●リプレイ本文
●シミュレーション開始
「ナイトフォーゲルも乗らねば、眠れる赤子と同じよ。どれ‥‥まずは一歩、足慣らしから始めてみるとするかのう。アプサラス教官よ、此度はよしなに願うのじゃ」
皆も宜しゅうの、と微笑を浮かべて意気込みを語り、アプサラスと能力者達に挨拶する秘色(
ga8202)。
「僕がナイトフォーゲルシミュレーションに‥‥参加した、のは‥‥大規模作戦で初めて操縦経験した、けど‥‥陸戦しかやってないから‥‥空中戦は‥‥未経験‥‥。訓練任務で、ナイトフォーゲルの飛行は経験してるけど‥‥。せっかくの、機会だから‥‥頑張る‥‥」
たどたどしい口調で参加動機を話し出すリオン=ヴァルツァー(
ga8388)。
「私は、大規模作戦を除けば一応これが初依頼ね。大規模作戦じゃ後方支援ばかりだから、ナイトフォーゲル戦は経験無しも同然。まだ死にたくないし、死ぬことのないシミュレーションで訓練するのもいい機会ね」
アーシュ・シュタース(
ga8745)は偉そうな悪い口調で参加動機を話すが、彼女の寂しい一面を垣間見るような内容だ。
「凡人とチームプレイなんてまっぴらごめんよ。できるとしたら、スタンドプレーからなるチームワークだけね」
難儀な性格故に協調性が低い玖珂・円(
ga9340)はそういうものの、ナイトフォーゲルシミュレーション依頼を成功させるという目的は皆と同じだろう。
「銀龍(
ga9950)は、記憶が無いから少しでも多くの事を知りたい。何も分からない、思い出せない。だから、戦うという事がどういう事なのかを知りたい。銀龍はそれを知らない、教えてくれ」
ナイトフォーゲルシミュレーション参加は、その一環。
ナイトフォーゲルとは何か。
能力者とはどのような存在なのか。
ワーム、バグアがどういうものなのか。
戦うということがどういうことで、何の意味があるのか。
仲間とはどのようなものなのか。
それらを知ることが、銀龍がシミュレーションに参加した真の理由だ。
能力者達が歓談を遮るかのように、シミュレーション企画、プログラム作成者である『実践訓練センター』教官のアプサラス・マーヤーがシミュレーションルームに来た。
「はじめまして、教官殿。ご指導のほど宜しくお願いします!」
アプサラスを見るなり姿勢を正し、敬礼して声高々に挨拶する尚 覇志(
ga9547)。
「全員揃ってますね。改めて今回行う『ナイトフォーゲル・シミュレーション』の説明をします。まず、皆さんにシミュレーションシステムに設置されているキーボードを使い所有機体名、レベル、装備(主兵装、副兵装、アクセサリ)を入力してもらいます。装備の無い方は、プログラミングデータにあるものを貸与できます。次に『TACネーム』登録。ご存知の方もいるでしょうが、これは部隊内愛称です。シミュレーション中は、皆さんはTACネームを名乗ってください」
アプサラスの指示に従い、能力者達は順にデータを入力。
●秘色(TAC:Azul)所持機体:F−108 ディアブロ
攻:394(24)
命:350(90)
回:210
防:258(48)
受:258
知:387(112)
抵:200
装:381(1)
重:250
行:3
生:145
練:190
移:4
主兵装:3.2cm分子レーザー砲
副兵装:突撃仕様ガドリング砲、ホーミングミサイル
アクセ:メトロニウムフレーム×2、スコープシステム×2
●リオン(TAC:Leo)所持機体:XA−08B 阿修羅
攻:460(60)
命:303(48)
回:237(−8)
防:270(50)
受:282(12)
知:110
抵:132(−8)
装:315(30)
重:250
行:3
生:120
錬:185
移:4
主兵装:スナイパーライフルD−02
副兵装:ホーミングミサイル(貸与)、20ミリバルカン(貸与)
アクセ:人工筋肉β、メトロニウムフレーム×2
●アーシュ(TAC:Fear)所持機体:S−01
攻:280(30)
命:270(60)
回:170
防:210
受:210
知:160
抵:170
装:400
重:100
行:3
生:150
練:100
移:3
主兵装:突撃仕様ガドリング砲
副兵装:20mmバルカン、ホーミングミサイルG−01
アクセ:サブアイシステム×3
●円(TAC:Sylphid)所持機体:H−114岩龍
攻:240(30)
命:290(80)
回:120(10)
防:170
受:170
知:210
抵:110
装:300
重:170
行:3
生:120
練:90
移:2
主兵装:ホーミングミサイル(貸与)
副兵装:H12ミサイルポッド(貸与)、H−112長距離バルカン(貸与)
