タイトル:厚き氷の壁撃破!試合編マスター:竹科真史

シナリオ形態: シリーズ
難易度: やや難
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2008/04/27 06:15

●オープニング本文


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 UPC中尉のソウジ・グンベだ。
 練習に参加した『能力者チーム』のメンバーの皆、ご苦労様。
 疲れているだろうから、今はゆっくりと休養してくれ。
 俺の指令、ちゃんと見てるか? 居眠りしてんじゃねぇだろうな?

 バグアと化した『厚き氷の壁』の異名を持つ凄腕ゴールキーパー、マイク・ハワード撃破を兼ねた交流試合だが、4月の第二日曜日に行うことが決まった。カレンダーに要チェックだ!
 ミネソタ・タフネスの選手陣だが、スターティングメンバーで臨むよう、俺が要望した。
 そうしないと、撃退すべき相手、マイク・ハワードが出場しないだろう?

 ポジションも決まったことだし、後は来るべき決戦に向けて特訓するのみ!
 それまでクロード選手、氷上選手、テリー選手が引き続きコーチとして指導してくれる。
 基本と応用を繰り返して練習、ミニゲームを行う。厳しいから覚悟しろよ。
 監督代行はルールの勉強、看護士は応急手当ができるようにすること。
 出場しないとはいえ、キミ達もメンバーの一人であり、重要な戦力だ。

 これから、試合に関して説明するからよーく聞くように。

●ソウジ監督による(自称・初心者に優しく親切な)アイスホッケールール説明
 試合形式は、ホッケーリーグのルールに則る。
 制限時間は各ピリオド(=試合)20分、その後、15分の休憩。
 休憩時間中は、製氷車両がプレーで荒れたリンクの表面を整備。
 第1ピリオド、第2ピリオド、第3ピリオドの合計得点の多いチームが勝ち。
 第3ピリオドが終了しても同点の場合は、5分間のサドンビクトリー方式(=サドンデス。先に得点したチームが勝ち)による延長戦になる。
 それでも勝敗がつかない場合は、ゲームウィニングショット戦(ペナルティショット戦)で勝敗を決める。
 サッカーのペナルティキックと同じもんだと思ってくれ。
 相手ゴールにパックを入れれば1得点獲得。
 ゴール裏の赤ランプが点灯するので、これを見れば得点獲得が確認できる。
 これは基本中の基本だからよーく覚えておくように!

 審判は黒白の縦縞のシャツを着た3人組。オレンジ色の腕章が目印のレフェリー1人、ラインズマン2人。
 反則があるといろんなポーズで知らせる。
 ペナルティをとられた選手は決められた時間、試合から外れてぺナルティボックスに入ることになる。
 ペナルティボックスは、お仕置き部屋みたいなモンだと解釈してくれ。
 その間、そのチームは少ない人数で戦うことになるから、ペナルティには気をつけろよー。
 人数だが『ミネソタ・タフネス』も能力者チームと同じだ。これは、監督の提案でもある。
 自分達だけが、自由に選手交代するのは不公平という気遣いからだろうな。
 通常のアイスホッケーは、ピリオド中であれば自由に選手交代ができる。
 ベンチの選手合わせて、最大22人だからな。
 審判は、NHLの判定を行っているレフェリー、ラインズマンに頼んである。
 プロの審判だから、指示に従うように。
 反則は、マイナーペナルティとなる。
 ペナルティを取られた選手は、2分間ペナルティボックスに入るように。

 相手の反則によっては、ゴールキーパーと1対1でシュートできるチャンスが与えられる。
 これがペナルティショットだ。
 シュート成功率はあまり高くないため、代わりに2分間のパワープレイを選択することも可能。

 攻撃側の選手は、攻撃するためにアタッキングゾーンに入る時にパックより先に入ることができん。
 攻撃側の選手がパックより先に入った場合はオフサイドになるから要注意!
 オフサイドの状態でも、守備側の選手がパックをキープできそうな時はプレイ続行。
 審判はオフサイドの状態であることを合図するだけで、試合を止めることはない。
 これを『ディレイド・オフサイド』と言う。
 ディレイド・オフサイドの場合、守備側の選手がパックをニュートラル・ゾーンに出すとオフサイドが消滅。
 また、オフサイドをした選手が、一旦ブルーラインに戻るとオフサイドの状態が取り消され、試合はそのまま続行。ラインズマンの腕が降ろされるのが合図だ。
 オフサイドをした選手が、守備側の選手を妨害したりパックを奪おうとした場合もオフサイドが適用される。

 まぁ、こんなもんかな?

