タイトル:【読谷】2人の門出―海マスター:竹科真史

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 8 人
サポート人数: 1 人
リプレイ完成日時:
2011/06/18 23:57

●オープニング本文


 今から数ヶ月前のこと。
 カンパネラ学園手芸部部長の糸井・創璃(gz0186)、稗田・盟子(gz0150)の2人は「ヒエダ貸衣装店」の女店主、ヒエダ夫人こと稗田令子に相談したいことがあるからラスト・ホープにある店に来て欲しいと言われた。
「ご相談って何ですか?」
 創璃が話を切り出すと、ヒエダ夫人は頬を赤らめ「私、再婚するの〜♪」と言い出した。
 お相手は誰? と訊ねる前に、その相手が自分です‥‥と名乗り出た。貸衣装店の店員で、ビデオ撮影や小道具全般を扱うケンジという青年がヒエダ夫人の再婚相手である。
(こ、この人ぉ!? レイちゃん、本気なのぉ!?)
 盟子が驚くのは無理も無い。ケンジはヒエダ夫人と20歳以上も年齢が離れているのだから。
「えっと、ケンジくん‥‥だっけ〜? ご両親は結婚してもいいって言ってくださったのかしら〜?」
「俺、家族いないんです。天涯孤独でして‥‥」
 悪いこと聞いちゃったかしら〜? とバツの悪い顔になる盟子に対し、創璃は「おめでとうございます」と祝福した。
「手芸部に結婚式を手伝って欲しい、というのがご相談したいことなんですか?」
「それもあるんだけど〜‥‥それより問題なことがあるの〜」
 困った表情で話すヒエダ夫人によると、結婚式はケンジの故郷である読谷村で行いたいのだが、バグア支配下と化しているので簡単に行き来できないのでカンパネラ学園生徒にどうにかしてほしいとのこと。
「普通の人の私達だけじゃ行けないから〜生徒さん達にお願いするしかないのよ〜。結婚するなら沖縄の青い空の下と海の側で〜、って2人で決めたの〜」
 結婚式に協力してください、と頭を下げて2人が頼む。
「わかりました。ヒエダ夫人には衣装披露会でお世話になっていますから、そのご恩返しとして協力します」

 創璃は引き受けたものの、自分ひとりではどうにもならないとソウジ・グンベ(gz0017)に相談することに。
「あのおばちゃん、再婚すんの!?」
 開口一番これである。問題はそこではないのだが‥‥。
「沖縄はバグア支配下だから、簡単に観光できねぇのは糸井も知ってるよな」
「はい。それでも、結婚する2人の力になりたいんです。お願いです、協力してください!」
 ソウジ自身もヒエダ夫人に世話になっているので、協力しないワケにはいかないと腹をくくった。
「俺らがすべきことは、親子な新郎新婦な護衛だな。沖縄までは飛行機で移動することになるし、結婚式場にキメラが出現するかもしれないし」
  空と陸、両方の護衛が必要となると、それなりに人手がいる。
「結婚式だけど、日取り決まってんのか?」
「6月の中頃です。人伝手でなんとか式場の予約を取ったそうです。式場は海に浮かぶ教会です」
 海辺にもキメラが出現するかもしれない、ということで、移動中と協会、両方の護衛を行うことに。

 結婚式当日。創璃の悪い予感は的中した。
 結婚式場『ブルーラグーン・アムール』付近の海辺にキメラが出現したのだ。
「今のところは、浅瀬にいるだけみたいですね。といいますが、いつ襲ってくるか‥‥」
 浅瀬にいるキメラを見ながら、創璃はヒエダ夫人のためにも絶対に倒して教会を護る決意を固める。
「ヒエダ夫人の結婚式を無事に挙げさせます。皆さん、私に力を貸してください!」

●参加者一覧

白鐘剣一郎(ga0184
24歳・♂・AA
旭(ga6764
26歳・♂・AA
風閂(ga8357
30歳・♂・AA
月城 紗夜(gb6417
19歳・♀・HD
能見・亮平(gb9492
23歳・♂・SF
沖田 護(gc0208
18歳・♂・HD
安原 小鳥(gc4826
21歳・♀・ER
煌 輝龍(gc6601
23歳・♀・FC

