タイトル:捕縛キメラ研究会マスター:竹科真史

シナリオ形態: イベント
難易度: 易しい
参加人数: 3 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2011/05/12 22:22

●オープニング本文


 2011年3月、大規模作戦『【極北】Operation of Far North』の最中、人を素体にしたキメラが捕獲され、カンパネラ学園で研究されることになった。
 捕獲当初は弱っていたこともあり、体力が回復するまで研究はおあずけになっていたが、あらゆる実験に堪えられるよう回復したと判断したキメラ研究部は研究をはじめることに。

「研究だけどさ、コレ捕獲した能力者にも手伝ってもらおうか。1日研究員ってことで」
 寒いからグリーンランドに行きたくない、と申 永一(gz0058)に捕縛要請した研究部責任者が言い出した。
「このキメラを研究してみたいという能力者はいるでしょうから、その提案には賛成です。早速、協力を要請しましょうか?」
「ああ、頼むよ。それと、研究員の指導はきみがやってね」
 またしても押し付けか‥‥と呆れる永一だったが、自分も研究してみたいので渋々従うことに。

●1日研究員募集
 学園生、聴講生不問。
 研究対象は人と獣が混ざり合っているような特殊な器官の無い獣人系キメラ。
 体長2メートルの狼男のような外見で、骨格は人間そのもの。
 二足歩行型で寒冷地用か長毛種だが、ところどころ肌が露出している。

「あの人への嫌がらせもしたいが、露骨にしてもそうだとバレないだろうな」
 捕縛に協力してくれた能力者がいたら、研究終了後にやってみたいと思う永一だった。

●参加者一覧

/ ドクター・ウェスト(ga0241) / ソウマ(gc0505) / イサギ(gc7325

●リプレイ本文

●研究前の波乱?
 1日研究員の中には、申 永一(gz0058)と共にグリーンランドで研究用キメラの捕獲に関わったドクター・ウェスト(ga0241)とソウマ(gc0505)がいた。
「けっひゃっひゃっ、我輩はドクター・ウェストだ〜! やっと、捕獲したキメラの研究ができるのだね〜。結果が楽しみだね〜」
 鎖に繋がれた状態で檻の中にいるキメラを見てどんな実験をしようかワクワクして考えたが、檻の近くにいる捕縛を依頼した研究責任者を見るなり、あからさまに「何で君がここにいるのかね〜?」と言わんばかりに眉を寄せ、険しい表情になったが視線の先の本人はまったく気づいていない。
「やあ、きみ。あの時はアイスをありがとう。と言っても、まだ食べていないんだけどね。後でいただくよ」
 あげてから1ヶ月以上経つというのにまだ食べてなかったのか! と心で怒りが爆発しそうになったウェストだったが、その気配を察知した永一が間に入り「まあまあ」と宥める。
「ドクター、来てくれたんですね。多岐にわたりキメラの研究をしている研究所所長のあなたがいると心強いです。今日はどうぞよろしくお願いします。期待していますよ」
「まあ、永一君がそこまでいうなら‥‥。我輩に任せてくれたまえ〜」
 彼の機嫌を損ねては研究がはかどらないだろうと思った永一だったが、これで一安心だろうとほっとした。
 そんな2人の会話中、ソウマは自分が関わった人を素体にしたキメラを無表情に見つめているが、心の中は様々な感情が入り混じっている。
(安心して下さい、自分の感情で自分のするべき事を歪めるつもりはありませんよ)
 あの時のキメラが無事だったことに安心したのか、微笑を浮かべ、迷いを吹っ切るかのように永一と責任者に挨拶を。
「よろしくお願いします。あの時も言いましたが、キメラの研究が進めばいろんな事に応用でき、多くの人が救えます。そうなるよう、僕も協力させてもらいます。それと、アレを用意してくれましたか?」
「アレか? 手に入れることはできたが、何に使うんだ?」
 用意してほしいと頼んだ研究部責任者の髪の毛を手渡した永一に「研究が終わったらわかりますよ」と責任者をチラ見しながら答える。
「研究員は我輩とソウマ君だけかね〜?」
「もう1人来ますよ。まだ‥‥あ、来たみたいです」
 遅くなりました、と研究室に入って来たのは、この研究で初めてキメラに関わるイサギ(gc7325) 。
 1日研究員が全員揃ったところで、キメラの研究が始まった。

