タイトル:【協奏】夜想曲2.救出マスター:竹科真史

シナリオ形態: ショート
難易度: 難しい
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2012/03/29 00:04

●オープニング本文



 沖縄本島、最南端。
 ここにはバグア軍の前線基地が置かれていた。規模としてもそれなりのもので、前線基地としては申し分ない。
 と言っても、現在沖縄に存在するバグア。ゼオン・ジハイドの11、風祭・鈴音(gz0344)はトリイ基地。その部下である沖縄3姉妹も同様にそれぞれの拠点を所持している。この前線基地はバグアにとって戦略的価値がそれほど高くない基地となっているわけだ。
「‥‥ですが、我々にとっては違います」
 作戦会議でそう言うのはUPC沖縄軍中尉、ソウジ・グンベ(gz0017)だ。
 人類側には沖縄本島においてこの規模の地上拠点は存在していない。今後本島の3姉妹やジハイドと戦っていくために安定した拠点の存在は必要不可欠であった。
「だが、この規模だ。それなりの防御戦力は敵も置いているのでは?」
「その疑問は尤もです。ただ、それに関してはこちらの資料を参照して頂きたく」
 それは、基地に送り込んだ工作員からの報告書。これによると、基地内に存在しているバグアは、強化人間を含めてもそれほど多くないということだ。ならばこの規模の基地をどうやって円滑に機能させているのか疑問が生まれるが、それに関しても報告書に記載されている。
「‥‥なるほど。基地の運用は民間人を使っているわけか」
 バグアは、民間人の親類などを多数人質として、その身の保証と引き換えに労働を強いているという事だ。だが、これはある意味こちらがつけ入れる強みでもある。
「つまり、です。この基地に存在している少数のバグアを排除すれば、基地機能をそのままいただくことも不可能ではないということです」
 今回の作戦では、基地内に数名の能力者を送り込み、基地指揮官始めバグア軍の掃討を行う。この間人質に危害を加えられるとまずいので、別働隊が同時に人質を救助する、と。そういう流れだ。
 侵入には手漕ぎボートを使用。この際水中戦部隊が陽動の為に戦闘を行う手はずになっている。
「そして最終的には空挺部隊を投入し、基地を完全に掌握する、と」
「よし、聞いた通りだ。各自作戦準備にかかれ!」
 作戦の決行は深夜。故に名づけられた作戦名は「ノクターン(夜想曲)」
 オペレーション「ノクターン」はこうして静かに動き出した。


「軍の犬が来たか」
 双眼鏡で潜入の様子を窺うラルフ・ランドルフ(gz123)は、少しは楽しめそうだと口端を持ち上げる。
 傍らにいる開放感ある赤いワンピース姿の女性は「面白いことになりそうだねー」と元気良く高笑い。
「楽しそうだな、ハルハナ」
 ハルハナと呼ばれた女性は十分な戦力になるとラルフに拾われ、彼を通じて鈴音の部下になった強化人間であり、この前線基地を任されている指揮官だ。
 快活な表情の裏には、3姉妹に勝るとも劣らない非道さを秘めている。
「ラルフさん、ここに来るお邪魔虫はアタシに任せて!」
 拾われた恩を返すチャンスが来た。ハルハナはワンピースの下に忍ばせた拳銃を確認し、どう相手してあげようと考える。
「頼もしいな。わかった、ここは貴様に任せる」
 彼女の戦力を知るラルフは、自分が出る幕は無いと早々に基地を立ち去った。


 その頃、ソウジ率いる実戦部隊は救出隊として基地に向かっている。同乗している傭兵達に資料を手渡し作戦概要を説明するが、どことなく表情が暗い。
 ソウジ自身が提案した「ノクターン」だが、成功すれば沖縄軍戦力拡大と補強、失敗すれば信頼を得たばかりの沖縄人民を失望させることになる。
 沖縄の今後が自分の双肩にかかっていると思うと更に気が重くなるが、部隊のひとつを任されたからには気丈に振る舞わねばならない。
「作業員として強制労働を強いられている民間人の親類等はどこかに集められ、数名の強化人間が常に監視し逃亡したりしないよう目を光らせている。監視されてはいるが、食事はきちんと与えられているそうだ。人質はバグアにとっては家畜同様なんだろうか」
 上陸するなり救出隊は分かれて捕らわれている人質を解放すべく動き出そうとしたが、行く手を阻むかのように突然爆破が起きた。地面に爆弾が仕掛けられていたようだ。その衝撃で数名の沖縄軍兵士が負傷、撤退を余儀なくされた。
 実戦部隊が双眼鏡で周囲を確認すると、何やら手にしている赤いバグア軍戦闘服を身に纏う強化人間を発見したと即座に報告。
「そいつはおそらく起爆スイッチだな。3姉妹三女の手口を真似るとはねぇ。救出隊、傭兵全員に告ぐ! 基地周辺に爆弾が仕掛けられている可能性あり。どこにあるかわからん、救出活動の際に気をつけろ」
 基地周辺をうろついているキメラがいるだけでも厄介だってのに、スイッチ持ちの強化人間まで相手にしなきゃなんねぇなんて‥‥と思うとソウジは頭が痛くなってきた。

