タイトル:6月の結婚式コンテストマスター:竹科真史

シナリオ形態: イベント
難易度: やや易
参加人数: 35 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2008/06/16 01:52

●オープニング本文


 UPC本部に、貸衣装店からの依頼が舞い込んできた。
 店主の話によると、貸衣装店の宣伝を兼ねたコンテストを開催したいのだとか‥‥。

「こんな依頼、参加する能力者がいるのかねぇ‥‥」
 依頼主が内容を話しているモニターを見ながら、ソウジ・グンベはぼやいた。
 結婚なんてものは、所詮自分には縁が無いものと割り切っているからだ。
「ソウジ中尉、何をなさっているのですか?」
 背後から声をかけたのは、所用でUPC本部にやってきたシェリル・クレメンスだった。
「キミ、誰?」
 ソウジが、新米のシェリルを知らないのは無理もない。
「あ‥‥すみません! 自己紹介がまだでしたね。あたしは、シェリル・クレメンスと申します。ULTのオペレーターを務めております。宜しくお願いします!」
 深々とお辞儀するシェリルに「そこまでしなくていいから‥‥」と頭を上げるよう説得するソウジ。

「ところで、何の依頼だったんですか?」
「貸衣装屋の女主人が、結婚式コンテストを開催したいから出場する能力者を募集中だとさ」
 結婚ですか‥‥と、胸をときめかせるシェリル。彼女も、結婚に憧れるお年頃だ。
 それじゃ、俺はこの依頼を能力者に伝えに行くからと、ソウジはシェリルと別れた。

「えーと‥‥能力者達に依頼があるのだが‥‥とある貸衣装店の店主から、結婚式コンテストを行うので出場者を募集しているとのことだ。年齢だが‥‥男子は(外見年齢)18歳以上、女子は(外見年齢)16歳以上に限る。既婚者の出場に関しては、コンテストを盛り上げてくれるのであれば良し! という店主の許可がある。出場希望の能力者は、俺に連絡するように。以上」

 こんなの、参加する能力者がいるのかよ‥‥と頭を痛めるソウジだった。

●参加者一覧

/ 鏑木 硯(ga0280) / 五十嵐 薙(ga0322) / クレイフェル(ga0435) / 鯨井昼寝(ga0488) / 鯨井起太(ga0984) / ファティマ・クリストフ(ga1276) / 須佐 武流(ga1461) / 如月・由梨(ga1805) / 平坂 桃香(ga1831) / シャロン・エイヴァリー(ga1843) / ゼラス(ga2924) / 漸 王零(ga2930) / 終夜・無月(ga3084) / 小鳥遊神楽(ga3319) / 霧島 亜夜(ga3511) / 緋霧 絢(ga3668) / リュイン・グンベ(ga3871) / 王 憐華(ga4039) / キョーコ・クルック(ga4770) / 緋沼 京夜(ga6138) / 藍紗・バーウェン(ga6141) / 夜柴 歩(ga6172) / ラシード・アル・ラハル(ga6190) / リュス・リクス・リニク(ga6209) / レーヴェ・ウッド(ga6249) / ルミナス(ga6516) / ソード(ga6675) / 暁・N・リトヴァク(ga6931) / 砕牙 九郎(ga7366) / レイアーティ(ga7618) / ルフト・サンドマン(ga7712) / 乾 幸香(ga8460) / 櫻杜・眞耶(ga8467) / 御崎 緋音(ga8646) / ラピス・ヴェーラ(ga8928

●リプレイ本文

●1組目
 トップバッターは、男女逆転参加のシャロン・エイヴァリー(ga1843)と鏑木 硯(ga0280)。
 シャロンは20歳、硯は17歳なのでルール違反ではない。
 硯の衣装は純白のウエディングドレス。
 レースやフリルの装飾を多めにし露出は少なめ、頭にはフェイスアップベール。
 ほんのり薄化粧をし、コルセットの胸部分にはヌーブラ+パッド詰め。
 ブーケはマーガレットをふんだんに使ったものを用意。
「憧れの女性と結婚式を疑似体験できるのはすごく嬉しい。いつの日か、シャロンさんが俺を男として見てくれるようになったら、逆の立場でバージンロードを歩きたいな」
 硯の願いは叶うだろうか?

