タイトル:孤児院修繕チャリティーマスター:竹科真史

シナリオ形態: イベント
難易度: 易しい
参加人数: 28 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2008/06/23 00:14

●オープニング本文


『ブロークン・クラッシャー』と呼ばれている傭兵、ブライアン・マリガンが育った孤児院がキメラに襲われ、半焼半壊の被害にあった。
 彼の育ての親であり、孤児達の母親代わりであった院長は亡くなったが‥‥。

 孤児院を襲撃したキメラ退治に参加した一人の能力者が、ブロークン・クラッシャーにこう言った。

『孤児院運営ですが、『依頼』を出し、運営案等協力募集してはどうでしょうか? 傭兵には心優しい方も多いので、無報酬でも人は集まると思いますよ。人が集まれば知恵も集まります。そして、皆に力を与えてくれるのではないでしょうか?』

 この言葉を思い出したブロークン・クラッシャーは、チャリティバザーを思いついた。
 しかし‥‥自分がこのような依頼を頼むのは恥ずかしい‥‥。
 考え事をしながら歩いていたところ、誰かとぶつかった。
「いったぁ〜い!」
「すまん、大丈夫か?」
 ブロークン・クラッシャーは起こした人物は、新米オペレーターのシェリル・クレメンスだった。
「おまえもULTのオペレーターか?」
「は、はい‥‥そうですけど‥‥」
「頼む! 俺の代わりに能力者達に依頼を要請してくれ!!」
 そう言うと、シェリルにメモを渡して立ち去るブロークン・クラッシャーだった。

「能力者の皆様にお知らせです。6月7日、午前10時より孤児院『トレジャー・メモリー』にてチャリティーバザーを行います。 フリーマーケット、屋台、ステージ等、種類は問いません。なお、売上金はすべて孤児院の修繕費となります。皆様のご協力、宜しくお願いいたします。あ‥‥言い忘れていました。全ての参加者には、主催者であるブライアン・マリガン氏から報酬が出ます」

 孤児院修繕チャリティー、成功なるか?

●参加者一覧

/ 風巻 美澄(ga0932) / 須佐 武流(ga1461) / 叢雲(ga2494) / 漸 王零(ga2930) / 終夜・無月(ga3084) / 佐竹 優理(ga4607) / リネット・ハウンド(ga4637) / 智久 百合歌(ga4980) / アルヴァイム(ga5051) / ラルス・フェルセン(ga5133) / ハンナ・ルーベンス(ga5138) / 玖堂 鷹秀(ga5346) / 緋沼 京夜(ga6138) / 藍紗・バーウェン(ga6141) / アンドレアス・ラーセン(ga6523) / 玖堂 暁恒(ga6985) / ロジャー・ハイマン(ga7073) / 不知火真琴(ga7201) / 佐竹 つばき(ga7830) / 櫻杜・眞耶(ga8467) / 桜塚杜 菊花(ga8970) / 飛田 久美(ga9679) / 陽ノ森龍(gb0131) / フィオナ・フレーバー(gb0176) / 楓姫(gb0349) / 鴉(gb0616) / 城田二三男(gb0620) / 鴇神 純一(gb0849

●リプレイ本文

●開催前
 智久 百合歌(ga4980)、ハンナ・ルーベンス(ga5138)、ラルス・フェルセン(ga5133)、不知火真琴(ga7201)、鳳 つばき(ga7830)、飛田 久美(ga9679)、鴇神 純一(gb0849)はチャリティー開催のチラシ作成中。
「お手伝いしてくれた子供達のために『無料チケット』を作りましょうか〜?」
「いいわね」
 ラルスの案に、同じことを考えていた百合歌もチケット作りに協力。

 アルヴァイム(ga5051)は、各自調整結果を基に開催場所の簡易的な地図、催し物のスケジュールを併記する形で案内便覧を作成し、つばき主催のリサイクルに関する注意書きを書いたものをコピーした。
 演奏、合唱、パフォーマンスの開催時間を各担当へ確認を取り、被らないように時間を調整、すべての催し物の開催場所の雰囲気に気を使ったデザインとなった。
 開催日時と孤児院の地図も忘れず記載。
「配布し甲斐があり出来だね」
「同感!」
 真琴と久美に出来を褒められて照れるアルヴァイム。
「それでは、配布お願いします」
 OK、と元気良く返事をした真琴と久美はチラシ配布に。
「ボク達も手伝う!」
 孤児院の子供達数名にも手伝うことに。この周辺は、子供達が詳しいだろう。
「終わったら良い物をあげますよ〜」
 良い物、に目を輝かせた子供達は大張り切り。
「私は、お店やご近所にチラシを貼ってくれるようお願いします」
 つばきは近所の家、人通りの多いところに貼ってくれるようお願いしに。

