タイトル:保育園の危機、再びマスター:竹科真史

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2011/04/25 21:44

●オープニング本文


 春になり、次第に暖かくなった4月。公園にある桜の木は、次々と花を咲かせ始めた。

 四国にいる稗田・盟子の娘、なぎさが職場復帰することになったので、息子の新は近所にある保育園に預けられることに。この保育園、2月に鬼キメラ2体に襲撃されそうになったところだ。
 入園式が終わった後、保育園にある大きな桜の木の下で保育士達と園児、保護者の親睦会を兼ねた花見が行われる。
 前日の夕方。
 ブルーシートと紅白の幕を持ったこの春から保育園で働くことになった新米保育士2人は、希望に胸膨らませながら花見の支度を。
「ねえ、あれ何かしら?」
 夕方の薄暗い時間帯ということもあり、桜の木の下に何がいるのか認識できない。
 それを良く見ようと近づき、大きな箱からひょいと顔を出し、桜の木を見た保育士が見たものは‥‥モゾモゾと這いずる大きな毛虫だった。
「毛虫‥‥にしてはすごく大きい‥‥ね‥‥?」
「な、何を呑気なこと言ってるの! あれ、キメラってやつでしょ!」
「キ、キメラぁ!?」
 何でこんなところにいるんだと思いつつ、2人は大急ぎで園長に報告する。
「‥‥わかりました。その木には絶対に近づかないでください。刺激したら保育園を襲撃しかねませんし。明日は入園式なんですよ、破壊されては大変です」
 またキメラが出たんですか‥‥と大きなため息をつき、園長はULTにキメラ退治を要請するのだった。
 その頃、何も知らないなぎさは通園グッズを鼻歌を歌いながら揃え、子供部屋をはいはいしている新の側で新調したスーツを試着して明日の入園式を楽しみにしていた。

●参加者一覧

兄・トリニティ(gc0520
24歳・♂・DF
ティルコット(gc3105
12歳・♂・EP
ジョシュア・キルストン(gc4215
24歳・♂・PN
リズレット・B・九道(gc4816
16歳・♀・JG
鹿島 行幹(gc4977
16歳・♂・GP
BEATRICE(gc6758
28歳・♀・ER
アルフェル(gc6791
16歳・♀・HA
エヴァ・アグレル(gc7155
11歳・♀・FC

●リプレイ本文

●毛虫なのかどうか‥‥
 能力者達が保育園に辿り着くなり見たのは、桜の木の周りをウヨウヨ這いずり回っている大きな毛虫‥‥と呼べるかどうか疑問なキメラだった。
「あら、保育園が大変そうね? そう‥‥エヴァはお姉さんだもの。エヴァより小さな子達を守らないといけないわね」
 クスクス笑いながら見るエヴァ・アグレル(gc7155)に対し、口に手を当てて見ているジョシュア・キルストン(gc4215)は顔色が優れない。
「保育園と桜の木、そして毛虫ですか‥‥。これはまた、どうにも妙な組み合わせですねぇ‥‥。虫は嫌いなので関わりたくないんですがねぇ‥‥」
 と言うものの、保育園の被害を最小限に留めるためには頑張らないわけにはいかないと腹を括る。
「桜につく毛虫というと‥‥アメリカシロヒトリが有名ですが‥‥あれはアレルギー体質の人以外は刺されても影響が無いそうですし‥‥。ドクガ‥‥というやつなのでしょうかね‥‥」
 バグアは一体何の毛虫をキメラにしたのでしょう‥‥? と無表情で首を傾げるBEATRICE(gc6758)は、桜の木の葉を一口で食い尽くした毛虫を観察中。
 その最中にジョシュアが「あなたは、何故ここに来たのかな?」と訊ねた。
「そうですね‥‥。人の災いとなる者の退治‥‥力持たぬ者の剣となり‥‥幼き者の夢を守る‥‥。どれかひとつだけでも‥‥十分な理由でしょう‥‥?」
「たしかにそうだねぇ‥‥」
 エレクトロリンカーに憧れ、転職のために参加したティルコット(gc3105)は「毛虫の毒は困る困るん」と困っているような口ぶりだが、どう退治しようかな、と楽しんでいる。
「‥‥何かもう、あれは毛虫ではなく別の生き物‥‥ですね‥‥。近寄り難くは‥‥あり‥‥ますが‥‥」
「大丈夫だ、アルフェル。こんなに綺麗な桜を台無しされたら困るな。無遠慮な毒虫共はさくっと駆除だ、駆除!」
 アルフェル(gc6791)に桜の良さを教えてあげたい鹿島 行幹(gc4977)は、1体残らず毛虫を倒すべく動き出し、そんな彼の足を引っ張るわけにはいかない、とアルフェルは自らを奮い立たせる。
 周囲、特に桜の木に被害を出さないようにキメラを倒すのだが、保育園にはまだ園児が残っているので、リズレット・ベイヤール(gc4816)は園児を安心させたいと保育園内に向かう。
「園児達にキメラを倒すシーンを見せちゃマズイな。俺も行く」
 世史元 兄(gc0520)は、園児達にキメラ退治を見せないよう保育士に桜の木の周辺を何かで覆い隠すよう頼んだ。丁度いい具合に、花見に使う紅白の幕が目隠しとなった。
「ところで、子供達に俺達のことをどう説明するんだ? キメラをやっつけに来た能力者だ、と言っても納得はしないだろう」
「‥‥正義の味方〜‥‥とか何とか‥‥」
 自信無さげに答えるリズレットに「ま、それでいいか」と兄は納得する。