 その頃、シャロンは黒のモーニングに着替え中。
 凛々しくなるようお気に入りのヘアバンドは外し、髪は後ろでひとつに束ね、白無地のワイシャツ、グレーのズボン、シルバーのネクタイ、スタンダードなモーニングコートで上手く纏めている。
「こんなところかな?」
 硯の様子を見に行くと、そこには可憐な花嫁がいた。
「わあ‥‥似合いすぎて驚き♪」
「シャロンさんも凛々しいです」

 硯に腕を差し出したシャロンは、腕を組んでゆっくりと、頬を赤く染めながら寄り添うように歩いた。
 バージンロードの半ばでシャロンは硯をお姫様抱っこをしたので、硯は照れながらシャロンの首に腕を回した状態で運ばれた。
 審査員席に近づくと、アピールとして一回転してドレスの裾が舞うように翻した。
(「腕力がこんな形で役に立つなんて思いもしなかったわ」)
 気恥ずかしさを誤魔化すため、照れ笑いしつつゴールまで歩くシャロン。

「お疲れ様です、シャロンさん」
 シャロンにマーガレットのブーケを手渡す硯。
「カッコ良すぎじゃないですか?」
「気分転換になったでしょう?」
 能力者の気持ちを一新するような演出であった。

●2組目
 五十嵐 薙(ga0322)の衣装は、淡いオレンジが基調のウェディングドレス。
 スパンコールで小さな花柄模様をあしらったノースリーブ、背中が少し広めに開き、スカートは足が隠れるほど長く、後ろにいくにつれ丈が長い。
 それに合わせ、オレンジのロング手袋をはめ、頭にはヴェールとネコ耳を模した小さなティアラを髪に飾り、ナチュラルメイクを施した。
「暁さん‥‥気に入って‥‥くれるでしょうか?」
 暁・N・リトヴァク(ga6931)は白のモーニングに着替え、胸にエーデルワイスの花を挿した。
 薙の着替えが終わったかな? と様子を見に行くと、美しく着飾った薙がいた。
「似合って‥‥ますか‥‥?」
「ええ、似合ってます。俺がいますから‥‥」
 緊張している薙の手を握り、安心させる暁。

 緊張しているのか、二人の歩みはぎこちない。
 薙は暁にリードされつつゆっくりと歩き、不安を紛らわすため、繋いでいる二人の手に力が籠もる。
 どうしようと頭の中がパニックになり、躓いて転倒しそうになった薙を暁は支えた。
「ありがとう‥‥ございます」
「お姫様抱っこは嫌ですか?」
 暁が小声で囁くと薙は「いえ‥‥」と答えたので、お姫様抱っこしてバージンロードを歩いた。
 その様子は、童話の王子様がお姫様を抱いているように見えた。

「緊張した‥‥」
「私も‥‥大好きです‥‥暁さん‥‥。ずっと‥‥一緒に‥‥いてください‥‥」
「賞は取れなくてもいいです。薙さんのドレス姿が見れたから‥‥。次も見せてくれますか?」
 その言葉を待っていたかのように薙は顔を近づけ、暁の頬に不意打ちキス。

●3組目
「コンテスト、審査員存在、勝敗を決めるものであれば当然勝ちにいかなければ! いかなる勝負事であっても持てる全てを出し切って臨むのがポリシー。安易なウケ狙いはせず、臆することなく真正面から挑む!」
 そう意気込むのは双子の鯨井起太(ga0984)、鯨井昼寝(ga0488)兄妹。
 昼寝の衣装は、正統派の美しさを演出すべくプリンセススタイルの純白のウェディングドレス。どことなくロイヤルな雰囲気を醸し出しているオフショルダータイプ。
 ドレスと揃いのマリアヴェール、スカート部はアシンメトリーなタッキング。
 髪はアップにし、高い位置で毛束をふたつにして片側は前に散らし、もう片方は逆立てたお団子風にしてアシンメトリーかつ、ルーズなキュートさを全面的に出している。
 手を抜かず、きっちりアレンジする点は昼寝自身を醸し出している。
 起太の衣装は、清潔感あるホワイトタキシード。
 主役は妹なので必要以上に前面に出ず、新婦を引き立てる新郎を演出。
 美容師店主の妹夫婦が審査員であることを意識してか、髪はオールバック気味に流して固め、誠実さとワイルドさを出した。

「パーフェクトに決めるわよ、起太」
「抜かりは無いさ、ボク達は無敵だからね」
 起太は気配の消し方を応用した歩き方で、昼寝は鍛えた足運びでバージンロードを歩く。
 花嫁と花婿の存在感が同等では逆に違和感が出てくると計算した上の歩き方だ。
 新婦にスポットライトが当たってこそ、この舞台のバランスが取れると推測した起太は恋から愛に変わっていく、否、変わらざるを得ない二人を意識しつつも昼寝をリードしている。
 一生に一度の緊張感、呼吸の合わせ方、清らかな道を歩く一世一代のイベント。
 大切な人と未来に進む緊張、不安、喜び。溜息が漏れるような透明感。
 鯨井兄妹の演出は見事だった。