●リプレイ本文

●幸福の危機
 結婚式当日は雲ひとつない晴天に恵まれたものの、キメラ出現の知らせにより暗雲が立ち込め、下手すると中止というピンチに。
 それを阻止すべく、糸井・創璃(gz0186)を含めた9名が立ち上がった。
「それにしても、海の上の教会をぐるりと包囲するキメラか。意味が判らん」
 結婚式場『ブルーラグーン・アムール』にある海に浮かぶように建てられた教会付近の海に居座るように出現したタコ型キメラを見て、出現した意味も目的も判らないと苦笑する白鐘剣一郎(ga0184)は、元々この辺りに配置されていた群れが寄ってきたというところかと考え直す。
「ともあれ、あれを放っておいて、いざ式が始まってからトラブルが起きては元も子もない。可及的速やかに片付けておくべきだろう」
「風光明媚で、結婚式には良いですね。バグアさえなければですが」
 バグア勢力圏の沖縄ではキメラがいつ、どこから出るかわからない。タコやガンガゼ以外にも現れるかどうかわからないと沖田 護(gc0208)は十分な警護をし、幸せな門出を守るために力を尽くすことに。
「今回は結婚式場付近に出現したキメラ退治か。結婚する2人の邪魔はさせぬ、早急にキメラを倒さねばな」
 1年ぶりの故郷に関わる依頼に奮い立つ風閂(ga8357)だったが、いつかは気になる存在の異性とここで式を挙げたいと思っている。
「結婚式か‥‥我もいずれはしたいものじゃな‥‥」
 風閂のやや後ろに立っている煌 輝龍(gc6601)は、恋人のことを思い出しながら思いを口にしている。
「6月の花嫁‥‥憧れますね‥‥。キメラを退治し‥‥花嫁様、花婿様が幸せな式を挙げれるよう‥‥最善を、尽くします‥‥」
 安原 小鳥(gc4826)も輝龍同様、結婚に憧れているのでキメラ退治の後に結婚式が見られたら良いなと思っている。
「海に浮かぶ教会、か。素敵なロケーションだと思うけれど‥‥これじゃあ、ちょっと残念だよね。‥‥結婚式のため、頑張ってキメラ掃除しようか」
「そうだな。バグアとの争いばかりを見ていると、どうしてもこういう幸せの1つ1つを大事にしていくことを忘れがちになってしまうが、それは大事なことだ。幸せになることに年齢など関係ない。一緒になるお互いが良ければそれでいい」
 旭(ga6764)と能見・亮平(gb9492)は、結婚式を無事挙げさせると心に誓う。
「沖縄の海は美しい‥‥。我の故郷は関西だが、同じ日本出身として誇りに思う。孫が生まれたのに再婚するのかと思ったぞ‥‥食堂のおばちゃん」
 双眼鏡でキメラの位置を把握中の月城 紗夜(gb6417)が勘違いするのは無理もない。食堂のおばちゃんこと稗田・盟子(gz0150)と苗字が同じなうえ、そっくりな外見なのだから。
 剣一郎を中心に、4班に分かれたキメラ退治の段取りを話し合う。
 行動指針は水中では身長+30センチ以上の深い場所には進まない。
 海底を一蹴りして、水面に届かない深さは避ける。
 水中で毒を受けたり、重傷を受けた場合に備えて20メートル程度の命綱を身に着ける。
 タコは攻撃を受けるまで動かないようなので周囲のガンガゼを優先的に排除。
 出来るだけガンガゼを減らした後、タコを手近なところから時計回りに排除と決めた。
「複数を一度に刺激せず、基本は1匹をタコ殴りでいこう。殲滅後は周囲の後片付けだな」
「わかりました。皆さん、ヒエダ夫人の結婚式を無事挙げられるようにキメラ退治を手伝ってください」
 創璃が頭を下げ、皆に協力を求める。
 班構成は、1班は水中戦闘をメインとする旭と離れしている紗夜。
 2班は『キュア』が使える風閂と強化系スキルを持つ亮平、盾での支援メインの護。
 3班は『ソニックブーム』での遠距離が可能な剣一郎、回復系スキルでサポートする小鳥。
 4班は狙撃担当の輝龍と創璃。
「では、作戦開始。それと、建物への被害を出さないよう注意してくれ」
 剣一郎のその言葉が作戦開始の合図となった。

