タイトル:【GR】突出するモノマスター:竹科真史

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 6 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2011/10/04 22:41

●オープニング本文


●GR鉄道計画
 その計画は、カンパネラ学園の関係者を集め、チューレ基地跡を利用する形で、行われる事になった。
 残骸と化した基地は、言い換えれば資材の宝庫でもある。そして、上手い具合に空いた土地を放って置くのも勿体無いだろうと言う事で、話はまとまっていた。
 しかし、かの地にはまだ、敵も多い。
 莫大な資金のかかる事業に、極北と言う観点から工事を請け負ったのは、かつてシベリアに鉄道を通したプチロフ。
 その代表マルスコイ・ボーブルは、作業員達の安全確保を、その条件に求めた。
 さもありなんと頷いた学園側の総責任者は、ウォルター・マクスウェル卿。
 加えて、会長でもある龍堂院聖那、技術部門の責任者はキャスター・プロイセン准将と、それぞれの関係者が、それぞれの役目を持って、再び極北の地へと赴く事になる。

 グリーンランドに鉄道を。

 基地を作り、街を作り、それを結ぶ。絆と‥‥共に。

●温泉建設始動
 鉄道敷設某所での作業は順調に進んでいたが、その途中で水蒸気が噴出したので一旦中断。
 最初は少しずつだったが、それは時間が経つにつれ勢い良く噴出したそれは専門家の調査の結果、溜まった地下水が地熱により加熱され、下層部が沸騰を始めた温泉に適した間欠泉であることがわかった。
 間欠泉が発見されたので、これを利用して観光産業を活性化させようとボーリングによって人工的に湧出させ、これを温泉に用いることに。
 世界各国の温泉を調べ、鉄道付近に旅の疲れを癒すために気軽に利用できる足湯、露天風呂を含めた水着で利用できる入浴施設を建設することが決定した。離れたところには数分おきに噴出する間欠泉があるので観光の目玉になるだろう。

 残りの大掛かりな基礎工事が終わり、本格的な内装工事にとりかかっていた作業員が地面が揺れたかと思うと、作業員の足元から何かがボコッと出てきた何かに押し上げられるようなかたちで転倒。その後、それは作業員に危害を加えることなくすぐ姿を消したかと思いきや、再び姿を現した。
 似たような現象は建設地周辺にもあり、特に被害が酷かったのは、大きな穴が開き、床が瓦礫状態となった大浴場建設地だった。
「順調に工事が進んでたのに! キメラの奴め‥‥」
 これ以上壊されては困る! とULTに依頼要請した現場監督はキメラ退治の妨げにならないよう作業員全員に避難するよう指示したが、大浴場周辺の作業にとりかかっていた何人かは負傷して動けない状況下に。
「なんてこった‥‥」
 いつ出現するかわからないキメラを恐れた作業員達は、なすすべなく傭兵達が来るのを待つしかなかった。

●参加者一覧

終夜・無月(ga3084
20歳・♂・AA
千祭・刃(gb1900
23歳・♂・DG
殺(gc0726
26歳・♂・FC
シクル・ハーツ(gc1986
19歳・♀・PN
シヴァ・サンサーラ(gc7774
27歳・♂・HA
柊 美月(gc7930
16歳・♀・FC

