タイトル:オキナワ・ホリデーマスター:竹科真史

シナリオ形態: イベント
難易度: 易しい
参加人数: 9 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2012/08/22 01:44

●オープニング本文


●突然の休暇命令
 風祭・鈴音(gz0344)撃破を機に、沖縄は平穏な日々を取り戻した。
 というが、ラルフ・ランドルフ(gz0123)をはじめとするバグアが残っているので、完全に脅威を排除できたわけではない。
 ラルフを含むバグア残党の動向を伺いつつ復興作業の視察を行うソウジ・グンベ(gz0017)だったが、顔色が優れないので、心労が原因ではないかと心配する上官は休暇取得を勧めた。
 6月に婚約者をアメリカにいる両親に紹介するため帰郷を理由に取得したばかりなのにと断ったが、来るべきラルフとの決戦に備え休みたまえと強引に取得させられたのだった。
 いつ、何が起きるかわからないという理由から沖縄離れを拒んだソウジは根負けし、1日だけ取得したのだった。
「俺ひとりじゃ何していいかわかんねえ‥‥誰か誘ってみるか」

●蒼い海を夢見て
 ULTオペレーターのシェリル・クレメンス(gz0076)は、漸く取得できた夏休みをどう過ごそうか考えていた。
「ここに行ってみようかな‥‥」
 自分宛てに送られてきた1枚の写真を見て、沖縄の海を見に行く行くことに。
 ここに行けば、写真を送ってくれた傭兵に会えるかもしれない。そう思って。
 ソウジに案内を頼めないかと考えたが、鈴音撃破の後始末等でそれどころではないと判断したので1人で楽しむことに。
 1日だけではあるが、有意義な休暇を過ごせたら良いなと荷物をまとめる。

 それぞれの休暇は、どのようなものになるのだろうか。

●参加者一覧

/ リュイン・グンベ(ga3871) / 崔 南斗(ga4407) / ルナフィリア・天剣(ga8313) / 風閂(ga8357) / リヴァル・クロウ(gb2337) / オルカ・クロウ(gb7184) / 蕾霧(gc7044) / 紅苑(gc7057) / 高縄 彩(gc9017

●リプレイ本文

●のんびりした休暇
 南の海を見てみたくなって沖縄にやってきた崔 南斗(ga4407)は、空港ロビーにUPC軍人がいることに気付いたので挨拶しよう近づいた。
 その軍人は、婚約者を待つ士官服姿のソウジ・グンベ(gz0017)だった。
「UPC沖縄軍の方ですね。はじめまして、傭兵の崔 南斗といいます」
 突然声をかけられたのだが、挨拶をするのが礼儀とソウジも挨拶を。
「沖縄軍少佐のソウジ・グンベだ。休暇で沖縄に来たのか?」
「はい。グンベ少佐は婚約者さんのお迎えですか?」
 な、何でそれを!? と驚くソウジ。南斗と婚約者は隊での面識があるので、知っていてもおかしくはない。
「これはグンベ少佐に。これは婚約者さんに渡してください」
 と手渡したのは、朝鮮人参と激辛カップ麺。
「中の人参もポリポリ食べられます。冷やすと美味しいですよ。良かったら非常食にどうぞ。辛さは保証するよ」
「あ、ありがとう‥‥」
「それと、デートでしたらその格好は拙いと思います。着替えたほうが良いですよ」
 空港に来る前に沖縄軍本部に立ち寄り、時間が無いので士官服のまま来たソウジだった。
「では、俺はこれで。ゆっくり楽しんでくださいね」

 海と言えばここだろうとスポーツドリンク片手にある程度散策し終えた南斗は、海の家に立ち寄りソーキそばを食べることに。
(こりゃ暑い‥‥見ているより、海に入った方が良さそうだな‥‥)
 扇風機しか冷房がない海の家でのソーキそば食いは無謀だったかも‥‥とちょっと後悔。
 暑さ堪えてソーキそばを完食し、更衣室で水着に着替えパーカーを羽織りタオルを首にかけ、暫し波と戯れる。
「ふう、気持ち良い‥‥」
 足に浸すだけで暑さを凌げる。
 青い空と海、白い砂浜を眺めながら久し振りの自然を満喫。
「バグアが来る前から‥‥いや、人間が現れる前から、空と海の色は変わらないんだろうな」
 空と海、海水浴を楽しむ人々を見て、沖縄の空と海を守ることに命を懸けてきた沖縄軍と傭兵に心から敬意を抱き海の向こうに敬礼。
 そして、自分の勤めを果たそう、余力があれば微力であるが沖縄全島奪還の手伝いが出来ればと思った。