●参加者一覧

リュイン・グンベ(ga3871
23歳・♀・PN
鐘依 透(ga6282
22歳・♂・PN
旭(ga6764
26歳・♂・AA
御守 剣清(gb6210
27歳・♂・PN
サウル・リズメリア(gc1031
21歳・♂・AA
レインウォーカー(gc2524
24歳・♂・PN
春夏秋冬 立花(gc3009
16歳・♀・ER
那月 ケイ(gc4469
24歳・♂・GD

●リプレイ本文

●救出前奏曲
 前線基地に上陸するなり8名の傭兵は爆撃という手荒い歓迎を受けたが、幸い、誰1人として巻き込まれることはなかった。
「爆弾に人質、か。ありがちだけど、嫌なパターンだ‥‥ま、全力で叩き伏せよう」
「そうですね。厳しい生活を強いられてる人達を‥‥助けたいです‥‥。いえ、助けます、絶対に‥‥」
 負傷した沖縄軍兵士をボートに運び終えた旭(ga6764)は厄介だとぼやき、鐘依 透(ga6282)は、人質を早く助け出したい気持ちを隠せない。
「ノクターンとは随分とロマンチックな名をつけたものだ」
 ソウジ・グンベ(gz0017)が沖縄軍に転属してからというもの、重責ある任務が続いていることを憂うリュイン・カミーユ(ga3871)。
(ソウジには1人で抱え込んで欲しくない。我は役に立てているのだろうか‥‥)
 少しでも手伝えればと作戦に参加。感傷に浸っていたが、人質救出に専念すべく気持ちを切り替える。
「何が何でも人質救出に専念せねばな」
 逸るリュインの緊張感を和らげたのは、サウル・リズメリア(gc1031)がソウジに尋ねた一言だった。
「一つ問おう、人質の中に美女はいるか? 出来れば巨乳の」
「そこまではわからん。自分の目で確かめて来るんだな」
「ま、居なくても居ても全力で戦闘するけどな」
「おまえは相変わらずだなぁ。行くぞ、サウル。しっかりボクに着いてきなよぉ」
 ノクターンが成功すれば風祭・鈴音(gz0344)の機嫌が悪くなり、彼女が動くかもしれないと予測するレインウォーカー(gc2524)は一刻も早く動きたくて仕方がないようだ。
「絶好の機会、自らの手で作ってみせるさぁ」
「私も人質を助けるために尽力を尽くします。皆さん、頑張りましょう」
 軍用双眼鏡で基地周辺を探りながら、春夏秋冬 立花(gc3009)が途中までまとまって行動することを、那月 ケイ(gc4469)が強化人間排除の戦闘と人質救出、救出後の退路確保に分かれることを提案する。
「簡単に終わるワケないとは思っていたけど‥‥ま、やるしかないな」
 バグアは爆弾大好きなんだな‥‥とケイは呆れるが、強化人間の数が確認されているのでやりやすいと準備を整える。
 手短な話し合いの結果、戦闘班は二手に分かれることに。
 戦闘A班は透、サウル、レインウォーカー。戦闘B班は旭、立花、ケイ。
 救出班はリュイン、御守 剣清(gb6210)、エキスパートを含む実戦部隊数名。ソウジ含む残りの実戦部隊は退路確保を行うことに。
 ボートに積んである光源を借りると、各班、人質を救出すべく動き出した。
「我らに遅れを取るなよ、沖縄軍。作戦開始だ!」

