タイトル:【GR】贈り物届けようマスター:竹科真史

シナリオ形態: イベント
難易度: 普通
参加人数: 5 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2011/12/16 22:09

●オープニング本文


●GR鉄道計画
 その計画は、カンパネラ学園の関係者を集め、チューレ基地跡を利用する形で、行われる事になった。
 残骸と化した基地は、言い換えれば資材の宝庫でもある。そして、上手い具合に空いた土地を放って置くのも勿体無いだろうと言う事で、話はまとまっていた。
 しかし、かの地にはまだ、敵も多い。
 莫大な資金のかかる事業に、極北と言う観点から工事を請け負ったのは、かつてシベリアに鉄道を通したプチロフ。
 その代表マルスコイ・ボーブルは、作業員達の安全確保を、その条件に求めた。
 さもありなんと頷いた学園側の総責任者は、ウォルター・マクスウェル卿。
 加えて、会長でもある龍堂院聖那、技術部門の責任者はキャスター・プロイセン准将と、それぞれの関係者が、それぞれの役目を持って、再び極北の地へと赴く事になる。

 グリーンランドに鉄道を。

 基地を作り、街を作り、それを結ぶ。絆と‥‥共に。

●建設現場への届け物
 鉄道敷設某所での温泉建設地。
 グリーンランド鉄道のスポンサー、マルスコイ・ボーブルが視察に訪れ、2日間不眠不休で完成させた足湯を喜んでもらえたことで作業員達のやる気がアップした。
 1日も早い観光活性化のために温泉を完成させようというスローガンのもと、作業員達は一丸となって更に作業のスピードをあげた。
 頑張った甲斐あり、内装に少し手を加えるだけで完成というところまで漕ぎ付けたのだが‥‥。
 体力自慢の現場監督以外の作業員が過労でダウン。
「完成を急がせたいのはわかるが、あいつら無茶し過ぎだろう」
 温泉建設の様子を伺いに行っていた秘書からそのことを聞いたマルスコイはそう言うと、元気付ける方法はないものかと考える。
 彼ならウォッカを飲めば力が沸くだろうが、作業員の中には下戸なのもいるかもしれないし、二日酔い状態での作業は危険だ。
 美味いものでも食わせれば精がつくか、と作業員達にボルシチとピロシキを食べてもらうことにしたのだった。
 何故これかというと、マルスコイがロシア人だから。
「ついでもウォッカも差し入れよう。こいつは暖まるぞ。ボルシチとピロシキは誰かに作ってもらうか。出来立てホヤホヤは美味いしな」
 早速行動開始だ! と意気込みマルスコイは、秘書に材料護衛と調理担当者を集めさせるのだった。

 差し入れ提案と同時刻。
「できたー! 初めてにしては上手にできたよね?」
 マフラーを編み終えた少女がニッコリ笑って広げて見る。
「お父さん、喜んでくれるといいな」
 手作りのクリスマスプレゼントをグリーンランドで頑張っている父に早く渡したいと、少女は睡眠時間を削って心をこめて編んだ。
 できれば自分で渡したいところだが、父の仕事の邪魔をしては悪いと現地行きを諦めることに。

 マルスコイと少女の依頼は、ULTと地上のカンパネラ学園分校に通達された。
 カンパネラ学園から、調理に適した人材として稗田・盟子(gz0150)が選ばれた。
「グリーンランドね〜。この年になって海外に行けるとは思わなかったわ〜。寒いのは苦手だけど〜頑張るわね〜」
 寒さを想像しブルッと身震いする。

 出発すると同時に、建設現場付近にキメラが出現したという報告が。
 依頼人2人の贈り物を無事届けることができるだろうか。

●参加者一覧

/ 真田 音夢(ga8265) / 志羽・翔流(ga8872) / マルセル・ライスター(gb4909) / エリノア・ライスター(gb8926) / フランツィスカ・L(gc3985