●リプレイ本文

●穴だらけの建設現場
 変則的に出現するモグラキメラ出現により、作業員達は温泉建設を中断せざるを得なくなった。
 ぽっかり開いた大小様々の穴を見ながら、退治してくれる傭兵達が到着するのを今か今かと待ち侘びていた。
「大丈夫‥‥貴方達は俺が必ず助けますよ‥‥」
 終夜・無月(ga3084)が到着すると、作業員達は「待ってました!」と言わんばかりに彼を出迎えた。
「早速ですが‥‥現場に取り残されたという作業員の人数とどのあたりにいるかを教えていただけませんか‥‥?」
 到着するなり、無月は現場監督と作業員達に救出対象者の話を聞く。現場監督の話によると、大浴場の作業にあたっていた3人が瓦礫の下敷きになったとのこと。避難し終えた後に人数確認をしたので間違いはない。
「3人お助けすれば良いんですね〜。担架が必要になるかもしれませんので、棒に上着を通して作る簡易担架みたいなものを作っておいてほしいです〜」
 怪我をしている作業員を助けるべく参加した柊 美月(gc7930)は、避難した作業員達に用意してほしいと頼む。
「ずいぶんと派手に壊されているな‥‥。この様子だと、あまり時間はかけられなさそうだ」
 大浴場を位置を確認したシクル・ハーツ(gc1986)は覚醒し、取り残された作業員の安否を気遣う。
「何時も、いきなり出て来るなキメラは。この状態はまるでリアルなモグラた‥‥いや、言わないでおこう」
 穴だらけの劣悪な足場を確認しながら殺(gc0726)は言葉を止めた。側に一刻も早く動き出したいだろうシクルがいるので、冗談っぽいことは言えない。
「温泉とモグラ、何の関係があるんでしょうか?」
 戦闘準備をしながら疑問を素直に口にする千祭・刃(gb1900)。
「迷惑なモグラさんですね〜。せっかく温泉入れそうになってきてるのに〜‥‥。あ、そっか〜。モグラさん、温泉掘るのを手伝いたかったのに空回りしちゃったんですね〜」
 美月の発言に「それは無いと思いますけど‥‥」とボソリと突っ込む刃。
「温泉でグリーンランド観光活性化ですか。協力したいものです。バグアやキメラに恐怖するご時世ですが、人々の心を癒す温泉というものがあっても良いと思います。ところで、温泉とは何ですか?」
 シヴァ・サンサーラ(gc7774)が真剣な顔で皆に訊ねる。
「温泉、知らないんですか?」
 目を丸くして驚く刃。
「温泉は日本人にとっては極楽みたいなものだ! って、とーちゃんが言ってました」
「それでは説明になっていませんよ〜。温泉というのはですね〜」
 キメラ退治前ということもあり、美月は簡単に温泉の解説を。
「成程、温泉とはそういうものなのですか。心も身体も癒されそうですね」
 完成したら是非温泉に浸かりたいものです、と楽しみにするシヴァ。
「あの‥‥そろそろ行動開始しませんか‥‥?」
 救助対象の作業員の人数、予測位置を現場監督や作業員達から聴取していた無月は、話し込んでいる3人にキメラ退治を促し救出と退治の二手に分かれようと提案した。
 早く行動しないと作業員達が危ないと、全員集まると素早く話し合い、刃、殺、シヴァが建設現場周辺のキメラを足止めし、その間に無月、シクル、美月が作業員を救出することに。
「行動開始です‥‥」

●神出鬼没的なモグラ退治
「早く倒して作業者の人達に安心してもらおう」
 モグラがいつ、どこから出現するのか予測不可能なこともあり、殺は足元に注意しながら右手に颯颯、左手にライトピラーを構える。
「建築作業員達が汗水流して築き上げたものを破壊する行為、許しません。救出班の皆さん、取り残された作業員の皆さんを一刻も早く救い出してください」
 グリーンランドを活気付けるため、最愛の人を奪ったキメラを1体も逃すことなく倒すと誰よりも強く意気込むシヴァは救出班にそう言うと『バイブレーションセンサー』を使いモグラを感知し始める。
「これで卓袱台返しされないはずです」
 DN−01「リンドヴルム」を装着し、どこから出てくるかわからないモグラにひっくり返されないよう地面をおもいっきり踏ん張る刃が『竜の爪』を使い身構える。
「9時の方向に小型3体、1時の方向に小型4体接近しつつあります。私の近くに小型が‥‥」
 的確に指示を出すシヴァだったが、足元が疎かになっていたこともあり小型モグラ数体に押し上げられるようなかたちで転倒。すぐ反撃と身構えるが、モグラ達は地中に逃げた後だった。
「そこだっ!」
 指示の後、9時の方角に向かった刃は出現した小型モグラ3体を長刀「乱れ桜」、蛇剋を使い攻撃するが1体逃してしまった。
「タイミングが難しいですね。キメラでのリアルモグラ叩き、面白いような、面白くないような‥‥」
「それ以上言うな」
 視野を広く、動くものに反応して動くよう心がけていた殺は退治前に自分が言いかけたことを刃が言ったのでつい突っ込んでしまったが、気を取り直して1時の方角を陣取り『刹那』を発動すると一歩手前に出現した小型モグラを斬りつける。
「殺さん、背後から大型1体接近します」
 シヴァが指示するので素早く振り向くと『迅雷』で接近し、『円閃』を使い颯颯で下から上に斜めに斬り、ライトピラーの下の刃で突き、上の刃で大型モグラの頭部を横に斬る。
「救出班のところには行かせないよ!」
 弱りながらも地中に逃げ込もうとしたが『竜の翼』で駆けつけた刃がすかさず『竜の咆哮』で吹き飛ばす。
「さあ、どう来る」
 武器を構え、殺はまだ出現していないモグラを警戒する。

