タイトル:アナコンダ・バトル!マスター:竹科真史

シナリオ形態: ショート
難易度: やや難
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2008/06/10 14:39

●オープニング本文


 南米・ブラジルの格闘技『カポエイラ』のルーツは、奴隷が始めた格闘技という説が有力だ。
 カポエイラ発祥の地であるブラジルは、サッカーに次ぐ国民スポーチとして普及されている。
 映画、格闘ゲーム、漫画等、カポエイラは様々なメディアに登場している。
 
 カポエイラには『アンゴーラ』と『ヘジォナウ』という2つの流派がある。
 流派、といっても、格闘技のような真剣勝負はせず、ダンスを踊るかのように戦うを楽しんでいる。
 今日も『ボーダ』と呼ばれる集会が各地で開かれ、輪になった人々の中で『ジョーゴ』と呼ばれる組み手を流派の代表が行ない、観客達が声援を送っている。
 そんなカポエイラに欠かせないのは、楽器の演奏だ。
 カポエイラの楽器隊の中で主役である、ビリバという木に車の廃タイヤから取り出したワイヤーと、中身をくりぬいたひょうたんを付けた『ビリンバウ』、カウベルもような形をした楽器『アゴゴー』、ボーダ(集会)が盛り上がってくると、太鼓の『アタバキ』が登場し、タンバリンのような『パンディロ』、竹筒と木の棒でできた『ヘコヘコ』とカポエイラの歌が、ジョーゴを盛り上げる。

 ジョーゴの最中、突如アナコンダが現れた!
 比較的小さく最大でも体長は3メートルだが、全長10メートルを超えるオオアナコンダより気性が荒い。
 カポエイリスタ達は、周りにいた観客を逃がし、襲われそうになった場合は、蹴り技で払った。
 しばらくすると、アナコンダの数が増えてきた。

 カポエイリスタの1人は、急いでULTにアナコンダ退治を要請した。
 能力者が駆けつけるまで、カポエイリスタ達がアナコンダの相手をしなければならないが、能力者でない彼らには、足止めが精一杯である。

 カポエイリスタの体力が尽きぬよう、能力者は至急、ブラジルに急行せよ!

●参加者一覧

三島玲奈(ga3848
17歳・♀・SN
リュイン・グンベ(ga3871
23歳・♀・PN
木花咲耶(ga5139
24歳・♀・FT
綾野 断真(ga6621
25歳・♂・SN
風代 律子(ga7966
24歳・♀・PN
九条・縁(ga8248
22歳・♂・AA
ヒューイ・焔(ga8434
28歳・♂・AA
古郡・聡子(ga9099
11歳・♀・EL

●リプレイ本文

●ブラジル到着
「カポエイラはテコンドーと並び興味ある格闘技の一つ。要は、我は蹴り技が好きなのだ。その使い手を襲うなど、バグアが許しても我が許さん! アナコンダなぞ蛇酒になってしまえ! 皆、とっとと倒すぞ! 暑いしな!」
 カポエイリスタを襲うキメラに憤っているのか、暑さに苛立っているのかわからないがリュイン・カミーユ(ga3871)は到着早々機嫌が悪い。
「蛇は少し苦手なのですが、困っている人は放ってはおけません。速やかに撃破しお助けしなければなりませんね」
 苦手意識があるものの、困っている人々を助けたいという強い気持ちから依頼に参加した木花咲耶(ga5139)。
「あなたもですか? 私も苦手なのです。とはいえ、能力者でもない人々にキメラの相手は危険すぎます。一刻も早く駆けつけて何とかしないといけません。キメラには雷属性の攻撃が効果的とのことですので、スパークマシンを持って参りました。蛇はうねうねしてて苦手ですが、そんなことを言っていられる状況じゃありませんね」
 咲耶同様、蛇は苦手だが困っているカポエイリスタを放っておけないと参加した古郡・聡子(ga9099)。
「アナコンダはボア科アナコンダ属に属する蛇の総称だ。股間の紳士を蛇で形容する隠語としては、キングコブラと同格だ。そのアナコンダが出てくるっていうのは理解できるよ、南米だし。やっぱ、デカイ蛇はそれだけで畏怖を与えるよな〜」
 クロムブレイドを肩に担ぎ、陽気にアナコンダ解説をしながら退治を楽しもうと張り切る九条・縁(ga8248)。
「私は、カポエイリスタ達の避難誘導及び仲間の援護を行います。カポエイリスタの皆さん、用意して欲しいものがあるのだけど良いかしら?」
 風代 律子(ga7966)が避難誘導させたカポエイリスト達に用意させたのは、丈夫な綱と網を3つ、大きい袋と長さ1メートル、幅30センチ程のできれば軽くて丈夫な金属製の筒の三点だった。
 カポエイリスタがアナコンダから逃げている間、律子は間に割って入り一匹ずつ銃で牽制しつつ後退している。