●リプレイ本文

●護衛
「この人数じゃ、俺もやらなきゃ駄目だよね。戦うの、好きじゃないんだけどな‥‥」
 AU−KVをバイク形態にし、併走しながらマルスコイ・ボーブルが用意したボルシチとピロシキの材料と差し入れのウォッカが詰まれたトラックを索敵しながら護衛するマルセル・ライスター(gb4909)が不安になるのも仕方がない。
 彼を含め、護衛する能力者は双子の妹のエリノア・ライスター(gb8926)、温泉建設の現場監督に手渡す手編みのマフラーが入っている赤いリボン付きの紙袋を抱きしめてトラックにじっと座っている真田 音夢(ga8265)、稗田・盟子(gz0150)が乗っているキャンピングカーに同乗している志羽・翔流(ga8872)、マルセルを追いかけてやって来たフランツィスカ・L(gc3985)の5人だけなのだから。
 先頭を走るマルセルとエリノアだったが、急ブレーキで停止しトラックとキャンピングカーに止まるよう指示した。
「どうした!?」
 キャンピングカーから降りた翔流とフランツィスカが駆けつけ、事情を聞くとすぐトラックにいる音夢にキメラ退治開始を告げる。
「AU−KV神経接続、アシュトレイト起動!! っしゃぁ、来た来た、来やがったなぁ!! 丁度退屈していたところだ!! 兄貴、先に行くぜッ!!」
「‥‥って、エリノア!? ちょ‥‥待っ‥‥」
 AU−KVを装着したエリノアは、マルセルの制止を振り切りキメラの群れに飛び出していった。
「防御はお任せ下さい。マルセルさん達は敵の殲滅に専念を」
「わかった、ここは任せるね。AU−KV神経接続、ミヒャエル起動!」
 マルセルさんの半ズボンが‥‥と残念がるフランツィスカだったが、気を取り直して音夢が誘導してなるべく遮蔽物が少なく、周囲を360度見渡せる場所に停めてあるトラックに張り付く。
「ここで‥‥迎え撃ちます。顔を出さないように」
 運転手にそう言うと、音夢はトラックの上に乗り『バイブレーションセンサー』でキメラの位置と数を把握、仲間に無線機で知らせる。

●戦闘
「7時方向、アザラシ1体。9時方向、トナカイ4体。11時方向、クマ1体。1時方向、ペンギン6体」
「了解!! 疾風怒濤のドッペルトロンベ、アシュトルーパーのエリノア様たぁ私のことだァ!! 死にたい奴からかかってきやがれ!! ヒャッハー!!」
「皆、閃光手榴弾使うから気をつけて!」
 ワンテンポ遅れて装着したマルセルは閃光手榴弾のピンを抜き、迫りくるキメラに向かい放り投げた。
「うぉ!?」
 ひとり先走ったため、閃光手榴弾使用を聞いていなかった翔流が巻き添えに。
「そこの奴、もう巻き込まれるなよ!!」
「う、うるさい!」
 強烈な閃光で目をやられながらも、勘でガドリングシールドで鉢合わせたホッキョクグマの進攻を防ぐがそろそろ限界だった。
「今行きますから!」
 援護すべく動き出したマルセルは『竜の鱗』を発動すると右回りに動き、双剣「パイモン」でホッキョクグマを斬りつけようとするが、翔流ごとシールドを振り切ると同時に爪で弾かれた。
「たっ‥‥戦いの基本は‥‥守りから‥‥っ! く、訓練通りに‥‥っ!」
 堅実に間合いと守備を大事にという戦法で挑んだものの、圧倒的なパワーなホッキョクグマに苦戦。まだ目がくらむが、即座に体勢を立て直した翔流がガドリングシールドで攻撃を防ぐ。
「今のうちだ!」
「わかりました! ドラッへヴァルカンッ!!」
 翔流が離れると同時に『猛火の赤龍』付与の怒涛のラッシュ攻撃。これによりホッキョクグマ撃破。
「次、来たぜ。横一列にって‥‥キメラの癖にGメン歩き!?」
 何それ? とキョトンとなるライスター兄妹だったが、整列して迫りくるトナカイに向かい閃光手榴弾を投げる。
 閃光と音に怯んでいる隙に、攪乱するように飛び込むエリノアは『竜の翼』で跳ね回り、背面をとられないように距離をとりつつ、左回りに超機械「トルネード」でまとめてダメージを与えていく。息の合った動きのマルセルとエリノアは互いの死角をフォローしながら横一列で突進するメストナカイを倒していく。
「コイツは痛ェぞ!! シュツルムヴィントッ!!」
 残るオストナカイはエリノアの『竜の角』付与の超機械「トルネード」での必殺技、マルセルと翔流の援護で倒された。
 そんな彼らを発見したペンギンは一斉に腹で雪原を滑って突進。速いスピードに対応しきれず転倒した3人は一斉にヒレでペチペチ叩かれたが、やられてたまるかと反撃。
「ヘッ、ウチのシマで暴れようなんざ、46億年はえェんだよ!!」
 全部倒したぜ! と喜ぶエリノアを見て、マルセルと翔流はまだ何かいたような気がしてならない。彼らの考えは気のせいではない。まだ倒していないのが1体いる。

