タイトル:【CC】学園祭を楽しもうマスター:竹科真史

シナリオ形態: イベント
難易度: 易しい
参加人数: 29 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2010/11/26 14:40

●オープニング本文


 軍学校であるカンパネラ学園だが、普通の学校同様に学園祭が行われる。
 規模が大きいこともあり、他校に比べると盛り上がりは群を抜く。
 新聞部が取り上げそうな大きな出来事やそうでない小さな出来事、生徒一人一人が起こすささやかな出来事。
 それも、皆が作り上げた学園祭の楽しみである。

 学園祭真っ盛りだというのに、申 永一(gz0058)は研究室に篭もりキメラ研究の真っ最中。
 研究熱心なのは良いが、身体を壊さないかと心配になった責任者は永一に「学園祭を楽しんで来なさい」と研究室を追い出した。
「研究の邪魔をしないでください」
「研究生とはいえ、きみもカンパネラ学園の生徒だろう? 学園祭を楽しまないでどうする」
 責任者の言うとおりである。
「‥‥わかりました、行ってきます」
 粘っても強引に追い出されるだけだ、と観念した永一は一通り学園内を見て回ることに。
 学園に来てから随分たつが、研究一筋だったため、実質的にはこれが初めての学園祭となる。
「まあ、たまにはこういうのもいいか」

 永一が見た学園祭の様子とは‥‥。

●参加者一覧

/ 西島 百白(ga2123) / リュイン・グンベ(ga3871) / 崔 南斗(ga4407) / ヴァレス・デュノフガリオ(ga8280) / 鬼道・麗那(gb1939) / リュウナ・セルフィン(gb4746) / 東青 龍牙(gb5019) / 流叶・デュノフガリオ(gb6275) / ソウマ(gc0505) / 有村隼人(gc1736) / 和泉譜琶(gc1967) / 泉凛(gc5424) / HANCK(gc5436) / 水原 秧鶏(gc5452) / キメラ(gc5505) / CATASTROPHE(gc5548) / シルヴィーナ(gc5551) / 紅夢(gc5552) / なつめ(gc5561) / 鬼天狗(gc5563) / FZR400ゴラ01(gc5570) / 東條院リリア(gc5597) / グリフィス(gc5609) / 御堂天宮(gc5612) / じぇんがー(gc5631) / 黒雲 雪名(gc5634) / 虚空歌姫(gc5641) / アフランシ(gc5647) / 木枯 (gc5652

●リプレイ本文

●レッツ・エンジョイ!
「‥‥暇潰しくらいには‥‥なるだろ‥‥」
 次の依頼があるまで、西島 百白(ga2123)はリュウナ・セルフィン(gb4746)と東青 龍牙(gb5019)に誘われカンパネラ学園祭を楽しむことに。
「にゃー! リュウナ! イン! がくえんさーい! にゃー! がくえんさいにゃ♪ 楽しみにゃ♪ 徹底的に楽しむなり!」
「ええ、楽しみですわね♪ リュウナ様♪」
 待ち合わせ場所の校門前で百白を待つ2人は、思いっきり学園祭を楽しもうと大はしゃぎ。
「ひゃくしろ〜、こっちにゃ〜!」
 遅れてやってきた百白を見つけたリュウナは手をブンブン振り、自分達がここにいることをアピール。
「すまない‥‥遅れた‥‥。セルフィン‥‥面倒は‥‥起こすなよ?」
「わかってるにゃ♪ 龍ちゃん、行こう♪」
 龍牙は少し緊張しているが、2人に覚られないよう後ろを歩く。
「‥‥暇潰しに‥‥なるな‥‥」

 リュイン・カミーユ(ga3871)は、ソウジ・グンベ(gz0017)が模擬店辺りをうろついていると学園生徒から聞いたので、どこにいるのかとを探し回っている。
 UPC軍軍人兼カンパネラ学園教師と聴講生ということもあり、恋人でありながら2人はなかなか会えない。風の噂で。ソウジが自分に見捨てられていないか心配していることを聞き「我を見くびるな」と怒った。
(「誰が見捨てるか愚か者! むしろ逃がさん! 覚えておけ」)
 見つけたら「一緒にどうだ?」と誘え、と突っ込みたい気持ちを抑え、いろいろ奢らせることに。