 百合歌は、フリーマーケットに提供する品物をチェック。
 水色ワンピースと英文説明書付きの大正琴。
 櫻杜・眞耶(ga8467)提供の手製のクッション、ポーチ、ボレロの三点。
 ハンナ提供の婦人用自転車。
 鴉(gb0616)提供の麦藁帽子。ラルス提供の猫柄ティーセットと北欧製オルゴール、純一提供の世界各国のガラクタ大小20点(掘り出し物があるかも)。
 整理を手伝ってくれた子供達に、百合歌はご褒美をあげた。
「お手伝いありがとう。これはね、チャリティーで使えるの。何かを買う時やお店に行った時に出してね」
 手伝ってくれたお礼として『無料チケット』を手渡したら、子供達は喜んでお礼を言った。

 アルヴァイムは、燃料、調理器具、屋台一式、セット等の調理器具の調達を孤児院付近の各家庭に交渉しながら事前宣伝を行っている。近所の人々は、修繕チャリティーのためなら協力するよと貸してくれた。
 その帰り、貸衣装屋から狸の着ぐるみを借りに。
 仕上げは、入口受付のローテーションを各々の催し物に支障が出ないよう調整。
 真琴は、商品をそのまま引き渡すわけにはいかないと一通りのサイズのダンボールとガムテープ、壊れ物様に緩衝材などの梱包品も用意し、当日は配送手配と一緒に梱包を担当。

 自宅の修理屋で孤児院の子供のおもちゃを修理して感謝されたことが嬉しかったつばきは、チャリティーでも修理を担当。
「張り切っていこー!」
 拳を握り締め、右腕を上げてやる気マンマンの様子。
 事前準備として、廃棄されていた家電製品などを使えるよう修理し、フリーマーケットで出品できるよう準備し、品物と修理用の工具等はリアカーにて運搬。

 チラシ配りを終えた久美は、孤児院の前でひたすら屋外パフォーマンスの練習。
「ジャグリング、難しい‥‥」
 子供達を喜ばせるため、必死に練習。
「準備できたな。こんなに集まるとは思わなかった」
 準備している能力者達に声をかけたのは、主催者である『ブロークン・クラッシャー』ことブライアン・マリガンだった。
「お元気そうで何よりです〜。前に言った通り、心優しい方が多いでしょう〜? 頼って下さって嬉しいです〜。頑張って盛上げます〜」
「おまえが言うようにお人よしが多いな」
「心優しいと言ってほしいです〜。私は報酬を頂きませんしー、修繕費が余ったらー、院長先生へのお花をお願いします〜」
「ああ」

 準備している間に時間が過ぎ、あっという間にチャリティー当日に。

●警護班
 ブロークン・クラッシャーと共に見回りするのは須佐 武流(ga1461)と終夜・無月(ga3084)‥‥だけかと思いきや、狸の着ぐるみを着用した人物も混ざっていた。
 当然喋れないので、マジックとスケッチブックを使用して意思疎通を。
『警備担当用に腕章を持ってきた』
 狸はそう書くと、3人に腕章を手渡してダッシュでその場を立ち去った。
「何だ、あれは‥‥」
 腕章を手にし、不思議がるブロークン・クラッシャー。

 狸の正体は、着ぐるみを借りたアルヴァイムだった。
 3人から離れると、作成した案内便覧の半分をチャリティーイベント入口受付に設置し、残りは狸の着ぐるみ姿のまま配布しながら会場を巡回し、警備の補助と案内を行っている。当然、筆談で。
 受付が所用で席を外す時間は交代したが、その間、子供達に「タヌキさんだ!」と喜ばれ、弄られた。
 喜んでもらえて何より、とアルヴァイムは悪い気はしなかった。