●埋葬
「邪魔はさせないんだから‥‥!」
 動きが鈍いため、閃光手榴弾に巻き込まれても普通に動けるアザラシがのそのそとトラックに近づいて来たのでフランツィスカは歩み寄り、アスピドケロンの盾で叩きつけながら『仁王咆哮』で自分自身に向けさせる。防御しながら『自身障壁』を発動させたので、ある程度の攻撃に耐えられる。
「オイタは、困ります」
 トラックの上から『電波増強』を発動した音夢は、超機械「ヘスペリデス」での必殺の一撃をアザラシに。
「あっ、ごっ、ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!」
 謝りながら釘バットで叩きつけるフランツィスカ。
 トラックの様子を見に来た3人が駆けつけた頃、アザラシは撲殺されていた。

 音夢が倒したキメラを埋葬したいと言いだしたので、全員で行うことに。
 キメラの死骸に触れるのは気分が良いものではないが、盟子やトラックの運転手、マルスコイの秘書に見せるわけにはいかない。
「死ねば皆同じ骸。死を穢してはバグアと同じになってしまいます。願わくば彼らの魂が、優しい命に生まれてきますよう‥‥」
「次の命では、幸せに生きてね‥‥おやすみなさい」
 墓に手を合わせる音夢とマルセル。

●料理
 キメラ退治に手間取ったが、どうにか温泉建設現場に辿り着くことができた。
 待ってました! と現場監督をはじめとする作業員全員が出迎えてくれた。
「現場監督さんは、どなたですか‥‥?」
「俺だけど、何か?」
「これ‥‥」
 音夢から紙袋を受け取り、何だ? と中を見る現場監督。そこに入っているマフラーを見て、これを自分のために編んだのかと少し驚き顔に。娘から以前送られた手紙に、頑張って編んでいることが書いてあったが、誰のものかまでは書かれていなかった。
「娘さんの為にも、頑張らなくては、いけませんね‥‥」
 柔らかく笑顔を浮かべて言うが、すぐ無表情に。

 プレゼントを渡し終えた音夢は、ボルシチとピロシキを作っている盟子を手伝いに。
 作業員達の食事を作るための厨房はあるのだが、簡易的なものなので本格的に作れないだろうとマルスコイがキャンピングカーを手配し、秘書に運転させたのは正解だった。
「翔流くん、疲れているんだから休んだら〜?」
 盟子が心配するが、傭兵だから心配無用と笑って手伝う。
「ボルシチにピロシキねぇ。わり、作ったことない。レシピ教えてくんない?」
 大衆食堂の調理師だけあって定食とか家庭料理は得意だが、ロシア料理は作ったことがないようだ。
「ボルシチはロシア風スープですから、そんなに難しくはないですよ」
 手馴れた手つきで肉を丁寧に下処理し、香味野菜と一緒に下茹でするマルセルがフォロー。
「スープには肉の骨からダシを取ってブレンドし、醤油と赤ワイン、少量の血を加えて調味しますね。煮汁に濃厚な味わいと、力強く何層にも重なるお肉の旨味が出るフレンチの技法です」
 博識だねぇと感心する翔流に、この半年、各国を巡り、色々な国の料理を学んできましたからとマルセルは答えた。
「傭兵は多国籍。故郷の味は千差万別ですから」
「そうね〜。ボルシチは翔流くんとマルセルくんにお任せして〜、私はピロシキを作るわね〜」
「これが終わったらパンプーシュカ(丸いふかふかの小さな揚げパン)を作りますね」

 ピロシキは「小さなパイ」を意味するロシアの調理パンだが、調理法は揚げるか、オーブンで焼くかである。ロシアのピロシキはオーブンで焼くのが一般的だそうだが、揚げたものも作ることに。
 大規模作戦で炊き出しを良くやっていたということもあり、ピロシキの具をパン生地に包む音夢の手付きは手馴れたものだ。
「音夢ちゃん、お料理上手なのね〜。いつお嫁さんに行っても恥ずかしくないわね〜」
 揚げる準備をしている盟子に褒められ、頬が少し赤くなるが俯いているのでわからず。
 ボルシチを翔流に任せたマルセルは、オーブンの前でパンプーシュカが出来上がるのを待つ。その様子をフランツィスカは時々チラ見しているが、盟子達の手伝いをしっかり。
「そういえば、日本のピロシキを食べたことがありますが‥‥あれはなんですかね、揚げ中華まん‥‥ですかね?」
 マルセルの半ズボンをチラっと見てから疑問を口にする。
「日本のピロシキは揚げ中華まんみたいなものだから、そう考えてもいいわね〜。さ、こっちのものはオーブンで焼きましょう〜」