 最後に、マイク撃破について説明する。
 ピリオド中、休憩中問わず、マイクがバグアとしての本性を表した場合は、即ベンチに戻り、各自SES搭載武器を装備するように。
 この交流試合だが、非公開なので観客はいないので護衛対象はミネソタ・タフネスの選手と監督、コーチ、唯一の観客であるオーナーのみだ。
 マイク撃破は困難を極めるだろうが、戦地に赴いたことがあるキミ達ならできると俺は信じている。

 後は‥‥何も言うことは無い。
 監督である俺、ソウジ・グンベからの伝達事項は以上だ。

●参加者一覧

ノエル・アレノア(ga0237
15歳・♂・PN
御影・朔夜(ga0240
17歳・♂・JG
ヴァルター・ネヴァン(ga2634
20歳・♂・FT
クリストフ・ミュンツァ(ga2636
13歳・♂・SN
リュイン・グンベ(ga3871
23歳・♀・PN
那智・武流(ga5350
28歳・♂・EL
ラウル・カミーユ(ga7242
25歳・♂・JG
阿木 慧斗(ga7542
14歳・♂・ST

●リプレイ本文

●ミーティング
『ミネソタ・タフネス』本拠の控え室。
 交流試合選手の能力者6名、監督代行の御影・朔夜(ga0240)、看護士の阿木 慧斗(ga7542)は、ソウジを囲んでミーティングを行っていた。
「いよいよ、マイク撃破を兼ねた交流試合だ。正体を明かすまでは、フェアプレイで試合に臨むように。キャプテンは、ローテーション制を導入する。第1ピリオドはクリストフ・ミュンツァ(ga2636)、第2ピリオドはラウル・カミーユ(ga7242)、第3ピリオドはリュイン・カミーユ(ga3871)」
 センターフォワードのクリストフは、自分が最後までキャプテンかと思っていたが、それを聞いて安心した。
「あの‥‥マイクさん撃破時のサイン決めませんか? そうすれば万全だと思います」
 ノエル・アレノア(ga0237)の提案に、それもそうだなと納得するソウジ。
「俺も賛成だ。異変を見せた際には、定めたキーワードで知らせるべきだろう」
 監督代行の朔夜の提案に納得する選手達。
「誇り高き『厚き氷の壁』は、リンクの上で砕かれるべきだ‥‥か。熱いな、ソウジ。その熱に感化された我らも同様か。汝の望み通り、リンク上で砕いてやろう。それがせめてもの弔いだ」
「アイスホッケー知らないド素人の俺だが、マイクを弔ってやりたい」
 レフトウィングのリュインとゴールキーパーの那智・武流(ga5350)は気が合うな、という感じで意見を述べた。
「どんな存在にも『最期の場所』ってある気がする。猫が誇り高く孤高に逝くように、人は戦場、愛する家族の傍とかで逝く。『厚き氷の壁』のマイクは、リンクの上でネ」
 そーゆー気がするヨ、と、明るさを抑えて言うラウル。
「過去がどうであれ、今は、人に仇なす存在の者を放っておけない。マイクさんの過去を語っていいのは、ソウジさんだけだよ」
 阿木 慧斗(ga7542)の言葉に、ソウジは何の反応も示さなかった。

「僕達は無名なので、データが相手知られていないのが強みでしょうか。知っているとしても、僕達を指導してくださったクロード選手、氷上選手だけでしょうが。いかにして守りの壁を崩すか、というのがポイントでは」
 計算高いクリストフの戦略論。
「クリストフ様のことを信じとらん訳やありませんが、私達は、なかなか点を取らせてはもらえぬのでと思うでおざります。点を取られれば、それをひっくりかやすのは更に厳しいでおざる。私は、防御の方に力を尽くすことに致するでおざる。味方のシュートチャンスの時も、常に相手のカウンターは警戒し、即座に対応できるよう事前に行動するよう心がけるでおざる」
 主と同じディフェンダーのヴァルター・ネヴァン(ga2634)も、同じ意見のようだ。
「我は積極的に攻めるぞ。クリス、ラウルにパスを集め、スナイパー十八番の射線読みでゴールを狙う」
「僕もリュンちゃん同様、積極的に攻める。前衛でのパックカットは出来る限りネ」
 カミーユ兄妹は、考えることは同じだった。
「俺は防御重視だ。腕使っても、脛使っても絶対に止めてみせるぜ!」
 ポジション決定時は文句を言っていた武流だが、本番となると大張り切り。

