タイトル:Broken Memoryマスター:竹科真史

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2008/04/04 05:49

●オープニング本文


 大切な思い出は、いつまでも記憶の片隅に残っているもの。
 それが何の前触れも無く、砂の城が崩れるが如く失われたら人はどうなるのだろうか‥‥。

『ブロークン・クラッシャー』の異名を持つ傭兵・ブライアン・マリガンは、リネーア・ベリィルンドがUPC本部にいると聞いたので早速そこへ向かい、到着するなり「リネーアに会いたい」とUPC本部受付嬢に願い出た。
 受付嬢呼び出しから数分後。リネーアがブロークン・クラッシャーのところへやって来た。
「ジャンボジェット墜落の件では、無礼なことをしてすまなかった。今日は‥‥そのことを侘びにきた」
 姉の後輩であるリネーアには何の落ち度も無いのに、軍の関係者というだけで逆恨みをしていたブロークン・クラッシャー。
 憎むべき相手は彼女でもUPC軍でもない。キメラなのだ。
 姉夫婦が搭乗していたジャンボジェットを墜落させたキメラ三体を退治した後、自らの身体を張ってまで彼を説得した能力者の一人に説得され、ブロークン・クラッシャーは、そのことをようやく悟ったのだ。
「もういいわ。それより、お姉さんのお墓参りに行って、敵を討ったという報告はしたの?」
「ああ。無事仇討ちしたってな。ここに来たのは、あんたに頼みがあるからだ。これを預かって欲しい。今から行く場所には、相応しくないものなんでな」
 ぎこちない微笑でそう言い手渡したのは、彼愛用の片手所持可能な試作型のオリジナル大剣が二本。
「重い‥‥」
 持つなり、そう言うリネーア。非力な人物では持つことは不可能だ。
「頼めるか?」
「良いわ。安心していってらっしゃい」
 頼む、と軽く会釈したブロークン・クラッシャーはリネーアに愛剣を預け、UPC本部受付前を後にした。

「よう、リネーア」
 彼女に声をかけたのは、UPC軍中尉のソウジ・グンベ。
 リネーアとは面識は無いが、美人の優秀オペレーターという噂を耳にしているのですぐにわかった。
「良かった。ソウジ中尉、お願いがあるの。あの人が戻るまでこれを預かってくれない?」
 リネーアは、受付カウンターに立てかけてある大剣を指差して言った。
「噂の破壊傭兵の愛剣だな。預かろう‥‥って、重っ!」
 ファイターであるソウジでもかなりの重量を感じる。それだけブロークン・クラッシャーが人並みはずれた怪力の持ち主であるということだ。

 ブロークン・クラッシャーが向かったのは、彼が育った孤児院だった。
「ブライアンだ!」
 彼を見るなり、子供達はブロークン・クラッシャーに飛びついた。
「手荒い歓迎だが、元気そうで何よりだ。皆、良い子か?」
 力こぶを作り、腕の筋肉をフル活用してぶら下げたり、肩車をして子供達に優しく接する時は、ブライアン・マリガンという普通の男に戻っている。
 ここの子供達は皆、バグアやキメラ襲来により親、兄弟姉妹を失った孤児だ。
「良く来たわね、ブライアン。子供達は、次はいつあなたが来るの? って聞いてくるほどよ」
「ビッグママ、元気そうだな」
 ビッグママというのは、孤児院の院長の愛称だ。誰にでも平等に接し、常に笑顔を絶やさない大柄なふくよかな優しい女性故、皆にそう呼ばれている。
 彼女自身「ビッグママ」と呼ばれることを嫌ってはいない。
「皆、俺はビッグママと大切な話があるんだ。話が終わったら、また遊ぼう」
 約束だよ! と笑顔で言う子供達に「ああ」と応えるブロークン・クラッシャー。