●フォース・フィールド考察
 ウェストの研究目的はフォース・フィールドの観測だった。
「永一君、このキメラの細胞サンプル検査結果はあるかね〜?」
「捕獲した時に採取したものの結果ならありますよ。ご覧になりますか?」
 その結果、人間のDNAの他、キメラのDNAが微量検出されていた。
「まあ、こんなものだろうね〜。元が人間なんだから。さ、次いこうか〜」
 以前行った研究で研究で光波、電波など既存の観測機では充分な観測結果を得られなかった、スチムソン博士へのインタビューでの質疑応答から異次元のエネルギーを変換し、攻撃を弾いたりする現次元として赤い電磁障壁といった物理現象を発生しているのではないかと考えているので、それらに関する研究は是非とも行いたいところだった。
「粒子加速器がないと、満足に観測できないかもね〜」
「残念ですが、それはちょっと‥‥」
 大掛かりな粒子加速器、移動式のものが無いということもありウェストが最も行いたかった研究は断念せざるを得なかった。固定されたものはあるのだが、カンパネラ学園の研究部内でも順番待ちな状態なのでいつ使用できるかわからない。
「それじゃ、しょうがないね〜。それじゃ、別のことをしようか。イサギ君、キメラに火を近づけてくれたまえ〜」
 どうやって近づけようかと考えたイサギは、研究室にあるモップの柄に布を巻き、それに火をつけて檻の隙間に入れて反応を見ることに。獣の本能なのか、キメラは火を見て一瞬怯んだが、それ以上怖がることはなかった。
「キメラ化した際、火を怖がるという獣の弱点が弱まっているのかも。完全な獣、というわけではないようですね。これはどうでしょうか?」
 イサギと入れ替わるようにソウマが視覚外から持っていたペンを投擲したところ、視点の範囲内に入るなり掴んで握り潰した。
「動体視力は優良、握力はかなりのものみたいだね〜。イサギ君、次の実験を頼むよ」
 ウェストに手渡された視認しづらい透明な針状の物体をイサギは恐る恐る檻の隙間から物を押し込んだが、その途端、何かに弾かれた手ごたえを確かに感じた。
「な、何だぁ!? 何かに押し出された感じがあったぞ!」
 後ずさりするイサギを見て、フォース・フィールドが発動したようだと納得するウェスト。
「ふむ、生物的な感覚というより、空間把握的なものなのかね〜?」
「そのようですね。次はこのようなアプローチはどうですか?」
 その後、3人は様々な方法で視覚外から反応するフォース・フィールドの考察を。

