タイトル:川の氾濫!×女の反乱!マスター:竹科真史

シナリオ形態: ショート
難易度: 難しい
参加人数: 10 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2008/04/01 03:29

●オープニング本文


 近畿地方にある「日高川」が、突然氾濫したとULTに連絡があった。
 氾濫の原因は、一体の女性型キメラの仕業であるという。

 その女性は、長く、艶のある美しい黒髪、透き通るような白い肌だが、瞳は蛇の目、両腕、両脚には蛇の鱗が生えていて、長い蛇状の尻尾がついている。
 水を自在に操る能力があるのか、突然現れては川を氾濫させ、周囲の土手や家屋に被害をもたらした。
 住民はやめさせようとしたが、一人の男が待ったをかけた。

「この方は、神聖なる日高川の神、清姫様であらせられるぞ! 頭が高い! ひかえおろう!」

 僧侶姿の男がいきなりそう宣言し始めると同時に、清姫の美しさに魅了された一般男性達も口を揃えてそう言い出した。
 僧侶は清姫を作成したバグアであり、一般男性達は、清姫の虜になった即席ファンクラブ会員である。
「何が神様よ! あれは化け物じゃない! 今、世間を騒がせているキメラって奴でしょ!」
「そうよそうよ!」
 住民の中でも特にやめさせようと精力的な主婦連中は、僧侶姿の男に猛抗議。中には、寝返った面食いなおばさんもいたが。
『黙れ、ブス共! 安珍様が仰ることは絶対だ!』
 清姫様命、と書かれたハチマキを締めた清姫様ファンクラブの青年達、これまた即席の安珍様ファンクラブの若い女性が反撃。
 いつの間に若い女性の間でそんなものが結成された? という突っ込みは無しで。

 連中が揉めている間、清姫は蛇の尻尾で川の水をぶっかけ、うるさい主婦達とぎゃあぎゃあ騒いでいるファンクラブ会員達を一斉に水浸しに。
 周囲が騒がしいので、ムカついたのだろうか。それとも、ただ単に暴れているだけなのかはわからない。
「おお、清姫様! もっと川を氾濫させてくださいませ!」
 作成者でありながら命令口調ではなく、敬うように命令するバグア安珍。自分が作成したキメラに酔いしれているのかもしれない。
 このままでは、日高川周辺は氾濫の被害に遭う。
 能力者にはそうなる前に清姫を退治し、安珍を捕獲しなければならない。

「面白そうなキメラですね。是非、そのキメラのデータを収集してみたいものです。所長、能力者と共に同行しても宜しいでしょうか?」
 実践訓練センターにある依頼斡旋モニターを見て興味を持ったアプサラス・マーヤーが、所長にそう願い出た。
「きみがキメラに興味を示すとは珍しいな。何か理由でもあるのか?」
「いえ。ただ、キメラであろうと、女の嫉妬がどれくらい恐ろしいかというのに興味があるだけです。それが理由ではいけませんか?」
 特に反対する理由もないので、所長はアプサラスの同行を許可し、ULTを通じ、UPC本部にそのことを報告した。

 UPC本部にある依頼斡旋モニターで、アプサラスは依頼内容の説明を行い、集合場所を伝えた。
「集合場所はUPC本部受付前、集合時間は10時。時間厳守ですので、遅れないようにしてください。目的地には、高速艇で向かいます。なお、今回の指揮は私が執ります」
 実践訓練センターの女鬼教官、と呼ばれている彼女なら、能力者達に指示するのはたやすいことだろう。

 清姫を倒し、安珍を捕獲して日高川氾濫を阻止せよ!