「大変だったわね。母親代わりだったジェミィが新婚旅行当日に墜落事故で亡くなるなんて。UPC北中央軍に落ち度があったそうじゃないの」
 それに関してはケリがついたから大丈夫と言い、話を強制終了させたブロークン・クラッシャー。
 事件を引き起こしたキメラは退治され、UPC北中央軍に寄せられる抗議も他のバグア関連の事件と同じように収束しつつある。
「ビッグママ、これ」
 ブロークン・クラッシャーは、毎月欠かさず孤児院に寄付している。
 院長は最初は断ったものの、子供達のヒーローである彼が稼いだ金と割り切り、有難く受け取ることに。そのおかげで、経営困難な孤児院が運営されている。

 院長との話が終わった後、ブロークン・クラッシャーは子供達と遊ぶ約束を果たすために遊戯室に向かおうとしたその時、院長室から悲鳴が聞こえた。
「ビッグママ!」
 彼が駆けつけたと同時に見たものは‥‥破壊された院長室と、傷ついた院長だった。
 院長の背後にいたのは、全長二メートルほどの赤いネズミ。
「キメラか!」
 覚醒し、素手で果敢に向かおうとしたブロークン・クラッシャーだったが、彼の覚醒と同時に、院長室が炎上した。ネズミは、炎撃タイプのキメラだったので、全身を発火させ、火を放ったのだ。
 隙をつき逃げ出した赤いネズミは、子供達が遊んでいる遊戯室と公園に向かおうとしている。
「子供達には、指一本触れさせん!」
 ネズミは、ブロークン・クラッシャーの横を素早く擦り抜けると、子供達がいる遊戯室に走しだした。
「そうはさせるか!」
 ブロークン・クラッシャーはネズミに追いつくなり覚醒。
 覚醒は本来、エミタとSES搭載武器が揃ってできる能力であり、それによりフォースフィールドを破れる。
 覚醒した状態でキメラと素手で戦うことは可能だが、能力半減、フォースフィールドで10分の1というハンディキャップがある。
「早く逃げろ! 近所の人達にも『キメラが出現した!』って伝えろ!」
 子供達の中で最年長である17歳の少女にそう伝えると、ブロークン・クラッシャーはネズミに強烈なパンチや蹴り技を繰り出して攻撃を続けた。
 少女は小さな子供達を連れ、孤児院を後にした。

「俺の思い出の場所を壊させはしない!!」

 UPC本部に駆けつけた少女は、酸欠で受付前で倒れた。
 受付嬢は、そのことを本部に知らせた。対応したのはソウジ中尉だった。
 酸素吸入させ、少女を落ち着かせてから事情を聞いた。
「お願い‥‥。あたし達の孤児院を‥‥守って‥‥。今‥‥ブライアンが‥‥赤くて大きなネズミと‥‥一人で戦っているの」
「何だと!?」
 愛用の武器を持っていないということは、彼は素手でキメラと戦っていることになる。
「無茶しやがって‥‥」
 ソウジは、すべてを伝え終えると意識を失った少女を医務室に連れて行くよう受付嬢に頼み、至急依頼要請をした。
「緊急指令! 孤児院にキメラが出現した。キメラはファイアーマウス一体だけだが、炎撃するため侮るな。現在、傭兵のブライアン・マリガンが一人でキメラを食い止めている。至急、彼の援護に向かえ! それともうひとつ。彼愛用の二本の大剣を手渡して欲しい。以上!」

 ソウジの要請に応じて集まった能力者達の中には、ブロークン・クラッシャーと初対面の者もいるだろうし、共にキメラ退治をした者もいるだろう。
「キミ達の依頼は、ブロークン・クラッシャーに愛用武器を手渡すことと、キメラを倒すことだ。頼んだぞ!」

●参加者一覧

須佐 武流(ga1461
20歳・♂・PN
シャロン・エイヴァリー(ga1843
23歳・♀・AA
赫月(ga3917
14歳・♀・FT
ラルス・フェルセン(ga5133
30歳・♂・PN
玖堂 暁恒(ga6985
29歳・♂・PN
煉威(ga7589
20歳・♂・SN
不二宮 トヲル(ga8050
15歳・♀・GP
狭間 唯那(ga8097
19歳・♀・SN