 時間はあっという間に過ぎ、海に夕日が沈みかけている。夕日を眺め、今日この日、ここに来れて本当に良かったとしみじみ思う。
(来て良かった‥‥別れた妻と娘にも、いつか沖縄の空と海をいつか見せたいものだ)
 思いを馳せながら帰り支度をしていた時、知り合いへの土産を買い忘れていた事に気付いた。
「土産を買い忘れていた! 店、どこかまだ開いてるよな? 街中なら‥‥」
 最悪、コンビニになるかと覚悟していたが、運良く通りの土産店が開いていたので大急ぎでリストを手に選ぶ。
「やばい‥‥これもう間に合わん‥‥大丈夫か?」
 バタバタしながらもなんとか知り合い全員の土産を買うことができたが、帰りの便までの時間は荷物をまとめたり、宅配便の手配等で慌ただしかった。 

●侍の休暇
「無事、元に戻ったか‥‥」
 鈴音に襲撃された故郷が気になり、復興の様子を見に来た風閂(ga8357)は徐々に元通りになりつつある読谷村を訪れて安心した。
 鈴音撃破、トリイ基地機能消失で心身共に痛んでいた彼だったが、かつての風景を取り戻した故郷に癒されたようだ。
「このまま帰るのもなんだ。海を見に行くか」
 どこに行こうかと考えていたが、自然と御願バーリーが行われた漁港に足を運んでいた。
「あれは‥‥」
 何処かで見たことがある人物に目を凝らすと、そこにいたのはシェリル・クレメンス(gz0076)だった。
「シェリル殿ではないか。会うのは久しいな」
「あ‥‥お、お久しぶりです。カリフォルニアでお会いしたっきり‥‥でしたね」
 4年も前のことだが、覚えていてくれたことが嬉しかった。
「その‥‥俺が送った写真‥‥無事に届いただろうか‥‥?」
「はい。とても綺麗な海でした。実物が見られて嬉しいです。写真送ってくださったの、あなたでしょう? ええと‥‥」
 顔は覚えているが、名前が思い出せない。
 実際に会ったのはボン・ダンスの時だけで、後は依頼内容を説明するオペレーターと傭兵という立場での遣り取りしかないのだから無理もない。
「ああ‥‥あの時名乗っていなかったかも‥‥だな。俺の名は風閂だ」
「風閂さん、ですね。写真を送ったの、あなただってことすぐわかりました。お名前、忘れていたようですけど」
「差出人の名前が書いてなかった‥‥だと? それは‥‥その‥‥すまぬ。つい、書き忘れていた‥‥」
 俯き赤面するが、風閂は嬉しかった。見せたいと思っていた沖縄の蒼い海を、シェリルとふたりっきりで見ることができたのだから。
 緊張のあまり、海どころかシェリルの顔も直視できない純情侍だった。

 漁港の海を見た後は、読谷村を案内したいと風閂がシェリルを連れて行ったのは残波岬、恩納村の海岸が見ることができる座喜味城跡。
「眺めが良いところだから、気に入ってくれるであろう」
 座喜味城跡に向かう前に、コンビニで飲み物を買い手渡した。
「これは沖縄の茶、さんぴん茶だ。これで良かった‥‥だろうか?」
 さんぴん茶のペットボトルとストローを渡す時、手の温もりが伝わってきたのでドキッとなった。
「ありがとうございます」
 城門近くの松林の下で一息ついた後、一の郭の城壁へ。
「このあたりは絶景だ。ここから、俺の故郷と海を見てほしい」
 2人が見た辺りは、ちょうど「象の檻解放作戦」が行われた場所で、沖縄軍との戦闘の末に破壊された強化妨害電波発生装置と化した楚辺通信所内があった。
 楚辺通信所、トリイ基地上空での激戦を思い出したのか、風閂の表情が一瞬曇る。
(もう‥‥あのような激戦はないだろう‥‥)
 平和になった故郷と側にいる恋心を抱く女性。それが、今の彼の心の拠所だ。
「あの‥‥どうかしたんですか‥‥?」
 憂う風閂を心配したシェリルが顔を覗き込んで声をかける。
「い、いや、何でもない。激戦があったが、もう終わったのだなと思っていただけだ」

