タイトル:カップル撲滅しようるでマスター:竹科真史

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2008/04/04 05:28

●オープニング本文


 中国地方の市内で、カップルが襲われる事件が多発している。

 女子高生の柊千尋(ひいらぎ・ちひろ)は、同級生で道場を経営している祖父のもとで剣術の修行中である幼馴染みの門下生、琴村丈(ことむら・じょう)と付き合っている。幼稚園の頃からの腐れ縁なので、祖父、両親公認のカップルである。
 丈の稽古が休みの日を利用し、二人は市内の映画館に向かい、千尋が前から見たがっていたサスペンス映画を観て、その後、ファーストフード店で腹ごしらえをし、ゲームセンターで遊んだ。
 そこまでは順調だったが‥‥問題は、帰り道だった。
 時刻は午後6時を過ぎていたが、辺りはすっかり暗くなっている。
「すっかり遅くなっちゃったね。おじいちゃん、怒るかなぁ?」
「さあ、どうだろうね」
 二人が楽しそうに会話しながら千尋の家に向かう途中、目の前に突然、180センチくらいはあるだろうと思われる大きな木製しゃもじを持った羽衣を纏った天女、あるいは女神のような女性が、天から舞い降りたようにフワリと二人の目の前に現れたかと思うと

『カップル撲滅しようるで!』

 と叫び、丈に襲い掛かった。
 剣道では県内五指に入る実力の丈だが、素手での格闘は苦手だった。
「ぐはあっ!」
「丈っ!」
 丈は、あっさりと女神の特大しゃもじ攻撃を喰らい、遠くまで吹っ飛ばされたかと思うと、壁に激突したショックで、肩を痛めた。それでも、女神が容赦なくしゃもじで「これでもか!」といわんばかりに叩きのめしていた。
「あんた、丈に何てことすんのよっ!」
 千尋は、電柱の側に置いてあるゴミ箱のフタを盾代わりにして女神に挑んだが、勝ち目などあるわけが無い。

『カップル撲滅しようるで!』

 女神はそういうと、千尋の後頭部をしゃもじで叩いた。そのショックで、千尋は気を失った。

 千尋と丈が襲われたことを警察からの連絡で知った両親と祖父の四十七(よそしち)、丈の両親は、慌てて二人が搬送された病院に向かった。
 病院のベッドに横たわっている千尋は軽い脳震盪で気を失っているだけだが、丈の容態は、右肩脱臼、全身打撲という酷い有様だった。
「お嬢さん達が襲われたことで、被害者は13組目となります」
 両家に連絡した刑事は、千尋の両親、四十七、丈の両親にそう説明した。
「‥‥ということは、千尋達は、新聞で報じられている謎のカップル襲撃事件に巻き込まれたのですか!?」
「そ、そんな‥‥! 丈‥‥」
 泣き崩れる千尋と丈の母に「残念ですが、そうです‥‥」と項垂れていう刑事。
「この事件に共通していることは、女性の被害はたいしたことはないのですが、いずれも男性が重症ということです。我々としては、カップルに怨恨を持つ何者かの犯行ではないかと睨み、その線で捜査しています。目撃者の女性の話だと、巨大なしゃもじを持った女神のコスプレをした女性だそうですが‥‥」

 女神のような女性。

 刑事からこのことを聞いた四十七は、その犯人がバグア、あるいはキメラでは無いかと睨んだ。
「刑事さん、その事件はあんたらでは解決できん! 儂の孫は‥‥キメラに襲われたかもしれんのじゃ!!」
「キメラ‥‥?」
 刑事は、その単語を耳にしたことはあるが、どのようなものかは詳しく知らなかった。
「あんたらはアテにならんわい! 能力者達に、この事件を解決してもらう!」
 そう言うと、四十七は依頼斡旋センターに向かった。

