タイトル:玩具兵隊の逆襲マスター:竹科真史

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 9 人
サポート人数: 1 人
リプレイ完成日時:
2008/04/09 18:22

●オープニング本文


 北米某所。
 キメラに破壊された街の一角に古びた骨董品屋があり、アンティークドールやブリキの兵隊人形等、古びた玩具等が展示されていた。
 破壊される前は、骨董品マニアやアンティークドールを買い求める客で賑わっていたほどだが、今では、その面影すら残ってはいない。
 廃墟と化した店の前に、一人の老人が立っていたかと思うと、瓦礫からブリキの兵隊人形を何体か揃えると修理し始めた。
 人形の数は、全部で数十体。
 サーベルを持っている人形もいれば、ライフルのような長い銃を持っている人形、大砲を抱えている複数の人形もいる。
 老人は兵隊達の修理を終えると、何処へと去っていった。

 その数日後、ブリキの兵隊人形達が人間を襲い始めるようになった。
 全長50センチほどだが、大勢でかかれば小さな子供はあっという間にやられてしまうだろう。
 現に、5歳の子供がサーベルで両脚を刺されたという事態が起きた。
 このまま放置しておけば、小さなブリキ人形でも街ひとつ崩壊しかねない。
 それを危惧したULTは、UPC本部に殲滅するよう要請した。

「能力者の皆さん、現在、デトロイト周辺で玩具兵隊キメラによる襲撃が行われています。全長約50センチほどですが、数は多いです。確認できただけでも30体以上います。襲撃箇所は三箇所。一つは小さな農村、一つは商店街、最後の一箇所は、スマイル・クラウンというストリートパフォーマーが活動拠点としている公園付近です。これ以上被害を増やさないため、能力者は緊急出動してください。キメラは小さいですが、サーベル、銃、大砲による攻撃を行いますので注意してください。報告は以上です」
 リネーア・ベリィルンドからの依頼説明を聞いた能力者達は、急いで現場に向かった。
「大変なことになっちまったな、リネーア」
 依頼を終え、ULTに戻ろうとしたところでソウジ・グンベと会ったリネーア。
「そうね。ソウジ中尉、能力者達の指示だけど、あなたにお任せしたいのだけど良いかしら?」
「俺がか? まぁ、今回の一件は俺も聞いているから何とかなるが‥‥」
 リネーアの頼みとあっちゃ断れないなと、ソウジは引き受けることにした。

 小さなキメラ退治は苦労すると思うが、一体残らず殲滅せよ!

●参加者一覧

銀野 すばる(ga0472
17歳・♀・GP
シャロン・エイヴァリー(ga1843
23歳・♀・AA
内藤新(ga3460
20歳・♂・ST
リュイン・グンベ(ga3871
23歳・♀・PN
ミンティア・タブレット(ga6672
18歳・♀・ER
増田 大五郎(ga6752
25歳・♂・FT
NATZ(ga6948
19歳・♀・SN
The SUMMER(ga8318
22歳・♀・DF
聖 武威(ga8424
23歳・♂・DF

●リプレイ本文

●能力者の反撃
 ソウジ・グンベは、集まった9名の能力者達と協力を要請し来てもらったラルス・フェルセン(ga5133)に無線機を手渡した。
「キミ達には、ブリキ製の小型兵隊キメラの退治をしてもらう。全長50センチ程だが、集団で襲うので侮るな。各地点での退治終了次第、俺に連絡して次の地点の仲間と合流すること」

 A地点の農村担当は銀野 すばる(ga0472)、増田 大五郎(ga6752)、The SUMMER(ga8318)。
「小さな子供が犠牲になるなんて‥‥絶っ対に許せない! 一体残らず殲滅するんだから!」
 子供が被害に遭ったのを知りキメラに怒りをおぼえたすばるは、UPCから借りた軍用ネットを強く握り締めて必ず倒す! と誓った。
「ブリキの兵隊とは、随分と愉快なキメラじゃないか。初の実戦が、玩具の処理というのはいささか心外だが‥‥まぁいい。新人は新人らしく、先輩に従い、堅実にいかないとな」
 顔の火傷を隠すため、常日頃から仮面を被っているThe SUMMERの表情は窺い知ることはできないが、声から察すると、キメラ戦を待ちわびているように思える。
「行こうか」
 大五郎に続き、農村に向かうすばるとThe SUMMER。

 B地点の商店街担当は内藤新(ga3460)、リュイン・カミーユ(ga3871)、聖 武威(ga8424)。
「硬い、小さい、多いの三拍子か。子供には夢を、コレクターには浪漫を与える玩具の兵隊も敵に回すと厄介な存在だ‥‥。被害が増える前に、我らが動かぬ玩具に戻さねば!」
 軍用ネットを持ち、いつでも捕縛できるようスタンバイしながら張り切るリュインをチラリと見て「すげぇ張り切りぶりだ」と呟く武威。