●4組目
「好きやない言うたら、緋霧誤解するやん! おもろそうやから出とうて花嫁役探しとったら、緋霧がええ言うたから‥‥」
 そう言うクレイフェル(ga0435)は、緋霧 絢(ga3668)の恋心に気づいていない。
 普段話す分は何とも無いが、いつもと違う姿を見たりすると胸がドキドキし、口ごもってしまったりするが視線は絢を追いかけ、耳は絢の声を追いかける。

 コンセプトは『悪魔の結婚式』。
 クレイフェルの衣装はチェーン飾り等を配した黒いモーニングで、首輪や手枷も装備している。
 絢は普通のウェディングドレスの清純をイメージしたものではなく、背徳的でブラックなもの。他の人と被らないよう、独特で悪魔的なイメージの黒いものに。アクセントカラーは赤で、ドレス本体はマーメイドラインで肩、背中、胸元が大胆に開いたものを着用し、所々にチェーンやベルトで拘束をイメージさせる装飾を施す。
 手袋は上腕部まである長さのもので、ヴェールは髪の横に垂らす形で顔は覆わないもの、靴はヒールのあるロングブーツ、ティアラはシルバーをベースにルビーを用いたもので、ブーケは紫と白の花を基調としている。
「綺麗やで‥‥」
 顔を真っ赤にし、視線を逸らしながら絢を褒めるクレイフェル。
「あの、その、えっと‥‥不束者ですが、宜しくお願いたします。クレイフェル様」
 コンテスト前、婚約指輪としてお揃いのシルバーリングを薬指にはめて長い鎖付の黒革の首輪と鎖付きの黒革の手枷と足枷を互いに付け合った。
 鎖の長さは、行動を阻害しない程度に。

 クレイフェルは絢をふわりと抱き上げお姫様抱っこし、絢はクレイフェルの首に腕を回した。颯爽と歩きたかったが、顔が真っ赤、動きがぎくしゃくしても絢をしっかり抱きしめている。
 二人して顔が赤いのでとても初々しい。
 退場し終えると、絢はブーケを投げた。
「コンテストとはいえ、クレイフェル様と結婚式を挙げることができて嬉しかったです」
「そう言って貰えて嬉しいわ」

●5組目
「コンテストか。そんな事はどうでもいい、楽しんだもん勝ちだ」
 お相手のファティマ・クリストフ(ga1276)を少しでも楽しませるようとしているゼラス(ga2924)の衣装は、スーツにトレードマークの赤いマフラー。
「お待たせしました」
 ファティマの衣装は簡素かつ清楚な白いウェディングドレス、ゼラスからの誕生日プレゼントの白いマフラーをショールのように肩にかけ、リリウムの冠に純白のマリアベールという清楚なもの。
「緊張してるか? 安心しろ、教会でミサをやるのと大差ないさ。それに、俺がいるから心配するな。さ、行くぞ? それと、したいことがあるんだが‥‥」
 耳打ちして言うとファティマは驚いたが、ゼラスを信じることに。

 ゼラスはファティマを左肩に載せ「片側肩車」をしてバージンロードを堂々と歩き始めた。ファイターならではの力技である。
 ファティマには事前に落ちる危険があるかもと言ったが、それを承知でOK。
 ファティマは抱きつくと、ゼラスの顔がすぐ近くにあったので照れたが寄り添って聞こえないように「dulcissime‥‥(ラテン語の『愛しいあなた』」と囁いた。
「今は楽しもう。お前の笑顔が好きだ。スイスはいい所だし、孤児院の皆も気のいい奴ばかりだ。お前さえ良ければ‥‥今度、一緒に行こう。神父にも顔見せないとな」
「ありがとうございます。渡すのが遅くなりましたが‥‥誕生日プレゼントです。遅れ馳せながら、お誕生日おめでとうございます」
 プレゼントは、エメラルドの指輪を通したシルバーチェーンのネックレス。ゼラスの誕生石だ。
 ファティマはゼラスの首にかけ、エメラルドの指輪を左薬指にはめた。
 エメラルドには『喜び』『希望』と言う意味が込められている。『新たな始まり』の意味もあるが、まだ内緒。
「今日は‥‥本当にありがとうございました。とても楽しくて‥‥嬉しかったです」
 誘って良かったと喜ぶゼラスだった。