 流叶・デュノフガリオ(gb6275)は、夫のヴァレス・デュノフガリオ(ga8280)を誘い学園祭に。
「今日は、急に誘ったりしてすまないね」
「いや、大丈夫。学園祭か。学校って通ったこと無いけど、どんなことしてるのかな♪
まずは校舎の出し物見て、その後外を見て周ろっか♪」
「うん‥‥」
 ヴァレスと一緒に回れること喜ぶ流叶は、上の空で隣を歩く。

「甘いもの食べてー、皆のお手伝いしてー、昼食を食べてー、お店を覗いて見てー。有村さん、今日は一緒に楽しみましょうねっ!」
 有村隼人(gc1736)と一緒に、和泉譜琶(gc1967)は軽い足取りで学園祭巡りをすることに。

「‥‥トラブルの予感がする。僕の勘は当たるんですよね」
 肩を竦め、無表情だがどこか楽しんでいるようの見えるソウマ(gc0505)。
 キョウ運の持ち主である彼は、様々な幸運が舞い込んだり、トラブルに巻き込まれたりな学園祭を楽しむことだろう。

●お化け屋敷でドッキリ!
「にゃ! お化け屋敷なりか! いざ突撃にゃー!」
「お、お化け屋敷ですか‥‥?」
 怖いのかと百白に聞かれたので「い、いえ! 別に怖い訳ではありませんよ!? 腰が抜けるほど、お化けが怖い訳ではないですよ!? 怖くないですからね!?」と慌てるが、これが裏目に出てしまい、結局3人で入ることに。
 龍牙が嫌がっても入ると予想していた百白は、彼女を庇うように前に立ち中に入った。
「にゃ? 龍ちゃん、大丈夫なりよ♪ リュウナが一緒にいるなりよ♪」
「リュウナ様? 脅かしたりしないで下さいね? って‥‥キャー!!」
 天井に吊るされたコンニャクが頬にピタッと当たったり、面白がり「うらめしや〜」と脅かすリュウナの声を聞いた龍牙は、我慢していたが怖くなり泣き出した。
「にゃ? 驚いたらなりか? ‥‥龍ちゃん、泣いちゃったなり。にゅ〜ごめんなさいなり〜」
「うぅ〜‥‥」
 泣きながらも最後まで回ろうと頑張る龍牙だったが、もう少しで出口というところで腰が抜け動けなくなった。
「‥‥しょうがないな」
 結局どうなったかというと、百白に背負われ出口へ。
少し泣いたら落ち着いたのか、お腹がすいたので何か食べようと龍牙が言い出した。
「リュウナ、お腹がすいたなり〜。何か食べたいのら〜」
「‥‥何か‥‥食べるか」
 模擬店に行けば屋台や喫茶店があるだろうと、3人はそこで何か食べることに。

 そんな3人と入れ替わり、流叶とヴァレスがお化け屋敷の中へ。
「お、ここ面白そう。ちょっと寄ってこっか♪」
「ん? ここに入るのかい? じゃあ、行こうか」
 手を引かれて入ったのはいいが、教室が真っ暗なことに疑問を感じた。
(「まさかとは思うけど‥‥気のせいだよね‥‥?」)
 非覚醒時は気弱になり、ホラーが大の苦手な流叶は必要以上に怯えている。
「え‥‥? ここ、何でこんなに暗いの‥‥!?」
 お化け屋敷かも、と恐る恐る先に進みながら、不安を拭い去ろうとヴァレスの手を強く握り締める。
「ね、ねぇ‥‥ヴァレス、戻ろう‥‥って、いやぁああー!!」
 ヴァレスの手が妙にゴツゴツするので振り向くと、側にいたのはお化けに扮した生徒の手だった。流叶の手を取り直すと、ヴァレスはお構いなしにどんどん奥に入る。
「そんなに怖がらなくても大丈夫だって。学園祭のお化け屋敷くらい、どうってことないよ♪ ほらほら、いくよっ♪」
 流叶はその後もギミックやお化け役に脅かされるたびに絶叫し、最後にはヴァレスの服にしがみ付いて泣きじゃくりながら出口を後にするのだった。
「ぇっく‥‥ふぐっ‥‥ぇぅ‥‥! 意地悪‥‥! 私がああいうの苦手だって知ってるくせに‥‥!」
「あははは、ゴメンごめん♪ ほら、そんなに怒らないで♪ さ、次いこっ♪」