 C地点の公園付近担当はシャロン・エイヴァリー(ga1843)、ミンティア・タブレット(ga6672)、NATZ(ga6948)。
「2人とも、協力して人を襲うブリキの兵隊を殲滅しましょう」
「了解‥‥」
「任せて! 小さな子供を襲う奴は許せない! これで一網打尽にしてやるわ♪」
 借りてきた軍用ネットを持ち、すばる同様、子供を襲うキメラを許せないNATZ。

「各自、準備は良いか? では、出動!」
『イエッサー!』
 敬礼し、能力者は各地点に向かった。

●公園を襲撃する小さきモノ
 デトロイトの公園では『スマイル・クラウン』と呼ばれるピエロに扮したストリートパフォーマーが観客達に自慢の芸を披露して楽しませていたが‥‥小さな襲撃者達により、一瞬にして歓喜は悲鳴に変わった。
 公園に現れたのは、サーベル兵士キメラ3体とライフル兵士キメラ3体。
『私の邪魔をするな!!』
 ドラマに登場する射撃の名手であるクールガイ刑事の声色を真似て、無謀にもキメラに挑もうとするスマイル・クラウンを止めたのはシャロン。
「あなたがスマイル・クラウン? ここは私達に任せて、あなたは観客や公園にいる人達を避難させてちょうだい。市民に慕われているあなただからこそ、お願いできることなの」
 シャロンの説得に応じたスマイル・クラウンは、避難誘導を率先して行った。
 その最中、小さな子供が転んだ。
「大丈夫‥‥? ここは危ないから、早く逃げて‥‥」
 子供の服の汚れを払い終えたミンティアは、近くを通りがかった市民に「この子をお願い‥‥」と頼み、シャロン達のところに戻った。
「遮蔽物の少ない公園でライフル使用‥‥不味いですね‥‥」
「A、B地点のチームに負けてられないわ。NATZ、兵隊集団に向けてネットを放り被せて!」
「OK! 兵隊さん達、しばらくコイツと遊んでなさい!」
 シャロンの合図と同時にNATZは軍用ネットを被せ、兵隊キメラ達の動きを封じると射撃体勢を整えたが、サーベル兵士キメラがネットを切り裂こうともがく。
「そうはさせないわ!」
 ネットの端を掴んで『豪力発現』を使い体力を強化させたシャロンが、サーベル兵士を1体ずつ強引に押さえつけ阻止。
「悪いけど、ブリキ兵隊に良い思い出がないの。私を躊躇させたかったら、愛らしいテディベアを連れてきなさいっ!」
 ミンティアは『電波増幅』を使い、自分を含めた全員の攻撃力を高める。
「サーベル兵士キメラは私が抑えるわ。NATZとミンティアは、ライフル兵士キメラをお願い!」
 二人に追撃させないよう、シャロンは『豪破斬撃』でサーベル兵士キメラを1体ずつ確実に撃破しようとしたが、ライフル兵士キメラ達が、シャロンに狙いを定めている。
「シャロンをやらせないわ!」
「邪魔しないで‥‥」
 NATZの『強弾撃』が狙撃を阻止。残りのライフル兵士キメラは、ミンティアの超機械αがダメージを与えたものの、破壊までは至らなかった。
 ブリキは硬度が高い。キメラ化したことで、ブリキ兵隊達の硬度は更に高くなっている。
 NATZ、ミンティアの援護もあり、シャロンはサーベル兵士キメラ殲滅に成功。
 残りのライフル兵士キメラは、全員で倒した。
「指揮官は、おヒゲの隊長さんなのかしら? 良い思い出はないけど、それだけは印象深いのよね」
 指揮官らしき兵隊キメラが別の場所にいるかもしれない、と思うシャロンの意見。
「そうかも‥‥。何はともあれ、敵を全滅させることができました‥‥。他の地点へ移動しましょう‥‥」
「その前に、ソウジさんに連絡しないと。こちらC地点、NATZ。キメラ殲滅終了」
『わかった。B地点が一番苦戦しているだろうから、そっちに向かってくれ』
 C地点の3人は、ソウジの指示に従いB地点の商店街に向かった。