●四十七じいさんの依頼
 孫娘、千尋と弟子の丈を襲った女性型キメラと思われるモノの退治。

「頼む! 儂の可愛い孫と大事な弟子の敵討ちをしてくれっ!!」

●参加者一覧

ドクター・ウェスト(ga0241
40歳・♂・ER
鳴神 伊織(ga0421
22歳・♀・AA
赤霧・連(ga0668
21歳・♀・SN
愛輝(ga3159
23歳・♂・PN
緋室 神音(ga3576
18歳・♀・FT
木花咲耶(ga5139
24歳・♀・FT
シエラ・フルフレンド(ga5622
16歳・♀・SN
旭(ga6764
26歳・♂・AA

●リプレイ本文

●容態確認
 赤霧・連(ga0668)は、キメラに襲われ入院している柊四十七の孫、千尋と幼馴染みの丈の容態を確認するために病院へ。
「依頼人のおじいさん、キメラ退治に我先にと飛び出しちゃいそうな覇気なので心配です」
 四十七は、依頼要請時からかなり憤っていた。ご老人とはいえ、血気盛んな彼は仇討ちにとキメラ退治に挑むかもしれない。
 受付で二人の病室を訊ねると、千尋は既に退院、丈は303号室にいると教えてもらった。
 丈の病室は二人部屋だが、彼しかいないので個室状態。顔面以外、全身包帯巻きの痛々しい姿だった。丈の側には、心配する母親と、彼を見守る四十七がいた。
 四十七に様子を窺おうとしたが、連は二人に気づかれないようにそっと立ち去った。
(「あんな酷いことを‥‥許せません!」)

●弁財天撲滅作戦
「あのキメラを作成したバグアは、一体何を考えたのやら‥‥」
 溜息をつき呆れる緋室 神音(ga3576)。
「カップル撲滅が目的でしょう。カップルがいなくなれば結婚する男女がいなくなり、子供が生まれなくなります。つまり、このキメラは遠回しに子供を攻撃しているわけですね?」
 子供好きである旭(ga6764)は、深読みすると「許せません。何とかしなくては」と意気込む。
「巨大しゃもじで人を叩くという行為を行う女神様を造るとは‥‥バグアのセンスを疑いますわ。神に仕える巫女たるわたくしにとって、この行為は神仏を愚弄するも同然です! そのような輩は断じて許しません!」
 普段は物静かな木花咲耶(ga5139)が、珍しく怒っている。
「カップルを襲うキメラですか‥‥。弁財天を模したようですが、解釈が色々と間違っている気がします。琵琶がしゃもじになっていたり‥‥。弁財天は、元はインドの河の神なんですよ」
 鳴神 伊織(ga0421)がいうように、弁財天は河川と豊穣の女神であり、芸術、学問等、知を司るインド神話の女神だが、七福神の一柱(神を数える単位)でもある。

 しゃもじと、弁財天の琵琶のつながりを説明しよう。
 しゃもじとは、米飯をよそう時に使用する先端が楕円形に広がったへら状になった薄板で、材質は木や竹、合成樹脂などといった硬いが、やや柔軟性のある素材で作られいる。
 語源は、柄の先に皿形の部分が付いた道具の『杓子(しゃくし)』の『しゃ』に接尾語の『文字』が付いた女房言葉だったが、時代が経るにつれ『しゃもじ』に。
 日本三景のひとつである安芸の宮島(厳島)の名産品はしゃもじ。
 その理由は、宮島の光明院の修行僧が主たる産業がなかった宮島のために「弁財天が持っている琵琶と形が似たしゃもじを参拝のみやげとして売り出してはどうか」と島民に薦めたことを起に、という説が。
 そのことで、しゃもじそのものを「宮島」と呼ぶこともあり、『商売繁盛』等の文字が染め抜かれた飾りしゃもじが工芸品として製作されている。
 弁財天キメラを作成したバグアが、このことを知っているのかは不明だが。