●救出第一楽章
 救出班を収容施設に向かわせた戦闘A班は、キメラを倒しながらサウルの『探査の眼』を頼りに仕掛けられている爆弾を回避しながら後に続く。
「爆弾探索はお前の得意分野だろぉ、任せたよぉ」
 任せとけ! と胸を張り、サウルは周辺を探る。その間にもキメラが来るので鬱陶しいと追い払う。
「強化人間はどこにいるんでしょう?」
 透は得た情報を頼りに、強化人間目撃の報告をする場所を選定。見渡せる高所、人質が収容されている建物を監視できる範囲に最も適した位置を考え目星をつける。見つかってしまっては爆撃されてしまうので、いないことを確認してから行くことに。
「あんたの進行方向に爆弾は無いけど、いつ強化人間が来るかわからんから気をつけるんだな」
「ありがとうございます」
 軽く頭を下げると『迅雷』で目的地に向かい、【OR】暗視スコープverFで視界を確保して探り出す。
「まだ見えないかぁ?」
 行く手を阻むキメラの群れを銃で牽制しつつ、サウルからの指示で仕掛けられた爆弾を銃撃で爆破させながら強化人間を探すレインウォーカー。

 それから少し遅れてB班が収容施設に向かう。
「少し静かにしてもらえますか?」
 資料にある地図をもとに人質が囚われている収容所を監視できそうな場所に当たりをつけた立花は、地面に耳を当て『バイブレーションセンサー』で強化人間の動き、爆弾の音を確認。その間、旭とケイがキメラを追い払い、彼女の邪魔させないようにしている。
 自分達の周囲にはキメラ以外の動きが無いことを知らせ、立花は『探査の眼』も併用し爆弾の位置を探る。
「こちら那月、強化人間はまだ見つけていない。そっちはどうだ?」
「こっちもいないぜ。仕掛けられている爆弾はわんさかあったけどな」
 サウルの報告で仕掛けられた爆弾の数が多いことを知ったケイは、引き続き強化人間を探す。

 戦闘班が強化人間を探索している間、リュインと剣清は『探査の眼』で爆弾を探る実戦部隊を集中させるべくガードしながら収容所に向かう。
「爆音は聞こえませんが、いつ、何が起こるかわからないのが怖いです」
 戦闘班から起爆スイッチ確保の連絡があるまで、緊張気味の剣清自身も電子音、ランプ等、気付いたものや爆弾に警戒するしかない。
「こいつらどうしましょうか」
 立ち塞がるキメラを見て、剣清がリュインに尋ねる。
「極力戦闘は避けたいが、大量のキメラ‥‥スルーとはいくまい。キメラ如きが我を阻もうなど笑止千万。行く手を切り開く!」
 爆弾探査中の実戦部隊を庇うように、リュインは迫りくるキメラに鬼蛍を振るう。

●救出第二楽章
「救出班のところに行かせません」
 追いかけようとするキメラを収容施設に近づけさせまいと、透は魔剣「ティルフィング」で放つ『エアスマッシュ』と斬撃でサウル、レインウォーカーと連携して接近するもののみ蹴散らし道を切り開き、脚を潰す、頭を狙う等、手早く、危険が無く、効率良く仕留めていく。
「そろそろ基地に近づくようだねぇ。サウル、爆弾はあるかぁ?」
「俺らの進行方向には無いが、周囲にうじゃうじゃ仕掛けられてる‥‥って、言ってるそばからー!」
 透の進行方向の先を指差し、そこにあるぜと伝える。
「撤去します‥‥」
 SMG「スコール」を地面に撃ち爆弾を撤去。その最中、物陰から出現したキメラが巻き込まれたので倒す手間が省けた。
「一石二鳥‥‥ですか?」