●リプレイ本文

●大剣を届けよ!
「ブロークン・クラッシャーか‥‥。久し振りに会うけど、相変わらずなんだろうなぁ。とりあえず、早いとこアイツの忘れ物を届けてやるか!」
 以前、サンフランシスコ国際空港でのキメラ退治に関わった須佐 武流(ga1461)は、しゃあねぇなぁと言いつつもオリジナル大剣の一本を持つ。
「彼が素手で孤軍奮闘と聞いた以上、以前、一緒にキメラ退治をしたからには放っておけないわね。私も行くわ。私も大剣は使うけど‥‥重いわね、これ。どういう腕力してるんだか‥‥」
 武流同様、ブロークン・クラッシャーに関わったシャロン・エイヴァリー(ga1843)は、かなりの重さに驚いた。
 大剣を持とうとしたソウジが重い、と言ったことが納得できた二人だった。
「ブロークン・クラッシャーにとっては、孤児院は『家』で、孤児達は『家族』同然です〜。家族を守りたい気持ちは‥‥痛い程分かります〜。私が能力者たる理由もそうですから〜。なので、一刻も早く〜時間を無駄にせずに急ぎましょう〜!」
 武流とシャロンに「剣のお届けは任せますね〜」と、ラルス・フェルセン(ga5133)。
「血の繋がりが無くても、家族は家族! 家族の居場所が大切なことを知っているから、ボクは痛い程わかる。彼の力になりたい、救えるのなら何だってするよ!」
 幼い頃に家族を亡くし、じーちゃんと慕っている老人に拾われ育てられた不二宮 トヲル(ga8050)は、孤児達と自分を重ね合わせた。
「孤児院でキメラが暴れてるだぁ‥‥? チッ‥‥キメラって奴は、相変わらずロクな事しやがらねぇ‥‥」
 ガリガリと頭を掻きながら「ガキは苦手だが‥‥死なれては寝覚めが悪ぃ‥‥」と鉢巻を使い、長い髪を高い位置で束ねる玖堂 暁恒(ga6985)。
「オペレーターのべリィルンド殿に、一時は怨みを持っていた男か‥‥。今はもう、私怨をもたないと聞くが‥‥。そんな奴だが、死なれては寝覚が悪い‥‥」
 赫月(ga3917)も、暁恒と同じ考えのようだ。
「早くこの大剣を何とかしようぜ。重たくて身動きがとりにくい‥‥」
 愚痴りながらも、武流は大剣を強く握りしめ、一刻も早くブロークン・クラッシャーに届けたいと思っていた。
「出発する前に〜皆さんに孤児院周辺地図を渡しますね〜」
 ラルスが全員に手渡したものは、医務室で休養している少女から聞き出した情報を元に、ソウジが作成したものだった。少女からの情報と照合済みなので、正確である。
「あ‥‥私も、あの子にそういうことを聞こうかな‥‥と思っていたんですけど‥‥。既にお話が済んでいるなら、ゆっくり休ましたほうがいいですね‥‥」
 狭間 唯那(ga8097)が残念そうに言う。
 ラルスは、地図作成だけでなく、消防隊に状況確認、キメラ誘導後の消火活動を行うよう、ソウジに待機要請を依頼。
「それは俺がやる。キミ達は、至急孤児院に向かってくれ」
 能力者達は高速艇に乗り込むと、各自、孤児院の構造と配置を確認した。