●6組目
 白のタキシードで決めた須佐 武流(ga1461)は、フリルたくさんのフワフワヒラヒラした可愛い白いウェディングドレス姿の平坂 桃香(ga1831)に見惚れた。
「モモのウェディングドレス姿‥‥似合ってる。見違えたよ。すごく綺麗だから、本気になってしまいそうだぜ」
 カチコチ状態で感想を述べる武流。

 コンテスト中は腕を組み肩を寄せ合い、時々顔を見たりしながら甘い雰囲気を醸し出して歩き、武流は退場の前に桃香にキスしようとしたが、白のタキシード姿のリュス・リクス・リニク(ga6209)が乱入!
「リニク‥‥モモ攫う‥‥。モモ欲しい‥‥」
 武流は顔芸を披露しながら驚いたが、桃香がリュスと行ってしまったことで更に顔芸で驚き表現。
 武流がショックを受けているのを無視し、二人はそのまま逃避行かと思いきや戻ってきた。
「タケル‥‥驚いた‥‥?」
「武流の反応、面白かったわ♪」
「おまえら‥‥!」
 手を繋いで逃げる桃香とリュスを、武流は怒って追いかけた。

●7組目
 終夜・無月(ga3084)が目指すのは、如月・由梨(ga1805)との王道結婚。
 憧れる結婚式、祝ってくれる結婚式で一番大切な事を目指すと無月は意気込む。
 彼の衣装は黒のタキシードとパンツ、白のワイドカラーシャツ、白のネクタイにベスト、白のチーフ、白手袋に黒の革靴。左胸にはシルバーチェーンのフラワーポット、左手の薬指にはダイヤの指輪をはめて、左耳には妹の形見のイヤリングをつけている。
 由梨の衣装は純白のウェディングドレスにベール、白百合のブーケ。
 左手の薬指には無月とおそろいのダイヤの指輪をはめ、首に誕生日に無月から貰ったムーンストーンのロケットを下げている。
「無月さんと結婚‥‥。イベントとはいえ、結婚式体験ができるなんて。コンテストの方も負けるつもりはありません。私達だってラブラブなんです。婚約はまだですが本物みたいにやりたいです‥‥そういう日が来ることを願って」
 結婚の憧れを胸に秘め、由梨は無月の手を取り会場に向かった。
「行こう‥‥由梨‥‥」

 身を寄せ合いながら腕を組み、互いのことを考えながら幸せそうにゆっくり、優雅に歩いた。
 無月は由梨が疲れない様に注意して歩幅に合わせて歩き、時折優しい微笑みを由梨に見せた。
 バージンロードを歩き終わった時、由梨が感極まったのか泣き出してしまった。
「すみません‥‥嬉くて涙が‥‥」
 無月は由梨のベールを上げると「泣かないで‥‥」と涙を拭い、お姫様抱っこをして退場。
「愛しています‥‥誰よりも‥‥」
 由梨は無月にキスした。
 由梨を降ろし、二人はバージンロードを振り返ってお辞儀をした。
「本当に‥‥ありがとうございました‥‥」

●8組目
「グッドタイミングだ。大規模戦を無事に潜り抜けたら、藍紗に渡したい物があったので丁度良い」
 白いモーニング姿の緋沼 京夜(ga6138)が持っているのはエメラルドの婚約指輪。
 いつ渡そうか迷っていたが、絶好のチャンスと出場を決意。
「ずっと側にいる、盾であると誓ったな‥‥」
 ホワイトデーのことを、京夜は今でも覚えている。
 藍紗・T・ディートリヒ(ga6141)も、新婦控え室で京夜と同じようなことを考えていた。
「結婚式か。楽しみなのは、相手が京夜じゃから‥‥」
 京夜の白いモーニングに合わせ、藍紗の衣装は白のウェディングドレス。
 支度を終えた二人は、出番が来るまで控え室で待っていた。
「似合ってるぞ。その姿を本物にしたい。一日の最初に「おはよう」を、最後に「おやすみ」と囁きたい」
「いきなり何を!?」
「良いよな?」
 コクンと頷き藍紗が受諾してくれたので指輪をはめ、藍紗にもう一つはめてもらった後、京夜は誓いのキスをし、不意打ちお姫様抱っこを。
 