●桜の木から引き離そう
 リズレットと兄が保育園に向かう間、残る6人はSES搭載武器や特殊能力は衝撃が強すぎて傷つけるおそれがあるので桜の木から離れた場所で引き離した毛虫退治をすることに。
「エヴァは小石をぶつけて、気を引いて囮になり引き寄せようと思うの」
「おいらはこれで。うまく連れればいいんだけどねーん」
 ティルコットはキャベツを釣槍の先に突き刺し、竿で行う釣りの要領で誘き寄せる準備。
 囮作戦開始の前に、アルフェルは付近に一般人がいないか『バイブレーションセンサー』で確認を。
「今のところ‥‥園児と保育士さん以外は‥‥何も、感じられません‥‥。大丈夫、です‥‥」
「では、キメラを桜の木から引き離しましょうか。桜の木を守るのも依頼のうちですし」
 動き出すかと思いきや、ジョシュアはキャベツで釣るティルコットと歌うアルフェルの様子を横で眺めている。
(これで釣られてくれれば万々歳なのですが、さて‥‥。離れてくれると信じたいですが、離れない場合でも攻撃を仕掛けなければ入園式に差し支えますしねぇ‥‥)
 どちらにせよ、毛虫は倒さなければ依頼成功とならないので、その時はその時と割り切る。

 囮作戦が始まった頃、園内に着いた2人は園児達に声をかけた。
「皆〜、明日のお花見を楽しみにしてるかな〜?」
 はーい! と園児達は元気良く手を上げて返事する。
「先生とお手伝いのお兄さん、お姉さんの邪魔しないよう外に出ちゃいけないよ〜。先生の言うことを守れるかな〜?」
 これに対しても元気の良い返事が。
「良い返事ですね〜♪ 後でお兄さん、お姉さんが遊んでくれるかもしれないので絶対に外に出ない、見ないこと〜」
「‥‥正義の味方のお兄さん‥‥お姉さんがお花見に来るかもしれませんよ‥‥」
 正義の味方が来るかも、と聞いた園児達は、瞳をキラキラ輝かせて期待している。

 行幹は万一ということもあると民家に被害が発生しない方角にキメラを誘導し、エヴァは桜の木を傷つけないよう、小石をぶつけ気を引いて自ら囮となる。
「よし、行くっす!」
「ふふ、こんにちは、大きな毛虫さん。今日はとっても良い花見日和ね。こんな日は鬼ごっこなんてどうかしら? エヴァと一緒に遊びましょう?」
 毛虫2体が桜の木から離れると、釣槍の先につけたキャベツに食いついた1体がティルコットにより引き離された。
「おっ、でっかいの釣れたー! いっくよぉっ! ほーれ、エヴァちん、狙うがヨロシ」
 キャベツにかぶりついたまま吊り上げられた毛虫を放り投げようとするが、大物な魚並みの重量なため思うようにいかなかった。
「待たせたな、コイツを放り投げればいいんだな?」
 駆けつけた兄と力を合わせ、エヴァの近くにおもいっきり放り投げる。
 エヴァは大鎌「シュトレン」のリーチと機動力で間合いを取り、毛虫の短い毛に触れないよう『迅雷』で間合いを調整すると死角に入って翻弄したり「ふふ、逃がさないわよ」と逃走を止め、移動先に回り込むと『刹那』で確実に首を狙い落とす。
「ふふ、エヴァの勝ちね。バイバイ、毛虫さん」
「首ちょん切られたのにまだ生きてるねー。しぶといなー」
 ピクついている毛虫に「とどめだー」とティルコットが釣槍を突き刺す。