 次の場所に行く前に、思いを伝えるのは今しかないと思い、おもいきって告白することに。
「シェ‥‥シェリル・クレメンス殿! お、俺は‥‥そ‥‥その‥‥カリフォルニアのボン・ダンスで初めて貴女と会ってからずっと気になっていた! 女は足手まといと思っていた俺が‥‥本気で惚れてたのだ‥‥!」
 沖縄の海の写真を送ったのは、自分自身に気付いてほしかったという思惑もある。それに気づいてくれたことが、とても嬉しかった。
「初めは友からの付き合いで良い。俺と‥‥お付き合いをしてほしい‥‥」
「あ、あの‥‥」
「いきなりこのようなことを言ってすまぬ! 返事は‥‥焦らずとも良いから‥‥」
 思いを受け止めてくれる日をいつまでも待つ覚悟はできている。それまでは、一途に思い続けることだろう。
「あ‥‥あたしでいいんですか‥‥?」
 じっと見つめる大きな青い瞳に吸い寄せられる。
「貴女でなければ駄目だ! 俺は貴女が好きだ!」
 真っ直ぐに見据え、堰を切ったかのようにストレートに思いをぶつける。
「あたしで良ければ‥‥よ、宜しくお願いします‥‥」
「ありがとう‥‥」
 思いを受け入れてくれたことを内心では飛び上がるほど喜んだが、それを悟られまいとそっと近づき、優しく抱きしめる。
「す、好きだ‥‥いや、愛している‥‥」
 顔を上げ、互いに見つめ合う。しばらくそうした後、どちらからともなくそっと唇を重ねた。
 沖縄を心から愛する侍の恋は、4年目にしてようやく実ったのだった。 

●友人達の休暇
「沖縄かー、初めて行くんだよー。っていうか南国自体が初めてなんだよねー。楽しみだねー!」
 空港ロビーではしゃぐ高縄 彩(gc9017)に対し、日差しが苦手なルナフィリア・天剣(ga8313)は着くなり気分が滅入っている。
「流石にこの時期のこの地域は暑い‥‥実にやな日差し‥‥。彩‥‥細かい予定は任せる‥‥」
 後のことを任せ、自身は日差しと暑さを避けるため夕方までホテルに引き籠ることに。
「真夏の昼間に出歩きたくない‥‥。アルビノ的には、日差しは肌と目に優しくない‥‥」
 日傘代わりのカルディナレを差し、ルナフィリアはタクシーに乗って宿泊先へ直行。

 日が沈みかけた時間帯を見計らい、念入りに下調べをした彩は17時に開くハンビーフリーマーケットに行こうとルナフィリアを誘う。
「ハンビーフリーマーケットとはどんなもの‥‥?」
「ちょっと調べた感じ、よくある普通のフリマとは違う感じ?」
 フードショップや輸入雑貨、食料、日用品、アクセサリーに骨董と、ありとあらゆる商品が露店で販売され、夜遅くまで賑わう多国籍風のフリーマーケット、といったところだ。
 どんなところだろうとワクワクしていた彩は、コンテナや簡単に建てた小屋、テーブルだけだったの雰囲気に胸躍らせる。
「よーし、まずは腹ごしらえなんだよ〜。腹が減っては戦は出来ぬ、っていうもんね!
沖縄だけじゃなくて多国籍料理もあるみたいだし、色々食べ歩いてみよっかー」
 そう言って彩が屋台で買ったのは、ピンクや黄色のデコレーションがされたカップケーキ。
「美味しいね、天剣さん!」
「なかなか‥‥」
 これだけでは足りないとメキシコ料理も食べることに。

