タイトル:ハーリーを脅かすモノマスター:竹科真史

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2011/05/19 21:09

●オープニング本文


 爬竜船(はりゅうせん)競漕と航海の安全、豊漁を祈願する伝統ある沖縄県最大規模の祭り、ハーリー。
 ゴールデンウィークに開催され、ハーリー競漕は滞りなく終わったが、その翌日に問題が発生した。
 読谷村沖の海中生簀内で飼育されているジンベエザメが逃げ出し、ハーリー開催地の港に向かっているという。
 腑に落ちないのは、生簀から逃げ出したと報告があったのは体長約10メートルなのだが、目撃されたのは推定20メートルを超える大きなものだった。考えられるのは、バグアが何らかの方法で生簀から逃がし、巨大なものに改造したということだ。その証拠に、残波岬付近でジンベエザメに寄り添うように飛行中の小型ヘルメットワームが確認されている。

「はっはっはー! 今回はまともなキメラを作ったぞー!」
 勘のいい人は、ヘルメットワームに騎乗しているのが以前読谷村でモアイなキメラを作成したイケメンだが間抜けなバグア、案珍とおわかりのはず。
「‥‥とはいえ、スピードが遅ーい! もっと早く泳げ‥‥って、しまったぁー!!」
 外見改造を施したものの、遊泳速度の改造をすっかり忘れていたようだ。動きは緩慢なジンベエザメは、時速わずか5キロ程度でしかない。
 急いで改良を! と思ったが、周り一面海なのでそれすらままならないのでそのまま移動させることに。
 目撃時点では何もせず海中を漂っている、遊泳速度が遅いことからハーリー開催地の港に着くには時間がかかるだろうと判断した沖縄県は、ULTに依頼を要請した。

「ULTオペレーターのシェリル・クレメンスです。沖縄県からの依頼をお伝えします。
 読谷村沖の生簀にいるジンベエザメが脱走し、ハーリーが行われている港に向かっています。
 そのジンベエザメですが、逃がしたバグアに改良され20メートルを超える巨大なものになっています。
 現時点では何も危害を加えていないとのことですが、いつ攻撃を仕掛けてくるかわかりません。
 ジンベエザメの近くに、作成したバグアが騎乗していると思われるヘルメットワームがいますのでご注意ください。
 サメを退治する際は、港に近づけさせず、尚且つ、離れた箇所で退治してほしいという要請がありました。
 ハーリーが無事続けられるよう、ご協力をお願いします」

●参加者一覧

虎牙 こうき(ga8763
20歳・♂・HA
上杉・浩一(ga8766
40歳・♂・AA
ミク・ノイズ(gb1955
17歳・♀・HD
風月 明菜(gb3685
13歳・♀・ER
煌 輝龍(gc6601
23歳・♀・FC
BEATRICE(gc6758
28歳・♀・ER
住吉(gc6879
15歳・♀・ER
カラキアス(gc7175
16歳・♀・SF

●リプレイ本文

●海中を漂うモノ
 ハーリー開催地に向かって泳ぐジンベエザメを倒すべく、傭兵達は水中班、空中班に分かれることに。
 水中班が水中でジンベエザメを攻撃して水面に追いやり、その後、空中班と挟み撃ちという作戦を実行すべく各自動き始めた。
「‥‥でかいな」
 水中班の上杉・浩一(ga8766)は、ジンベエザメの大きさを目の当たりにしつつ初騎乗のリヴァイアサンを上手く乗りこなせなければと緊張するが「大丈夫、なんとかなる」と自分に言い聞かせる。
(輝龍さんもいるんだったな‥‥。男としては、彼女に怪我をさせられない)
 浩一のリヴァイアサンの隣には、初めての水中戦の成功を第一目標とする煌 輝龍(gc6601)のリヴァイアサン『サベッジビースト』が。
「浩一さん、この任務、成功するよう互いに頑張ろう」
「‥‥ああ」
 ジンベエザメを見て、住吉(gc6879)はフカヒレが取れる種類の鮫でも最も高級とされるものだったことを実感する。
(大きいです‥‥。じっくり煮込んだら、美味しいフカヒレができそうですね‥‥)
 確認でき次第、いつでも攻撃できるようにと準備する風月 明菜(gb3685)は移動が遅いのがラッキーと安心した。
「速度は遅いですが油断は禁物です。なるべく遠方で倒してしまいたいですね」
「同感。ジンベエザメ退治か。海中から皆が戦いに専念出来るように情報処理、演算を駆使してキメラを追い詰めるっす」
 虎牙 こうき(ga8763)は、遊泳するジンベエザメを見据えながらオロチである愛機『アクエリアス』の『水空両用撮影演算システム』を活かして情報処理役を買って出た。
 空中班として上空でジンベエザメ出現を待つBEATRICE(gc6758)は、バグアの考えるキメラや作戦が何を狙ってのものなのかがわからずにいた。
「バグアは‥‥何を思ってこのキメラを作ったんでしょうか‥‥」
「さあな。何とも間抜けな‥‥」
 仲間を爆雷に巻き込んでは洒落にならない、と効果範囲を慎重に確認しながらミク・ノイズ(gb1955)が呆れる。
「水中班の皆さんサメを上手く誘導してくださいね」
 カラキアス(gc7175)の言葉に「俺達に任せるっすよ」とこうきが力強く答える。
「サメ退治スタートっす!」