「あまり気にしてもキリがありません。これ以上、被害者を出さないために早く解決しましょう」
 頭が痛いです、とこめかみに手を当てる伊織。

「けひゃひゃひゃ、我が輩はドクター・ウェスト(ga0241)だよ〜。私設研究グループのウェスト(異種生物対策)の研究所所長だ〜。フォースフィールド無効化の研究に着手しているが、研究対象は多岐にわたっているよ〜」
 ウェストは、弁財天型キメラの調査結果を報告。
 襲われたのは、千尋と丈を含めて13組目であり、いずれも男性が重傷であるというのは報告済みだったが、襲われた場所が公園、デートスポットという追加情報を報告。
 千尋と丈が襲われたのは、人気の無い児童公園の前であった。
「作成したバグアにしてみればカリカチュアなのだろうけど、人型キメラはこんなのばっかりかね〜? 以前、我が輩が遭遇した珍妙な人型キメラを研究して思ったんだけどね〜」
 調査報告を終えたウェストは、能力者の誰かが囮のカップルとなり、弁財天キメラをおびき寄せてはどうだろうという案を持ち出した。
「その役目、俺が引き受ける」
 愛輝(ga3159)が立候補すると「わたくしもお受け致します」と咲耶が申し出た。
 こうして、愛輝と咲耶が囮の恋人役に決まった。

「遅くなってすみません〜! UPCで無線機を借りるのに手間取り遅れました〜!」
 周波数を調整できる8台の無線機を抱えながら、シエラ・フルフレンド(ga5622)が能力者達に駆け寄ると同時に、病院に行っていた連も合流。
 四十七がここに来た理由は、バイク2台の貸し出し許可が申請されたので受け取ったのは良いものの、運ぶのに困っていたところを四十七が目撃し、キメラ退治にバイクを使うと連が言ったところ「ワシも協力するぞい!」ときかなかったからだ。
「ここに来る前に、四十七さんと一緒に警察に協力してくれるようお願いしました。無線連絡で様子を報告、という条件付きですが」
「おまえさん達が、孫と門下生の仇討ちをしてくれる能力者達じゃな? 頼む! ワシの代わりに二人の敵を討ってくれ!」
 必死に頼む四十七に、能力者達は『足手まとい』とは言えなかったので、誰かと一緒に行動するという条件で協力を承諾した。
「連さん、千尋さんと丈さんの状態はいかがでしたの?」
 咲耶の問いに、連は「千尋さんは既に退院。丈さんは‥‥見ていてすっごく痛々しかったです」と報告。
「酷いですね〜。私達で、丈さんを痛めつけたキメラを倒しましょう〜!」
 無線機を能力者に渡しつつ、シエラは張り切った。
「愛輝君、咲耶君、囮カップル宜しく〜。その周辺を適当に歩いてね〜」
 コクンと頷く愛輝と咲耶。四十七は、連と共に行動。

 二人を囮としたカップル襲撃作戦、開始!

●囮作戦実行
 愛輝と咲耶は、カップルに見えるように手を繋いで歩いているが、二人の様子は初々しい。
 通り道にある店舗のショーウィンドウにある商品を見たり、近くの売店の民芸店にある商品を買って渡したりと、仲が良いカップルを自然に振舞っている。
「愛輝様、二人で観た映画はロマンティックでしたわね?」
「あ、ああ‥‥そうだな」
 愛輝に庇われながら、咲耶は周囲の気配を窺いつつ慎重に移動している。

 その他の能力者達は、各自の待機場所でスタンバイ。

 ウェストは、待機班の中では二人に最も近い位置で見張っていたところ、一般カップルが通りがかったため「キメラに襲われないよう、気をつけてね〜」と忠告したが、二人はそれを無視して二人の世界に入り込んでいて無視。ウェストはアウトオブ眼中状態。
「襲撃事件が話題になっているというのに、危機感がまったくないね〜。ああいうのが所謂『バカップル』というやつかね〜?」
 イチャイチャしながら通り過ぎたカップルを見て、研究所でフォース・フィールド無効化の研究をしていたほうがマシだね〜と思うウェスト。
「こちらドクター・ウェストだよ〜。今、バカップルが通り過ぎたから、囮のついでに見張っておいてね〜」
 ウェストは無線機を取り出すと、仲間に連絡した。

(「囮の方々は大丈夫でしょうか‥‥」)
 滅多打ちにされてなければ良いのですが、とウェストと別の場所で待機しながら心配する伊織。

 ウェストが報告したと思われるバカップルが、連と四十七の前を通り過ぎた。
 ここまで無事に来たところを見ると、弁財天キメラがまだ出現していないということだろう。
「四十七さん、後は私達に任せてください!」
「任せるぞい」