●海に潜む鋭いモノ
「毒性生物なので、なるべく銃器で対処しようか」
 隠れたり、擬態しても大きいから見落としにくいとは思うが、用心に越したことはないと旭と紗夜は命綱を腰に巻きつけ、近くの建物にきつく結びつけると警戒しながら水中剣と銃でガンガゼ退治を始めた。
 ウニを先に仕留める前に旭に『練成強化』を使い、逆袈裟、袈裟、真一文字と星を描くような斬撃で倒していく。
 漁師がフィンで叩き折るという話を聞いたことがある旭は、その応用として攻撃する前に水中剣で薙ぐようにトゲを折っていたが、何体かそうしているうちに刺さってしまったので一旦陸上に戻り、蛇剋で慎重に切開し取り除く。
「傷口が開いているな‥‥安全な場所に避難して治療しよう」
 側にいた紗夜に肩を貸してもらい、安全な場所まで退避すると『キュア』と『練成治療』を使う。
「大丈夫か? これで傷口を塞ぐと良い」
 近くにいた風閂が救急セットから包帯を取り出し、放り投げて手渡す。
「AU−KVは水中に対応していないので水に入らず、銃撃でキメラ退治をします。皆との連携が必要不可欠ですが、出来る限りキメラを退治してこの区域の安全を確保しましょう」
 DN−01「リンドヴルム」を装着した護は盾と銃でガンガゼ退治に臨み、亮平は『拡張練成強化』で近くにいる仲間の攻撃力を増加させてから超機械で中間距離攻撃の合間にサポートを。

「海が綺麗じゃからの‥‥敵が丸見えじゃな。どこに何体いるか、把握できるのはありがたいの」
 教会の屋根から『プローンポジション』でキメラを退治しようとした輝龍だったが、全面ガラス張りの屋根なので危ないと創璃に止められたので波打ち際で行うことに。
 接近戦に使う【OR】杭撃ち連装砲『哮龍』に【OR】断剣『龍爪』を取り付け、いつでも使えるようと準備を怠らない。
「まずはウニ退治といこうかの。このような場に邪魔者がいては迷惑じゃよ‥‥これで磔になるが良い」
 教会や仲間の近くにいる攻撃範囲内にいるガンガゼを杭で撃ち抜き、創璃と共に数を減らしていく。
「あれはちと遠いな。タコに当たらぬようにせねば。今動かれては厄介だしの」
 距離があるものは『狙撃眼』で倒していく。

 小鳥のカバーをしつつ、剣一郎は立ち回り基本で小銃「S−01」でガンガゼを倒し、ヒョウモンダコの攻撃に備え盾を装備している。
「子守唄で、敵を眠らせてみようかな‥‥と、思っていますが‥‥やめたほうがいいでしょうか‥‥?」
 水はキメラが行動しやすい、遠距離攻撃を在り得ると懸念する小鳥が超機械で遠距離攻撃をしながら剣一郎に聞く。
「俺達の射程範囲内にいるガンガゼはあたかた倒したから、多少近づいて使用してもいいだろう。そっちはどうだ?」
「こっちもある程度倒した。俺も白鐘氏同様、試す価値はあると思う」
 亮平の近くにいる紗夜も同意見だったので、小鳥は『子守唄』でヒョウモンダコを眠らせる。
「子守唄が効いたのか、動きが止まったようだな。とはいえ、タコをタコ殴り‥‥といかぬか。接近できぬし。ん? 今のは駄洒落ではないぞ? まぁ、そう聞こえてもおかしくはないが」
 風閂の台詞に全員少し気が緩んだが、すぐ気を引き締めヒョウモンダコ退治に。
「タコ退治の際には‥‥結婚式場に近付けさせないよう‥‥気を付けたい、ですね‥‥。皆様の治療は‥‥私にお任せください‥‥」