 眼前のキメラを掃討し、一気に『瞬天速』で駆け抜けるリュイン。
「今、収容施設の前に着いた。御守、沖縄軍とこちらに向かってくれ。彼らの援護と強化人間の警戒を頼む」
 収容施設の施錠は電子ロックかと思いきや、古びた南京錠だった。これなら、こじ開ければすぐに開くだろう。
「今助ける、危ないから扉から離れろ」
 中にいる人質に声をかけ、アーミーナイフで鍵部分を破壊し開錠、すぐ扉を開ける。
「もう安心‥‥と言うには少々早いが、脱出まで我らが護る。案ずるな」
 ありがとうございますと手を合わせて感謝する人質は幼い子供や母親に抱かれている赤ん坊、老人が多かった。万一の時に利用するのにもってこいの人材と選んだのだろうか。
「お待たせしました。さあ、ここから逃げましょう。沖縄軍の人が待っていますよ〜」
 元気づけようと明るく言う剣清と沖縄軍を見て、人質達は助かったと安心の表情に。
 撤収時に子供、老人を優先的に護衛し、沖縄軍に手伝ってもらい急いで脱出。足腰の弱い老人は、力自慢の沖縄軍が背負っている。
「ちょっと行ってきますね〜」
 集団の先頭で護衛していた剣清だったが、キメラを蹴散らすべく一旦離れる。『迅雷』でキメラとの距離を詰め迎撃。離れたものは『エアスマッシュ』で倒していく。
「御守を手伝う。人質を頼む」
 沖縄軍に護衛を任せ、リュインも早期撃破と『瞬即撃』でキメラを倒し、人質が襲われることがないようにしていく。
「人質救出、成功したようだな。退路確保は俺達が引き受ける。キミ達は早くボートに向かえ」
 駆け付けたソウジに力強く頷いた救出班は、人質を無傷で解放すると誓う。
「救出が上手くいったようだねぇ。さあ、邪魔者を片づけようかぁ」
 その様子を見たレインウォーカーだったが、起爆スイッチを手にした強化人間が迫りくることに気づくとククッと笑う。

●救出第三楽章
「来たかぁ。スイッチは押させないよぉ。サウル、こいつのいるところに爆弾はあるかぁ?」
「そいつの周りにいくつかあるぜ」
 強化人間の周囲、進行方向に爆弾が無いことを聞いたレインウォーカーは『迅雷』と『回転舞』を駆使して一気に接近すると『抜刀・瞬』で装備を二刀小太刀「瑶林瓊樹」に切り替え、スイッチを押す暇を与えない。
「それを押されると面倒なんでねぇ。壊させてもらうよぉ」
 押す邪魔をされそうになったのに危機を感じたのか、強化人間はその場を立ち去った。そのまま逃亡するかと思いきや、逃げ遅れた人質を引き摺って戻ってきた。自分に攻撃したら容赦無く殺すと言わんばかりに。
「人質を盾にしたか、汚ぇ真似しやがって!」
「やり方が汚いのはバグアのお約束でしょう‥‥」
 救出すべき人質が殺されては大変だ。
 イオフィエルに持ち替え戦闘態勢の透、レインウォーカーは攻撃を中断し、反撃されることを覚悟した。
「そんなことさせねぇぜ!」
 サウルが『ボディガード』で身代りになり、盾を使い2人を庇う。
 攻撃を塞がれたことで体勢を崩した強化人間から解放された人質は、『迅雷』で接近した透に引き離され、救出班のもとへ連れて行った。
 自棄になり自分もろとも周囲を爆破しようとしたが、『抜刀・瞬』で大鎌「ディオメデス」に切り替えたレインウォーカーがスイッチを持つ手を瞬時に切断した。
「さあ、嗤え」
 そう言うが、強化人間は痛みにのたうちまわっているのでそれどころではない。
「面白くないねぇ。こいつへの情け容赦は一切不要だぁ。サウル、ボクが牽制する。おまえと透の回復が終わったら強烈なの喰らわせてやれぇ」  
「おう、任せとけ! 沖縄、水着、ビキニ、美女っ! よし、気合入れるぜっ!」
 回復が終わると気合を注入し、まだ見ぬ美人の人質に期待を膨らませながら飛び込んで強化人間の腹部に脚爪「オセ」の爪先を抉るように突き刺す。よろけたところを『迅雷』で一気に距離を詰めた透が心臓めがけて『二連撃』を叩き込んだ。
「これで終わりだぁ」
 道化の鎌が振り下ろされたことで、強化人間は苦痛の中で絶命した。