●農村を襲う小さきモノ
 人口100人程の静かな農村地域は、突然のキメラ襲撃によりパニック状態に陥っていた。
 すばる、大五郎、The SUMMERの3人は、キメラ殲滅の前に、村民達を安全な場所に避難させることにした。
「村人諸君、私達は能力者だ! 一仕事終えるまで、屋内で大人しくしておいてくれ! 屋内にキメラが侵入した場合は、遠慮せず大声で助けを呼ぶように!」
 The SUMMERに続き「あたし達がコイツをやっつけている間、一歩も外に出ないで!」「絶対に家に隠れていろ!」と、すばると大五郎も声をかける。
 3人が倒すのは、大砲を引っ張っている大砲兵士キメラ3体と、ライフル兵士キメラ3体。大砲は2体が大砲を支え、残りの1体が導火線に火をつけて周囲の畑に大砲を放っている。
「大砲キメラにライフルキメラとは‥‥前衛と後衛入り乱れだな。楽しいことになりそうだ」
「許せないっ! 一気に動きを封じるよ!」
 すばるは一気に軍用ネットを放り投げ、大砲兵士キメラ達を捕らえた。
「指揮官らしいキメラはいないようね」
「そのようだな‥‥っ!」
 すばると共に様子を伺っていた大五郎の左手に、大砲の弾が当たり痛みが走る。
「小さいとはいえ痛いな‥‥」
 撃たれた左手の甲には小さな弾痕ができ、出血していた。すばるはハンカチを取り出すと、大五郎の左手にきつく巻きつけた。
「応急手当てだから、サイエンティストがいるチームと合流したらちゃんと治療してもらって」
「すまん‥‥」
 至近距離からショットガン20を放つつもりだったが、発砲されたことでカチンときた大五郎は、メイン武器をヴィアに持ち替えた。
「大砲を撃ってくると聞いていたが、俺はあえて盾を用意しなかった。元甲子園の悪魔の名にかけ、剣で弾くっ!!」
 ネットに絡まりながらも、左手の痛みを堪えながら大砲で迎撃するキメラ兵士に突っ込む大五郎。元高校球児ゆえスポーツマンシップに則り正々堂々挑むのは良いが、この状況では自殺行為に等しいといえるが既に一撃喰らったので、捨て身の覚悟で挑んだ。
「危ないことをしますね〜」
 そう言いつつ3人に同行したラルスは、ライフル兵士キメラが迎撃しないよう後衛から超機械γによる援護攻撃を行っている。
 大五郎は『流し斬り』で攻撃しつつ弾を器用にヴィアで弾き、その隙をついたすばるは『疾風脚』と『瞬天速』で敵に狙いをつけられないよう、ローラーシューズを活かした素早い動きで回り込みながらライフル兵士キメラを1体ずつ撃破。
 素顔を全面的に隠す戦闘用の仮面を着用したThe SUMMERは、大砲の弾を盾で受けつつ1体ずつ確実に攻撃しようとしたが、弾切れとなったのか、大砲キメラ兵隊達の動きが止まったのを見て「その隙はマズイのではないかな?」と冷淡に言うと、隙を狙い、クロムブレイドで大砲を支えている2体をまとめて斬った。
「コークスクリューでとどめーっ!」
 残った大砲は、すばるの一撃で撃破。

 初陣のThe SUMMERの体力は激しく消耗していた。
「悪い、自家発電させてもらう‥‥」
 そう言うと、The SUMMERは『活性化』を使用し休憩。
「こちらA地点、増田。キメラ殲滅完了した」
『ご苦労さん。さっき、C地点からも殲滅連絡があった。キミ達もB地点に向かってくれ』
 The SUMMERの体力が回復すると同時に、A地点にいる能力者達はB地点に向かった。

●合流せし能力者達
 A地点にいたすばる、大五郎、The SUMMER、C地点にいたシャロン、ミンティア、NATZが、もう少しでB地点の商店街というところで合流した。
「そっちも終わったんだね」
「ええ‥‥大五郎さん、怪我してるじゃない! ミンティア、『練成治療』で治療してあげて」
 シャロンの指示通り、大五郎の傷を癒すミンティア。
「助かった、ありがとう」
 大砲キメラに受けた傷は、すっかり治ったので残りのキメラも倒す気マンマンの大五郎。それは良いのだが、先ほどのような無茶な戦法はやめてもらいたい。
「早く‥‥B地点に向かいましょう‥‥」
「そうだね」
 ミンティアに同意するNATZ。The SUMMERは、まだ体力が回復していないようなので無言だった。
「残りのブリキ兵隊退治にいこう!」
 すばるに釣られて、その場にいた能力者達は腕を天高く掲げて「やるぞ!」と誓った。