 ベンチ入りの際、能力者達は各々の武器を上手いこと隠して、慧斗は、休憩中に選手達に差し入れする飲食物に紛れて武器を持ち込んだ。
「邪魔するぜ」
 練習の際コーチを引き受けた『ミネソタ・ワイルド』のキーパー、テリーがベンチにやって来た。その後ろには、ヘッドコーチだったフォワードのクロード、ディフェンスの氷上が。
「いよいよきみ達と試合か、良い勝負をしよう」
「こちらこそ、宜しくお願いします」
 クロードはそう言うと、ユニフォームにキャプテンの証であるCマークがついたクリストフに握手。
「そっちのスタメンにクロード選手、氷上選手はいるんだろうな」
 ソウジの質問に、もちろんと答える氷上。
 キャノンフォワードの異名を持つ攻撃重視のクロード、守りの要である氷上は、選手達の強敵となるだろう。それ以上なのは、かつての『厚き氷の壁』のマイク・ハワードだが。
「では、これで。手加減しないから、そのつもりで」
 去り際に言った氷上の台詞に選手達は、ますます闘志を燃やした。

●Period1
 リンク右側は能力者チームゴール、リンク左側は『ミネソタ・タフネス』のゴール。
 フェイスオフスポット(中央の円)内で、両足を肩幅までに広げ、スティックを下げて構えるクリストフは、レフェリーの手を見ながらパックがいつ落ちるかをじっと見ていた。
 レフェリーのホイッスルと同時にパックが落とされたが、取るタイミングを誤ったククリストフはクロードに奪われた。
「プロには敵いませんね。でも負けません!」
 クリストフは気を取り直すと、クロードの後を追いかけた。スケーティングの練習の甲斐あり、能力者達の速度は増している。
 クロードがライトウィングの選手にパスしようとしたが、チームの紅一点で、スピード、スケーティング技術が一番高く、敏捷が選手一レフトウィングのリュインが、隙を突きパックを奪った。
「クリストフ、いけ!」
「はい!」
 パスを受け取ったクリストフは、アタッキングゾーンに向かった。
 クロードは引き返そうとするが、ノエルとヴァルターがマーク。
 クロードを含めたコーチ陣の練習試合から彼の性格、癖を見抜いたノエルは、クロードはパックを取り返し、反撃に出ると予測。自分達が攻め込んだとしても、向こうには守りが固い氷上がいる。
 案の定、氷上がクリストフをマークしようと接近したが、その前に右隣に近づきつつライトウィングのラウルに気づいたクリストフは、素早くパス。
「リュンちゃん!」
 素早くラウルの隣に回りこんだリュインにパスを受け取ったが、ゴール付近に急いで滑り込んだクリストフに素早くパスをし、ゴールを狙わせた。
「いけぇ!」
 渾身の力を込めてパックをゴールに向かって打つが、マイクがグローブでキャッチ。
 アイスホッケーのゴールは、高さ127センチ、幅193センチと他の競技のゴールに比べると小さい。
 その前に白銀のユニフォーム、恵まれた体格、素早い判断力でセービングを行うマイクがいるので、先取点獲得は至難の業だ。
 これが、マイクが『厚き氷の壁』と呼ばれる所以である。
「厚き氷の壁‥‥ますます壊したくなったぞ」
 ゴール前の厚き氷の壁を見て、ますます闘志を燃やすリュイン。
 能力者達の奮戦もあり。両チームは無得点で終了。

 休憩時、看護士である慧斗は選手達にスポーツドリンクを渡したり、蜂蜜レモンを差し入れしたりした。
「気が利くでおざるな。おおきに」
 ヴァルターは、蜂蜜レモンをひとつ手にすると口にした。ほんのり甘みが、疲れを癒す。
「俺の出番、無かったなぁ」
 スポーツドリンクを飲みつつ、かっがりする武流。

