タイトル:【協奏】成功の代償マスター:竹科真史

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2012/02/02 23:19

●オープニング本文



 楚辺通信所で作成中の強化妨害電波発生装置はUPC沖縄軍が決行した『象の檻作戦』により破壊され、これにより沖縄バグア軍の戦力が僅かではあるが削がれ、KV戦の障害は取り払われた。
 象の檻作戦は大成功を収めたが、風祭・鈴音(gz0344)に洗脳され、作戦に巻き込まれたた通信所付近の住民数名が心的外傷後ストレス障害(PTSD)を引き起こしてしまった。
 太平洋戦争を体験した高齢世代はフラッシュバック、子供は腹痛、頭痛、吐き気、原因がはっきりしない悪夢が続くといった精神的不安定な状態に。
 住民の安全性を確保した上での作戦であったが、鈴音が住民を拉致、洗脳することまでは予測できなかったといえば沖縄軍の言い訳になるだろう。子供が眠るのが怖いと泣く、祖父母が戦争を思い出し、パニック状態を引き起こしたという家族は、こうなったのは沖縄軍の落ち度だと訴えてきた。
 住民の訴えに事態を重く見た見た沖縄軍は、各地から心理療法に長けた精神科医や臨床心理士といった当該専門家を派遣、住民のメンタルケアを行うことに。
 とはいえ、沖縄はバグア支配下なので「はい、わかりました」と了承してくれるはずも無い。
 ULTを通じ、一日も早く住民の心の傷を癒したいという沖縄軍の必死の説得により、要請に応じた数名の専門家が読谷村に赴くことを決めた。
 身の安全確保を条件に、専門家達はラスト・ホープ発に飛行機に乗り、沖縄軍護衛の空港に向かうことにした。
 
 象の檻作戦決行中に愛用胡弓を破壊された鈴音は、あれから数日経つというのにまだ不機嫌だった。
 部下に暴言を吐く、トリイ基地内に物を投げつけて八つ当たりとかなりの荒れようだったが、今は若干落ち着いてきている。
 そのことを知ったラルフ・ランドルフ(gz0123)は、鈴音を嘲笑ってやろうとトリイ基地司令室を訪れる。
「ゼオン・ジハイドとあろう者が随分と無様だな。大切な楽器を壊されたことに腹が立ったか?」
 キッと睨み、余計なことを言うなと視線で訴えるが、ラルフは無視して話し続ける。
「図星か。お前の楽器と楚辺通信所の玩具は破壊されたが、人間に恐怖を与えることはできたようだ。洗脳されていた何人かが精神的に不安な状態に陥っているとか。奴らは自分達の戦力を有利にするのには成功したが、守るべきはずの住民を怖がらせた」
 滑稽な話だと嘲笑し、専門家が派遣され、住民のメンタルケアを行うことを伝える。
「それを邪魔すれば、奴らの信用はガタ落ちだ。我らの力を知らしめることができるが」
「‥‥好きにすればいい。私は知らん!」
 鈴音は立ち上がるなり怒鳴り、腰掛けていた椅子を蹴飛ばす。
「では、好きにさせてもらう」


 専門家達を乗せた飛行機は、沖縄軍のKVに護衛されながら順調に沖縄上空に向かっている。
「ここまでは大丈夫だけど、どうなるかわかんねぇからなぁ」
油断できないな、と愛機『エスポワール』の操縦桿を強く握るソウジ・グンベ(gz0017)の手が汗ばむ。
あともう少しで沖縄というところで、黒塗りの本星型ヘルメットワームに率いられたキメラとヘルメットワームの集団が行く手を阻むかのように出現。
「敵さんがおいでなすったか。護衛全機に告ぐ。敵襲来、戦闘態勢に入れ」
 絶対に飛行機を守り抜いてみせる! と沖縄軍全機は各自の持ち場に着き、戦闘に臨む。
「敵の数は多いが、死ぬ気で守り抜くんだ! 一刻も早く、住民を安心させよう!」
 これ以上誰にも怖い思いはさせたくない。それは、護衛に携わるすべての兵士が強く願うことだろう。
「‥‥来たか」
 我先にと飛び出したソウジを見て、本星型ヘルメットワームのコックピットでラルフがほくそ笑む。