「アナコンダって、子供の頃に絵本で見たウワバミそっくりです! 序盤はライフルで牽制、遠距離から雷属性の長弓と眼を『鋭角狙撃』を、接近戦はバスターソードとずらり取り揃えてアナコンダの皆さんを歓迎します」
 体操服にブルマ姿という体を張った衣装の三島玲奈(ga3848)は、倒す気マンマンでいる。
「今回の任務は緊急のようですね。足止めしてくれてるカポエイリスタの方々を犠牲にするわけにはいきません。アナコンダは確認されただけでも3匹ですから、私達も班分けして役割分担しましょう。私はリュインさんと同じ班で行動します。リュインさんが前衛担当で、私は後方援護、支援を行います。B班は玲奈さんと縁さん、C班はヒューイさん、咲耶さん、聡子さんで良いですね?」
 異議無し! と綾野 断真(ga6621)の作戦に従う能力者達。
「怪我をした仲間は、俺が応急セットで治療する」
 手当ては任せろと皆を励ますヒューイ・焔(ga8434)。

●銃撃とカポエイラ
 A班の断真とリュインは難しいが、連携しながらアナコンダの目や急所を狙って狙撃している。
「目が無理でも、とにかく当てることです。少しでもダメージを与えればそれだけ動きが鈍くなります」
 そうすれば前衛のリュインが楽になるだろうと考え、冷静に狙撃する断真は後方に位置しているので戦場全体が見渡せるのでリュインに死角からの攻撃、新手が現れた時はすぐに声をかけられるようにしている。
「リュインさん、アナコンダが後ろから接近しています!」
「任せろ!」
 断真に援護射撃して貰いながら、機動性と一撃の威力を重視した戦闘スタイルのリュインは、攻撃回避は『瞬天速』で、カポエイラの回避動作のひとつで、横に伏せるように回避する『エスキーヴァ』でアナコンダを避け、勢いに任せて『急所突き』発動の回転蹴りを喰らわせた。噛み付き防止にと鬼蛍で口を横薙ぎ。
「大物を噛めるよう広げてやったぞ、感謝しろ」
 巻きつき対策に胴体の切断を試み『瞬速撃』発動の鬼蛍で一撃必殺!
「長いアナコンダとはいえ。短くなっては巻きつけんだろう? 雷を秘めた刹那の爪蹴りに魅せられて逝けっ!」
 蹴り足を「エイの尻尾」さながら鋭敏に繰り出す蹴り技『ハボ ジ アハイア』(空手の『後ろ回し蹴り』に近い蹴り技)でとどめかと思われたが、アナコンダはまだ生きていた。
「やれやれ‥‥したくはないですが、接近戦に持ち込むしかないようですね」
 菖蒲を構えた断真は、焦らず、スピーディーにアナコンダに倒したかと思いきや‥‥まだ動いている。しぶとい生命力だ。
 援護に駆けつけた律子は、カポエイリスタから受け取った筒を持ってきた。
「あなたの相手は私よ! ‥‥と言いたいところだけど、捕獲したほうが良いわね」
 アナコンダは既に致命傷に近いダメージを与えられているので、一切攻撃はしなかった。虫の息状態であったので、筒への捕獲を試みた。
 網で蛇を簀巻きにし、頭と尻尾を縄で結ぶと袋に入れ、筒に入れてフロスティアで蓋をし、アナコンダが暴れても押さえつけられるようにした。
 ただし、これはあくまでも仲間を危機に晒さないための捕獲である。
 結果的にどうするかというと、UPC軍南中央部に研究材料として飼育してもらうよう頼むつもりであった。
「退治の任を逸脱したのはあくまで私の独断です。罰は全て私が受けます。この子もこのバグアの犠牲者なのですから」
 律子の意見に「汝は甘いな」と言うリュインだったが、反対はしなかった。
「どうなっても我は一切責任は取らんぞ。そのつもりでいろ」
「はい」
「律子さん、リュインさん、お話の途中申し訳ないのですが、他の班の応援に廻りませんか?」
「そうだな。我はまだ戦い足りん」
 腕を鳴らし、いつでも戦闘態勢OKのリュインは駆け出した。