アクセ:ステルスフレーム×2(貸与)、サブアイシステム(貸与)
●覇志(TAC:WALL)所持機体:R−01
攻:298(12)
命:483(278)
回:215
防:205(5)
受:205
知:203(38)
抵:145(5)
装:301(1)
重:145
行:3
生:145
練:125
移:4
主兵装:試作型G放電装置
副兵装:突撃仕様ガドリング砲、UK−10AAM
アクセ:スコープシステム、サブアイシステム、SES増幅装置
●銀龍(TAC:RENKA)所持機体:R−01
攻:310(30)
命:210(30)
回:210
防:230(40)
受:190
知:130
抵:130
装:400
重:230
行:4
生:140
練:120
移動:4
主兵装:突撃仕様ガドリング砲
副兵装:H12ミサイルポッド(貸与)、20mmバルカン(貸与)
アクセサリ:メトロニウムフレーム×2、サブアイシステム
●晴天時
全員のデータ入力後、アプサラスはシミュレーションの説明を始めた。
「シミュレーション内容の説明をします。戦闘機形態で、晴天時と悪天候時の二回に分けて行います。晴天時で受けた機体のダメージは、悪天候時に蓄積されることはありません」
この時、アプサラスは教官から司令官に早変わり。
「晴天時の状況を説明します。攻撃目標である小型ワームは、離陸地点である滑走路から1キロ程離れた補給基地を襲撃中です。基地に到着次第、即座に戦闘開始になるものと想定してください。離陸は1機ずつ、3分間隔で行います」
アプサラスの状況説明が終わると、能力者達は各々のシミュレーションシステムルームに入り、準備を開始。
各自のスタンバイ確認後、アプサラスはシステム内にあるディスプレイに、滑走路とライトを振り各機を誘導する発艦士官の映像を映し出した。
『Azul、離陸せよ!』
無線機越しに聞こえるアプサラスの指示、映像内の発艦士官の合図と同時に秘色、リオン、アーシュ、円、覇志、銀龍の順に離陸。
数分後、目的地である補給基地に6機は辿り着いた。
「皆、準備は良いかえ?」
Azulの合図に「OK!」と答える能力者達。
編成は、前衛右翼A班2機。前衛左翼B班2機、後方支援C班2機の三編成。
A班はAzul、RENKA。B班はLeo、WALL、C班はSylphid、Fear。
「WALL‥‥宜しく、ね」
「こちらこそ」
無線機越しに挨拶を交わした二人は、補給基地を襲撃しているヘルメットワームの左側に移動。
「RENKA、わしらも行くぞえ!」
「了解」
RENKAはナイトフォーゲル初搭乗なので、周りに合わせることで味方機の動きを良く見て慎重に行動し、牽制メイン攻撃でいくことに。
「Azul、攻撃しよう」
「言われなくとも、わかっておるわい」
ヘルメットワームの右側至近距離に到達したA班2機は、動きを読みつつ狙いを定めてミサイル攻撃。即席コンビとは思えぬほどの連携攻撃を見せた。
それに負けじと、B班2機も息の合った攻撃で挟み撃ち。
その後方から、C班の攻撃するタイミングの隙を作ろうとAzulはヘルメットワームの背面に回り込み、それを見計らったかのようにC班2機が追いついた。
「Sylphの実力、見せてあげる!」
Sylphidの行動は、後衛及び中衛に位置しての援護射撃と生存重視の回避運動。
H−112長距離バルカン、H12ミサイルポッドを弾幕として使用し、ヘルメットワームの視界を遮ったのを確認後、ホーミングミサイルで攻撃するも当たらず。
「これだから奉天製品は‥‥!」
都合が悪くなり、悪態をつくSylphid機に隙が生じたのか、ヘルメットワームが収束フェザー砲で反撃されたことで大ダメージを受けた。
「ミサイル撃って接近、その後は可能な限り相手の周りを飛び回って突撃仕様ガドリング砲やバルカンで相手の邪魔をするってのは地味だけど、やられたら嫌よね?」
Fearの言葉に無反応なSylphid。
「正直なところ、私の火力じゃ不足だろうから行動の邪魔する程度よね。それでも、味方の邪魔しないようにってのは骨が折れそう」
ふぅ‥‥と溜息をつき、Sylphidと共に後方支援を行うFear。
「もう怒った!」
プライド高いSylphidは、ヘルメットワームに攻撃されたことに腹を立てながら猛反撃。ミサイル、バルカンを使い果たしてしまった。
「冷静にならんか! おぬしを含めた1機たりとも落とさせはせぬ!」
無線機で、皆を励ますAzulの一言に励まされた能力者達は、力を合わせてヘルメットワームを撃破した。
終了後の状態:円機半壊、敵機襲撃により補給基地4分の1破壊。撃破成功!