 神音は待機しながら、愛輝と咲耶のいちゃつき振りを観察、もとい、周囲の警戒を怠っていない。彼女と共に待機している旭は、ウェストの情報、連が警察から聞き出した情報を照らし合わせ、児童公園付近を待機ポイントに選んだ。
 神音と話し合った結果、二人が出した結論は『警察に児童公園周辺一帯を一時封鎖を要請』だった。
 旭は無線を取り出すと「これ以上、カップルの被害が出ないよう一時封鎖をお願いします」と、警察に協力を要請。警察はカップル襲撃を防ぐべくそれに応じ、至急、周囲を封鎖するよう手配すると返信。

「心配なので私も見張ります〜」
 シエラが待機しているのは、神音と旭の待機ポイント付近にある児童公園のキリンさん滑り台の上。高所から双眼鏡で周囲の見張りを180度見渡して行っている。

 待機班全員、愛輝と咲耶の無事を祈りながらも、いつ弁才天キメラが出現しても良いようにと準備しつつ、無線でこまめに連絡を取り合っている。

 愛輝と咲耶が児童公園付近に差し掛かった頃、何かがフワリと宙を舞った。
「何だ?」
 愛輝が星空を見上げると‥‥そこにいたのは、羽衣を纏った天女姿の女性。手には、大きな木製しゃもじを持っている。
「皆様、キメラが出現しました! 至急、わたくし達のところに集まってください!」
 咲耶が、無線機でキメラ出現を待機班に報告。
「こちらシエラですっ! キメラが出現しましたっ!」
 咲耶とほぼ同じタイミングで囮が狙われたのを確認したシエラも、無線で待機班に報告。

●嫉妬の女神登場
 弁財天キメラは、両手でしゃもじを強く握り締めると愛輝めがけて急降下!

『カップル撲滅しようるで!』

 美しい声だったが、男性に対する怒りがこもっている。
「咲耶さん、下がってください! あなたを守るのが、俺の役目です!」
 弁財天キメラに怪しまれないようカップルを装い続ける愛輝は、弁財天キメラのしゃもじが振り下ろされる寸前に素早く避けた。
「女神のように美しいな。美人は嫌いじゃないが、性格ブスに興味は無い」
 仕留め損ねたことで、弁財天キメラは怒髪衝天状態! 艶のある美しい黒髪を結っていた紐が解けると、長い髪が蛇が動いているかのようにウネウネと動いている。
「弁財天様のお姿をした偽物を語る不届き者は、わたくしが成敗いたします! お覚悟を!」
 氷雨を構え、戦闘態勢をとる咲耶。

 待機班達が二人の下に駆けつける間、弁財天キメラが何故カップルを襲撃するのかを説明しよう。
 弁財天に限らず、女神は『嫉妬深い』と言われている。男性が、自分の美貌に見向きしないからとのこと。
 そのため、男女が女神が奉られている神社に参拝に行くと別れる、とある公園の池にあるボートにカップルが乗ると別れる、というジンクスがあるのはこのためだ。
 女神の中でも特に嫉妬深いのが、今回のキメラである弁財天である。

 一番最初に駆けつけたのは、バイクに乗った連と四十七だった。
(「四十七さんが、バイクの免許を持っているというのは驚きました」)
 機械オンチだが、大型バイクと普通自動車免許を取得している四十七。
「あやつがワシの孫と門下生を襲ったキメラか!」
「四十七さん、安全な場所で私達がキメラを倒すのを見届けてください! お孫さんの敵は、私達が討ちます!」
 連はバイクから素早く降りると、長弓「鬼灯」を手にして愛輝、咲耶に加勢。
「他人の恋路を邪魔するなんて邪悪すぎますっ! あなたなんかに春に相応しくありませんっ!」
 覚醒しながら主張するシエラは、弁財天キメラの後ろに回りこむと頭部めがけて『強弾撃』で攻撃。その一矢には、彼女の想いと集中力がこめられていた。