●食事
 数時間後。
 出来上がったボルシチとピロシキは、完成したばかりの宴会会場で待機したいる作業員達に振舞われた。
「へい、おまち。あともう少しで温泉完成だってな。頑張ってくれよ」
 配膳したものを作業員達に手渡し労う翔流。
 食欲旺盛な作業員達の食べるペース、おかわりを要求するペースが速かったので配膳を手伝う翔流と音夢は忙しかった。
「よし、兄貴。ビールを頼む!」
「駄目だよ、エリノア。僕達はまだ未成年だろう?」
「っせぇなぁ。冗談だよ。さ、食うぞー!」
 和気藹々な兄妹に近づいたフランツィスカはオーブンで野菜たっぷりのピロシキを焼き上げ、ボルシチに添えマルセルに差し出す。
「えと、マルセルさんには遠く及びませんけど‥‥」
 もじもじしながら言うが、エリノアと分けて食べるという返事が。マルセルだけに食べてもらいたいという気持ちは気付いてもらえなかったようだ。
「皆さ〜ん、これもどうぞ〜」
 盟子が差し入れしたのは、カンパネラ学園の校章をかたどった調理パンだった。
「カンパネラパンのピロシキよ〜。温かいうちに召し上がれ〜」

●風呂
 食事の最中、場を盛り上げるために翔流は得意の皿回しを披露。皿は配膳に使った食器、棒は温泉建設現場で調達したものを使っている。ウォッカで酔いが回った作業員達に大好評だった。

 暖かい食事で腹が満たされ、宴会芸を一通り楽しんだ後は露天風呂でゆっくり。
「あー、食った食った。食ったら眠くなっちまったな。おい、帰るときに、起こしてくれや」
 そう言うなり、だらしない格好で寝てしまった妹を見てもう少し女らしくしてほしいと思うマルセルだった。
「マルセルくん、一緒にお風呂に行かない〜?」
 盟子が声をかけるなりフランツィスカが手をワキワキさせながら忍び寄るが‥‥
「すみませんが、妹を介抱しますので‥‥」
 お風呂でお背中をお流ししたかったのに‥‥とガックリ。
 音夢も誘ったが「後片付けがありますから‥‥」とジト目で見るので、嫌なのだと察知し無理強いしなかった。
 盟子の付き合いで露天風呂に行ったのは、翔流とフランツィスカの2人だけだった。

 露天風呂は混浴だが、更衣室は当然ながら男女別。
 水着に着替えた3人は、現場監督はじめとする作業員達とゆっくり浸かることに。
「悪いわね〜、背中流してもらって〜」
「い、いえ‥‥」
 本当はマルセルさんのお背中を‥‥と顔は笑って、心は泣いてのフランツィスカ。
「現場監督さん、娘さんが編んだマフラーの感想は?」
 翔流の質問に「最高だ、すごくあったかい」と満足気に答える。娘の初めの手編みのマフラーが貰えてすごく嬉しかったのだろう。
 作業員達の何人かがフランツィスカを見ているので、あんた達彼女いるのか? と尋ねた。
「いや、いない」
「んじゃ、彼女作らないの?」
 そういうあんたはどうなんだと逆に聞かれたので、翔流はキッパリこう答えた。
「俺の彼女は料理だ!」
 いや、それ彼女でも何でもないし‥‥。

 その頃、能力者達に同行していた秘書がマルスコイに食材が無事に到着し差し入れができたこと、作業員達にとても喜ばれたことを報告していた。
「そうか、そりゃ良かった」
「温泉ですが、今月末に完成するそうです。作業員達には、くれぐれも無理するなと念を押しましたのでご安心を」
「ご苦労さん、ゆっくりしてってくれ」
 連絡を終えた秘書はその言葉に甘え、のんびり足湯に浸かることに。

 マルスコイの差し入れ、現場監督のプレゼントお届け:成功!