●一瞬たりとも気が抜けない救出
 退治班が小型モグラ相手でてんてこ舞いしている間、救出班の3人は地面の盛り上がり具合を目視し、モグラ出現を予測しつつ慎重かつ、足早に大浴場へと向かう。
 無月は『バイブレーションセンサー』で自分の周囲のモグラを感知すると即座に飛び退き、出現した小型モグラ数体をすかさず退散。
「あそこに誰かいるようですね‥‥」
 大浴場付近の瓦礫から何かが微かに動くのを感知したが、キメラか作業員かわからないので確認する。僅かな隙間を覗き込むと人間の足が見えたので、近くにいたシクルを呼ぶ。
「作業員発見しました‥‥手伝ってください‥‥」
 瓦礫に手をかけると『豪力発現』で高められた力を生かし、人命配慮を心がけながら大きな音を立てないよう少しずつ瓦礫を撤去。
「しっ、静かに。大丈夫か? ‥‥痛むかもしれないが少し我慢してくれ。すぐ助けるから」
 シクルは瓦礫が崩れないよう、慎重に下敷きになっている作業員達に声をかけながら助け出す。
 離れたところで退治班の様子を窺っていた美月だったが、救出の様子を見ると『迅雷』で大浴場付近に駆けつけ瓦礫撤去を手伝う。
「これをつっかえ棒にして救出です〜」
 細心の注意を払い、シクルに手伝ってもらいボーンメイスで梃子の原理の要領で瓦礫を除け、隙間に潜り込んだ無月が下敷きになっている作業員を1人ずつそっと助け出す。退治班が小型モグラを倒しているからなのか、幸いにも救出中に1体も近づかなかった。
「他にまだ埋まっている人はいないか?」
「これで全員です‥‥ありがとうございました‥‥」
 小さな声で作業員の1人が礼を言う。
「もう何も言うな。この人、足を骨折しているようだ」
「これを添え木代わりに‥‥できるかな〜?」
 美月は瓦礫の山から鉄の棒を取り出し、適当な長さに切断する。
 それを受け取ったシクルはエマージェンジーキットから包帯を取り出すと棒を足に添え、解けないよう巻きつける。
「作業員達を無理に動かすのは危険だ。無月さん、練成治療を頼む」
「わかりました‥‥」
 救出した作業員を『練成治療』で治療し安全な場所へ。
 無月の背中に1人、両肩に1人ずつ乗せしっかり押さえて運びたいところだが、安静にさせないといけない状況だったのでモグラに注意しながら1人ずつ運び出す。
「モグラか‥‥。正確に攻撃できていないところを見ると、原種と同様に目は退化しているみたいだな。‥‥だとしたら何で此方を察知している‥‥? ‥‥音‥‥か?」
 推測通りだとしたら音に釣られるはず。
 周囲を見渡し何も無い場所に弾頭矢を撃ち込むと、爆発音に誘われたかのように小型モグラ数体がその方向に移動し始めた。
「キメラは私が引き付けるから、2人はその隙に作業員達を早く安全なところへ。モグラ塚に落ちないよう気をつけて」
 モグラ塚、というのはシクルがつけた穴の名前だ。
 2人が作業員を運んでいる時に小型モグラ数体が出現しかけたのを見ると、邪魔させないとすかさずフォロー。小型のものに比べるとやや大きめの地面隆起があったので、大型が出現したと察知。
「‥‥大型がきたか。救出の邪魔をするな!」
 大型モグラの前に先回りすると『二連撃』で一気に倒し、作業員達が遠く離れるまで無人箇所に弾頭矢を射ち込みモグラ達の注意を逸らす。
 シクルのフォローのおかげで、無月達は無事作業員を遠ざけることができた。
「私は、ここで護衛も兼ねて付き添って作業員さん達を介護してあげようと思います〜。無月さんは、シクルさんと一緒に退治班に合流してください〜」
「ではお願いします‥‥。美月、無理しないように‥‥」