「お待たせしました。この付近一帯ですが、警察が封鎖していますので一般人の被害は心配ありません。思う存分、キメラ退治といきましょう!」
 旭の報告に、気兼ねなく弁財天キメラを倒せると安心する能力者達。

『カップル撲滅しようるで!』

 弁財天キメラが旭に襲いかかろうとしたが、駆けつけた伊織の月詠、氷雨による連続攻撃で体勢を崩した。
「何と言えばいいのか‥‥あれを作成したバグアの考えは本当に判りません‥‥。時間をかけず、一気に攻撃させていただきます」
 月詠と氷雨を構え、弁財天キメラを見据える伊織。
「やっとで追いついた〜! 待たせたね〜!」
 ウェストが到着したので、能力者は一斉攻撃を開始。

●キメラ撲滅しようるで
「皆、頑張ってね〜」
 ウェストは『練成強化』で全員の武器を強化すると同時に、『練成弱体』で弁財天キメラを弱らせた後にエネルギーガンで攻撃。
 連は奇襲に備え『隠密潜行』で気配を消し、隠れながら囮二人を護衛しつつ攻撃。
「おネンネの時間です。良い夢を‥‥」

 旭は、スコーピオンで弁財天キメラの羽衣を狙い撃ち。これにより羽衣はズタボロになり、空中回避不能に。
「羽衣が無ければ、飛べないのはお約束です」
 後は、陸上戦で一気に叩きのめすのみ!
 弁財天キメラは、再び愛輝を巨大しゃもじで叩きのめそうとしたが、愛輝は瞬時に避け、素早くルベウスで反撃。ルベウスの爪先を突き刺したり、引っ掛けたりして、しゃもじの破壊を試みたが、破壊は容易ではなかった。
「こうなったら‥‥」
 しゃもじ破壊をやめ、弁財天キメラの両腕に攻撃を切り替え、武器を扱えないようにした。
「爪は引っ掻くだけの道具だと思ったら大間違いだ!」
 愛輝が『瞬即撃』で本体を狙うと同時に、咲耶が『急所突き』で、弁財天キメラを攻撃。
「囮とはいえ、カップルなので息がピッタリだね〜」
 ウェストの茶化しは、二人には聞こえていないようだ。
 駆けつけると同時に覚醒した神音は、『豪破斬撃』『紅蓮衝撃』を使用した後『二段撃』で息つく暇も無く連続攻撃。
「抜く前に斬ると知れ‥‥剣技・桜花幻影(ミラージュブレイド)!!」
 神音の華麗な剣技が、弁財天キメラに止めを刺した。

『カップル撲滅しようるで!』

 断末魔の声もこれとは‥‥。
「咲耶さん、怪我はありませんか?」
 愛輝が、咲耶を気遣う。咲耶の衣服や髪は乱れておらず、汚れてもいない。無事な証拠だ。
「無事で安心しました。お疲れ様でした」
「愛輝様も、お疲れ様でした」
 囮作戦は終了したのだが、まだ恋人気分が抜けていない二人だった。

「やったね〜。さってと〜サンプル回しゅ‥‥なんでもないのだよ〜♪」
 弁財天キメラが倒れたのを確認し終えると、ウェストは弁財天キメラを持ち帰ろうとしたが‥‥UPCからのお咎めが怖いので、渋々あきらめることに。

「皆、ワシの孫と門下生の仇討ち、ありがとう。これはささやかではあるが、ワシからの礼じゃ。受け取ってくれ」
 四十七は、能力者達に紙袋を手渡した。
「あの‥‥これは‥‥」
 咲耶が手にしたのは、長くて白い布だった。
「何って、ふんどしに決まっておるだろうが。武士たる日本男児の象徴じゃ!」

 あの〜女性能力者もいるんですが‥‥。

「おじい様が折角くださったのですから、皆様、ありがたく頂戴致しませんか?」
 咲耶の言葉に伊織、連、神音、シエラは、苦笑しながら礼を述べた。
「ありがとうよ、お嬢ちゃん。あんたは、女神様じゃ!」
 どさくさに紛れ、心優しい咲耶の手を握り締める四十七。

 カップル襲撃キメラ退治:成功!!