●タコ殴り作戦
「全員一斉攻撃で殲滅しよう」
 治療を素早く済ませた旭は合流すると『狙撃眼』を使い、射程いっぱいからヒョウモンダコを攻撃し、海上に誘き寄せる。
 足に巻きつかれないよう注意して行動していた紗夜だったが、深い場所に引き込まれそうになったところを旭に助けられた。
「助かった‥‥ありがとう」
「タコにやられないよう、一旦撤退しよう」

 ある程度足場が確保できたので、少し離れた場所から『ソニックブーム』と長弓「黒蝶」を使い分けて攻撃をする風閂が巻き込まれないよう注意せよと大声で皆に伝える。
「タコであろうとガンガゼであろうと、幸福になろうとする者達の邪魔はさせぬ。覚悟せい!」
「俺もそれでいこう。天都神影流・虚空閃っ!」
 剣一郎と風閂が『ソニックブーム』を放ち、その隙に輝龍が援護射撃を。

 攻撃力を増幅させすべく仲間に接近しようとした亮平だったが、タコの足に叩きつけられそうになった。
「危ない!」
 それを見逃さなかった護は『竜の翼』で接近してプロテクトシールドで防いだが、アーマーが装着されていない顔面に青い斑が触れてしまったことで毒に冒された。
「今‥‥キュアを使いますから‥‥」
「その前に、ここから離れよう」
 タコから離れた場所に護を連れて行き、小鳥の『キュア』と『ひまわりの唄』で治療を。
「ありがとうございます。お2人は僕が守ります」
 回復すると同時に『背後の守り』を発動し、2人と近くにいる仲間の盾となる。
「回復要員がいるならすぐに向かう、遠慮なく言ってくれ」
 万一のために補えることができるようにと、仲間に声をかけながら紗夜は無理せず、不利な状況に陥ると退き、何度でもヒョウモンダコに挑む。
「近づきすぎたか‥‥天都神影流・斬鋼閃っ!」
 相対距離が20メートルを切ったので武器を紅炎に持ち替え、鋼をも断つ剣閃一刃で足を潰し、怯んだところを風閂が弓で足元を狙い打つ。

 攻撃を仕掛けられたことで動き出したヒョウモンダコは、射撃が困難な位置まで接近してきた。
「屋根から飛び降りての接近戦に持ち込みたかったのじゃが‥‥これでいくか」
 走って近づいた輝龍は『哮龍』で磔にすべく瞬時に狙いを定め、杭を撃つ。
「我の武器はランチャーに剣を付けた特製じゃ‥‥これで切り刻んでやろう。とっておきのランチャーをくらえ、スラストパイルッ!」
 放たれた杭は深々と足に突き刺さり、磔に成功した。
「うまくいったの。タコとはいえ、足を封じられては文字通り手も足も出まい。皆、今のうちにタコ殴りじゃ!」
 中距離からのサポートを交えた亮平が『練成弱体』で防御力を下げ終えると、全員で文字通りのタコ殴りに。
 その間に何人かが毒に冒されたが、回復要員の小鳥、回復サポートの紗夜の『キュア』と回復スキルにより事なきを得た。
 足に注意しながらのタコ殴りは思った以上に時間がかかったが、教会に被害を及ぼすことなく退治することに成功した。

●2人に祝福を
 キメラ退治が終わり、後片付けが済んだ10分後に新郎新婦を乗せたタクシーが、それから数分後、飛行機の護衛についていたソウジ・グンベ(gz0017)とリュイン・カミーユ(ga3871)を乗せたタクシーが結婚式場に着いた。
「出られそうかと思ったけど‥‥ウニにやられた治療が必要なんで、残念ですが出席は諦めます」
「能力者はただキメラを退治するだけ、それが祝いになるだろう。ヒエダ夫人にそう伝えてほしい」
 駄目そうです‥‥と参列を断念する旭、直接祝いに結婚式場に行くのは自分のキャラじゃないという理由で創璃に伝言を頼んだ亮平は帰途についた。