●模擬店は楽しい
「あの辺りにいそうだな‥‥この辺りか?」
 リュインが辿り着いたのは、湯気が漂う寄せ鍋の模擬店前。
 ここで思い出したのは、初めてソウジと会った日のことだった。食い意地が張ったソウジは「雑煮が食べたい」と能力者達に作らせ、残してはいけないと全部平らげたのだった。
(「懐かしいな‥‥ざつ煮‥‥」)
 未だに『雑煮』を『ざつに』と思っているようで。
 思い出に浸っているところに、腹をさすり満足げに模擬店を後にするソウジを発見。
「見つけたぞ、ソウジ!」
 腕を組み、有無を言わさずソウジを連れ回し、もとい、誘う。本来なら、男であるソウジは「一緒に見て回るか?」と誘うべきなのだが。
「ん? キミ、少し頬が赤くないか?」
「き、気のせいだ!」
 誰のせいだと思っている! と心でぼやき、食べ歩きを始めた。
 リュインが辛口嗜好と知っているソウジは、屋台で激辛お好み焼きを2人分買い近くのベンチに腰かけて食べることに。
「口元にソースがついてるぞ。だらしない」
「あ、ありがとな‥‥」
 ソウジの口元をハンカチで拭いた後に残りを食べるが、辛味が足りなかったので少し物足りないご様子。
 その後、たこ焼き、クレープ等、ソウジの奢りで美味しそうなものを食べ歩き。
「はい、どうぞ。僕の分もありますので気になさらず」
「ありがとうございますー♪」
 買ってもらった甘いものを美味しそうに食べる譜琶を見て、実は自分が甘いものが欲しかったりするので‥‥と少し苦笑する隼人。
 リュインとソウジ、隼人と譜琶の様子を見た泉凛(gc5424)は、食べ歩きしながら羨ましいと思った。

 食べ歩き目的で学園祭に来た黒雲 雪名(gc5634)は模擬店の食べ物全部制覇! と意気込むが、所持金があまりない、人並みの胃袋ということもあり断念。
 財布に入っている貯めていたへそくりもあるが、ある程度使い果たしたら終了と決めた。
 様々な食べ物に反応しては買い、食べては少し休み、少し休んでは食べるを繰り返す。
 好物の甘い物を見つけると目を輝かせ「ふおおお!!」と普段発しない言葉を口にするが、周囲の視線が気になったのか静かになった。
「美味しいな、このケーキ。もう1つ買うか」
 順番待ちの間、ふざけて話しているカップルがいたので「馬鹿げてる」と聞こえないように呟き、そっけない反応を。

「にゃ! 美味しそうな食べ物があるのら! リュウナ、アレ食べたいなり! むしろ食べるなり!」
「はい、リュウナ様。食べたいものの代金は、私が支払います。気にしないでくださいね♪」
 屋台のたこ焼きを買おうとする龍牙に「俺が‥‥出す‥‥」と、百白が先に代金を支払う。
「い、いいんですか?」
「‥‥気にするな」
「ひゃくしろ、ありがとう〜♪」
 リュウナが満面の笑みで喜ぶので、龍牙はお言葉に甘えご馳走になることに。
「にゃ! 喫茶店なりか! パフェ食べたいのら♪」
 少し疲れたので、喫茶店で休憩を。
「ひゃくしろ、ひゃくしろ! はい、あ〜ん♪ 龍ちゃんも、はい、あ〜ん♪」
 パフェが運ばれるなり、スプーンでアイスクリームを掬い2人に食べさせようとするリュウナ。龍牙は照れながら「あ〜ん」をしたが、百白は遠慮した。