●先制攻撃
 水中班が海中でジンベエザメの追い立てをする間、空中班は小型ヘルメットワームの動向に注意しつつ、慎重にジンベエザメの進行方向を飛ぶ。
「か弱いので‥‥後からついていきましょうか‥‥」
 BEATRICEは後方から小型ヘルメットワームを対応しようとしたが、カラキアスが20mmガトリング砲で攻撃し始めた。
「ちょっとあんた邪魔です。ここに近づかないでください」
 更に攻撃しようとするが、その前にジンベエザメを倒すべきだとミクに制止された。
「深追いするな、ああいうタイプはそう簡単に死なないだろうしな。攻撃はキメラ退治の後でもいいだろう」
 空中班が空対潜ミサイル「爆雷」を使うことを考え、こうきはジンベエザメの動きを綿密に演算する。
(あれは‥‥)
 その最中、ジンベエザメの腹部に何かが張り付いているのを見た。
「コバンザメ‥‥? あれもキメラだとしたら厄介だな。皆、ジンベエザメの腹にキメラらしきものが張り付いている。追い立て前に、まずはあれを何とかしようか」
 水中班全員にそう伝え、サメ達の動きを演算。その間、浩一はハーリーの邪魔にならず、爆雷が爆発しても大丈夫そうな位置を地図で調べる。
「ハーリー開催地点に近づけないよう、注意しての戦闘ですね‥‥。ジンベエザメの攻撃方法は現時点では不明なので、最初は慎重に行動しましょうか‥‥。その前に‥‥」
 コバンザメを掃討したほうが良いと考えた住吉は、ジンベエザメの腹部めがけてM−042小型魚雷ポッドを発射。分厚い皮膚組織に守られているため大ダメージとはいかなかったが、喰らうと同時に5体のコバンザメは水中班に向かい勢い良く飛び出した。
「まずはコバンザメを撃破しましょう」
 最初は近くにいるものから攻撃です、と明菜は七十式多連装大型魚雷、水中用ガウスガンで撃破。遠くにいるコバンザメは『エンヴィー・クロック』を使い狙い撃つ。
 数を減らせばジンベエザメに狙いが定めやすいと、浩一はM−042小型魚雷ポッドで倒していく。
「‥‥この位置なら大丈夫そうだ。ジンベエザメを誘き寄せながらコバンザメを攻撃するか」
「演算終了、さっさとコバンザメを追っ払うっす」
 こうきと浩一は情報連携を密に行い、コバンザメを倒しながらジンベイサメを爆撃ポイントへと追い立てる。
 コバンザメがすべて掃討されると、輝龍は仲間の援護を受けてジンベエザメに取り付くことに。
「サメに取り付く。皆、援護を頼む。サベッジビーストの装備を軽くして出力確保してあるのは伊達ではないぞ! インベイジョンモードB起動! ブースト全開っ!」
 ゼロ距離でG−37試作型水中用粒子砲「水波」を撃ち込みながら指定ポイントまで追い込むと『剛装アクチュエータ『インベイジョン』B』とブーストで一気に海面へ浮上。
「我のサベッジビーストは凶暴じゃぞ? そう簡単に逃れられると思うな!」
 逃げられないよう、アイアンクローを突き立てて動きを抑える。
「‥‥雷数3、魚雷接近! ‥‥デコイ発射、前部バラスト・タンク全ブロー緊急浮上〜! といいますが‥‥」
 更に浮上させようと弾薬を惜しまず攻撃する住吉だったが、キメラ相手では水中戦の醍醐味が半減していると内心がっかりしている。
「ハーリーの邪魔になる前に、ここで倒させてもらいます」
 明菜は愛機『Gazania』を歩行形態に変形させると『システム・インヴィディア』を発動し、ヒレ等での攻撃に注意して上に突き上げる。