『晴天時シミュレーション終了。皆さん、お疲れ様でした。30分の休憩後、悪天候時のシミュレーションを行います』
無事終了したことで、能力者全員、身体の力が抜けた。
●悪天候時
30分休憩後、悪天候時のシミュレーションが行われた。
「状況を説明します。攻撃目標である小型ワームは、離陸地点である滑走路から500メートル程離れた某国陸軍基地襲撃を終え、私達がいるという設定の基地に向かおうとしています。天候は雨、風速20メートル。暴風雨のため、飛行に注意するように。離陸は晴天時の逆順序で行います」
「銀龍が最初?」
「そうです。初めてにしては上々でしたよ。悪天候時も頑張ってください」
司令官アプサラスの励ましに、やや表情が緩む銀龍。
悪天候時は晴天時に比べると悪条件だが、それでも行わなければならない。
皆、覚悟のうえで参加したのだから。
『RENKA、離陸せよ!』
無線機越しに聞こえるアプサラスの指示、映像内の発艦士官の合図と同時に銀龍、覇志、円、アーシュ、リオン、秘色の順に離陸。
雨による視界不良、強風による不安定感で機体バランスも取り難い。それでも皆、シミュレーションとはいえ必死に操縦している。
時間はかなりかかったが、標的であるヘルメットワームを発見した6機は、二編成による攻撃を仕掛けることに。
前衛左担当はAzul、中央担当はFear、右担当はRENKA。
サポート的存在の後衛担当はLeo、Sylphid、WALL。
WALLは、Sylphid機の護衛も兼ねている。
「行こう」
RENKAの無線機越しの言葉が、戦闘開始の合図。
(「胸の辺りがドキドキしている。銀龍は今、楽しいのか?」)
理解できない感情に小首をかしげるRENKAだったが、機体が揺れたことで今は考え事をしている場合ではないと反省した。
「前衛3機、散開し三方からの展開じゃ。わしに続け!」
Azulの無線機による一言が、攻撃開始を告げる。
強風に煽られないようバランスを取りつつ、ホーミングミサイルに続き高分子レーザー砲を撃ちながら接近を試みるAzulは、後衛にいる3機援護の下、前衛の2機に突出し過ぎずタイミングを計りながら積極攻撃するよう指示。
LeoとWALLは、Sylphid機を護衛しつつ、前衛の3機へ援護射撃を送っている。
WALLの基本方針は連携重視。遠距離からはUK−10AAMを使用、近距離牽制に突撃仕様ガドリング砲を使用、命中率の高い試作型G放電装置で攻撃しつつSylphid機を常にチェックしながら周囲の警戒も行う。
「各機、目の前の敵機だけではなく周りの警戒も怠らずに!」
『了解!』
WALLの指示に従う能力者達。
Sylphid機は無茶な行動をするかと思いきや、自身の機体だけでは敵を倒せる見込みが薄いと判断したのか、2機の後方位置を飛行中。
他人と組むのが得意ではないFearだが、シミュレーションとはいえ実戦なのでそのようなことは言えない。
積極的に攻撃しているため、ヘルメットワームの標的となったAzulだったが、ブーストで速度、命中力、回避力を高めた後『アグレッシブ・ファング』付与レーザーで撃墜を狙う。
「此れで決まり、じゃな!」
Azulの渾身の一撃は、ヘルメットワームを貫いた。撃墜された敵機は、ゆっくりと落下、爆発。
終了後の状態:全機損傷無し。敵機撃破成功!
『悪天候時シミュレーション終了。悪条件の中、良く頑張りましたね。ナイトフォーゲルによる実戦が初めての方々とは思えない程の腕前でした。これで、全過程終了です』
悪条件の中、損傷も無く帰還できたことは奇跡と言っていいのだろうか。
●戦い終えて
「皆さん、シミュレーションお疲れ様でした。これは私からの差し入れです」
アプサラスは、銀製トレイに載せたリンゴジュースを全員に手渡した。
「美味しい。どうしてだろう」
「戦いを無事終えたからじゃろうて。銀龍、おぬし、本当に初陣かえ?」
小首をかしげてリンゴジュースを受け取った銀龍に、秘色は尋ねた。
「初めて」
「あんた凄い! あたしも負けてられん!」
ライバル意識を燃やしたのか、円は闘志を燃やしつつ次回もシミュレーションがあるとしたら、おもいっきり活躍してやると固く誓った。
「シミュレーションとはいえ、侮れなかったわ。これが実戦だったら、私達は無事帰還できなかったかも」
腕組みしながら、率直な感想を述べるアーシュ。
「アプサラス教官‥‥評価・訓示は‥‥?」
気になるのか、アプサラスに尋ねるリオン。
「気になりますか?」
リオンが頷くので、アプサラスはデータを蒐集したレポートを見ながら今回のシミュレーションの評価を発表した。
「評価ですが、まだまだ‥‥といったところですね。初陣がほとんどの方が多い中、悪天候時のシミュレーションの結果は予想以上の好結果だったのには驚きました。皆さんの能力は、まだ未知数です」
一息ついたアプサラスは、更に話を続けた。
「経験を積めば積むほど良い戦力になります。ナイトフォーゲル依頼に参加する際は、自信を持って今回名乗ったTACネームを使用してください。以上」
『ありがとうございました!』
お辞儀をして、アプサラスに礼を述べる能力者達。
未知の能力を秘めた能力者達が、戦力となる日はそう遠くないだろう。