 腹を満たしたら、お次はショッピング。
 衣類や雑貨を一通り見て、これなんかどう? と薦め合ったり。
「天剣さん、天剣さん! コレとかどうかな!」
「安ければ買うかもしれないが、私は無駄遣いする心算はない」
 口ではそう言うが、眺めてるいるのも面白そうとルナフィリアは珍しい掘り出し物を物色中。
「そんなこと言わない! 旅行に来た時位パーっと使わないとね! 買わずに後悔するより、買ってから後悔した方がいいんだよー」
「既に倉庫に使い所が謎な物や使用予定は未定な品が山と積まれてるのに、これ以上買うのもねぇ‥‥」
「それじゃ、服を買おう! これなんか天剣さんに似合うと思うなー。お見立て合いしない?」
「んー、私の服のセンスとか正直あてにならないと思うけどそれでもいいなら?」
 何だかんだ言いつつ、服の見立て合いをする面倒見の良いルナフィリアだった。
 いろいろ見て回った2人が買ったのは、互いに選んだ服数点。

「次は海いこっか、海! 浜辺を散歩してもいいし、夜に泳いでみるのも良いかもなんだよー」
 フリーマーケットを一通り楽しみ終えた頃には日が沈み、あたりはすっかり暗くなっていた。
 満天の星空の下で浮輪とかで波間に浮かぶのもいいなー、という彩に誘われ、水着に着替えたルナフィリアは浮き輪で波間を漂いつつ、星が輝く夜空を眺めている。
(どうでもいいが、海には泳ぎに来た回数よりKVで戦いに来た回数の方が多いな私)
 そんなことを考えているうちに流されそうになったので、慌てた彩が浮き輪をキャッチ。
「流されないよう気をつけないとだねー」

 海を満喫した後はホテルでのんびり。
 彩はデジカメで撮影した写真の整理中。
「あ、天剣さんも見るー? 欲しいのがあったら焼き増しするんだよー」
「写真‥‥ほむ。折角だし何枚か頂いとくかな」
 デジカメに写ったハンビーフリーマーケットでのショッピングや食べ歩き、ショッピング中の写真を見て、楽しい思い出ができたねと思い出話に花咲かせる2人だった。
 深夜。別段何もないのだが、ルナフィリアは何となく外を眺めてぼーっとする。
(楽しかったな、沖縄。たまにはこういうのもいいかも‥‥)

●隊長と隊員の休暇
「慰安旅行という形で沖縄にきたは良いが、此処も最近まで戦場だった地、か」
 皇 織歌(gb7184)と訪れたリヴァル・クロウ(gb2337)は、感傷に浸るためにきたわけではないとそれ以上考えるのを止めた。
「‥‥さて、行くか。織歌」
「‥‥はい」
 リヴァルに対する尊敬の感情と思慕を隠している織歌はどことなく余所余所しい。
(普段から激務続きでしょうし、此度位は戦の事はゆるりと忘れて、ゆっくりして頂きましょう)
 横目でリヴァルを見やり、休暇を楽しみたいと願う。

 沖縄についた2人は一度荷物をホテルに預け、スキューバダイビングへ。
 リヴァルは過去に水中での戦闘の為にダイビングの技能を習得しているが、ダイビングスーツに慣れていない初心者の織歌は手取り足とりの指導を。
「‥‥余り身構える必要もない。君ならば簡単にこなせるはずだ」
「‥‥そう、ですか? ではやってみましょう、か」
 教えどおりに動こうとするが、バランスを崩したので、流されないようにリヴァルにしがみつく。
「‥‥っ‥‥す、すみません」
「‥‥大丈夫だ。もう一度やってみよう」
 泳ぎ自体は達者なこともあり、次第に動きが良くなってきた。
「‥‥やればできるじゃないか。それでは潜ろうか」
「‥‥はい」
 蒼い海を泳ぐ色とりどりのな魚や珊瑚礁を堪能しつつ、2人は思い出を作っていく。

 夕食時に合流する約束をし、2人は一旦分かれて特産品などを見て回ることに。
「これは良いかもしれませんね。買っていきましょう」
 織歌が購入したのは、開く事で音の成るギミックのオルゴールを内蔵したロケットペンダント。贈る相手が安らげる様な、穏やかな曲調のメロディーが流れる。
(喜んでくださるでしょうか‥‥)
 その頃、リヴァルは途中で見つけた泡盛の古酒を織歌への土産として買っていた。