●参加者一覧

リュイン・グンベ(ga3871
23歳・♀・PN
キョーコ・クルック(ga4770
23歳・♀・GD
狭間 久志(ga9021
31歳・♂・PN
キア・ブロッサム(gb1240
20歳・♀・PN
音桐 奏(gc6293
26歳・♂・JG
リズィー・ヴェクサー(gc6599
14歳・♀・ER
ユーリー・ミリオン(gc6691
14歳・♀・HA
BEATRICE(gc6758
28歳・♀・ER

●リプレイ本文


 青く澄み渡る沖縄上空。
 強風の中、ソウジ・グンベ(gz0017)率いる沖縄軍と傭兵8名騎乗のKVは、バランスが崩れないよう、慎重に操縦しながら心の専門家達を乗せた飛行機を護衛する。
「戦いに巻き込まれた住民の心は傷ついて当然、戦場の真っ只中で盾にされたのでは、恐怖に怯えもしよう」
 楚辺通信所を破壊すべく決行された『象の檻解放作戦』におき、洗脳された住民解放の避難誘導に関わったリュイン・カミーユ(ga3871)は、メンタル面までは手が行き届かなかったと痛感した故、この依頼にかける意気込みは誰よりも強い。
「まあ、今は心の傷を癒せる専門家を無事に送り届ける事が、我らに出来るサポートだろう」
「私もあの依頼に参加した身としては、自分達の行動の結果が何をもたらしたのか見届けねばなりませんね」
 住民達の行く末を見据えるべく、音桐 奏(gc6293)もこの依頼に参加した。
「作戦決行時は空戦やってたから、地上戦線で何が起こったかはボクは知らない。だけど、心が傷ついた人を癒す事の為に‥‥絶対、飛行機は護るのよ。辛い事を引き摺るなんて必要ない。そう思うから、ボクは参戦したんだ」
「飛行機を護衛するのは、戦いの余波で傷ついた人をフォローするのに必要な方々なのですね。将来の為にも、必ずや護ってみせますね。専門家に託すべき事は託して、ユーリー達はそれらを補佐できる様になのです」
 リズィー・ヴェクサー(gc6599)とユーリー・ミリオン(gc6691)は、一刻も早く、住民達を安心させたいと願う。

「メンタルケアを行うのは‥‥私には似合いませんし‥‥出来ませんが‥‥それを妨害する敵を落とすと言うことならば‥‥いつも通り‥‥ですね‥‥」
「後始末でも仕事は仕事‥‥気を引き締めねばなりません、ね」
 心を癒すことはできないが、敵を撃ち落すことはできると防衛ラインを形成し飛行するBEATRICE(gc6758)と、生存を第一とするキア・ブロッサム(gb1240)。
 恋人の狭間 久志(ga9021)と参加したキョーコ・クルック(ga4770)も、無事、専門家を送り届けたいという思いは強い。
「心の傷ってのは、辛いからね‥‥。久志との依頼、嫌な思い出なんかにしたくないからね」
「そうだね。現地の人の為にも、抜かれる前に片付けよう」
 他機より高度を高めに取り周辺に警戒するキョーコは、久志と通信を行いつつジャミング量に注意しながら敵機の接近を察知している。
「えと‥‥一緒に空飛ぶの初めてだけど‥‥よろしくね‥‥」
「これが最初の共同作戦‥‥だね、キョーコさん」
 もじもじしながら言うキョーコを可愛いと思いつつ、彼女との初飛行に緊張する久志だった。
「キョーコ! さん付けいらないってばっ!」
「悪い‥‥早く慣れるようにするから」
 付き合い始めたばかり、照れ隠しでキョーコを『さん』付けで呼んでいるようだ。
「狭間っち、巨ックル、ラブラブは護衛が終わってからにしたら〜?」
 リズィーのツッコミで真面目モードに切り替わったキョーコは、各機の武装と射程を確認する。
「さて、張り切っていきますか」