●参加者一覧

藤田あやこ(ga0204
21歳・♀・ST
水理 和奏(ga1500
13歳・♀・AA
沢村 五郎(ga1749
27歳・♂・FT
崎森 玲於奈(ga2010
20歳・♀・FT
小鳥遊神楽(ga3319
22歳・♀・JG
リュイン・グンベ(ga3871
23歳・♀・PN
風(ga4739
23歳・♀・BM
アルヴァイム(ga5051
28歳・♂・ER
クーヴィル・ラウド(ga6293
22歳・♂・SN
周防 誠(ga7131
28歳・♂・JG

●リプレイ本文

●清姫を見て
 実践訓練センター教官であるアプサラス・マーヤー指揮の下、日高川に出現した清姫を退治すべく集結した能力者は9名。両腕と腰から下全体が蛇の鱗に覆われ、蛇の尾が生えた外見の清姫は、日高川の中央に立ち尽くしたまま微動だにしない。

「あれで蛇女‥‥? ギリシア神話の『ラミア』や、フランスの伝承に登場する『メリュジーヌ』のようなものではないのか‥‥? それ相当のものかと思ってたのだが‥‥」
 崎森 玲於奈(ga2010)が言う『ラミア』『メリュジーヌ』は上半身は人間の女性、下半身は蛇の伝説上の怪物だ。それに比べたら、清姫はトカゲに近い。
 玲於奈はフッと笑うと「清姫、オマエは私を満たしてくれるのだろうな‥‥?」と呟く。
「グラビアアイドルオタクな男共が、不細工蛇女キメラに惚れたなんて‥‥。口惜しい〜っ! グラドルに謝れ〜っ!」
 これが参加動機らしい藤田あやこ(ga0204)は激怒。
 少し落ち着いたのか「美人科学者の私が、グラビアアイドルになれば良いのよ。そして‥‥」と考えながら含み笑いする彼女の衣装は、セーラー服の下には、胸に『あやこ』のゼッケン付きのスクール水着。水着を着ているのは、濡れた時の対策だ。
「美男美女を好むのは否定しませんが‥‥それがバグアとキメラとは。呆れて何も言えませんね」
 にこやかだが、苛立ちを隠せない周防 誠(ga7131)。
「腕と腰から脚全体は蛇だが、それ以外全裸とは‥‥エロスだ! 裸婦像はエロスだが芸術! だが奴は違う! 風、負けるな! 汝の脚線美が上だと、清姫に骨抜きにされたバカ共に証明してやれ!」
 清姫をビシッ! と指で示し隣にいる風(ga4739)を応援している、というより、けしかけているリュイン・カミーユ(ga3871)。
「あたし、頑張りますっ!」
 元グラビアアイドルという経歴を最大限に活かし、男達を説得するつもりの風は大張り切り。
「如何なる理由があろうと、人間を称えさせ、惹きつける何かを持つキメラとは実に興味深い。さて、現場はどのような状況になっているのやら‥‥」
 クーヴィル・ラウド(ga6293)は、双眼鏡で清姫作成者であるバグア安珍とファンクラブ会員の男女達、主婦軍団の様子を窺う。

●僧侶集団VS主婦軍団
 川の向こう岸では、安珍の取り巻きである『安珍様ファンクラブ』と『清姫様ファンクラブ』会員達、主婦軍団(町内会婦人部のおばさん達)が対立中。
「あいつのせいで、乾いた洗濯物がずぶ濡れよ!!」
「うちは、一階全室浸水状態!!」
「私のところは、丹精こめて育てたハーブが全滅したわ!!」
 機関銃の如く苦情を訴える主婦軍団を制圧するのは、清姫ファンクラブの男性会員達。8割が萌え〜なオタク、グラビアアイドルスキーである。
「ブス共! 清姫様は偉大な女神様だ!」
「ボクの清姫たんを苛めるなんて〜許せな〜いっ!」
「グラビアアイドルもAV女優も、清姫様のダイナマイトバディに比べると霞んで見える。清姫様万歳!!」
 論点ずれまくり主張、鼻血垂らし状態の顔、むさ苦しいオーラ放出等、各々の主張で迫る清姫ファンクラブにたじろぐ主婦軍団に追い討ちをかけたのは、安珍様ファンクラブの「イケメンが三度の飯以上に大好き」な女性会員達。
「安珍様が仰ることは正しいわ。彼の美貌がわからないオバン達には、到底理解できないでしょうがね」
「同感ってカンジ〜♪」