「孤児院修繕かぁ。あの時、派手に壊れたからな。代わりの院長見つかったのか?」
 近所の大人達や年長孤児達が面倒を見ていると報告すると「すぐに代えろといわれても、子供達の心の整理とかもあるだろうからなぁ」と武流は溜息をついたが、子供達の面倒を見てくれる人間がいたことにほっとしたのもある。
「俺はおまえと一緒にいる。チャリティーの出し物、何も考えてなくもいいしな。あとは、子供達の遊び相手かな? そん時は順番に頼むぜ?」
 女の子優先で、とお茶目に言う武流に子供達は笑った。
「おまえの呼びかけにこれだけの人間が集まり、寄付集めに奔走してくれ、孤児達も手伝ってくれたんだ。これだけ集まれば、修繕出来るだろ。また元の生活に戻れるさ。破壊は簡単だが、それを直すのは難しい。けど、もう一度作り直すことは出来る。少し形が変わるがな」
「俺も‥‥そう思う‥‥」
 執事喫茶とメイド喫茶の宣伝、他ブースヘルプを兼ねた無月の服装は、黒の燕尾服に白手袋、イヤリングとロザリオという洒落たものだった。
「宜しくお願いします‥‥」
 三人は会場に異常が無いか、危ない事をしている子供はいないかを重点に見回りをしている。
 見回りしている間、無月は迷子になっている子供を見つけた。
「どうしたの‥‥? お母さんとはぐれたのかな‥‥?」
 優しく聞くと、母親と一緒に来ていて迷子になったと言う少年を宥め、肩車をして母親を捜す無月。捜し回った甲斐あり、母親はすぐに見つかった。
「どうもありがとうございました」
「いえ‥‥」
 その後、転んで怪我をした子供を手当てしたり、喧嘩している子供達を仲裁したりと何かと大変な三人。
 不審者がいるかと思いきや、それらしき人物はいなかったので一安心。
「皆、安心してチャリティーを楽しんでるな。無月の奴、何やってんだ?」
 武流が見た方向では、無月が執事喫茶とメイド喫茶の宣伝中。
「御休憩は‥‥執事喫茶かメイド喫茶で‥‥。お茶を楽しめ‥‥格好良い執事や可愛いメイドがお待ちしております‥‥」
 暫く三人で警護をしていたが、無月が喫茶店の手伝いに借り出されたので武流とブロークン・クラッシャーの二人だけに。

●フリーマーケット
「子供って苦手なんだよなぁ。ガキンチョの前じゃおおっぴらに煙草吸えないじゃん」
 そう言うが、風巻 美澄(ga0932)は一服中。
「我慢できないでしょうが、フリーマーケット中は禁煙です」
 つばきは、持ってきた修理済みの家電製品、有志一同から預かった品物を地面に敷いたビニールシートに並べて販売準備中。孤児院の子供達も積極的に手伝ってくれている。
「皆、ありがとう」
 手伝ってくれた子供達に、つばきは『無料チケット』を報酬として手渡した。
 ビニールシートの側には『持ち込み修理承ります』と書かれた立て看板が。
 その場で持ち込み修理を行おうというつばきの心配り。
 客が持ち込んだ小さい家電は修理した後手渡し、売れた大きな電化製品等は、近所だったらリアカーで運び、遠方から来た客の場合は、UPCから借りたトラックで届けることに。
「アタシはいらないモノを集めて売るよ。直せば使えそうな家電や電気製品、おもちゃなんかを修理、リサイクルして売る担当につくよ。機械弄りは大好き中の大好きだからワクワクする!」
 美澄は基本的には裏方仕事に回り、接客には携わらない方針。無愛想、接客に向かないという自覚があるからだ。
 修理されたものの中には、冷蔵庫、テレビ等の大型電化製品も。
「こんな重いの出品しなくても‥‥」
 愚痴りながらも、佐竹 優理(ga4607)はつばきと頼みとあり、搬入を手伝う。
「うちは力仕事を担当する。必要な荷物、備品、出品物等の搬送、運搬は要望があれば近場の家へなら商品の配送も引き受けるよ。その時はリヤカー貸して。遠方のお宅の場合は、トラックでの配送手続きをするよ。力のいる作業があれば引き受けるから」
 過去に色々なバイトをした経験のある真琴は、客商売が得意で力もあるので頼もしい存在だ。