●商店街での小さきモノとの激戦
 残るB地点が、一番厄介な戦闘場所だった。
 商店街、と言えば聞こえは良いが、公園近くの広場に設置された即席市場のようなものなのでテント等の簡易建物、多数の商品が陳列された棚等で狭い場所での戦いを強いられることとなった。
 現場へ急行後、リュインと新は、一般人に避難呼掛けと誘導を行った。
「とりあえずこの場から早く逃げろ! 公園には行くな! キメラがいるかもしれん!」
 誘導している余裕はないので、リュインは市民に呼掛けることで敵から守り、緊急時の救援のみ行いつつ、避難する市民達を背後に守るよう位置取り、交戦優先体勢を取り、キメラを見つけた時にもし民間人が近くにいたら、彼らの安全を守るために誘導する。
「危ない! さあ、こっちに避難だ!」
 新は、自分から率先して公園の反対方向に市民を避難誘導した。
 武威は、キメラを倒す闘争心を燃やしつつ二人に倣い、避難誘導を行った。
「民間人退避完了だよ! キメラ退治といこうか」
「こっちも終わったぜ! いつでもいいぜ!」
「良し、では反撃開始だ! 商店街周辺被害は、出来るだけ出さないよう配慮するが、破損した場合の弁償代は、軍宛てに請求しよう」
 ソウジに頼めば何とかなるだろう、とリュインが考えていたその時、武威の無線に連絡が。
『こちらソウジ。A地点、C地点のキメラ殲滅完了という知らせがあった。各自、B地点に合流中だ。それまで、キミ達だけで応戦するように。武威、キミはこれが初陣だったな。緊張せず、おもいっきりやれ!』
「了解!」
 ソウジからの報告を聞き終えた武威は「キメラ退治、やってやるぜ!」と燃えた。

「民間人退避完了だよ! 後は頼んだよ!」
 リュインと武威の元に駆けつけた新は、二人に『練成強化』を使って攻撃力を上げ、『電波増幅』で自分を含めた全員の知覚を上げ、二人が別方向から攻撃されないように援護。

「さて‥‥大漁といくか! ヒゲの兵隊は何処だ? そいつが隊長に違いない!」
「あれじゃないんですか?」
 6体のキメラはすべてサーベル兵士。その前列にいるのは、新が指で示したチョビヒゲを生やしたブリキ製兵士。その証拠として、衣装はどの兵士達よりも豪華だである。
「数が多いな。軍用ネットを投網して動きを封じる。完全捕獲は無理でも、多少の行動抑制にはなるだろう。いくぞ!」
 万一のことを考え、包囲防止も狙い軍用ネットを放るリュイン。
 軍用ネットで動きを封じられたサーベル兵士キメラ達は、隊長が動き出す同時に一斉にもがき始め、サーベルでネットを切ろうと試みている。
「そのような得物は、汝ら玩具には過ぎたものだ。即、処分!」
 密集状態で『疾風脚』『急所突き』でサーベルをへし折るリュインだったが、サーベル兵士キメラの1体が、彼女の足にサーベルを突き刺した。小さいとはいえ、痛い。
「貴様‥‥我の美しい足にサーベルを突き刺したな! 百万年早いわボケ!!」
 十倍、いや、百倍返しといわんばかりに『疾風脚』で自分を刺したキメラをボコにし、大破させたリュイン。
 その隙に残りのサーベル兵士キメラがネットを破り脱出したが、武威が立ちはだかり、シュリケンブーメランの射程を保ちつつ正確にサーベル兵士キメラの武器を狙い慎重に破壊。
 懐に飛び込まれもうとしたサーベル兵士キメラは刀で応戦し『流し斬り』を交えて攻撃。
「キリがねぇ! 次はどいつだ? どっからでもかかって来い!」
 やぁぁっってやるぜーっ!! という武威の雄叫びが響き渡る。
 
 リュインと武威が戦闘に集中している間、新は『練成治療』で二人の治療を行う。
「そうは問屋が卸さないだ! 二人に傷ひとつ負わせないだ!」

 時間はかかったものの、サーベル兵士キメラ6体殲滅終了!

●戦場跡に合流
「こちらB地点のリュイン。キメラ殲滅終了!」
 無線機でソウジに報告するリュインだったが、少々機嫌が悪い。
『あ〜残りが合流する前にやっちまったか‥‥。そこ、だいぶ散らかったことだろう。修理可能なものは、キミ達で直してくれ。無理なものは、俺が本部に頼んで直してもらうから』
 ソウジの連絡が終了すると同時に、A地点、C地点に行っていた7名がB地点に辿り着いた。

「もう終わったんだ‥‥」
 拍子抜けのすばる、NATZ。
「ソウジ中尉に、これを片付けるよう言われたのね。市場修理も、私達の仕事よ。はじめましょうか」
 納得するシャロンに続き、ミンティア、The SUMMER、大五郎、新、武威が自分ができる範囲の修理作業に取り掛かる。
 リュインはというと‥‥。
「ソウジ、帰還したら何か奢れ。我らを労うのは当然のことだろう?」
『‥‥わかった。ただし、高いものはご馳走できんぞ』
 まいったなぁ‥‥と、そう言ってしまったソウジ。
「リュインさ〜ん、手伝ってください〜!」
「今行く!」
 破壊された市場は能力者達の手で修復され、翌日から営業再開された。

 ブリキ兵隊キメラ殲滅:成功!