●鬼神奮迅
 現場に到着した能力者達は、唯那から無線機を受け取ると、それぞれの行動を開始。
 ブロークン・クラッシャーは、孤児院の前で暴れるファイアーマウスの胴体を両腕で押さえつけ、動きを封じ込めている。その間についたものなのか、彼の全身には無数の引っかき傷と噛み傷があり、多少ではあるが火傷も負っている。
 トヲルと唯那は、ブロークン・クラッシャーを心配していて残っている幼い子供達を、キメラの視界に入れないよう気をつけながら非難させている。
「悪いキメラは、彼がやっつけてくれるよ。ボク達能力者がついているから大丈夫! ここから逃げよう!」
「だいじょ〜ぶ‥‥とは言っても、私はまだ新米だから大したことできないけど、頑張ってブライアンさんを助けるから。他にもたくさん頼れる仲間がいるんだから、きっと孤児院も取り戻せるよ〜。さ、逃げよう」
 二人の言葉を信じた子供達は、トヲルの指示に従い避難。
 子供達が全員避難したのを確認した武流とシャロンは、重い大剣に苦戦しつつも暁恒と共にブロークン・クラッシャーの元に駆け寄る。
「お待たせしました〜キメラを離してください〜! 一旦退避したほうが良いですよ〜」
 到着するなり覚醒したラルスは、ブロークン・クラッシャーの傷の手当てを優先に考えていたが、当の本人は全く放す気が無い。
 武流、シャロンと共に駆けつけた暁恒が、ブロークン・クラッシャーの傷の具合を確認し終えると、彼に駆け寄り、キメラから強引に引き剥がした。
「テメェは一旦下がっとけ! テメェがくたばると、ガキ共が泣くだろうが!」
 素手、しかも炎を纏ったファイアーマウスと良くやり合ってたな‥‥と、暁恒は感心した。
(「タダで済んでる‥‥ワケがねぇか。下がらせて、救急セット持ってるヤツに治療を任せるか‥‥」)
 無線で救急セットを持っている仲間に、至急こちらに向かうよう要請する暁恒。
 その要請に即座に応じ、駆けつけたのは唯那。救急セットを取り出すと、急いでブロークン・クラッシャーの手当てを。
「無理しないでくださいね。子供達が心配していましたよ‥‥」
 皆、無事か? と尋ねる彼に「私の仲間が避難させましたから大丈夫です」と唯那が答えると、ブロークン・クラッシャーは安心したのか、少し身体の力が抜けた。
「知り合いの知り合いとはいえ、汝に死なれては困るので助太刀する!」
 リネーアや仲間と縁が無くとも、赫月は加勢しに来ただだろう。

 そんなブロークン・クラッシャーに、一本ずつ大剣を手渡す武流とシャロン。
「ほらよ。俺はただ、慌て者の破壊傭兵に忘れ物を届けに来ただけだが‥‥巻き込まれるも、助太刀するのも当然だろ? 仲間なんだから!」
「お待たせ。ブライアン、SES搭載兵器のデリバリーよ! お礼は、後できっちり請求するからね! ここで戦うのはマズイわね‥‥。外の公園まで、なんとか誘導しましょう」
 同感! と武流が親指をビシッと立てる。
「この近くに公園がありますから〜そこで戦いましょう〜」
 ブロークン・クラッシャーがファイアーマウスを引き止めてくれたおかげで、孤児院の被害は院長室全焼、孤児達の寝室やや崩壊状態で済み、火災に関しては、ソウジが要請した消防団が駆けつけ、懸命に消火活動を行っている。
「皆、孤児院は大丈夫だよ。ボクの仲間が守りにきたから!」
 その様子を子供達と見ながら、元気良く言って安心させるトヲル。

「あなたは此方に御用は無いはずです‥‥退きなさい!」
 ラルスは、ファイアーマウスの牙に狙いを定めると『レイ・バックル』を付加させた『強弾撃』を放った。
「ネズ公‥‥ここは狭い‥‥。もっと広いトコロで俺らと遊ばねぇか‥‥?」
 これ以上、孤児院を破壊されては気が進まないと、暁恒はラルスと共にファイアーマウスを別の場所へ誘導した。
「舞台をかえようか‥‥ここは少々窮屈なのでな。不二宮殿、我らも誘導しよう!」
「了解! 皆、ここから動いちゃ駄目だよ? いいね?」
 子供達に避難場所から動かないようにと言ったトヲルは、赫月と連携してキメラ誘導に合流。その際、周囲に被害が及ばないよう細心の注意を払ういつつ、目標を公園まで誘い込んでいる。
「ブライアンさん、私達も行きましょう。大丈夫ですか?」
「ああ。怪我の手当て‥‥ありがとう‥‥」
 まだ強面だが、できるだけの笑顔を見せて唯那に礼を言うブロークン・クラッシャー。