 準備ができたので呼び込み開始。
「さぁさぁ、お兄さんお姉さん、坊ちゃん嬢ちゃんお父さんお母さん、おじいちゃんおばあちゃん、せっかくだから寄っといで!」
 丸めた新聞紙をバシバシ叩いて客寄せするつばき。
「特別イベントのコ〜ナ〜♪ 特別イベント『その場でリサイクル』! 読んで字の如く、ラスト・ホープ整備士おねーさんこと風巻美澄が持ち込まれた家電、おもちゃをその場でリサイクルするというイベントでーす! だからって、冷蔵庫とかエアコンは持ってこない! そういうのは業者に!」
 口調は荒いが、商魂逞しい美澄と真琴は、笑顔で呼び込みし、純一はハーモニカで、優理は馬頭琴を演奏して協力。
「いらっしゃい。あ? 値段? タダ。コレと、コレと、コレ? ええい、全部持ってけ! スッキリして丁度いい」
 それまずいです! とフォローするつばきと真琴。
「毎度、大事に使えよ。直せば動くんだ。大事にしたらコイツも喜ぶ」
 ロボットを修理してもらった少年は「ありがとう」と大喜び。
 大盛況のうちに、時間はお昼時に。
「つばきちゃん、お腹すいたでしょ? 何か食べてきたら? 店番はうちがやるから」
 真琴は、つばきが好きな人と一緒なので気を使っているのだ。
「アタシもメシ食ってきていいかい?」
「どうぞ」
 つばきは、優理を思い切って屋台巡りに誘ってみた。
「優理さん、よかったら一緒にお昼どうですか?」
「いいよ」
 嬉しくなったつばきは密かに手を握ってみようかと画策したが、恥ずかしくなったのでやめた。
 真琴が店番をしている間、有志一同が持ち込んだ品物は飛ぶように売れた。
 その隣では、城田二三男(gb0620)が処分しきれない古本を売っていた。
「チャリティーか‥‥丁度いい‥‥」
 古本の処分に困っていたので丁度良い、というのが彼の参加動機だった。
 孤児院であることを考え、古本は小説30冊、漫画30冊、その他自己啓発本等を販売。
「売れ残ったものは‥‥寄贈しよう‥‥。ゴミになるよりいいし‥‥」
 そんな消極的でどうする?
「フリーマーケットの人が別イベントに参加するようだったら‥‥俺が代わりに店番するから‥‥」
「本当ですか?」
「はい‥‥」
 助かります、と二三男に感謝する真琴。この後、真琴は別の催し物の手伝いがあるのだ。

●屋台組
「孤児院でチャリティーだぁ‥‥? しゃあねぇなぁ‥‥手伝いに行くか‥‥。タカ、行くぞ‥‥」
「行くぞって‥‥どういうこと? 兄上が人助け?」
 孤児院が焼けた依頼に関わっていた玖堂 暁恒(ga6985)は、放置は寝覚めが悪いと弟の玖堂 鷹秀(ga5346)を引き連れ、暁恒の高校の同級生である桜塚杜 菊花(ga8970)と共にお好み焼き屋『さざなみ亭』開業。
「暁恒がチャリティー参加なんて珍しいねぇ。子供達が元気出してくれると嬉しいんだけどね〜」
 着崩した浴衣着用、帯は派手な赤で蝶々結び、焼く時に邪魔にならないようたすきがけで袂を縛り、下駄履き、髪はアップした菊花は「売りまくるで!」と大張り切り。
 鷹秀は什器、紙皿、割り箸、プラスチックのナイフとフォークを用意。
「青海苔と鰹節もいりますね。兄上、焼き方は任せます。自分は接客に専念します」
「ちいと変り種お好み焼きにしてみるか‥‥」
 暁恒が言う『変り種』とは、普通の好み焼き生地に色々と具材を入れて焼いた物を二層にするというものである。二層お好み焼きは、独創性があって面白そうだ。
 用意したのは豚肉、牛肉、チーズ、ハム、エビ、イカ、タコ、ネギ、天かす、紅しょうがといったオーソドックスなものから、コーン、カレー粉、チーズ、ベーコン、餅、シーチキン等の変り具材。
 ソースはお好み焼き用、マヨネーズ、ケチャップ、からしと様々。
「早速焼くで!」
 菊花の威勢の良い合図で営業開始。

「いらっしゃい、おいしいお好み焼きどうどす〜! お兄さん、ちょっと寄っていかへん?」
 焼きながら宣伝する菊花は、女性客を見かけと「お嬢ちゃん、可愛いね。おまけするから買うて♪」
「やだもう♪ 買った!」
「毎度!」
 出来上がったお好み焼きは玖堂兄弟がプラスチック容器に入れ、箸をつけて客に手渡す。
「ソースは‥‥適当につけて食え‥‥」
「失礼しました。色々なソースがありますので、お好きなものを塗って召し上がってください」
 お好み焼きは菊花と暁恒の創意工夫されたものが評判となり、客が集まった。
「本場の腕見せたるわ! 待っててや、美味いお好み焼きを焼くからな!」