 一歩ずつ踏み出そうした時、京夜が跪いて2つのエメラルドの指輪が入った小箱を落としてしまった。京夜は即座にそれを拾うと、一つを藍紗に差し出した。
「俺と結婚して欲しい。俺がこの言葉を送るのは生涯でただ一人‥‥藍紗、おまえだけだ」
「ありがとう‥‥とても嬉しい。あれ? 我は何で泣いて‥‥嬉しいのに‥‥」
 泣きながら笑顔を浮かべてながら「我も、京夜に一日の初めに我の朝食を、一日の終わりに夕食を食べてほしい。じゃから、我を‥‥京夜の嫁にしてほしい」と気持ちに応える藍紗。
 互いの告白の後に指輪交換をし、その後のキスは濃厚なものだった。
「子供は何人産もうか? 大家族にするのじゃ♪」
 それは‥‥と困る京夜。

●9組目
 新郎14歳、新婦13歳だが審査員の計らいで特別参加OKに。
「夢のようじゃ」
 はにかむように笑い、鏡に映る自分の姿を見る夜柴 歩(ga6172)。
 衣装は所々に銀のアクセサリをあしらった純白のウェディングドレス、腕には肘までの長さの絹の手袋、胸にはラシード・アル・ラハル(ga6190)から貰った思い出のコサージュを飾っている。
 髪は腰までストレートに下ろし、ヘッドドレスを着けずに蒼いバラの飾り付きのヴェールを被る。
「イベントであっても、我は最高に幸せじゃ」

 ラシードは、褐色の肌に映える白のタキシードを着用。
 歩とは互い想い合っている仲だが、恋人というよりガールフレンドだ。
「人前って‥‥恥ずかしいね。緊張‥‥しない?」
「何を言うか。たまには、こういうのも良かろう」
 悪戯な笑みを浮かべ、赤面して言う歩。
「行くぞ」
 歩にリードされ、二人はバージンロードを歩き始めた。
 
 育ちの良いラシードは、背筋はきちんと伸ばして堂々と歩き、家で教えられた女性のエスコートの仕方を思い出しつつ、一歩一歩丁寧に歩のドレスの裾を踏まないように気をつけている。
 最初は緊張気味だったが、次第に緩やかな微笑みになる二人。

 コンテストが終わったら、二人で話を。
「ずっと先のことだけど‥‥いつかまた‥‥こんなふうに歩けたらいいな‥‥」
「我は最高に幸せじゃ。戦いしか知らない我を、受け止めてくれてありがとう‥‥」
 歩のOKが出たので、ラシードはそっと歩の頬にキスをした。
「約束‥‥だよ‥‥。これから先も‥‥私と一緒にいてくれますか‥‥?」
 二人の恋は、大人になった時に成就するだろうか。

●10組目
「女はこういうのが好きだな。ルミィが気が済むなら付き合うか」
 ルミナス(ga6516)リクエストの白の燕尾服に白い革靴、胸元に紫の生花を挿した褐色の肌に映える衣装のレーヴェ・ウッド(ga6249)は肩を竦めた。
 ルミナスは唯一背を預けらる腐れ縁で、恋愛対象というよりは家族であり、妹で、姉のような存在で我儘を受け入れる程甘い。
 コンテストに参加したのも、ルミナスに付き合えと言われたからだ。

「これだけの花嫁とはまさに百花繚乱じゃ。ショーとは言え、こんな日が来るとはな」
 照れ隠しに鏡を見て、黒のドングタイプのウェディングドレス(スカート部分が簡単取り外せミニドレスにチェンジできる物)、ベールを目深に被っている自分の姿を見るルミナス。
 ミニドレスは胸元に大粒の宝石で装飾され、開放的で黒の紐ストラップのセクシーデザインのミニドレスに。
 基本的にスカした男だが、格好付けというよりも素で醒めているレーヴェだったが、好意を持つルミナスには甘くなりがちだ。
「似合うぞ‥‥」
「そうか? 仕掛けがあるのじゃが内緒じゃ♪」

 コンテスト時の音楽は、アップテンポテクノ系。新郎新婦が登場すると、盛大にスモークが吹き上がり二人を隠した。
「今回の目玉、アーマーパージでありんす♪」
 その隙に、ルミナスは開放的な黒のミニドレスにチェンジ。
 ルミナスの足取りは軽やかだったが、レーヴェは普通に出口まで歩いていた。
 バージンロードに最後に用意されている赤いオープンカーに向かい、レーヴェはルミナスをお姫様抱っこして走り出し、助手席に乗せた。
「仕方ない花嫁だ」とルミナスの我儘に苦笑するレーヴェ。