 当の安珍は、それを無視して読経中。

「‥‥呆れて何も言えん」
「あたしにも見せて」
 クーヴィルから双眼鏡を受け取った小鳥遊神楽(ga3319)は、様子を窺うなり項垂れた。
「近頃の男は、皆ああなのかい? 救いようがないというか、どうしようもないね。あたし達で百年の恋を一気に醒ましてあげない?」
「賛成!」
 神楽の手をがっしり握り締めたあやこは、同意を強調。
「そんなことより、早くおばさん達とファンクラブの人達の説得して、清姫退治しようよ!」
 ボーイッシュな水理 和奏(ga1500)の一言に依頼を思い出した能力者達は「じゃ、やるか」と、どのようしてファンクラブと主婦達を制圧し、清姫退治、安珍捕獲するかを考えた。
「説得だけど、場合によっては多少手荒なことしても良いのかな? できるだけ、そうならないよう、僕は説得頑張る!」
 和奏は拳を青空に掲げ、やるぞ! と燃えた。

●アプサラスによる伝説講座
「雑談はその程度に。依頼はキメラ『清姫』退治と『安珍』と名乗るバグア捕獲、即席結成のファンクラブと主婦達の騒動制圧です。ファンクラブ会員と主婦は民間人なので、手荒なことはしないように。その前に、日高川にまつわる伝説をお話し致します」
 アプサラスは、手にしていた一冊の本を開くと即座に説明した。

 安珍・清姫伝説とは、紀州(現在の和歌山県と三重県南部一帯)に伝わる僧侶・安珍に裏切られた清姫が激怒のあまり蛇身に変化し、道成寺(どうじょうじ)で鐘ごと安珍を焼き殺すという内容で有名だ。

 時は928年。
 熊野に参詣に来た美形僧侶・安珍は、真砂庄司清次の家を宿とした。
 圧司の娘・清姫は安珍に一目惚れして迫るが、安珍の「参拝中の身ゆえ、そのように迫られても困る。参拝の帰りにきっと立ち寄る」という言葉を信じて待ったが、彼は帰らず。安珍はそう騙し、そのままさっさと清姫の元を去っていった。
 騙された清姫は怒り、裸足で追跡、道成寺までの道の途中で追い付くと蛇身に化けて安珍を追跡。
 日高川を渡って道成寺に逃げ込んだ安珍が見たものは、蛇と化した清姫。
 道成寺に梵鐘を下ろしてもらうとその中に逃げ込む安珍だったが、鐘に七巻きした清姫に鐘もろとも焼かれた。
 能の演目『道成寺』、歌舞伎の演目『京鹿子娘道成寺(きょうがのこむすめどうじょうじ)』、乙女文楽(人形劇)の演目『日高川入相花王(ひだかがわいりあいざくら)』等で、今日まで語り継がれている。

「今回の依頼は、清姫が日高川を渡る場面までを演じている『日高川入相花王』に類似しています。その通りなら、清姫は安珍の元に移動するはずです」
 眼鏡のブリッジを中指で押し、そう仮説するアプサラス。
 仮にそうだとしても、清姫は何時移動するかわからない。
「敵がいつまでもあのままじゃ、近接戦では明らかに不利だね。敵を地面の上におびき寄せるのが良いんじゃない?」
 神楽の意見は、清姫の水飛沫攻撃が届かない程度の距離ギリギリに立ち、手持ちのSMGで一方的にダメージを与え続けて挑発するというものだったが、それではスナイパーしか攻撃できないという欠点が生じる。
「接近戦ですが、ボートで行うのが宜しいかと私は思います。このようなことを想定していましたのでボート貸与を申請しました」
 アルヴァイム(ga5051)は「用意はできていますか?」とアプサラスに確認。
「何時でも出撃できるよう手配してあります。錨を積んでおきましたので、清姫に接近した時は使用してボートを固定してください。接近戦にしても、遠距離戦にしても、清姫を仕留められるかは皆さん次第です。ただちにスタンバイしてください‥‥と言うところですが」
 溜息をついた後、アプサラスは「その前に、あの騒動を何とかしてください‥‥」と鬱陶しいといわんばかりの表情でファンクラブと主婦達を見た。