 偶然『さざなみ亭』の前を通りかかったブロークン・クラッシャーに出会った暁恒は、お好み焼きを差し入れた。
「食うか‥‥? 日本の‥‥伝統料理だぜ‥‥?」
 笑ってブロークン・クラッシャーに渡したのは、適当に具材をぶち込んで焼いたものを7段重ねにしたもの。それを見たブロークン・クラッシャーは「どうやって食うんだ?」と心の中で呟く。
「あんたがブロークン・クラッシャー? あたしは桜塚杜 菊花。宜しゅうお頼み申します」
「繁盛しているようで何よりだ。頑張ってくれ」
 その後、『さざなみ亭』は客足が途絶えなかった。

「子供は未来への希望。だから、私が子供の希望になる‥‥」
 上着を脱いで腰に巻き、袖を捲くった軽装の楓姫(gb0349)は、皆が元気でいるためには食事と思い、屋台で焼きそばを売ることに。
 焼きそばは子供達が食べやすいように麺、豚肉、キャベツ、もやしでやや濃い味ソース。紅しょうが、青海苔等のトッピングは注文時に確認して。
 ただ売るだけで面白くないと、買ってくれた子供にはゲームとして玩具のコルク銃を使った射的を楽しんでもらうことにした。一定の離れた場所から的の空き缶を撃つというシンプルなものだが、子供達は大喜び。

 陽ノ森龍(gb0131)は祭り系イベントが大好きで、チャリティーとして役に立つなら最高だと思い、かき氷の屋台で参加。
 子供中心に考え、楽しめるようなかき氷を作ろうと画策中。
 シロップは定番のイチゴ、レモン、メロン、ブルーハワイ、みぞれの他は、子供の好きそうな乳酸菌飲料、オレンジ、ピーチ、コーラを用意。
 トッピングは練乳、チョコチップ、バニラアイス、角切りフルーツを用意。
「チャリティーなんで、オレ特性かき氷のトッピングは無料だ!」
 チャリティーの成功を祈った龍のかき氷は子供、大人問わず大好評。

 ロジャー・ハイマン(ga7073)とフィオナ・フレーバー(gb0176)は、孤児院のためのチャリティーなら喜んで参加することに。
 フィオナが用意したたこやき屋台を二人で組み立てた後、材料等をチェック。
 ロジャーがたこ焼きを焼き、フィオナは売り子として頑張っている。
 歌や宣伝が苦手なロジャーは、黙々とたこ焼き作っている。
「歌? ‥‥苦手なんだよね」
 たこ焼きは、子供向けにと紅しょうがを細かく刻んで量を減らし、揚げ玉多めと餅を少し入れふっくらとした仕上がりに。ロジャー曰く「レシピは秘密です」。
 柔らかくなりすぎることもあるので、たまにしくじることもある‥‥かも。
 マヨネーズはセルフだが、唐辛子マヨネーズと通常の二種類を用意。唐辛子マヨネーズは大人受けを狙っていたが、実際はほとんど辛くないので子供でも大丈夫。
「それ、とりあえず食べてみてください」
 無料チケットを持ってきた少年が、試しに唐辛子マヨネーズをつけて食べてみたが「これ、辛くない」と言った。それを聞いた子供達は、自分達もと試してみた。
 唐辛子マヨネーズは、幅広い年齢層に受けた。

「フィオナさん‥‥お疲れ様‥‥」
 典型的なたこ焼き屋のまかないである「だしタコ」をフィオナに差し入れるロジャー。
「ありがとうございます」
 一口食べると、出汁が口の中に広がった。
(「これ‥‥孤児院の子供達にも食べさせてあげたいな」)
 その点は心配無用。フィオナがそう言うだろうと思い、ロジャーは子供達の分も用意している。
 たこ焼きを買ってくれた客には、子供限定で型抜きをしてもらうことに。
 型抜きとは、ガムのようなものを型どおりにピンで綺麗にくり抜くというもの。
 上手くくり抜けできた客には、屋台タダ券をプレゼントという太っ腹なおまけつき。
 一人の少女が、飛行機の型抜きに失敗してしまった。
「それじゃあ、賞品あげられないなぁ〜」
 フィオナは少女に「残念だったね」と慰めた。
 結局、型抜き成功した子供は一人もいなかった。成功した場合はどうするつもりだったのか?
「その時は、屋台の売り物すべて『無料チケット』使用可能としました」
 笑って誤魔化す二人だった。