●11組目
「コンテストに緋音君と参加するするとは‥‥。伝えそびれていた想いを、今日こそ伝えたいですね」
 グレーのフロックコート、立衿シャツと灰銀色のアスコットタイに着替えたレイアーティ(ga7618)は御崎緋音(ga8646)に思いを伝えたかった。
 純白のウェディングドレスを纏った緋音は「行きましょう」とエスコート。

 コンテストでは、レイアーティにお姫様抱っこされた緋音が登場。
 レイアーティの首に腕を回し、しっかりと抱きついている。
 そのまま退場するかと思いきや、レイアーティは途中で歩みを止め真剣な表情に。
「緋音君に伝えたい事があります。今まではっきり伝えた事はありませんでしたが‥‥緋音君が好きです。こんな時代ですが‥‥ずっとそばに居て欲しい。駄目ですか?」
「私も‥‥レイさんが好きです」
 その言葉と共に、緋音の方からキスをした。
 数秒間のキスの後、二人の世界に突入し、互いを見つめ、微笑み合う。
 コンテスト中であることに気づいた二人は。顔を真っ赤にしながら退場。
 
 終了後、告白された緋音はレイアーティから誕生日プレゼントを受け取った。
「ここに来る前に入手しました。6月12日は、緋音君の誕生日でしたよね?」
「ありがとうございます。いつか本当のバージンロードを歩きたいですね‥‥」

●12組目
「新郎役など、わしには似合わんが精一杯やらせてもらうとしようか」
 白紋付袴、撫で下ろした髪形のルフト・サンドマン(ga7712)は緊張気味。
「勢いで出る事になってしまったが、いいんじゃろうか‥‥」
 ラピス・ヴェーラ(ga8928)は、腰まである長い髪を上品なアップスタイルし、サムシングブルーにちなんで白と青の花を髪飾りに。白の花はスプレーマムで花言葉は『真実の愛』。青の花は生花のバラで花言葉は『神の祝福』。
 頭の先から足の先まで、地味にならないようルフトへの愛を表現している。
 両親の形見のロザリオは外さず、白無垢を着崩さないよう上品に身に纏い上品さを醸し出している。
 ラピスの新婦姿を見たルフトは、驚いた顔をした後、優しい微笑みを浮かべた。
「とても綺麗じゃ。その姿が見られただけで参加した意味はあるかな?」
「コンテストとはいえ、ルフトちゃんの花嫁になれて幸せです。お姫様抱っこをしてくださいね」
「行こうか、ラピス殿」
 
 ルフトは約束どおり、ラピスをお姫様抱っこしながらゆっくり歩いた。
 歩いている間、二人はとても楽しそうな笑顔を浮かべていた。
「ふふっ‥‥面白いな。こんなふうに歩くことがあるとは」
 ラピスは片手をルフトの首に回し、体を寄り添わせている。普段から着物姿なので、和装でも自然体でいられる。
 ルフトは一旦立ち止まると、ラピスに頬にキスされた。
 バージンロードを歩き終えた二人は、名残惜しそうだった。
「お終いじゃな。こんなのも悪くないと思ったよ」
 ラピスが着替える前に、スタイリストに髪を飾っていた花を貰えないかと頼んだところ、記念にどうぞと貰えた。
「思い出以外にも、記念になる物が貰えたので満足じゃ。今度は、本当の結婚式の時にこの花を髪に飾ってくれぬか?」
 愛し合う二人は、とても幸福そうだった。

●13組目
「砕牙 九郎(ga7366)さんと出場です! 出場するからには賞狙います! 目指せ笑福賞!」
「勝手なこと言うな! 女装させ、簀巻きにしてこんなところに連れて来て! 俺を女装させたいっての本気でやるな!」
 状況説明すると、昨夜、酒を飲み過ぎて眠ってた九郎をしたソード(ga6675)は、彼を会場に連れ込む前にメイクし、貸衣装屋から借りたドレスを着せた。
 それは大柄な女性や女装男性向けの大きなボディがスリムに見えるデザインの可愛らしいウェディングドレス。可愛さをアピールできるよう、眩暈がするほどのリボンとフリルが付いているプリティでクールだがメルヘンチックな衣装だった。
 メイクはそれに合わせ可愛らしく。

「何じゃこりゃあ!」
 目が覚め、鏡を見て絶叫する九郎。
「目が覚めましたね?」
 タキシード姿のソードは、九郎が逃げないよう縄で簀巻きに。

(「コンテストをぶち壊しにしないよう時間稼ぐか」)
 コンテスト開始時、ソードに連行されるように歩く九郎。
「可愛いですね、ハニー」
「ハニー!?」
 気持ち悪くなった九郎を見たソードは可愛いですね♪ と縄を引きずって歩いた。嫌がって逃げようとすることは計算済み。
「我慢できん!」
 九郎は覚醒すると『豪力発現』で縄を引きちぎり逃走!
「逃がしません!」
 どこから取り出したのか縄を手にし、ソードは九郎を捕獲すべく、キスを迫りつつ追いかけた。BGMは、昔懐かしコントの音楽。