「人質は全員保護され、スイッチを持った強化人間は倒したそうだ」
 救出班がボートに向かい人質を護衛、戦闘A班の行動の報告を受けたケイが戦闘B班に伝える。
「良かった、まずは一安心だ。これで爆破されずに済むね」
 ボートに戻って人質を守るべく動き出す戦闘B班だったが、あともう少しというところで強化人間に出くわした。
「あ! あいつ、起爆スイッチ持ってます!」
 指差して伝える立花が驚く。1人だけかと思っていたが、もう1人も持っていたのだから。
「結局、どっちにしても爆破の危機は免れないってことか」
「そういうことになるね」
 やれやれと溜息を吐きながらも、旭とケイの動きに合わせて『迅雷』で斬り込み、互いの隙をカバーできるように立ち回りながらラッシュで斬り伏せながらスイッチ破壊、あるいは奪取ができればと腕を狙い攻撃する。
「できるだけ基地から注意を逸らそう」
 沖縄軍の拠点となる前線基地を爆撃されては困ると考えたケイは、旭と入れ替わりで攻め続け、強化人間を遠ざけるよう仕向けたり、自分達は注意を引くことで立花が背後を取りやすいようにする。
「スイッチは押させません!」
 一瞬の隙をつき、背後から『瞬天速』で接近した立花が機械刀「凄皇弐式」で起爆スイッチを持つ手を切断しようとしたが、あともう少しというところで食い止められた。
 邪魔だ! と腕を掴むと放り込み、立花の身体は地面に叩き付けられる前に爆風に吹き飛ばされた。スイッチ破壊を焦るあまり、爆弾探査が疎かになったためだろう。
 運悪く巻き込まれたケイだったが、痛みを堪えて立花に駆け寄り『錬成治療』で治療し、2人で守りやすいよう立ち位置を気を付ける。
「爆弾で俺達をどうにかしようってのか‥‥!」
 苛立ち紛れに聖剣「デュランダル」を激しく地面に突き立て、諦めの表情になった旭に対し、自分に楯突くとこうなると笑う強化人間は余裕の態度になり、彼の周囲に仕掛けた爆弾を次々に起爆させた。
 全身を覆う鎧を身に着けているとはいえ、爆撃のショックを完全に防げない。それでも必死に耐え、攻撃の隙を窺う。
 ケイは『仁王咆哮』でキメラを引き付けると『制圧射撃』で怯えさせ、一歩たりとも旭に近づけさせない。射程内には強化人間もいるので、多少の足止めにはなっている。
「今だ!」
 歩み寄る強化人間の隙を見逃さなかった旭は、攻撃が当てやすい状況ができたと『両断剣・絶』を叩き込む。スイッチを押して3人を道連れに自爆しようとした強化人間だったが、立花の機械本「ダンタリオン」、盾ごと体当たりしたケイに阻止され失敗に終わり、旭に止めを刺された。
「これは不要です」
 念には念を、と立花は強化人間の手から零れ落ちた起爆スイッチを破壊する。
「戦闘B班、旭だ。強化人間を倒した」
 無線機で戦闘A班に連絡し終えると、アクションで機会を作る作戦が成功してほっとしたのか身体の力が抜けた。
「お疲れ様でした。スイッチを持っている強化人間を倒しましたから、これで爆撃される心配はありませんね」
「俺達もボートに行こう。肩‥‥貸そうか?」
「大丈夫、1人で歩ける」

●救出最終楽章
 戦闘班はそれぞれの回復を終えると、退避し終えた救出班とソウジが待つボートに戻ってきた。
 救出班と沖縄軍に護衛されていたとはいえ、多数のキメラから完全に守りきるのは難しかったのか何人かの人質が負傷した。
「怖かったでしょう。今、怪我を治しますね」
 ケイをはじめとする『練成治療』を使える傭兵は、人質を励ましながら治療を行う。
 その最中に巨乳美人を何人か見つけたサウルだったが、水着姿でない、子持ちだったのでガックリしていた。
 人質の中には、自分の身の安全より、基地で強制労働を強いられている家族を心配している者も。
「俺達の仲間が助け出すから安心してね〜」
 救急セットで治療する剣清の言葉を信じていいのかと不安がる人質に、皆、自分達と沖縄軍を信じてほしいと説得する。
 命の恩人である傭兵が言うならと、人質達はその言葉を信じることにした。

「ソウジ・グンベ中尉です。囚われていた人質全員確保、保護しました。何人か負傷していますが、傭兵達が治療にあたっています。重体、死亡者はいないのでご安心を。基地周辺は爆撃されましたが、基地自体は無事です。報告は以上です」
 沖縄軍本部に救出作戦が無事終わったことを報告するソウジだったが、不安なことがあるのか、顔色が優れない。
「どうした、ソウジ。退却するぞ」
 リュインに促され、彼女と共にボートに乗り込む。

 前線基地を後にしたボートに乗り込んでいる傭兵と人質は誰も振り返ることはなかったが、ソウジだけが振り返った。何かを見詰めるかのように‥‥。