くよう仕向けました。皆さん、攻撃準備をしてください」
「わかったわ」
伊織から連絡を受けた神音は、月詠を構えてバグア店長を待ち構えた。
「自分の予想では、戦闘機は各機連携してくると考えています。そのため、倒れにくいとされる独戦闘機Bf 109は後回しにし、攻撃的な露戦闘機MiG−21を優先的に攻撃しましょう。機動性の高い米戦闘機F−14は装甲の方は薄そうなので、ドッグファイトを行おうと接近してきた瞬間に攻撃しませんか?」
誠の攻撃案に賛成する仲間達。
あやこは戦闘時に引火した場合に備え、消火栓や消火器がある箇所を確認。消火器は炎上した場合に備え、自分の近くに置くことに。
「あの店の店長が来たみたいだよ。大きい箱持って」
会場前で待機していた神無が、店長が来たことを皆に告げる。
●空戦
「何だこれは!? プラモデルフェアが行われているというから来たみたのに、肝心なものがひとつもないじゃないか! どういうことだ!」
怒る店長に、情報提供した伊織が事のあらましを説明した。
「これは、あなたをおびき寄せるための罠だったんです。頻繁に起きている戦闘機プラモデル破壊ならび店舗襲撃は、あなたの仕業だとわかっているんですよ。あなたがバグアだということもです」
「戦闘機プラモデルの愛が強するのはわかるが、自分の店だけのものが売れれば良いってか? 気持ちはわからないでもないが、その理屈‥‥許されるわけがないんだよ!」
伊織に続いて、武流が自分の怒りをぶちまけた。
「プラモデルに熱中しているから、夫婦仲が冷めて奥さんと離婚したのね? あなた、それを根に持っているから憂さ晴らしとして襲撃しているの?」
あやこの質問に「ああ、そうだよ!」と開き直る店長。
「俺は、愛想を尽かして出てった妻も、自分以外の店が繁盛するのも許せないんだよ! どういうワケかわからんが、いつの間にか戦闘機を強力に改造することができるようになった。これはチャンスだと思い、店の襲撃を始めたんだ! 邪魔をするおまえら全員、戦闘機で倒してやる!」
店長は、箱からF−14、MiG−21、Bf 109を取り出し「出撃!」と各戦闘機に攻撃命令。
「アイテール‥‥限定解除、戦闘モードに移行‥‥」
神音が覚醒し始めると、他の能力者も覚醒して戦闘体勢に。
Bf 109とMiG−21が、小さいバルカン砲で同時攻撃を始め、後方にF−14が待機している。
あやこは『練成強化』で能力者達を強化した後、戦闘機達が自分に狙いを定めたのを見計らって『練成弱体』で弱らせ『スパークマシンα』で攻撃。
「皆、敵の連携崩壊狙いでいきましょう!」
「おう!」
武流は『刹那の爪』を使った蹴り技中心に攻撃を仕掛けるが、ジャンプしても届かないので低空飛行を待つことに。
「喰らえっ!」
Bf 109が丁度良い高さに来たので、タイミング良く回避した後に連続蹴りの後、防御力ダウンを狙い『ジャック』で牽制。
F−14とMiG−21は、手の甲で受け手首を使い払い除けている。
2機に接近した伊織は『豪破斬撃』で威力を上げた『月詠』で攻撃し、空中にいるBf 109は『小銃S−01』で墜落を狙う。
「短期決戦狙いでいきます!」
「伊織、MiG−21は私が倒す」
神音は、3機の中で一番小さいMiG−21を集中攻撃。
素早い戦闘機を確実に仕留めるため、あやこの側に置いてある消火器を弾幕代わりにして退路を塞ぎ『先手必勝』『流し斬り』の後『急所突き』攻撃後、神音に続けと言わんばかりにあやこが『小銃S−01』で追撃。
これによりMiG−21、墜落!
誠は機動性の高いF−14の装甲が薄そうと見解し、ドッグファイトを行おうと接近してきた瞬間に『強弾撃』『鋭角狙撃』『急所付き』を同時使用。
一気に撃ち落とそうとしたが、3機の中で一番大きいサイズなので簡単に墜落しなかった。
「あーまったく‥‥蝿みたく飛び回ってないでさっさと墜ちなさいよ!」
そう愚痴りながらも『スコーピオン』でフォロー攻撃する神無。
速度が落ち始めたのを見た伊織が「隙あり!」と『月詠』で一刀両断。
F−14、墜落!
「う〜ん‥‥コレって、怪獣映画で怪獣に攻撃されて墜とされる戦闘機の気分なのかなぁ?」
大破したF−14を見て、ポツリと呟く神無。
「呑気なことを言っていないで、こっちを手伝ってください!」
Bf 109に攻撃しつつ、あやこと誠は協力要請。
「俺のコークスクリューパンチ、喰らいやがれ!」
武流は『急所突き』を付与した『刹那の爪』でBf 109の翼をへし折ったが、片翼でもしぶとく飛んでいる。
「蚊みたいで鬱陶しい」
神無の一撃は正面にヒット。
「夢幻の如く、血桜と散れ‥‥剣技・桜花幻影(ミラージュブレイド)」
神音の一撃で、Bf 109は横に真っ二つに。
最後の1機、Bf 109も墜落。
戦闘機プラモデル撃破:成功!
●捕獲
「自慢の3機が!! おまえら、許さん!!」
店長はジャケットの胸ポケットから拳銃を取り出した。
「逆ギレしちまったぜ、こいつ。どうする?」
武流がそう言い出すと「どうしよう‥‥」と他の能力者も考え始めた。
「襲撃の理由だけど、奥さんの嫌がらせもあるんじゃない?」
あやこの推測にギクッとなる店長。
「プラモデルの愛情が歪んだのを、バグアにつけこまれたんですね。あなたもある意味被害者ですが、店を壊された店長達の比ではありません」
店長に同情しつつ、彼がしたことの重大さを思い知らせる伊織。
「店長さん、観念したほうがいいですよ? 武器である戦闘機、全部俺達が壊したんですから」
「プラモデルがなければただのオジサンだね、アンタ」
誠と神無の言葉は、店長に精神的ダメージを与えた。
「くそっ!」
逃げ出そうとする店長の前に立ち塞がったのは武流だった。
「さっきも言ったけど‥‥戦闘機プラモデルの愛が強すぎようだな。自分の店の商品だけが売れ、儲かればそれで良いのかよ? おまえの気持ちはわからないでもないが、歪んだ精神じゃ良いプラモデルは作れねぇんだよ!!」
店長の顔面におもいっきりパンチを喰らわす武流。
倒れる店長を支えたのは「プラモデル仲間になれなくて残念だわ」と言うあやこ。
「コイツを早く縛ってちょうだい!」
あやこの合図で一斉に店長に飛び掛る能力者達は、羽交い絞めにしたり、踏みつけにしたりして弱らせた後、ロープで簀巻きに。
バグア店長捕獲成功したので、誠はUPC本部に引き取りにきてくださいと報告。
数10分後、UPC軍が偽フェア会場に到着。
能力者全員にボコにされた店長の顔は悲惨だったが、誰も同情しなかった。
「依頼が終わったから何か買いに行こうっと♪」
プラモデル店に向かおうとしたあやこに、バグア捕獲作業を終えたUPC軍兵士が一言。
「この辺の店ですが、壊滅状態なので営業再開はまだです」
バグア、許さない! と怒りを露にするあやこだった。