「本星型、HW集団との距離が縮まってきた。全員、戦闘配置につくように」
 ソウジからの連絡で、各機、戦闘態勢に入る。
「じゃ、いこっか〜。グン平、有人機と思われる機体が突破、飛行機に接近した場合は軍のKVと共に対応お願いね〜」
「わかった。飛行機は俺達に任せ、キミ達は思いっきりHWを倒して来い」
「では行くとしましょうか。よろしくお願いします、リュインさん」
「こちらこそよろしく頼む。邪魔はさせんぞ、ラルフ・ランドルフ!」
 リュイン機『chardon』と奏機『ディスコード』は、真っ先に黒い本星型に向かい飛び出した。

「さて‥‥嚆矢を放つとしましょう‥‥」
「攻撃開始です」
 速やかな数減らし、攻撃の対応による有人HW、無人HWの見当付けをすべくBEATRICE機『ミサイルキャリア』は、複合式ミサイル誘導システムII及び誘導弾用新型照準投射装置利用でのK−02小型ホーミングミサイルを発射。
 ユーリー機『ストラディヴァリ』は、K−02小型ホーミングミサイルによる弾幕飽和攻撃を張り巡らせてダメージ加算による弱体化、避けるHWの分散を促し各個分断を図ったが、強風が邪魔で思うように弾幕を張れなかった。
「これで十分弾幕になるかと‥‥」
 ミサイルキャリアがすべてのミサイルを使うことで、十分過ぎるほどの弾幕が。その後、飛行機寄りではなく迎撃的な位置に付き護衛を。
 2機による弾幕を掻い潜った2機1組のHWが4組、無造作に動くHW集団を確認したキアは、愛機『Reve』を強風による機体ブレを修正し、交戦空域に入り次第『複合ESM「ロータス・クイーン」』で敵機を補足、動向を監視すると共に迂回しての飛行機襲撃を警戒する。
「観測終了‥‥全機にデータ、送信します‥‥」
 初動のKVマルチロック兵器にてHWに関して動きを確認すると沖縄軍、傭兵各機に情報伝達。展開したKVを左右翼中央程度に区別し、劣勢面をソウジとミサイルキャリアに情報を送りフォローを要請すると沖縄軍、ミサイルキャリアと共に飛行機と敵軍の防衛ラインを形成し、混乱を招かないようソウジに指揮を任せて残りの敵機観測を。
「機体バランスが悪いのが‥‥厄介です、ね」

「おいでなすった! 久志、行くよっ!」
 有人HWがバラけないうちにキョーコ機『【修羅皇】』と久志機『紫電』はブーストで接近すると同時に、飛行機から引き離すよう、あえて自分達を標的にさせる。
 修羅皇が『ブースト空戦スタビライザー』を使用し、K−01小型ホーミングミサイルを自機両サイドのHWを狙い全弾発射したが、機体の揺れとわずかな隙をつかれ、残りのHWの標的となったが、危険を察知したのでブーストで軌道変更して回避。それと同時に1機撃破。
「久志にカッコ悪いとこ見せられないしねっ」
「流石キョーコさん! 彼女が相手だとやっぱ違うなぁ」
 味方のマルチロックミサイル展開、ストラディヴァリのミサイル着弾直後に合わせ修羅皇を狙う対の1機を接近した紫電がソードウィングで倒す。
「もう、さんはいらないっ!」
 戦闘中でも反論する余裕があるので、久志は苦笑するしかなかった。
 Reveから得た情報を元に、キョーコと共に連携の取れている有人HWを前衛をキープしつつ、飛行機との距離を取るよう意識して攻撃する。
「先手必勝、って、先越されちゃったか〜」
 リズィー機『ベガ・バッド』は、味方マルチロックミサイルに合わせてM−HM6FTと『アクティブスラスターB』を掻い潜るHWとキメラ群に発射し、沖縄軍、他対応機と共に飛行、擦れ違いに当てつつ機敏な動きで敵迎撃を回避しては連携を見せた敵を記憶し、違いから有人機と判断したものの情報展開とデータ収集をキアに依頼する。