●Period2
 第2ピリオドのキャプテンはラウル。
 クリストフはパックを取ることに成功したため、試合の流れは能力者側が有利となった。
「ラウルさんっ!」
 クリストフは、側にいたラウルに素早くパス。
「僕だって、やる時はやるんだからネ!」
 気合を入れ、パックをキープしながらゴールに向かうラウルだったが、氷上にパックを奪われた。
 ここからは『ミネソタ・タフネス』の本領発揮となり、ディフェンスのノエル、ヴァルターが必死にガードするが力及ばず。
 クロードがシュートを放つが、武流がスティックのブレード(パックを打つ部分)で辛うじて防いだ。
「反撃開始だ!」
 武流は、ゴール付近にいたノエルに素早くパス。ノエルからヴァルター、ヴァルターからリュインへとスムーズにパスが行われた。
 あともう少しでアタッキングゾーンというところで、ラウルが相手選手と衝突。
 ラインズマンはホイッスルを鳴らすと、両手をクロスさせた。『インターフェアランス』という、パックを持っていない選手を妨害したり進行を妨げる反則の合図だ。
 故意でないにしろ、選手の進行妨害をしたとみなされた以上、ラインズマンに従わなければならない。文句を言いながらも、ラウルはペナルティボックスへ。
 これにより、能力者チームはキルプレイ(人数が少ない場合の試合)、『ミネソタ・タフネス』はパワーオフ(人数が多い場合の試合)に。
「皆! ラウルがいなくてもしまっていこうぜ!」
 ゴールにいる武流が大声を出して能力者達を励ます。
 ラウルがいない分、自分達が頑張らなければ、と残りの能力者達はやる気を出した。
 アタッキングゾーン(敵ゴール側)内のフェイスオフスポットで、試合再開。
「ラウルさんの分まで反撃します!」
 クリストフは燃えた。
 それに続けといわんばかりに、リュイン、ヴァルター、ノエルは彼に続いてゴールに向かった。
 リュインが素早くゴールに近づき、至近距離からのゴールを狙ったが、マイクに先読みされスティックで弾かれた。
「いくでおざる!」
 続いてヴァルターがシュートするが、脛のプロテクターで阻止。その後、マイクは素早くレフトウィングの選手にパス。
 ラウルがリンクに戻ることなく、第2ピリオド終了。ラウルだが、第3ピリオドの序盤はペナルティボックスで待機。

「マイクの奴、そろそろ正体を明かる頃かもしれないな」
 ピリオド中にマイクの分析をしていた朔夜は、選手達にあるキーワードを教えた。これが、マイク撃退の合図となる。
 ここまで、両チーム共に6人で戦ってきたので体力は限界に近い。そんな状態でマイク撃破をしなければいけない選手達は、蜂蜜レモンやスポーツドリンクでエネルギーチャージ。
「皆さん、第3ピリオドも頑張ってください。僕は応援しかできませんが」
 気にしない! と慧斗を気遣うラウルと武流。

●Period3
 第3ピリオドのキャプテンはリュイン。
 能力者チームは、ラウルがペナルティボックスにいるため、試合開始40秒は5人で試合することに。
 フェイスオフでパックを取ったクリストフは、素早く接近したリュインにパス。
 これがフィギュアなら、彼女は銀盤を華麗に舞う蝶だが、ホッケーなので蜂のような鋭い攻撃に転じている。
 クリストフとリュインの連携パスを邪魔させないと意気込むノエルとヴァルターは、必死に二人を守る壁に。
 40秒が経過し、ラウルが復帰。
「皆ーごめんネ!」
 ラウルが復帰したことで、能力者達は元気を得た。離れている武流にもそれは伝わった。
 能力者選手の怒涛の快進撃は、プロ選手でも止められなかった。クロード達と練習した成果が発揮された。
「いけぇ!」
 リュインがロングシュートを放つが、勢い余ったのか、マイクのホッケーマスクを直撃!
 加硫処された硬質ゴム製のパックは通常浮き上がらないが、リュインの力がそれだけ強かったということだろうか?