●喫茶店
「北米まで来て、執事喫茶開店とはね‥‥」
 苦笑しながら叢雲(ga2494)は参加者分の燕尾服を用意。事前にサイズを聞いているのでそれは無問題。
 兵舎『執事喫茶「夜鴉館」』から茶葉や机に敷くテーブルクロス、飾りの観葉植物、小物を用意してテキパキとコーディネイト準備を。

 ラルス、緋沼 京夜(ga6138)、アンドレアス・ラーセン(ga6523)、鴉が執事に扮し、接客することに。
 叢雲は燕尾服にアスコットタイ、白手袋を着用。髪を縛るリボンは白。
 ラルスは燕尾服に持参のウィングカラーシャツ、銀鼠のアスコットタイ。
 アンドレアスは燕尾服に自前の白シャツ、革靴、アスコットタイ。長い髪は襟足で纏めている。
 担当は、叢雲は給仕、紅茶、飾り付け、雑務等。ラルスは給仕、紅茶、軽食担当。
 鴉は給仕、客引き。 アンドレアスは給仕、コーヒー淹れ担当。
 京夜は裏方全般。
 
 執事喫茶だけかと思いきや、実はメイド喫茶もある。
 メイドは桃色メイド服にフリルエプロン着用の藍紗・T・ディートリヒ(ga6141)、立て眼鏡をかけた眞耶、京夜の頼みで応援に来たハンナ。

 メニューは以下のとおり(ホット・アイス有り)
●紅茶各種
●コーヒー各種
●ハーブティー各種
●ソフトドリンク各種
●お茶各種
●ケーキ、軽食各種
●焼き菓子各種
●甘味各種
●アイスケーキ各種

 サンドイッチは百合歌お手製だが、楽器演奏の下準備があるので下ごしらえだけ行い、後はラルスにお任せ。
 メイド達は着替えが終わると、孤児院の食堂では、藍紗を筆頭に兵舎から食器類を用意したり、羊羹やぜんざい等、火を使わずに提供できる和菓子をいくつか作り置きしたものを食器に盛ったりと材料の下ごしらえをしている。それに合わせ、緑茶・抹茶を用意。
 アンドレアスはコーヒーメーカー、チョコシロップ、キャラメルシロップ、シナモンパウダー等、コーヒー作りに必要なものを用意。子供も来ることを考え、少し薄めに作る心配りを。アイスドリンク用の氷も確保済み。
 叢雲はメニュー作成。選びやすいよう、紅茶の味の説明を加える気配りを。

 場所は孤児院の屋外の隅。机一つに椅子四脚。
 白いテーブルクロスに観葉植物と小物でアクセントをつけ、遊戯室付近にある木陰を上手く利用している。雰囲気はお屋敷のガーデンパーティーだが、執事やメイド達に気軽に声をかけられる雰囲気重視で、オーダーは直接頼む形式。

 接客に関しては、叢雲が全員に指導。
「お客様には常に笑顔で丁寧語で話し、誰にでも平等に接することです。20代前半までは「お嬢様」「ご主人様」、20代後半の方は「奥様」「旦那様」とお呼びします。お子様は「お嬢様」「お坊ちゃま」。名前を読んでほしいと希望されましたら、そうお呼びするように。『ようこそ、当家のティーパーティーへ。お飲み物は何に致しましょう?』『ゆっくりお寛ぎください』もお忘れなく。お子様の場合は目線に合わせて笑顔で会話をお願いします。以上です」
 さすがは執事喫茶経営者。見事な接客マニュアルだ。
「任せとけ! 精一杯盛り上げるぜ!」
 ギターを手に張り切るアンドレアスは、客のリクエストに応じて演奏するためにギターを持参。

 開店と同時に、興味を示し始めた客が集合。
「お帰りなさいませ、ご主人様。ごゆっくりお寛ぎください」
 最初の接待は、茶色のメイド服を着用し、女装した京夜。一目で男性とわかるが、今は女性になりきっている。
「お帰りなさいませ‥‥ご主人様‥‥」
 藍紗の給仕は丁寧かつ真面目、器用を生かしたパフォーマンス的な紅茶注ぎを披露。
 頭上高く掲げたポットから手元のカップに、一滴も零さず紅茶を注ぐ藍紗に拍手を送る客だったが、藍紗のお尻に触れる不埒な客が。
「メイドのお触りはマナー違反じゃよ?」
 微笑みながら、藍紗は客の腕を捻ってお仕置き。
 