 A班:アナコンダ捕獲。依頼終了後、UPC南中央軍に引き渡す予定。

●アナコンダの皮剥ぎ
「んじゃまあ、仕事開始と行くか! 行くぜ、三島!」
「九条さん、宜しくお願いします!」
 二人は一般人にアナコンダを接近させないように牽制しつつ、距離を詰めて戦っている。
 縁は、牽制の段階では銃をメインに蛇の動き具合を確認しながら頭部をメインに狙い撃ちし、普通に撃っても当らない場合は三回に一度の割合で予測行動地点狙いで撃っている。
 その間、玲奈はアナコンダの左右にライフルを連射して群れから切り離し、A班、C班に向かわないよう、銃で牽制している。尻尾の動きから敵の頭の位置を予測しながら銃撃を行うが、当らずとも諦めずに狙撃し続けている。
 遠距離攻撃をしていた二人だったが、アナコンダが接近してきたので近距離攻撃に転じなければならなくなった。
「しゃあない、剣での攻撃に切り替えるか」
 縁は相手の全体の動きに注意を払い、溜めとうねりを見逃さないよう注意しつつ交戦。蛇の構造上、肉体の接地面が多い所が重心になってるのがセオリーだ。
「所詮は野生動物、幾ら変幻自在とはいえ構造上不可能な動き、やり難い動きはしてこないはず。故に行動の把握は不可能ではない!」
 間合いを詰めると、縁は素早く覚醒し『流し斬り』『ソニックブーム』の一撃を決めた。
「まだ生きてる! しぶとい奴だ‥‥」
 長弓で頭部を『鋭角狙撃』で狙い、矢で頭部を剣山を作るが如く集中攻撃する玲奈は、縁からやや斜め前に出て狙撃。アナコンダが鎌首をもたげたので、喉元を矢で狙い、腹部等柔らかい部分を見せた隙に『急所突き』『強弾撃』の連発で矢を貫き通し、蛇行できないようにした。
「深く刺さらずとも、多くの矢を刺すことに成功しました。徐々に弱っていくと思います。それに、蛇は肋骨を内側から皮に刺して蛇行するの。皮を破れば良いわ」
 バスタードソードに持ち替えた玲奈は、満身創痍のアナコンダに接近すると跨り、胴体にバスタードソードを突き刺し、皮を剥いだ。
「げっ! 皮剥いでもまだ生きてる! 私、脱皮させちゃったの!?」
 アナコンダのただならぬ生命力に驚く玲奈のもとに、A班の三人が駆けつけた。
 律子が網でアナコンダを捕縛し、動けなくなったところをリュインが『アルマーダ プラーダ』(飛び蹴り)を喰らわせた『シャバ』(一度たたんだ足を鋭く蹴り出し、足の裏で攻撃)で止めを刺した。
「こちらも片付いたようだな。弱っていたため、戦い甲斐がなかったがな」
 残念そうにぼやくリュイン。
「後はC班だけですね。女性がお二人いますから危ないですね。急ぎましょう」
 断真がC班に向かうと、リュイン、縁、玲奈も後を追った。

●最後の一匹
 C班には、蛇が苦手な咲耶と聡子がいるが、二人とも苦手意識を克服すべじゅ奮闘中。
 咲耶はアナコンダの位置や周辺状況を瞬時に判断し、カポエイリスタ達に近づかないよう避難し易い経路にアナコンダを誘導しながらアラスカ454で落ち着いて的確射撃を行い、『急所突き』を発動させて連射。
「そこですわね」
 距離が詰まってきたら蛍火に持ち替え、接近戦に切り替えて盾役となり『先手必勝』『流し斬り』発動後、攻撃開始。
「蛇に捕まる訳には参りませんわ!」
 攻撃は一箇所に絞らず、フェイントを交えてアナコンダに巻き付かれないよう注意しながら咲耶は攻撃している。
「わたくしの動きについてこられるかしら?」
 銃撃のダメージは大きかったのか、アナコンダの動きは少々鈍かった。
「皆様、構わず蛇を攻撃していただいて結構ですわ」
「了解」
 ヒューイは、アナコンダが巻きつき攻撃ができない距離から小銃「スコーピオン」で攻撃し、咲耶を援護攻撃。
「きゃあっ!」
 蛇は苦手だが、キメラなので倒さなければという使命感が強い咲耶は近づきすぎたのか、アナコンダに噛み付かれた。
「大丈夫か? 毒があるかもしれないから血を吸い出す」
 ヒューイはそう言うが、アナコンダには毒がない。彼なりの気遣いだろうか。
 救急セットを取り出すと、咲耶の右手を素早く治療した。
「ありがとうございます、助かりましたわ」
「いいって。早く退治しよう」

 聡子はアーチェリーボウでアナコンダの射撃を試み、ある程度接近してきたらスパークマシンに持ち直して電撃攻撃に切り替えることにしたが、防御力、体力に自信がないため出来る限りアナコンダには近づかないように注意している。不安なので『レイ・バックル』でアーチェリーとスパークマシンの攻撃力を上昇させた。
 それが終わると同時に、聡子にアナコンダが接近!
「蛇は嫌いですー!!」
 そう叫ぶと、スパークマシンで電圧攻撃を始めた。
「聡子さん、加勢致しますわ!」
「女は皆、蛇が嫌いなのか」
 咲耶とヒューイの追撃で、アナコンダはドサリと倒れた。
「止めを刺しておきましょう。蛇の生命力は侮れませんから」 
 目をうっすらと開け、咲耶は蛍火でアナコンダの首を刎ね、胴体を裂いた。

 C班:アナコンダ退治成功!