「ソウジ、あいつの様子がおかしい!」
 朔夜がマイクの異変を察知し、ソウジに報告。
「よし! 例の言葉だ!」
「了解! 皆、気合を入れろ!」

『気合を入れろ!』

 この言葉が、マイク撃退の合図だ。
 合図と同時に、マイクのホッケーマスクがいきなり砕けた。パックの衝撃ではなく、バグアと化したマイクの衝撃波によるものだ。
 彼の顔は‥‥既にバグアと化していた。
「厚き氷の壁は砕かれたようだネ」
 ラウルが呟く。
「何してんだラウル! 早くベンチに戻れ! おまえ以外、皆スタンバイ済みだ!」
「今行くよ、朔やん!」
 
●Sudden death
「優勢だからと気を抜くな! 最後まで気合を入れろ!」
 覚醒した朔夜は、スナイパーライフルを構えながら叫ぶ。
 マイクの正体を知っているクロード以外の選手は、かなり冷静さがかけている上体で必死に逃げようとするが転倒。
「落ち着け! バグアと化したマイクは俺らが倒す! あんたらが知ってる『厚き氷の壁』は、とっくの昔に砕けちまったんだよ!」
 選手を一喝する武流は、ホッケーマスク以外の防具は素早い動きができないと即座に外した。
 覚醒状態のヴァルターはバトルアックスでの攻撃、クリストフは、アサルトライフルによる『即狙撃』でマイクの足止めを。
「なっちん、選手達を避難させよう」
 ラウルと武流は、選手達の護衛をしつつ避難誘導。
「今の姿は見るに耐えん‥‥。俺が楽にしてやる」
 マイクがバグアと化した姿を見た朔夜は、既知感を覚えつつ、スケート靴を履くと仲間と合流し、小銃シエルクラインによる『二連射』でマイクを狙撃。

 リンクが荒れているので足場は悪いが、リュインは『瞬天速』で移動の勢いを増加させ、スケート靴のブレードを利用した回し蹴りや拳撃で攻撃。
「リュインさん、お待たせしました!」
 ベンチから蛍火を持ってきたノエルは、リュインに手渡した。
 慧斗は『練成治療』が使用できる範囲まで近づくとスパークマシンαで威嚇攻撃した後、仲間達に『練成強化』を施して補強。
「バグアと化してしまった以上、氷山の一角であろうと打ち砕かせていただきます。それが‥‥僕の想いの力です」
 渾身の力を込め、ロエティシアでマイクを攻撃するノエル。
「リュンちゃん、マイクをやっつけちゃって!」
「頼んだぜ、リュイン!」
 ラウルと武流が、リュインに止めを刺すよう指示する。ノエル、ヴァルター、クリストフもそれに同意。

「皆の熱き思い、たしかに受け取った。では、遠慮なく『厚き氷の壁』を砕かせてもらう!」

 蛍火を構えながら突進したリュインは『急所突き』でマイクの防御力をダウンさせた後、『瞬即撃』で止めを刺した。
「滅多に使わん手だが、厚き氷の壁を砕くには相応しかろう‥‥」
 こうして、厚き氷の壁は打ち砕かれた。

●苦い勝利
 交流試合は、マイク撃破により中止に。『ミネソタ・タフネス』の監督、ヘッドコーチは控え室前でソウジに礼を述べた後、改めて交流試合再開したいと申し出た。
「その申し出、喜んでお受けします。マイク・ハワードがいないのが残念ですが」
 マイク戦で更に荒れたリンクを見ながら、ソウジは寂し気に呟く。

 能力者達は、全員で『ミネソタ・タフネス』の選手を説得するために控え室に向かった。
「俺達を手こずらせるとは‥‥恐れ入ったよ。良い試合だった」
「また、きみ達と試合をしたいものだ」
 クロードと氷上が、礼を言う。
「そん時は、俺がキーパーだぜー。そこのおまえ、二代目『厚き氷の壁』になれるかもしれないぜー?」
「俺がぁ!?」
 テリーの一言に驚く武流。

「マイクのことは、もう過ぎたことだ。これ飲んで元気出せ。きみ達は、バグアと戦う傭兵だろう?」
 そう言うと、クロードは能力者全員に牛乳パックを手渡した。
 ありがとう、と、能力者達は自分を励ましてくれたクロードに感謝した。

 マイクはまだリンクに放置されたままなのだろうか、と気になった能力者とソウジは、リンクに向かったが‥‥そこには、何もなかった。
 仲間のバグアが持ち去ったのだろうか?

 厚き氷の壁は、誰にも知られず、誰にも見られず、完全に消滅した。