 その2人を除いた全員で、整列してヒエダ夫人とケンジを出迎えた。
「あら〜結婚式場にキメラが出たのね〜。でも〜皆が退治してくれたから安心して式が挙げられるわ〜」
 能力者の飛び入り出席歓迎ということなので、スーツと靴を持ち込んだ護、チャイナドレスを着ている輝龍以外の参列希望者はそれぞれ希望の衣装を借りることに。
「チャイナドレスは冠婚葬祭を問わないから良いのぅ。皆も良く似合うぞ」
 待合室での待機中、肩の出ていない正装姿の小鳥、薄紫のフォーマルドレスにハイヒール姿のリュインを褒める。
(このドレスを似合うと言え、似合うと‥‥)
 その視線を感じとったのか、側にいたソウジは「似合っているじゃないか」と一言。
「学園の制服は、こういう時に役立ちますね」
「そうだな」
 学園生の紗夜と創璃はカンパネラ学園の制服を着用。

 教会での結婚式は、ヒエダ夫人のバージンロードを歩くところから始まった。エスコートをする父親役だが、彼女たっての希望でソウジが行うことに。
 その様子を見ている紋付袴姿の風閂と輝龍は、いつか思い人とバージンロードを歩きたい、小鳥はいつか私も‥‥と思いながら見ている。
(私もアイツとも何時か‥‥)
 式の最中赤くなっている紗夜だが、それを指摘されると「ただ暑いだけだ!」と否定。

 夫婦の誓い、指輪交換、誓いのキスといった儀式が終わり、教会の外に出ると参列者一同、ライスシャワーを蒔いて幸せな2人を出迎えた。
「おめでとう。二人とも仲良くな」
 唯一の既婚者である剣一郎は、自分の結婚式を思い出しながら祝福する。
「沖田 護といいます。今日という日に立ち会えたのも何かの縁です。心よりお祝いします。末永くお幸せに」
「煌 輝龍じゃ、結婚おめでとう。これから数多の困難もあるじゃろうが、独りではなく2人でならどんな困難も乗り越えられるじゃろうて。2人の行く末に幸多からん事を」
 ヒエダ夫人に自己紹介と挨拶をする護と輝龍は、心から2人が幸せになってほしいと願う。
 その様子を見ながらリュインが「いつ花嫁になれるんだ?」上目遣いに訴えるが、ソウジはどう返答して良いのかわからないので「ヒエダ夫人、綺麗だなー」とはぐらかす。この2人の進展はどうなることやら‥‥。

 結婚式のラストを飾るのは、独身女性待望のブーケトス。
 ヒエダ夫人が後ろを向くと、おもいっきりブーケを放り投げる。
 誰がゲットするのかねぇと高みの見物をしていたソウジだったが、白い花で纏められたブーケは彼の頭に当たり、そのはずみで受け取ってしまった。
「次、俺が結婚すんの!?」
 ブーケを受け取った独身女性が次に結婚するというジンクスは、男性にも通用するのだろうか?
 それを見たリュインが脈あり、というような表情をしたので「ま、いっか」と大事そうに抱えた。

「良ければ、これを歌ってくれ」
 全員に楽譜を配った紗夜は、弟が遺した『絆』という歌を歌い始めた。
 
 ♪巡り続ける命を 尊い絆を
 ♪きみの微笑み それは太陽よりも眩しい光

 一緒に歌う小鳥の歌声、紗夜の綺麗なソプラノボイスが教会周辺に響き渡る。

 皆に祝福されながらヒエダ夫人とケンジの結婚式は滞りなく‥‥といいたいところだが、ケンジがお姫様抱っこをしている最中にぎっくり腰になるというハプニングが起きた。
 これも結婚式の良き思い出‥‥ということで。