●皆でリアルモグラ叩きを
 作業員全員救出を確認した退治班は、モグラにひっくり返されることがないよう慎重に残りを一斉に退治することに。
 美月がいる辺りにモグラが向かわないよう、殺は地面を足で叩いたり、音を出して出来るだけ気を引いて自分のところに誘い込む。
「かかったな」
 小型モグラが出てきたところを一斉攻撃。誘い込みに失敗し、作業員のところへまっしぐらなものに関しては『迅雷』で割り込み、自分の体を盾にして庇った。
「ありがとうございます〜。私が戦うのはやむを得ない場合だけです〜!」
 殺が庇いきれなかった小型モグラは、作業員達に手出しさせませんと美月にボコボコに。
 無駄な破壊を避けながら明鏡止水を身体の一部とし、己が豪力で変幻自在に操る無月は如何なる状況においても全力で扱い、研ぎ澄ませた神経と卓越した体捌きで突き入る隙を一切与えずモグラを確実に仕留めていく。
「大型が来ましたか‥‥」
 足元の違和感と『バイブレーションセンサー』で位置を特定。地面から顔を出したところを『豪力発現』付加の脳天割りを叩き込む。それでも逃げようとしたので、そうはさせないと首を斬り落とす。
 大型はすべて退治したので、残りは厄介な小型のみとなった。
「温泉は日本人にとっての極楽だからね。絶対に作ってもらいますよ!」
 養父母のためにとモグラ退治を張り切る刃に対し、殺は冷静に、確実に颯颯とライトピラーを使い分け、逃さず小型モグラを斬りつける。背後にかろうじて原型を留めている基礎地盤があったので、これ以上壊させるかと甘んじて攻撃を受け阻止する。
 そんな2人は感知できなかったモグラにひっくり返されたりしたが、体勢を立て直すと反撃に転じてはちまちま倒していく。
「12時の方向、50メートル先から小型10体接近します。気をつけてください」
 シヴァは『バイブレーションセンサー』を駆使しモグラ出現位置を正確に伝えるが、指示を出すのに必死なため小型モグラを警戒できずにいたので何度も転倒させられた。
「待たせたね、残党狩りに来たよ」
 退治班に合流したシクルは、音で誘導すべく弾頭矢を打ち込む。
 時間がかかったものの、無月とシヴァの『バイブレーションセンサー』による感知、己の直感で、美月を除く全員で協力しながら厄介な小型モグラをすべて退治したのだった。

 リアルモグラ叩き、もとい、モグラキメラ退治:成功!

●温泉建設再開
「皆さん、お疲れ様でした」
 モグラ退治終了後、シヴァは皆を『ひまわりの唄』で回復。
 キメラの死骸を残したままで「キメラ退治終わりました」と報告しても後味が悪いということもあり、作業員達に見せないよう始末をしてから無月は現場監督にキメラ退治が終わったと報告しに行った。
 激しい戦闘にも関わらず基礎と土台は無事だったので、少しの手直しをすればすぐにでも作業に取り掛かれるだろう。
 美月は作業員数人を呼ぶと作ってもらった簡易担架を運ばせ、負傷した作業員を1人ずつそっと乗せ、安全な場所に運び込む。その後、救急車で病院に運ばれるまで付き添った。
「病院でちゃんと手当てしてもらってくださいね〜」
 覚醒を解いたシクルは、穴だらけな建設現場を見て今後のことを心配する。
「温泉、完成するの楽しみだね。でも、これだけ穴だらけだと、また工事するの大変そうだよね‥‥」
「大丈夫ですよ、きっと」
 シヴァは温泉が完成し、少しでもグリーンランドの人々の心が癒されることを願う。
 そんな2人の近くでは刃は瓦礫撤去、殺は復旧の糧になればと足場を整えていく。
「温泉ができたら家族で来ます。とーちゃんかーちゃん孝行したいので」
 親子水入らずの裸の付き合いが楽しみですとニンマリする刃だったが、後で水着着用と知りがっかりするのだった。それでも温泉には変わりないので、完成したら親子で楽しんでほしい。

 翌日、温泉建設再開したことでグリーンランド観光活性は少しずつ実現しつつある。