●1体残らず駆除しよう
「‥‥リゼの得物は銃器ですからね‥‥誤射に注意‥‥ですね‥‥」
 リズレットは射線方向に桜の木、保育園を据えないよう自分の位置を調整しながら拳銃「スピエガンド」による『援護射撃』で毛虫に狙われている仲間を優先に、毛虫の隙に差し込むよう援護射撃を。
「‥‥制圧射撃‥‥使います‥‥。誤射に注意してください‥‥」
 SMG「ターミネーター」に持ち替えると付近にいる仲間に報告し、誰もいなくなったのを見計らうと扇状に射撃を。
「あれだけの射撃でまだ生きているとは‥‥」
 BEATRICEは『GooDLuck』を発動させるとロングスピアで一気に突き刺し、地面に縫い止めた。
「生きている標本とは‥‥珍しいですね‥‥。観察する暇はありませんね‥‥標本らしく‥‥死んでもらいましょう‥‥。この傷みようでは‥‥標本としての価値はありませんけどね‥‥」
 もう1体標本にしましょう‥‥と後方に回り機械剣αを突き刺そうとした拍子に短い毛に触れてしまった。
「くっ‥‥毒を受けてしまいましたか‥‥。毒は嫌いなのですがね‥‥」
 のそのそと接近する毛虫を機械剣αで払いのけ、リズレットの援護されながら『レジスト』を使い一旦退避。
「こっちからの方がいいっすね。よし‥‥行くっす!」
 囮作戦で誘導した毛虫を倒すべく率先して前衛に出た行幹は『瞬天速』で近づくと背面を取る。
「脱毛にはレーザーが効くっすよね? だったらコレを試してやるっす!」
 短い毛に触れないよう、後背から機械剣「ウリエル」で実験的攻撃を。
「短い毛は徹底的に焼き切るっす!」
 結果としては脱毛は無理だったが、毛虫は焼き切ることができた。
「実験成功っすね!」
 切られてもなお反撃しようとするので『疾風脚』を発動させ、側面へ回り込むようにしつつ『二段撃』でとどめを、というところでアルフェルが何者かの気配を察知した。
「行幹、様‥‥そこの、物陰‥‥誰かいます‥‥」
 指差した方向を見ると、外に出るなと言われたはずの園児がいた。
「あの子は俺が連れ戻す!」
 園児の近くにいた兄がダッシュで園児の元へ。
「外に出ちゃ駄目だって、さっき、お兄さん言っただろ? さ、戻ろう」
 毛虫を見せないように脇に抱え、大急ぎで保育園へ。
「すぐ倒しちゃうと他の方の経験もありますしね‥‥嫌だけど倒しますか‥‥」
 兄に危険が迫らぬよう、ジョシュアは行幹が仕留め損ねた毛虫を速攻で倒すべく『迅雷』で接近すると同時に毛に触れないよう『回転舞』で回避し、空中に足を引っ掛けた後に回転しながら『円閃』を叩き込んだ。
「キメラとはいえ、虫を倒すのは気分が良いものではありませんねぇ‥‥」
 気分が悪くなったのは嫌いな虫に触れたショックか空中で回転しすぎたかと思ったが、足にチクリとした感覚があったので短い毛に触れてしまったのだろう。余力があったので大人しく撤退し、仲間の誰かに回復してもらうことに。
「残り1体、全力で倒すぞ! アルフェルはジョシュアさんとBEATRICEさんを頼む」
「わかりました‥‥。こちらへ‥‥。大丈夫、です‥‥。回復は、お任せ‥‥下さい‥‥」
 2人を側に寄せると『ひまわりの唄』を歌い、ジュシュアとBEATRICEを回復させた。その間、リズレットは『援護射撃』でアルフェルを守る。
「助かった、ありがとう‥‥」
「いやぁ〜、愛らしい少女に癒してもらえるのなら毒も悪くありませんねぇ♪」
 残る1体はティルコットとエヴァが逃がさないよう包囲し、烈火を構えた行幹が前方に仁王立ち。
「毛虫さん、逃がさないわよ」
「コイツ倒してお花見だー!」
「このままブチ落とすっす!」
 峰打ちで叩き落とされた毛虫は地面をのたうちまくっていたが、しばらくするとピクリとも動かなくなった。
「これで全部倒したっすね。さーて‥‥花見の準備の前に綺麗に、元通りっす」
「では、僕は終わったことを保育園に報告しますねぇ‥‥」
 もう毛虫に関わりたくない、とジョシュアはそそくさと保育園へ。その間、残る7人で園児にキメラの死体を見られてはまずいと後始末を。