●アナコンダはどうなる?
 律子はトランシーバーを取り出すと、UPC南中央軍にキメラ退治終了を報告すると同時に、捕獲したアナコンダを引き取って欲しいと頼んだ。
「キメラを引き取るとは、一体どういうことかね?」
 UPC南中央軍の士官が尋ねると、律子は「キメラとはいえ、アナコンダは望まぬ改造をされたのです。この子を、せめて平和への道標として生かす事で役立てることはできないでしょうか? そう思い、引き渡しをお願いしたのです」
「その件に関しては、こちらで話し合おう。今、迎えの高速移動艇をよこすから待機するように」
 士官はそう言うと連絡を絶った。

「その間‥‥コレと一緒にいなくてはいけないのですか? 嫌ですわ」
「私もです‥‥」
 蛇嫌いの咲耶と聡子が、アナコンダの死骸と一緒にいるのが我慢できなかった。
「情けない。こいつらは既に死んでいるのだぞ。UPC南中央軍の者が来たら、アナコンダを蛇酒にできるか尋ねてみるか。マムシ酒があるのだ、アナコンダ酒があってもよかろう」
「それ、不味そうです‥‥」
 それに比べ、リュインと玲奈は平気なようだ。

 一時間後、高速移動艇が着陸し、一人の男性と部下数名降りてきた。
 部下達は、手馴れた手つきで素早くアナコンダの死骸を片付けている。
「自分はUPC南中央軍所属の三崎裕士中尉だ。アナコンダを引き渡したいと願い出た能力者は誰だ?」
「私です」
 金属状の筒を手にした律子が、三崎中尉にそれを手渡した。
「蛇を全滅させた時も、任務が成功した時も仲間と共に喜びましたが、特に罪無きカポエイリスタと一般人を守れたことが最大の喜びでした。ですが、この蛇の今後が心配でならないのです。できれば冥福を祈り、仲間の共に無事を喜び合いたいです。その後、このアナコンダを持ち帰ってサンプルを採取するなりして研究してください」
 律子の説得に、三崎中尉は「わかった。少しだけ待つ。その間に全員で冥福を祈れ」と能力者に命じた。

 能力者は、それぞれの国での風習でアナコンダの冥福を祈った。

「済んだようだな。では、これは研究材料として貰っていく。せっかくブラジルに来たんだ。サッカー観戦するも良し、カポエイラ観戦も良しだ。領収書はUPC南中央軍、三崎裕士宛てに送れ。報酬代わりとして俺が支払う」
 三崎中尉は、アナコンダ処理が終わった部下と共に高速艇に乗り込むとUPC南中央軍に帰還した。

●ブラジル観光
 依頼を終えた能力者達は、早速ブラジル観光に繰り出した。
 どこに行くかは、全員一致で即決まった。言うまでもなく『カポエイラ観戦』だった。
 地元住人の話だと『アンゴーラ』『ヘジォナウ』という二流派が『ジョーゴ』(組み手)を行う広場があると教えてくれたので、能力者達は早速そこに向かうことにした。

 辿り着いた時には既に『ボーダ』(集会)が始まっていて、両流派の代表が組み手を行っていた。
「これが本場のカポエイラか!」
 リュインは、瞳を輝かせながらじっと観戦している。
「日本の武道と違い、真剣勝負じゃないんだな。お互い楽しんでいるってカンジだ」
「縁様の言うとおり、命がけの勝負というよりは、戦いを楽しんでいる様子ですわね」
 日本の武道との違いに感心する縁と咲耶。
「アナコンダのことが気になるのですか?」
 寂しそうにジョーゴを見ている律子を気遣う断真。
「ええ‥‥あれで良かったんですよね。これ以上、キメラの犠牲者を増やすワケにはいきませから」
「優しいんですね。今はカポエイラ観戦を楽しみましょう。せっかく来たんですから」
 コクンと頷く律子。
 玲奈は「そこだー! いけー!」と声援し、聡子は南米観光ができて大喜び。

 後日。UPC南中央軍の三崎中尉宛てに飲食代、宿泊費等の領収書が届いた。
 金額を見て驚いた三崎中尉は「見栄張るんじゃなかった‥‥」と後悔したとか。