●爆雷投下作戦
「こちらこうき、追い立てに成功したよ。上杉さんの報告だと、この位置なら爆雷を使っても大丈夫だってさ。空中班の皆、深度を設定したらいつでも使っていいよ」
「了解、投下に入ります。水中班の方は巻き込まれないよう注意願います」
 カラキアスがそう言うと、水中班は巻き込まれないようそれぞれ移動を。
 爆雷に巻き込まれては厄介だ、と明菜はGazaniaを飛行形態し輝龍と共に一旦離脱。
 こうきの演算を元に、ジンベエザエの位置を把握、水中班が退避したのを確認したミクはヘルメットワームの動向に注意しつつ進行方向正面から低空域へ突入。
「爆雷投下!」
 水深を有効範囲内に捕らえ、一番深い位置に設定すると空対潜ミサイル「爆雷」を眼前へ。それに続き、BEATRICEとカラキアスも投下する。
「3機一斉だと‥‥威力はすごいですね‥‥」
 爆雷投下による衝撃で起きた水柱を見たBEATRICEは、これでキメラが倒せないとわかってはいたが感心する。
 水柱が崩れた衝撃で起きた高波が収まると、その場を離れていた水中班はジンベエザメを倒すべく動き出した。
 投下と共に深度を下げていた浩一がジンベエザエの下を陣取り、そこから多連装魚雷「エキドナ」と水中用ガウスガンで攻撃して海面に追い立て、すれ違いざまに輝龍が腹部に回り込み、アイアンクローを突き刺し動きを抑え込んだ。
「我はこのキメラを盾にする。皆、遠慮はいらぬぞ! 存分に攻撃するが良い!」
 機体スキルで強化されているとはいえ、水中班、空戦班の攻撃に巻き込まれないようジンベエザメを盾にして衝撃を少しでも和らげようとする。
「まだ生きているようですね」
 様子を窺った明菜は『システム・インヴィディア』を発動してからGazaniaを歩行形態に戻し、水中から格闘戦主体の攻めを。
「この一撃でキメラを仕留める!」
 ジンベエザメを追い立てるべく、浩一は距離を詰めて下腹部に突っ込むとリヴァイアサンを歩行形態に変形させると『システム・インヴィディア』を発動させつつ水中用試作剣「蛍雪」を腹に突き立て、気合いで叩き上げた。
「出し惜しみなどしません‥‥大サービスですよ‥‥」
 浮上タイミングに合わせ、BEATRICEは『複合式ミサイル誘導システムII』を発動するとI−01「パンテオン」を発射。
 距離を保ちつつKP−06ミサイルポッドとホーミングミサイルFI−04を混ぜて攻撃していたミクだったが、近づきすぎたことに気づくと瞬時に強化型ショルダーキャノンでの迎撃に切り替えた。
 安珍が攻撃の違いに気づいたのか、それ以上ジンベエザメに攻撃させまいと急接近してきたがカラキアスに狙われているので迂闊に近づけない。
「ミサイルの違いに気づいたのは褒めてやりたいとろだが‥‥それは罠だ」
 P−06ミサイルポッドに『ブレス・ノウ Ver.3(type.B)』と『アグレッシヴ・ファング Ver.2.1』を付与する。
「まだ生きていたんですか〜これでもくらえ〜」
 カラキアスは小型ヘルメットワームに避けられたこともあり、八つ当たりに近い射撃を。