●14組目
 面白そうと参加を決めた乾 幸香(ga8460)は、親友の小鳥遊神楽(ga3319)を巻き込んで出場。
「あたしが新郎? 花も恥じらう乙女を何だと思っているの?」
 頼まれたからには、手抜きしないで目一杯男装する神楽。
 髪は整髪料でオールバックにし、肩に掛かる分後ろで一本に纏めにし、化粧は歌劇団の男役メイク、顔にアクセントを付けて男らしさを強調。
 モーニングに肩パットを入れ、胸にはサラシを巻き男性らしい体型に。
 神楽の様子を見に来た幸香の衣装は白を基調としたウェディングドレス、かすみ草のブーケと細かなレースのヴェールというシンプルなもの。控えめなメイクで自分の魅力を引き立たせている。
「こういうお遊びもは良いよねぇ、神楽」

 巻き込まれたとはいえ、神楽の新郎振りは見事だった。
 幸香をお姫様抱っこし、堂々と歩いている。
 体力が足りないだろうからと覚醒しているが、目が金色に変わっただけなので問題無し。
 途中で唇を合わせる振りをし、審査員と観客を楽しませた演出は歌劇団好きな女性に大好評。
「この貸しは大きいわよ。後でたっぷり奢ってね」
 そう言う神楽は満更でもない様子。

●15組目
 既婚者出場もOKなので、漸 王零(ga2930)、王 憐華(ga4039)夫妻も出場。
「我らの愛がどれほどの物か見せつけてやろう」
「意気込みは十分です。新婚のラブラブっぷりを皆様に見せましょう」
 王零の衣装は大きめの紋付き袴の袴を穿かず紋付の羽織だけを纏い、見えないように布地は黒、縁は金、鳩尾部分には灰色と黒の対極紋があり、右半身には青龍の刺繍、左半身には白虎の刺繍、背には麒麟の刺繍が施されている中華服を着用。
 憐華は、スタート時は白無垢の下に布地は白、縁は黒で自慢の大きな胸の所が大きく開き腰の上まで達するスリット入り、腹の所には羽を広げた朱雀の刺繍、背には玄武と鳳凰の刺繍が施されているチャイナドレスを着用。

 仲むつまじく腕を組み、手を繋いだりして歩き出したがバージンロードの三分の一で互いを見つめた状態で歩き、更に三分の一進んだ辺りで抱き合い軽くキス。
 手を取り合い踊りながら最後まで進み、バージンロードまで残り三分の二辺りで、その場で手を繋いだ状態で腕を伸ばし、憐華を振り回すように回転する王零。
 その動作時に羽織っていた紋付の羽織を脱ぎ、下に着用している中華服を披露。
 一回転後、憐華をお姫様抱っこした王零は軽いキスを繰り返しゴールへ向かう直前で一旦降ろして愛の宣言を。
「我は妻を誰よりも愛している。妻の為ならば世界とも争える。我は一生、妻を護る刃となろう」
「私は夫を世界で一番に愛しています。生涯を通して、夫の鞘となります」
 愛の宣言後、二人は濃厚なキスを。

●16組目
 続いては霧島 亜夜(ga3511)、キョーコ・クルック(ga4770)夫妻。
「結婚式挙げたばかりでしょ。亜夜が出たいなら構わないけど」
「キョーコの素敵な姿をまた見たいな〜」
 折角だからと、結婚式で着なかった衣装を着ることに。
「俺の好きな色は赤だから深紅のドレスはどう? 俺は黒ずくめで。赤と黒の組み合わせダメ? ブーケは白がいい?」
「ドレスが深紅? ウェディングドレスは白じゃない? え‥‥あたしが亜夜色に?」
 結局、ドレスは深紅のマーメイドドレスで胸元はビスチェタイプで袖、肩紐無し。装飾品はドレスと同色でまとめ、手には長手袋をして結婚指輪をはめ、首には同系色のチョーカー。
 長い髪は夜会巻きにし、肩まで掛かる位の長さのヴェールを着け花を一輪。
 ドレスは深紅だが、ブーケは白系で。
 亜夜は黒いタキシードに黒いズボン、黒い革靴、黒いベルト、ネクタイは赤。
 コンテスト前に、二人は結婚式で渡したお揃いの指輪をはめた。
「どういう入場がいい? ダンスは失敗したら恥ずかしいし。俺がキョーコを抱きかかえるのは?」
「結婚式はあたし好みで進めたから、亜夜に合わせるね」