●騒動制圧
 ぎゃあぎゃあ騒がしい中、勇ましく飛び込んだのは和奏。
「お兄さん達、女の人に「ブス」なんて絶対言っちゃダメ! そんなの酷い‥‥男の人として、カッコ良くないっ! お姉さん達は、見かけに騙されちゃ駄目! あの人、怖いキメラを操る悪い人なんだよ!」
「ねえ、あなた達。言葉が通じない清姫様と、言葉が通じて、あなた達を守るあたし、どっちがいい? あたし、グラビアアイドルだったのよ」
 風を見て「あんな子いたっけ?」と首を傾げる男性達に
「熱烈なファンがいるんだったら、復帰も考えてたりするんだけどなぁ。あたし、脱いだらすごいんです♪」
 そう言うと、風は服を脱いでオレンジビキニ姿に。
「これでどうだっ!」
 清姫様万歳! と主張した鼻血を垂らしたままの男性に、風は屈んで自慢のバストを見せた。
「うおぉ! なかなか良いが、清姫様には敵わん! でも、良い‥‥」
 寝返るなー! という仲間の応援虚しく、一人ファンクラブ脱退。
「ありがとう♪ あたし達に協力してくれたら写真撮影しましょう♪ 仕事が片付いたら交流会、撮影会開始よ。皆が協力してくれなきゃ、仕事が終わらないんだけど」
 オタクの大半は、風が人気高いギャルゲーのヒロインそっくりという理由であっさり脱退し寝返った。
 あたしも負けない! と、あやこも説得。
 残りの男性会員の前で「これを見てください♪」と、セーラー服のスカートをめくり、上着をもったいぶりながら脱いで挑発。
 風と一味違う女性の色香に、グラビアアイドルスキー達脱退。
 清姫様ファンクラブ、風とあやこの色香に全滅!

 主婦軍団制圧が一番厄介だった。
 ファンクラブ以上に騒がしいので「いい加減にしろ! 黙れ! 散れ!」と誠は激怒。それに便乗するかのように、リュインは呼笛を高らかに鳴らした。
「本日『スーパー・リバーサイド』で、先着10名様のタイムバーゲンが行われる! 注目商品は高級牛肉だ! 主婦達よ、汝らの戦場はスーパーだ! 残り時間はあと僅かだぞ? 牛肉が安く買えるのだぞ?」
 覚醒してスーパーのチラシ(ダミー)をバーン! と見せてちらつかせるリュイン。
「さあ行け! タイムバーゲンに間に合わんぞ! 牛肉大盤振る舞いの機会は、次はいつあるかわからん!」
 主婦に一番効くのは『特売』の二文字。その心理を巧みに利用したリュインの作戦は大成功。
「こうしちゃいられないわ! 行くわよ、皆っ!」
 我先にゲット! と、目を血走らせながら主婦連中は瞬時に解散。

 残るは安珍様ファンクラブ会員のみ。
「そろそろ目を覚ませ‥‥と言っても、無駄か‥‥」
 安珍自体、無害な存在なので放っておいても問題は無いか‥‥と、あっさり諦めたクーヴィル。
「オマエ達では私を満たせん、大人しく退いて貰おう‥‥! と言っても‥‥まったく見向きもせずとは‥‥。呆れたものだ‥‥」
 玲於奈も説得を諦めた。

●日高川大決戦!?
「残るは清姫のみです。全員、戦闘配備についてください」
 アプサラスがファンクラブ、主婦制圧成功を確認すると能力者達に指示。
 各自、それぞれの配置につき攻撃準備。
「いよいよ清姫退治だね。僕は接近戦を挑むよ。解散しちゃったファンクラブの皆に、キメラがどれだけ怖い存在か教えてあげよう!」
「腕が鳴るな‥‥。ようやく、我が渇望を満たせる時が来たのだからな‥‥。Hier bin ich」
 覚醒して、スタンバイする玲於奈。
「早速、バグア撃退時の訓練が早速役立ちそうだ、アプサラス」
 指をポキポキ鳴らし、清姫を見つめるリュイン。