 一足先に買い物を済ませた織歌は、ホテルの部屋に戻るとシャワーを浴びることに。
 入る際にドアを完全に閉め損ねたことにまったく気づいていない。そのことは、あとでちょっとしたトラブルを引き起こすことになるのだが‥‥。
「‥‥ドアが閉まってない」
 リヴァルが自分の部屋に戻ろうとした時、隣の織歌の部屋を通とドアが完全に閉まっていない事に気付き、伝えようと織歌の部屋に入る。
「‥‥織歌、いるか?」
「何でしょう?」
 シャワーを浴び終えた織歌はきょとんとした表情でバスタオルを巻いた姿で見合ったのだが‥‥リヴァルに気付いた時にバスタオルがはらりと床に落ち、一糸まとわぬ姿に。
「‥‥!!」
 数秒間、リヴァルは頭の中が真っ白になり何があったのか解らない状態に。
「‥‥いや、その、‥‥す、すまん‥‥!」
 漸くその現実に気付き、顔を真っ赤にして部屋を飛び出した。
「ああ、鍵‥‥ですか。悪い事をしました、ね」
 慌てて出ていったリヴァルを見てやっと鍵の締め忘れに気付き、悪いことをしましたでしょうかと苦笑気味に微笑み、そのまま着替え始めた。

 夕食はホテルの沖縄料理店で。
 合流した2人は、様々な沖縄料理を堪能しながら買ってきたプレゼントを渡す。
「‥‥これを受け取ってくれ」
「あら‥‥私に下さるのですか? 有難うございます」
 リヴァルが手渡してくれた泡盛に少し驚いたが、微笑んで受け取った織歌は胸元からペンダントを取り出し、開いて音を鳴らしてから手渡す。
「では、私からはこれを‥‥」
「‥‥ありがとう。良い曲だ」
 楽しい夕食の後、一緒に部屋まで戻って休むことに。
「‥‥隊長様、あともう少し‥‥激務だとは思いますが、無理はなさらないで下さい、ね?」
 部屋に戻って休む際、少し心配気になった織歌。
「‥‥大丈夫だ。心配してくれてありがとう。織歌もゆっくり休むようにな」
「‥‥はい」

 翌朝。観光と土産を買ったりしながら、2人だけの時間を過ごし帰路に就いた。
「‥‥織歌、楽しかったか?」
「‥‥はい。誘ってくださって有難うございます」

●ふたりっきりの休暇
「久々の旅行だからな、2人で楽しみたいのものだ」
「ええ。この時期にこうやって休めることはとても嬉しいことです。良い思い出を沢山作りたいものですね」
 蕾霧(gc7044)と紅苑(gc7057)は、沖縄でのデートをおもいっきり楽しむことに。

 午前中、シュノーケリングをしに海へ。
 白のワンピースタイプの水着に着替えた蕾霧は、用意したガイドブックを手に事前に覚えたシュノーケリングの手順を紅苑に教える。
「私も初めてだが‥‥事前に調べてきたのでな。一緒にやってみよう」
「はい。水着、良く似合ってますよ、蕾霧」
 水着姿の紅苑を見られるのは嬉しくもあるが、恥ずかしくもある。
「似合っている‥‥だろうか‥‥?」
 照れつつ訊ねると、はいとニッコリ笑う紅苑。
「見られるのは‥‥その、嬉しいが‥‥恥ずかしい‥‥。紅苑もその水着‥‥良く似合っているよ‥‥」
 顔を赤らめながら微笑み、黒いワンピース水着の紅苑を見る。
 道具一式はレンタルして揃えてあるので、準備運動をし、ハンドサインを決めてからシュノーケリングを。
 海の中は、2人が見たことがない綺麗な光景だった。ゆっくりと寄り添うように泳ぎつつ、魚や珊瑚を見て回っては、ハンドサインでそれぞれの思いを伝える。
(流石、沖縄の海といったところだな‥‥いい景色だ。紅苑と一緒に見れて、嬉しいな)
 蕾霧の表情が自然と緩み、微笑。
 一通り楽しんだ2人は、感動したことを伝え合った。
「今日は誘ってくれてありがとうございます、蕾霧。2人でこのような時間を共有できて、とても嬉しいです」
「私もだ。一緒に『初めて』を体験できるのは、嬉しいものだな‥‥」