●思い出を壊そうとしたモノ
 公園にファイアーマウスを誘導させた能力者達は、各自攻撃を開始した。
 シャロンはブロークン・クラッシャーと共闘体勢をとり、発火するマウスに近接したまま戦うのは避け、スナイパーの攻撃を頼りにした。
「ボクに任せて!」
 スコーピオンを構えた煉威(ga7589)は『狙撃眼』で銃の性能を最大限に引き出した後、『強弾撃』でファイアーマウスの胴体を撃ったがピンピンしている。
(「止めを刺すのは、俺の役目じゃないからな」)
 倒せなかったのではなく、倒さないよう手加減したのだった。 

 唯那は、公園の入り口付近で長弓を番えると『鋭覚狙撃』を使用して援護攻撃しながら包囲からの逃走を阻止し、弾頭矢でファイアーマウスの足元を狙い撃ち、バランスを崩した。
「逃がしませんよ!」
 ラルスは、仲間の行動阻害しないよう射線に注意しつつ、逃走経路を塞ぎながら援護射撃。

「ブロークン・クラッシャー、アイツを正面から殴ることできるか?」
 俺と一撃離脱の連携しようぜ? と持ちかける武流に無言で頷くブロークン・クラッシャー。
 かつて、武流のみぞおちに食らわせた強烈なパンチをファイアーマウスに叩き込んだブロークン・クラッシャーは、炎弾を予測して素早くバックステップ。
 それと入れ替わりに、武流が刹那の爪を使った連続蹴りを中心に攻撃しつつ、アーミーナイフで牽制。
「直接打撃が効かないなら、効くまで叩き続ける!」
 何度も攻撃を繰り返す武流。
 二人の連携に加わったシャロンは、間合いを取りつつ『流し斬り』で攻撃しながらも包囲を維持。攻撃しては、間合いを取ることを心がけてることを忘れずに。
「チョロチョロ動き回んな! ウザってぇ!!」
 暁恒は『旋風脚』で横へ横へと回り込み、隙あらば『急所突き』で目や脚の付け根を狙い、動きを制限させようと試みている。

 能力者とブロークン・クラッシャーの連携攻撃は、即席とは思えないほど息がピッタリだった。
 その中でも特に息が合っていたのは、以前、わがかまりがあった武流とブロークン・クラッシャーだった。
 ファイアーマウスはあともう少しで倒せる、というところで、能力者達は攻撃を止めた。
「おまえ達、何を考えている!? キメラ戦の最中だぞ!」
 戦う気力を失ったか! と喋り続ける彼を制止したのは

「マリガン殿! この禍根、汝の手で断ち切れ!」

 という赫月の一言だった。
「テメェも、やられっ放しは性に合わないんじゃねぇか? ケジメは、テメェできっちりつけな。とどめはテメェに任せる‥‥。大切な場所を荒らされた分、やり返せ‥‥」
 能力者達は、皆、同じ考えだったため微動だにしなかった。
「そうか‥‥。それじゃ、遠慮無く叩きのめす! 最初の一撃は、ビッグママの無念を晴らす分!」
 一撃目が、ファイアーマウスの両手首を切断した。
「次は、親兄弟を失った子供達の分!」
 二撃目で両目を潰した。暴れまわるファイアーマウスの足元めがけ、弓、銃を持つ能力者は地面に向かって放ち、動きを止めた。
「最後は‥‥俺と共に戦った仲間達の分だっ!!」
 最後の懇親の一太刀は、ファイアーマウスを真っ二つに!