 陸上戦担当は風、神楽、クーヴィル、誠、アルヴァイム。
 中間距離での攻撃担当は玲於奈、あやこ。
 ボートでの接近戦担当は和奏、リュイン。

「攻撃開始!」
 
 アプサラスの合図と同時に、能力者達は一斉攻撃開始!
「キメラの癖にグラマーなんて〜っ!」
 清姫に嫉妬の炎を燃やしつつ、あやこは『練成強化』で仲間を支援。
 大丈夫! きみはキメラに負けていない!
「女を見た目だけでしか判断出来ない男達に、あんなのに現を抜かしているから、まともな女性から相手にされないってことを教えてあげましょうか」
 悪戯な笑みを浮かべながら、神楽は『強弾撃』で清姫の顔面を集中的に撃つ。
 それに続き、風が『貫通弾』で援護射撃。
「くしゅん!」
 風、春とはいえ、まだ寒い時期にビキニ姿のまま戦闘はきついのでは‥‥。
 アルヴァイムは、牽制しつつ上半身を集中して狙い撃ちし、確実にダメージを蓄積させている。清姫が前衛に注意を向けたのを見計らい『鋭覚狙撃』を併用して追撃。
 誠は水弾、尻尾攻撃に注意しつつ、鱗の部分を避けて顔面、胸等の防御の薄い部分を『強弾撃』で攻撃。
「美女でも、ああいうのは好みじゃないんだよね」
 誠の不敵な笑みと攻撃は、清姫を激昂させてしまった。
「あいつ、キレたか? まぁ、良いか」
 その隙を狙い、リュインは『瞬天速』で一気に至近距離に詰め、刹那の爪で足払い蹴撃。清姫逃走防止の為、足、膝、肩の関節を重点に攻めている。ついでに顔面攻撃を忘れない。
「顔を悪くすれば、ファンクラブは二度と結成されまい!」
「同感! いくよ! わかなダブルアタッーク!!」
『二段撃』と『急所突き』を組み合わせた和奏の突撃パンチ+ハイキックヒット!

「Lasst lustig die Horner erschallen Wir lassen die Horner erschallen‥‥」
 呟いている最中の玲於奈めがけ、清姫の尾が唸り攻撃しようとしたが、跳躍で回避した玲於奈は、返しざまに『豪破斬撃』を重ねた必殺の一閃を叩き込んだ。
「オマエも我が渇望を満たすに値しないか‥‥。価値の無いものは舞台から早々に消えて貰う‥‥。オマエの命を貰い受けることでな‥‥!」
 鋭い眼光と双眸は、清姫を萎縮させるほどだった。
 その隙を突き、クーヴィルが『強撃弾』が、清姫の胸の谷間を射抜いた。
「美しきは罪‥‥か。キメラにこの言葉は似合わないがな‥‥」
 この一撃で清姫退治成功か? と思われたが、清姫は致命傷を負いながらも安珍の元に向かおうとしている。
「本当に伝説の通りとは‥‥。バグアにしても、キメラにしても拘るとはな‥‥」
 ふぅ、と一息ついたクーヴィルの一矢と「往生際が悪いぞ!」と言いながらとどめの一撃、と言わんばかりのリュインの拳が清姫に止めを刺した。

 清姫退治、成功!

●再び逃走?
「私の最高傑作が敗れるとは! かくなるうえは‥‥」
 
 能力者一同、安珍を捕獲しようと、彼を囲んでいる。
 あやこ、リュインはロープを持ちながらと待機。

「退却ーっ!」
 安珍はカートゥーン走り(アメリカの一コマ漫画で常套手段とされる「足が見えない」走り方)で逃走!
 リュインは『瞬天速』、風は『瞬速縮地』で追いかけるが、安珍の逃げ足は異様に早く、追いつけかった。元スプリンターにも寄生していたのだろうか?

「無理に追う必要はありません。バグアとはいえ、キメラを作成するしか能が無いようですし。上層部からお咎めがあった場合は、私が全責任を負います」
 ご苦労様でした、と能力者を労うアプサラス。
「アプサラスさん、帰還する前に道成寺に寄りたいんですけど。清姫の冥福を祈りに」
「それは良い案ですね。では、参りましょうか」
 アプサラスに「あたし、ファンクラブとの交流がありますので‥‥」と遠慮がちに断る風。
 風の周りには、元清姫様ファンクラブの男性達がデジカメを持ってスタンバイ。
 アプサラスを含む残りの能力者は、道明寺に向かい、清姫の冥福を祈った。

 数日後。能力者全員、風邪でダウン。水辺の戦闘が原因だろうか?