 シュノーケリングをして腹が減ってきたこともあり、午後は食べ歩き。動後の空腹を満たすのに丁度いい。
 食事処の穴場をリサーチした紅苑がリードし、チャンプルーやソーキそばが美味しいお店に。
「ソーキそばにチャンプルー、海ブドウにマンゴー、そして最後に泡盛。気になるものは沢山ありますね」
 メモを片手に、どれを食べようかと悩んでいる。
 あれこれ悩んだ2人が注文したのは海ブドウ定食とチャンプルー定食だった。
 小食な蕾霧は、楽しみながら少しずつ海ブドウを味わっている。
「こちらも美味しいですよ。いかがですか?」
 紅苑は自分が食べているチャンプルーを蕾霧の口へ運び、食べさせてあげる。
「‥‥照れるな。‥‥食事の味を楽しむのもいいが‥‥こういうのも‥‥」
 してほしかったとはいえ、少し恥ずかしい。顔を真っ赤にし、紅苑に食べさせてもらうことに。
 食事処の次は、サーターアンダギーを買って食べ歩き。これは互いに食べさせ合いながら堪能。
「美味しいですね」
「‥‥美味いな」

 夜は宿泊先で泡盛を。
 紅苑が酌をしてくれることもあり、蕾霧は一段と美味いと感じた。
「酒が美味いのは当然だが、紅苑と一緒に飲むと尚更‥‥美味いな」
 まあ飲め、とそっと酌をしながら紅苑に勧める。
「私は‥‥私と一緒にいる貴女の時間、そのすべてを最高のものにしたいのです。お酒が美味しくなるだけでなく、ね?」
 そう言って、蕾霧の頬を撫でて微笑む。
「私も2人だけの時間を最高のものにしたいぞ、紅苑‥‥」

●婚約者達の休暇
 1日しかない休暇なので、ソウジを疲れさせないようにと配慮してリュイン・カミーユ(ga3871)は何処で何をしようかと考える。
「今回は南部の方へ行ってみようか」
 空港ロビーに向かう藤色のキャミソールワンピースに白のレースカーディガンに白のミュール、淡いローズのルージュをひいた薄化粧の彼女を待つのは、黒の方言Tシャツ姿のソウジ。白字の「島人」がかなり目立っている。
 手を振るリュインの左手薬指には、サイズを合わせた婚約指輪が嵌められている。
「これ、南斗という傭兵がキミにって」
 そう言って渡したのは激辛カップ麺。
「あいつ‥‥直に渡せば良いものを。まあ、いいか」
 ちなみにソウジが着替えたのは、南斗に軍服は拙いと指摘されたからだ。上は売店で買ったTシャツだが、下は士官服、アーミーブーツのままだ。

 最初に足を運んだのは、世界遺産として文化遺産に登録された沖縄の歴史・文化を象徴し、琉球王国の歴史、興亡を伝える歴史の証人である城がある公園。
 琉球王国の時代にタイムトリップした雰囲気が味わえる園内を散策し、沖縄独特の景色をのんびりと。
「この城は日本で唯一の「朱(あか)い城」だ。天然の漆が塗られた漆工芸の作品だからイメージカラーの朱を守るには塗り直しが必要なんだ。ここに来る途中、門の塗り直し作業があっただろう? それは、次世代への引き継ぐ大事な事業だ」
「次世代への引き継ぎ‥‥か。我らはそれができたのだろうか」
「できた‥‥だろうね」
 レストハウスでの休憩中、ソウジが城についての薀蓄を語る。実はこれ、良いところを見せようと一夜漬けで覚えた知識だ。
「そろそろ次に行こうか。弁財天宮もあるそうだが‥‥確か日本の謂れだと、カップルで弁才天宮に行くのは拙いと聞いたような‥‥」
「弁財天が祀られている神社にカップルが行くと別れるから拙いって話は聞いたことあるな。そういう迷信、信じてるのか? 俺らの仲を見せつければいいじゃないか」
「汝らしくないことを言うな、馬鹿者‥‥」