「ユーリーは、自分が出来ることをするだけです」 
 己の力量範囲内で無理しないよう戦闘するストラディヴァリだったが、HWとキメラ群に囲まれても慌てず、焦らず『ステップ・エア(ベース)』『ステップ・エアBモード』を用いて脱し、標的を射線上に捉えた上で確実に当てるよう反撃に転じる。
 その際、周囲警戒方向を仲間と分担して互いの死角を補い、味方の砲撃射線にも注意して射程延長線上から逸れ、少しでも狙撃し易いよう移動しては仲間と協力し、ミサイルで慣性機動方向を誘導した上で追い詰めた箇所へPCB−01ガトリング砲を集中攻勢で叩き込んで確実に撃破を狙う。
「さて、ついてこいよ‥‥」
 ブーストでの逃げを装い、旋回反撃で警戒させ撹乱に出た紫電は意図的に自機を追わせ、その隙を仲間に撃ち落してもらっている。
「狭間っちに敵接近、システムテンペスタ発動〜!」
 可能な限り敵機を多く巻き込ませようと、ベガ・バッドは『システムテンペスタ』を発動するとM−MG60発射。
 併用した際の速射能力は敵機の回避機動を阻害し、600発もの弾が嵐の如く集中射撃されたのでその周囲にいたHW、多数のキメラは避ける間もなく倒された。
 数が減ってきたので、久志はハードシェルスーツの耐G効果確認を兼ね背後をとらせての機体姿勢ピッチアップ、空気抵抗と『翼面超伝導流体摩擦装置』で強引に機体を減速、高度をズラし、ニアミス気味に敵機をやり過ごしては更に制動をかけた小回りのクルビットでそのまま一回転、有人、無人問わずHWの背後からの攻撃を繰り返す。
「翼面超伝導流体摩擦装置使って多少マシなら、本物だ」
「あらかた片付いたようだけど一気に行くよっ! 出し惜しみは無しだっ!」
 HWを中心に集めた所で、修羅皇の『SESエンハンサー』使用のGP−7ミサイルポッド全弾、紫電、ベガ・バッド、ストラディヴァリの一斉攻撃で残りの有人HW、無人HWを撃破。


 後方のHWをすべて撃破したので、キョーコ達は本星型の相手をしている2機に合流。
 残るキメラ群は沖縄軍とキア、BEATRICEが飛行機を護衛しつつ倒すことに。
「強いのは‥‥強い人に任せるとしましょう‥‥」
「同感です‥‥。手脚の様にいかぬのが厄介‥‥かな、KVは‥‥」
 強風のハンデは同じはずなのだが、飛行タイプには関係ないのか、物ともせず突撃してくる。

「全センサー、記録機作動確認。では、観察を始めるとしましょう」
 ディスコートに搭載された各種記録機を起動し本星型の武装、性能等の情報を収集する奏だが、戦闘時にはリュイン護衛を優先に動くことに。
「リュインさん、遠慮なく攻撃してください。接近するHWは牽制しますので」
「そうしてもらえると助かる」
 chardonが本星型に接近する際、ディスコードは試作型「スラスターライフル」とΔ・レーザーライフルで援護する。
「ちょこまかと嗅ぎつけて邪魔しに来るとは、バグアはよほど暇らしいな。特にラルフ、貴様はな!」
 ディスコートの後ろ盾もあり、気兼ねすることなく本星型に接近してスナイパーライフルD−02での狙撃、84mm8連装ロケット弾ランチャー撃ち込みと射程に応じて攻撃を変える。
「邪魔だ!」
 追い払うよう本星型が砲撃するが、chardonはロールして回避したが強風に煽られ態勢を崩したものの即座に立て直したことで反撃を免れた。
「我を甘く見るな!」
 試作型「スラスターライフル」の射程まで接近すると弾幕で装甲を削り、強化FFを発動させるよう仕向ける。
「リュインさん、強化FFが発動しましたよ」
「ならば、何度も展開させて練力切れを狙うまで」
 奏も同じことを考えていたのか、KP−06ミサイルポッドで攻撃。
 chardon、ディスコードの牽制で強化FFを何度も張った結果、本星型HWは練力が尽きかけてきたのか、次第に回数が減ってきた。
 隙あり、と『DFバレットファスト』発動させたディスコートがライフル連続射撃後に再度強化FFすると見越してのミサイルポッドを発射。
「絶好のタイミングを見逃す狙撃手はいませんのでね」
「そろそろ風祭の元へお帰りの時間じゃないのか?」
『超伝導アクチュエータVer.3』を発動し、8式螺旋弾頭ミサイルやスラスターライフルを浴びせかけるように攻撃している最中、修羅皇と紫電が援護に駆けつけた。
「分が悪くなったか。今日はこのくらいにしておこう」
「させるかっ!」
 本星型を逃がすまいと修羅皇は射程2の位置に近づくとRA.3.2in.プラズマライフルで威嚇射撃、紫電は試作型G放電装置で回避阻害、I−01「ドゥオーモ」発射後にブーストで接近し後部をソードウィングで削ぎ落とそうとしたものの失敗に終わり、本星型は上空の彼方に飛び去っていった。
「逃げられたか‥‥」
 口惜しがる久志に、今回の依頼はあれを倒すことは含まれていないので仕方無いとリュインと奏が声をかける。