 純一は、自由行動時間中に妹である藍紗をからかいにメイド喫茶に来た。妹だけでなく、旦那である京夜をからかうのも目的のひとつだ。
「よう、藍紗。元気だったかー? 相変わらずちっせぇなぁ」
 ニコニコ笑いながら、藍紗の頭をぐりぐり撫でる純一。
「あ、兄上! い、いつここに! この数年、音信不通でどこほっつき歩いておったのじゃ! というか、傭兵になっておるとは聞いてないぞ!?」
 それを無視し、京夜に近づき「あんたが藍紗の旦那だな?」と上から下までざっと眺める。
「歳は28か、じゃあ俺の兄貴だな。こいつ、真面目なくせにどっか抜けてるからな。ま、宜しく‥‥。で、結婚したってことはやることやってんのか?」
 にやにや笑いそう言う純一に耳打ちする京夜。
「そーかそーか! まぁまぁ良かったじゃねーか。そんなナリでも大丈夫な奴で。おっとやべぇ‥‥本気で怒ってんな。退散退散スタコラさーっと☆」
 妹の藍紗をからかうというより、京夜をからかいたかった純一であった。

「お帰りなさいませ、ご主人様、お嬢様」
 素が出ないよう気をつけねぇと、と気をつけながら客を案内するアンドレアス。
 カプチーノを注文した女性客に、ラルスは声をかけた。
「お嬢様、当店はシロップで絵を描くサービスを行っております。何かお描きしましょうか?」
 面白そう、と女性客は「猫描いて」とリクエスト。
「かしこまりました」
 アンドレアスのカプチーノにシロップで絵を描くのはラルスの楽しみであり、得意技であった。上手に描けたので、女性客は大喜び。
 女性客といた男性客は、メニューに書いてある『音楽のリクエスト受け付けます』を見て「リクエスト良い?」と、ギターを手にしたアンドレアスに尋ねた。
「ありがとうございます。何に致しましょう?」
 二人はムードあるジャズをリクエスト。ほぼ何でも弾けるので、心を込めて曲を奏でた。

 孤児院の子供達数人が『無料チケット』を握り締めて喫茶店にやってきた。
「お坊ちゃま、お嬢様、いらっしゃいませ。ブライアン君にお礼を言うんですよ〜」
「はーい!」
 良く出来ました、と子供達の頭を撫でたラルスは、子供達を席に案内して椅子に座らせた。注文したものを食べている子供達の表情はとても嬉しそうだった。

 眞耶は臨機応変に上手くやりこなす万能な優等生として行動。
「お帰りなさいませ、ご主人様。こちらのお席へどうぞ」
 男性客達が来ると席に招待し、退席して会計し終えた女性客達を見かけると「いってらっしゃいませ、お嬢様。どうぞ、お気をつけて」とお見送り。
 目が回る忙しさだったが、眞耶は終始笑顔で接客。
 執事喫茶、メイド喫茶は大盛況。

●野外イベント
 リネット・ハウンド(ga4637)、久美、鴉の三人は、サッカーボールを蹴ってピンを倒すボーリングのようなゲームを行うことに。
 名づけて『サッカーボウリング』ピンをいくつ倒したかによって景品が出たり、客の年齢に応じてハンデがついたりするが、大らかに楽しんでもらいたいと思っている。
 リネットがビラを配ったり呼び込みした甲斐あり、様々な年代の客が集まった。マイクパフォーマンスが得意なので、客の呼び込みはお手のもの。
 最初の挑戦者は、幼稚園くらいの少年。始める前に、リネットがルール説明を。
「このゲームは、サッカーボールを蹴って既定回数以内にピンを全部倒せば賞品ゲットというものです。参加者には、もれなくお菓子や手作りのメダルをプレゼントします。皆さん、頑張ってくださいね。1回100円です」
 このゲームは、年齢に応じてピンの本数やボールを蹴る回数が変動する。
 幼稚園児はピン3本で3回、小学校低学年はピン6本で3回、小学校高学年はピン10本で3回、中学生はピン10本で2回、高校生以上はピン10本で1回。
 高校生以上、女性は既定回数+1回。
「蹴る前に、あたしがアドバイスしてあげる。足の内側でね、こう、まっすぐ蹴るんだよ」
 少年は久美のアドバイス通りに蹴ると、1回目で3本、2回目で残り全部倒した。
「おめでとう。はい、商品」
 粘土で作ったメダルだったが、貰った少年は大喜び。
 その後、様々な年代の客が次々に挑戦した。