 最初は二人並んで互いの手をとり、バージンロードの半分くらいまで進んだところでキョーコが衣装を見せつけるようにターン。
 再び歩き始めたところでキョーコがわざと転倒したのを見た亜夜は覚醒し、キョーコを素早くお姫様抱っこして最後まで。
 亜夜が覚醒したことで髪と瞳の色が真紅に変わったが、審査員はマジックと思っているだろう。
 終わりまで来た時、亜夜はキョーコのベールを捲るとキス。
「キス、言ってなかったっけ?」
「聞いてない」
 怒るキョーコに「ごめん」と謝った亜夜は、再びキョーコにキス。

●17組目
 櫻杜・眞耶(ga8467)は、初対面だが共に出場してという頼みを聞いてくれた申 永一(gz0058)に謝罪中。
「永一兄はん、すんまへん! おおきに!」
「謝らなくても良い。気分転換をしたかったからな。突然の申し出には驚いたが」
 永一に合わせてか、二人は韓国の伝統婚礼衣装に。
 永一は赤茶色のタンリョンポ、眞耶は緑色と金色のウォンサム。
 婚礼衣装は、様々なものを取り揃えている貸衣装屋からレンタルしたものだが、眞耶の装飾品は、合いそうな物を舞妓時代に使用していた物から用意してある。
「ちょっと待っておくれやす」
 眞耶は事前に購入しておいた韓国の揚げ菓子『ヤックァ』を袋詰めにしたものを袖口に潜ませ終えると、永一に駆け寄った。

 バージンロードの前までは永一と普通に歩き、その少し斜め後ろを眞耶が静かに付いて歩いている。
 少し歩いた後、審査員達の前で止まり、二人並んで四回敬礼の後、眞耶が袖に入れておいたヤックァを永一に渡し、それを目前の審査員に捧げるという『ペベク』という略式儀式を行った後に退場。
「きみは韓国の風習を知っているのか?」
「齧った程度ですが‥‥」
 俺で良ければ韓国のことを教える、と永一はぶっきらぼうに言った。

●18組目
「ドレスに胸ときめくなぞ、考えもしなかった。何があるか分からんものだ」
 リュイン・カミーユ(ga3871)が新郎に選んだのはソウジ・グンベ(gz0017)。
「参加するからには勝つ! ソウジの違う姿が見たい。仮初の新郎新婦だが‥‥」
 リュインの衣装はオフショルダーAラインドレス。
 白地にペールブルーのシフォンを重ね、襟ぐりには極薄青のオーガンジーフラワーをモチーフにし、裾は後ろが長いタイプのものだ。マリアヴェールにロングの白手袋、手にしているブーケは白薔薇と薄青スイートピーのラウンド型。
 髪は緩く巻いてアップに。
 ソウジはブルーがかった上品な光沢のライトグレーのフロックコートに白のウィングカラーシャツ、絹のアスコットタイ、シルバーブルーの5つ釦ベスト着用。ポケットチーフは青いもの。
 リュインの衣装を見たソウジが綺麗さに驚ている時、リュインはあることを頼んだ。
「月下美人の造花を、ブートニアとして胸に飾っていて欲しい」
「そう言うだろうと思ったよ」

 俺がバージンロードを歩くとはとソウジは緊張気味だが、リュインのリードで躓くことなく歩いている。
 腕を組んで寄り添ったリュインは、小声で「我を好きだと言って欲しいのだが」と囁いた後、リュインはいきなり覚醒するとソウジをお姫様抱っこした。
「何すんだ!」
「暴れるな!」
 慣れないことはすべきでないと反省したリュインは力尽き、覚醒を解除した。
「仕方ない」
 ソウジはリュインをお姫様抱っこする前に、髪に月下美人の造花を挿し、リュインをお姫様抱っこして歩き出した。

 退場した後、リュインは思い切って告白。
「ソウジ、好きだ‥‥」
「俺もだ‥‥」


●審査結果
 優勝:鯨井兄妹(50点)。
 優雅賞:王零、燐華夫妻(48点)。
 パフォーマンス賞:レーヴェ、ルミナス組(47点)。
 笑福賞:ソード、砕牙組(45点)。
 ラブラブ賞:緋沼、藍紗組(47点)。
 特別賞:ソウジ、リュイン組(46点)。