「な〜んだ、もう終わっちゃったんだ〜」
 つまんな〜い、とがっかりするリズィーだったが、気を取り直して邪魔な存在がいなくなったことを無線で飛行機に伝えることに。
「アロー? 此方傭兵、搭乗者は全員無事〜?」
 リズィーの言葉に安心した機長は、全員無事であることを報告した。
「よかった〜♪ 危険な空の旅、ご苦労様〜。お医者さん達の本番に幸運ある事を祈ってるね〜」

 飛行機より先に空港に到着した傭兵達は、到着ロビーで専門家達を待っていた。
「依頼が無事済んで良かったね、キョーコさん。後は沖縄の人の心が癒えれば万々歳ってところかな」
 依頼成功、一緒に空に出られたことを素直に喜ぶ久志だったが、キョーコは『さん』付けで呼ばれることが不満なようで。
「何度も言うけど、キョーコって呼んで! さん付けはもういらない!」
 恋人なんだから‥‥と不貞腐れるが、気づいてもらえるだろうか。
「わかった。ぇと‥‥キョーコ‥‥さん?」
「また言った!」
「ごめん‥‥」
 久志が、一日も早く呼び捨てにする日が来ることを祈る。
 専門家達が到着すると、ソウジと傭兵が護衛して住民達が待つ読谷村内の病院へ。
 住民を不安がらせない、不審な点を与えないようにと医師や看護師に扮した沖縄軍数名が万一に備え護衛に当たる。
 リュインとBEATRICEが手伝いを申し出たので、専門家達はありがたくその厚意に甘えることに。
「これを使ってもいいか?」
「アロマキャンドルですね。構いませんよ」
 許可が下りたので、リュインは持参したアンバーとスノーホワイトに火を灯す。
 柑橘系の爽やかな香り、スノーホワイトの暖かみのあるほのかな優しい香りで落ち着いた住民の何人かがキャンドルをじっと見ている。
 その中の子供が身体を抱えて震えているので、リュインはそっと抱きしめ、頭を撫でたり、手を握ったり、話に耳を傾けたりして安心感を与える。
(あの時、怖い思いをさせてすまなかった)
 そう、心の中で詫びながら。
 無愛想なので役に立たないかもと心配していたBEATRICEだったが、雑用と運搬で大いに役立ち、専門家達に感謝された。
「似ても似つかぬ物、かな‥‥」
 同行しているがケアに興味がないキアは、専門家達の様子を興味津々に見ているリズィーを眺めている。
「キーにゃん、ボクの顔に何かついてるのかな〜?」
「いえ、何も‥‥」 
 
 ケアが行われている頃、ソウジは奏から戦闘中に得られた黒い本星型の情報を受け取った。
「今回、私の機体が収集した情報をお渡しします。今後何かの役に立つと幸いなのですが」
「ありがとう、今後の参考にさせてもらうよ。今度はどうなることやら、ってカンジだけどな」
 溜息をつくソウジに「何か不安なことでも?」と尋ねると、こういう返事が。
「あいつ、次は風祭とセットで来るんじゃないかなー、と‥‥」
 その可能性は有り得る、と一瞬不安が過ぎるが、それは取り越し苦労だと思いたい。

 専門家の努力もあり、住民達の心は徐々に癒え、数日後には完全とまではいかないものの、落ち着きを取り戻したのだった。