●一斉攻撃!
 水中では、こうきが水中用ガウスガンで一部ずつ攻撃を加えながら効果的な部分を探していた。その結果、時折開ける大きな口が効果があると判断し、どの角度から攻めるのが効率的かを演算する。
「皆、ここを狙うんだ」
 皆にそう送信したのは、安珍がキメラ化する際に外部改造を施したものの、体内内部は遊泳速度同様、施されていないだろうと判断したからだ。抜けている彼ならそうしてもおかしくはない。水中にいる時は水中班、水面に浮上した時は空中班がそこを狙い撃って勝負をつければいい。
「射撃は‥‥あまり得意ではないのですけどね‥‥」
 苦手でもしなければいけないと覚悟を決めたBEATRICEは、全弾を使い果たしたこともあり、水面に上がってきたジンベエザメを前方正面を避けて真スラスターライフルで攻撃する。
「かまぼこのようにしてあげましょう‥‥」
「かまぼこにするのは構いませんが、ヒレは原型を留めるようにして下さいね〜。ふふふ、大人しく高級中華料理店の店先に並んで下さいね〜」
 美味しいフカヒレゲット、と意気込む住吉は海中に逃げようとするジンベエザメの動きを抑えるように533mmSC魚雷「セドナ」を発射し、ヒレを上手く抉り取ろうとできるだけ接近してソニックネイル「バンシー」をフル活用する。
(ああ、フカヒレが〜‥‥)
 ヒレ抉り取りは何とか成功したが、戦闘のどさくさで何処かに流れてしまい回収できなかった。
 水中、空中からの挟み撃ちで弱ってきたジンベエザメはこれ以上攻撃されまいと海中深く潜り込む。
「海中に逃げましたか。水中班宜しくお願いします」
「カラキアスさん、俺達水中班に任せるっす」
 こうきの素早い情報処理、演算でジンベエザメの居場所がすぐにわかったので水中班は素早く動くことができた。
 明菜、輝龍、住吉は水中用試作剣「蛍雪」で口の中に入れようとする浩一をサポートする。
「‥‥これで終わりだ!」
 大きな口に強引に捻じ込み、一気に口の中から焼き斬った。斬られたジンベエザメはのたうちながら浮上しようとしたが、空中班がそうはさせまいと射撃する。
「はいはい退場願いします」
「これで終わりだな」
「逃がしませんよ‥‥」
 空中、水中からの一斉攻撃で逃げ場を失ったジンベエザメはなすすべも無く倒さ、海中深く沈んだ。

●ハーリーを楽しもう
 ジンベエザメキメラ退治が終わると、小型ヘルメットワームをどうするかが問題に。
「ヘルメットワーム逃がしませんよ〜」
 ジンベエザメ討伐後に小型ヘルメットワームが逃げ出そうとするのを見たカラキアスは、K−02小型ホーミングミサイルで確実にとどめを刺そうとしたが避けられた。
「さて、そこのワーム〜、逃げるなんてかっこ悪いぜ?」 
 こうきは『水空両用撮影演算システム』で捉えてルートを予測し、それを皆に送信すると『炸裂式ブースター「迦具土」』を発動させると十式高性能長距離バルカンをばら撒きダメージを与えた。
 それにより小型ヘルメットワームは海に墜落したが、安珍はその前に逃げ出したかもしれないし、そのまま海に沈んだかもしれない。都合が悪くなると逃げ出す癖があるので運良く生き延びたかも‥‥というが、彼の生死は今回の依頼に何の関係も無い。
 キメラ退治を報告すべく開催地に向かった8人は、それが終わるとそれぞれハーリー一般体験乗船を楽しむことに。
「これで心おきなくハーリーに乗れるっす! 何か楽しそうっすね♪」
 俺が一番乗りー! とこうきは張り切って乗船し、競漕参加常連者に漕ぎ方を教わる。
「な、なかなか難しい‥‥」
 ボートと勝手が違うのもあり、前進させるのに一苦労。
「こういう船って、漕ぐ人の息が合ってないと進まないんですよね? たくさん練習してるんでしょうね」
「そりゃそうさー。全員の息がピッタリ揃ってないと良い成績を残せないからねー」
 明菜に向かい笑ってそう答える男性は、こうきに「こうすれば上手く漕げるさー」とコツを教えた。
「うはは楽しいな〜」
 体を揺すってハーリー楽しむカラキアスから少し離れたところでは、浩一と輝龍が寄り添って海を眺めている。
「ふむ‥‥こうして潮風と波を感じているのも良いのぅ‥‥」
 目を閉じ、浩一に寄りかかりながらこれはデートじゃなと思う輝龍。
「‥‥そうだな。のんびりするのも悪くない」
 マイペースに雰囲気を楽しむ浩一は、デートしているという感覚があるのだろうか。
「楽しそうですね〜」
 屋台で買った豆腐チャンプルーを食べながら、住吉はのんびりとハーリー体験乗船の様子を見ている。
「今度は、観光客として来たいもんだね」
「そうですね‥‥」
 遠目から見学しているミクとBEATRICEは、次に来る時はバグア支配下から解放された沖縄を観光したいと思った。

 傭兵達の活躍により、ハーリーはキメラにまったく襲われることなく終了した。