●思い出の場所修繕
 ファイアーマウス攻撃時は、公園周囲が火災に巻き込まれないかと心配されたが、消防団の懸命な活動により、免れた。
 孤児院の被害は‥‥院長室全焼、孤児達の寝室、遊戯室が半焼半壊だった。
「孤児院、直さないといけないな‥‥。せめて、子供達が寝る場所くらいは確保しとかねぇと。院長は‥‥残念な結果だったけど、子供達は無事だったんだ。そんな子達に、復習のために戦わせようとするなよ?」
 俺がおまえにやったみたいにな? と、ブロークン・クラッシャーの背中を叩いて笑って言う武流。
 そんな彼に対し「ああ‥‥」と返事をするブロークン・クラッシャーだった。
「マリガン、汝は生きなくてはならない。院長亡き後、子供達を守るのが汝の勤めであろう?」
 それに対しても、武流同様の返事をするブロークン・クラッシャー。
 
 数時間後に行われた寝室、遊戯室の修繕は、能力者達も率先して手伝った。
「コレ‥‥こっちで良いのか‥‥?」
 子供達の相手はしたくないからと、修繕を手伝う暁恒は、材料運びを担当。
「壊すのは易いが、直すというのは難しいことだ‥‥」
 遊戯室の壁の修繕を手伝っている赫月は、慣れない作業に苦戦中。

 その頃、ラルスは子供達と共に、これ以上、悲しみが命を奪わないよう院長の冥福を祈っていた。全焼した院長室の前には、子供達が摘んできた花と、ラルスが子供達のお土産にと持ってきたチョコレートケーキを備えた。
「哀しい時こそ食べて〜、お腹が空くという事を〜忘れないで下さい〜。空腹は〜生きているということです〜」
「ビッグママも、天国でおなかすかせてるの?」
 そう尋ねる子供の一人に、ラルスは「天国にいても〜お腹は空きます〜」と答えた。
「皆が揃ったら〜ケーキを食べましょうね〜」
 はーい! と元気良く返事をする子供達を見て、ラルスは微笑んだ。
「皆〜私達と遊びませんか〜?」
「俺は遊びのプロなんだぜ? だから、退屈な思いはしないぜ」
 唯那と煉威の誘いに応じ、子供達は公園に向かって走り出した。

●すべてが終わり‥‥
 修繕作業は、能力者、近辺住民の協力の甲斐あり一日で終わった。
 ラルス持参のチョコレートケーキを食べながら、その日一日の疲れを癒し、互いの労をねぎらった。
「ラスト・ホープへの報告はこっちでしておくから、ブライアンは子供達の傍にいてあげて。トヲルと唯那は、思わぬ初依頼になったわね。お疲れ様」
「そんなことない! ボクにとっては、良い経験の初仕事だったよ!」
「私も同じです。大変でしたけど、孤児院と子供達を守るお手伝いができて良かったと思います!」
 トヲルと唯那にとって、初依頼は忘れられない良い経験となっただろう。
 煉威は‥‥子供達と遊んだことで疲れたのか、眠たそうな顔をしながらチョコレートケーキを食べている。
「オイ、破壊傭兵‥‥あんま、ムチャすんなよ‥‥。こいつらの頼りはおまえだけだ‥‥。くたばっちまったら‥‥元も子も無ぇんだからな?」
 美味しそうにチョコレートケーキを食べている子供達を見ながら、暁恒はブロークン・クラッシャーに忠告した。
「言われなくてもわかってる。ビッグママ亡き今、あの子達を守れるのは俺しかいないからな」
 フッ‥‥と、自然に笑みがこぼれるブロークン・クラッシャーを見て「おまえ、笑えんじゃん」と武流が茶化す。

 帰り際、ラルスはある提案をブロークン・クラッシャーに持ちかけた。
「今後の孤児院運営ですが‥‥『依頼』を出し、運営案等協力募集してはどうでしょうか〜。傭兵にはお人よしも多いですから〜無報酬でも人は集まると思います〜。人が集まれば知恵も集まる‥‥そして皆に〜、力を与えてくれるのではないでしょうか〜」
 おまえみたいにか? と笑っているブロークン・クラッシャーに「そうですね〜?」と誤魔化すラルス。

 ブロークン・クラッシャーことブライアン・マリガンの育ての親は守れなかったが、大切な子供達は守り抜くことができた。
 孤児院、院長室は新しく作り直せば良い。
 思い出は‥‥壊れもするが、新たに作ることもできる。
 ブロークン・クラッシャーの思い出の場所のように。

 能力者には、今後も『思い出』を大切にして欲しい。