 その間、鴉と久美はジャグリング、、フラッシュ、ピルエットの技で場を盛り上げていた。ジャグリングの球は多く、高く目指してやっている。
「至らぬ芸ですが、披露させていただきます」
「どうぞ、お楽しみください」
 猛練習の甲斐有り、見事に芸を披露できた二人に客は拍手喝采。
「もっとですか? 承知致しました」
 ジャグリング中はリネットのマイクパフォーマンス、久美とのボール交換ジャグリングを披露。
 決めはボールキャッチで二人のお辞儀かと思いきや、久美がサッカーボールでジャグリングとリフティングを同時に始めた。
 お見事! という客の声援は、3人にとって何よりも嬉しかった。

 漸 王零(ga2930)のパフォーマンスは、得意の演武と木彫り。
 演武は派手な動きをメインとした魅せるもので、始めは無手、次に一刀、最後に二刀の技の演武を行った。
 木彫りは廃材から持ってきた木材を放り投げ、それを刀で刻んでは上空へ打ち上げ、落ちてきた木材をまた切り刻むといった過程を繰り返して彫っている。それにより、見事な龍の木彫りが完成!
 その後、人の入りが悪そうなところで演武を披露していたところブロークン・クラッシャーに出会ったので挨拶をした。
「久し振りだな、マリガン。元気そうなので安心した」
「おまえ、サンフランシスコ空港の依頼で一緒だった奴だな? 見事な舞だ」
「演舞だ。汝もあれから活躍しているそうではないか。孤児達のため、頑張るが良い」
 そう言うと、王零は演舞を再開した。

●室内演奏
 チロル民族衣装『ディアンドル』を着用した百合歌とハンナは、演奏枠と休演枠の繰返しで構成した室内演奏を行うことに。
 曲プログラムは無いので、雰囲気合わせの即興、リクエスト演奏で。
 側には『お代はお気持ち次第。ご自由にお願いします』と書かれた募金箱が設置されている。
「無料でも構わないけど、少しでも頂けると嬉しいわ」
「楽士さんと連弾できるなんて‥‥嬉しいです、百合歌さん」
 自分達の演奏が、少しでも心を揺さぶることが出来るようにと心を込めてピアノ連弾をする二人。
「私を忘れてもらっちゃ困るね。馬頭琴で参加させてもらうよ。全曲、装飾的なカウンターメロディを控えめに入れされてもらうから」
 被らないよう気を付けるからねぇ、と参加表明する優理。

 1曲目は『ピアノ連弾曲1番 未来への希望』。
 孤児達、バグア、キメラ襲来に怯える人々に希望の光を、と願いを込めて選曲。
 親子一緒に唄えるように、弾き語りをしている。優理は、馬頭琴をピアノと呼吸を合わせるかのように弾いている。
 2曲目は『こうもり傘の森の精』。
 親子で楽しめる優しい音を、二人は協力して紡ぎ出した。

 3曲目に入る途中、ギターを持った執事姿なアンドレアスがゲスト出演。
 彼に合わせ、明るく派手に盛り上るノリの良いロックをセッション。
「楽しい‥‥」
 うっとりする百合歌に対し、アンドレアスは熱く燃えている。
「Thank You USA! 愛してるぜ! あ、素が出た‥‥」
 観客達は、クスクス笑い出した。

 3曲目に入る前、百合歌とハンナは会場に呼び掛け、有志を広場に誘導した。
 広場には、オルガンが二台設置されていた。
「唄いましょう‥‥皆の声と、心を一つにして」
 叢雲、ラルス、つばき、久美、フィオナ、身なりを整えた楓姫、鴉を見渡し優しく微笑むハンナと百合歌、優理とアンドレアスは演奏を始めた。
 歌は『恵みの賛歌』『希望の翼を』の2曲を有志一同で歌い、イベントの締めとした。

●チャリティー終了
 楽しかったチャリティーが終わったので、能力者達と子供達、ブロークン・クラッシャーは協力して後片付けを始めた。
 片付け終了後、能力者達は燃え尽きた院長室の前に集まり、喫茶店のタンポポを院長室の傍の庭に植え、冥福を祈った。
「院長先生‥‥貴女の思いは忘れません‥‥」
 青空を見上げ、面識の有無関わらず能力者達は亡き院長を思った。

 売り上げ金だが、後日寝室、遊戯室リフォーム可能分集まったとブロークン・クラッシャーから連絡があった。