●楽しいお花見
 翌日の入園式は晴天に恵まれ、青空の下での花見となった。
 親睦会を兼ねた花見には、キメラ退治のお礼ということで能力者達も参加することに。
 園長から給食室を使っていいと言われたアルフェルは、早めに着くと調達した食材を持ち込むと保育園の給食室で花見用の軽食、サンドイッチやおにぎりを作り、出来上がると桜の木の下で待っていた行幹と一緒に花見を。
「お待たせ、しました‥‥今、広げますね」
「おっ、美味そうだな」
 サンドイッチを食べる行幹を見て、そわそわと反応を待つ。
「どう、ですか‥‥? 味とか、その‥‥」
「ん、美味い。花見しながらだと、尚更に格別だ。もうひとつもらうよ」
 手料理を喜んでもらえて良かった、と喜ぶアルフェルは「皆さんも‥‥いかがですか‥‥?」と園児や保護者、保育士達にお裾分けを。皆にも美味しいと言ってもらえたので嬉しかった。
「1番ティルコット、ジャグリングやりまーす!」
 花見が盛り上がったところで、意気揚々とジャグリングと軽業を得意げに披露。園児達は「すごーい!」と拍手で大喜び。
 そんな園児の中には、花見が退屈と会場を抜け出そうとする子も。
「一緒に遊んであげるのがお姉さんとしての役目ね。ねえきみ、エヴァと一緒に遊ぼない? 鬼ごっこなんてどうかしら?」
 遊ぶー! と何人かの子供がエヴァのもとに集う。
 BEATRICEは少し離れた位置で、一人でいるのが気が楽だと緊張が解けた柔かい表情で舞い散る桜の花びらを目で追う。
(‥‥お酒の心配がないのはいいですね‥‥)
 傭兵を良く見ていない人が少なからずいると消極的なリズレットだったが、折角の花見を楽しもうと兄に絡まれた。
「‥‥春、ですか。子供達の明日が、晴れやかなものであるように祈っていますよ」
 もともと馴れ合いが苦手、戦争を生業とする傭兵は保育園に似合わないとジョシュアは長居は無用、と適当なところで退散した。
「あの、これお土産です。どうぞ」
 立ち去る彼に気づいた保育士が、園児達に配っていたリンゴジュースを手渡す。
「ありがとうございます、いただいていきますねぇ‥‥」

 宴もたけなわだが、お開きの時間となったので園児と保護者達は次々に帰っていった。
 帰り際、なぎさは能力者達に「カンパネラ学園に寄ることがあったら、母の稗田・盟子によろしくお伝えください」と挨拶を。
 花見の後片付けが終わる頃、ちょっと疲れたと言う行幹はアルフェルに「膝枕して」とお願いを。アルフェルが座り直すと、頭を膝に乗せ「‥‥うん。綺麗だ」と呟く。
「そうですね‥‥綺麗、ですね‥‥」
 行幹はアルフェルの顔を、アルフェルは桜を見て言う。
「木が‥‥」
 毛虫に荒らされたのか、桜の木の一部が傷んでいた。
「今、元気にしてあげますね‥‥」
 桜を元気にさせようと『ひまわりの唄』を歌う。
「怖い思いをさせました‥‥痛かった、ですよね‥‥。今、癒しますからね‥‥」
 歌声で心地良くなったのか、膝枕をしたまま行幹は眠ってしまった。

「若いっていいですねぇ」
 その様子を見ていた園長は「もう閉園時間ですよ」と言えず、2人が帰るまでじっと見守っていた。
 その数日後。行幹は風邪をひき、アルフェルに看病してもらうことに。

 毛虫キメラ退治、桜の木防衛:成功!