 次は国際通り。
 戦後の焼け野原から目覚しい発展を遂げた長さがほぼ1マイルであることから「奇跡の1マイル」とも呼ばれる最も賑やかな通りである繁華街だ。
 ここでの目的は、ちゅらキャンドル作り体験と琉装撮影。
「まずは、ちゅらキャンドル作りだな」
 琉球グラスに沖縄のサンゴ砂や貝殻、シーサーやハイビスカス・クマノミなど1000種類以上のガラス細工と香りを組み合わせ、世界でひとつだけのクリア・キャンドルが作れまるとあり、リュインはどのようなものにしようか悩む。
「これにしよう」
 選んだのは、金魚鉢のような形の琉球グラスと貝殻とクマノミ2匹。グラスの底に貝殻を敷き詰め、クマノミをグラスに入れ、ロウを注いで固まれば完成。
「俺はこれ」
 ソウジはワイングラスにシーサー2匹を入れたものに。
 固まるまでの20分間、アイスを食べて時間潰し。

 お次は琉装撮影。
 琉装とは琉球時代の衣装で、華やかな紅型やエイサー、王族風など、揃えている衣装は盛りだくさん。
 店員に「お2人でどうですか?」と勧められたこともあり、記念にと2人は琉装に着替える。
「着物とはまた違った雰囲気なのだな。‥‥その、似合うか?」
 紅型柄着物姿のリュインは、上目遣いで聞く。
「ちゅらさん‥‥」
 簡易的な黒い薄手の着物、金の冠のような帽子を被ったソウジが呟く。
「それは美人と解釈して良いのか?」
「ちゅらさんは沖縄の言葉で『美しいさま』という意味さー。お客さんが美人だから思わず言ったんだろうねー」
 店員の説明の後、はっきりそう言えと肘鉄。
 撮影後は沖縄料理で昼食を。
「沖縄と言ったらチャンプルーだな。‥‥島唐辛子大盛りで追加」
「相変わらずの辛党だな‥‥」

「泳ぐのもいいが、そうすると疲れるだろうと思う故、海中を鑑賞出来る船を見つけておいた」
 そう言ってリュインが誘ったのは、海底散歩をする世界初の大型水中鑑賞船。大型特殊ガラス製の窓を32枚設置してあるので、大パノラマで海底の様子が鑑賞できる。
「綺麗な海だな‥‥ソウジ達が守った海だぞ」
 寄り添いながら沖縄の海を泳ぐカラフルなトロピカルフィッシュを見る。
「我の故郷も港町ではあるが、沖縄とは少々風情が違う。両親に会いに来た時には案内してやろう」
「是非。どんなところか、楽しみにしてるよ」

 ドライブがてらビーチに来たので、バーベキューで夕食を。
 ビーチサイドの施設でできるのは良いが、食用油、塩・コショウといった調味料、割り箸、紙皿が付いてないことを知ったソウジは慌てて近くの店まで買いに行った。その後に、食材は5人前からというのを知り吃驚。
「頑張って食うしかないか。キミは無理しなくて良いぞ? 俺が食うから」
「わかったから、焼けたものを食べろ」

 食べ終わった頃、辺りはすっかり暗くなっていた。誰もいない浜辺にシートを敷き、寝転がって星を見ることに。
「ソウジ‥‥我は、汝の両親に気に入ってもらえただろうか?」
 天体観測の途中、リュインが訊ねた。
「気品あるお嬢さんを俺の嫁にするには勿体無さすぎるっ、てさ。親父もおふくろもキミのことを豪く気に入ってたよ。式は何時だって急かされた」
「そうか‥‥」
 その後の言葉が無いのでどうしたのだろうと見ると‥‥疲れたのか、ぐっすり眠っていた。
「風祭との戦いが終わったとはいえ、激務続きで大変だったのだろう。今はゆっくり休め‥‥」
 髪をそっと梳き、寝顔を見てから頬にキスを。キスマークが付いているのは、彼女の悪戯心、ということで。
 キスマークだが、翌朝までソウジはまったく気づかなかった。

 傭兵達の休暇は、それぞれ良い思い出となった。