●人とキメラの間で
「人としての意識はないようですが、使役できるかもしれないので何か芸を仕込んでみましょう」
 直に仕込みたいので檻の中に入れてほしいと頼んだが、襲われるかもしれないと断られた。それならキメラをここから出してと頼んでも、脱走するおそれがあるからと断られるだろうと思いをやめた。
「芸を仕込んでみたい気持ちはわかるが、いつ攻撃を仕掛けてくるかわからない状態だからやめてくれ。きみが襲われたり、脱走したりしては大変だし」
「わかりました。芸ができた時の飴にと持ってきた餌は、次の実験に使うことにしましょう」
 仕込みを諦め、人としての意識は残っているのかを調べるため、文明的な食事を与えてみることに。
「スプーンやフォークは使えるのでしょうか? これも試してみましょう」
 皿に肉、野菜といった食料を入れ、その前にスプーンとフォークを置いてどのような反応をするか確認を。
「スプーンを持ちましたか。これで食べてくれるかどうか‥‥」
 スプーンで食べるのかと期待したが、ブンブン振り回すと飽きたのかポイと放り投げ、食料を鷲掴みにすると口の中に押し込むようにして食べた。
「ケダモノっぽい食い方だな」
 キメラもケダモノだっけ? とイサギはじっと様子を見ている。
「わずかでも人の意識が残っていたようですが、獣の意識が勝っているみたいですね。人の意識は無い、と解釈していいんでしょうか?」
「そう解釈してもいいだろうね〜。キメラ化した際、人間としての意識が薄れたのかもしれないね〜」
 気を取り直し、次に同族の区別はどのようにして行うのかを調べることに。
「どう区別するか気になりますので、脳波を調べてみようかと思います」
 脳波を調べる装置は用意できたので、永一と研究部員数名が餌を夢中で頬張っている最中に襲われないよう慎重に取り付けた。
「これでどうするんだ?」
「そうですね、特殊な波長を探し出してみようかと」
 満腹になったのか、少し落ち着いたキメラは研究員達をじっと見ている。その時の脳波は少しの間だが安定していた。
「脳波はDNA同様、人間のようだな。俺達を見て同類だと思ったのか?」
「我輩達を見て同類と思うとはね〜。元は人間、という意識が奥底にあるのかもしれないね〜」
「そうだと良いんですが‥‥」
 もう少し脳波を調べたかったが、キメラが「餌をもっとよこせ!」と言わんばかりに柵を掴んで暴れだした。
 これ以上研究するのは無理、檻から逃げ出し、学園内で騒ぎを起こされては非常にまずい! ということで、キメラ研究は中断に近いかたちで終了した。

●責任者への嫌がらせ
 すべての実験、研究室の後片付けが終えると1日研究員達はそれぞれ結果をレポートにまとめて永一に提出した。
「お疲れ様でした、これで研究は終了です。このキメラですが、もう少し研究材料としてここに置いておきます」
 イサギはレポートを提出すると、キメラと戦う際は慎重に行動したほうがいいと痛感したようだ。
 粒子加速器での実験ができなかったウェストは、研究所で研究成果をまとめ、今後の研究に活かそうと帰っていった。その前に責任者に「我輩のアイス、食べると言ったからには食べるのだぞ?」と念を押すのを忘れない。
「僕も失礼します。責任者さん、これを受け取ってください」
 研究室を出る前、ソウマが何かを手渡した。
「藁でできた人形だね。これ、実験道具なのかな?」
「これはですね、藁人形というものでして‥‥」
 長い説明に退屈したのか、責任者は大きなあくびをした。それにカチンとなったソウマは覚醒すると「これで誰かを呪うんですよ」と低い声で呟いた。
「一遍、地獄に堕ちてみますか‥‥?」
 覚醒した時に発言させた『狂運』にあてられたからなのか、藁人形は粉々に‥‥というが、ソウマが強く握り締めたからである。壊れやすいように脆く作ったというのもあるが。
「あ、あはは‥‥」
 どう反応して良いのかわからない責任者は、冷や汗をかいて苦笑するしかなかった。
 そんな責任者の反応を見ず、ソウマは踵を返すとチョコレートを齧り、一欠らを口の中で溶かす。
「あの時も言いましたが‥‥僕は進み続けます」

 その後、責任者はどうなったかというと‥‥。
 折角もらったものを残しては悪いとウェストのアイスを食べて腹を壊し、しばらくの間、腹痛が治らなかった。
 それだけならまだしも、今回研究した獣人キメラを含む多数のキメラに襲われるという悪夢を見るように。
 そのような状態が長く続いたためか食欲はガタ落ちし、急激に体重が減った。
 げっそりと痩せた責任者を見た永一は、藁人形の効果を恐れた。
(おそるべし、藁人形‥‥いや、ソウマ君の『狂運』か? これで、少しは大人しくなってくれるといいんだが)
 責任者にとって良い薬になっただろうと永一は反応をちょっとだけ楽しみ、その後の様子をソウマに伝えた。 
 
 研究と責任者の嫌がらせ:成功?