「む、このお面は‥‥」
 デフォルメ化された黒猫のお面を買ったソウマは、視界を遮らないよう斜めに被りご機嫌。両手には綿飴等をたくさん持ち、腰にはお面の買う前に取った水風船がいっぱいついている。
 足元にフサフサしたものが擦り寄って来たので、何かと思い見ると猫が喉を鳴らして足にスリスリ。
「きみも学園祭を楽しみたいのかい? はい、お裾分けだよ」
 懐いてきた迷い込んできたと思われる猫に、微笑んで屋台で買ったお好み焼きを分け与えた。その際、食べてはいけないものを除去しているので大丈夫。
 匂いに釣られたのか、他の迷い猫がソウマに近づいてきたが数の多さにビックリ。
「ちょっと待ってて」
 屋台で追加分を買おうとした時、ひったくり犯とそれを追う綺麗なお姉さんに遭遇。腰につけている水風船をひったくり犯に投げつけ、ひるんだ隙に取り押さえ。
 その後、警備員に捕まりひったくり事件は無事解決。
 ありがとうっ♪ と綺麗なお姉さんはソウマに抱きつき頬にキス。赤面するも冷静に振舞うが、内心で役得、役得♪ と喜ぶ。
「おっと、猫達が待ってるんだった。急がないと」

●フリーマーケットでお買い物
「譜琶さん、これなんてどうです?」
「これなんか、有村さんに似合うと思います」
 隼人と譜琶はフリーマーケットで服や小物を物色し、互いに似合いそうなものをチョイスして薦めたりしている。
「これか‥‥悩みますね‥‥」
 薦められた服を見て、買おうかどうか悩む隼人だったが結局買わず。せっかくフリーマーケットに来たんだからと、お揃いのマグカップを探すことに。
「こういったデザインのものもあるんですね‥‥」
 どれ、と覗き込んだ譜琶が気に入ったようなので、隼人は手にしたマグカップを2つ購入。

「‥‥お、あれは‥‥」
 足を止めたフリーマーケットで、ヴァレスは流叶に似合いそうな透明な水色の球体とその外側を覆うシルバーリングのイヤリングを見つけたのでこっそり購入。
「お、あんなのまで売ってるのか。ああいうのも流叶が着たら似合うだろうなぁ♪」
 そう言ってみたのは、学園祭の勢いとネタで誰かが出品したと思われる際どいドレスだった。
「‥‥ばっ、馬鹿! あんなの、着る訳無いだろう!?」
 涙目のまま視線をドレスを向け、赤面する流叶を見て「可愛い♪」とからかうヴァレス。そのドレスだが、後ほど流叶がこっそりお買い上げ。

 アクセサリーの出店を見つけたリュインは、物欲しそうな視線をソウジに送り込む。
(「‥‥たまにはプレゼントくらいしても良いと思うのだが」)
 そう思うも口にせず。
 リュインの視線に気づいたのか、ソウジはどれか欲しいものがあるのかと訊ねた。
「買ってくれるのか? 買ってくれるのなら、指輪が欲しい」
 どれが良いか、どれにしようかと悩みながら買ってもらった指輪を、左手を差し出し、選んだソウジにはめてもらうことに。
 どの指にはめるべきか考え込むソウジに「恋人なんだから薬指だろう!」と再び念を送る。
「こ、ここでいいのか?」
 ソウジは思惑通り左手の薬指をはめたことでリュインは満足した。

●学園警備
「学園に来るのも久し振りだな。永一君、元気にしてるかな?研究に没頭して、部屋に篭りっきりになってないといいが」
 模擬店の人混みの中「警備」の腕章をつけ、学園警備を兼ねた学園祭をぶらりと見て回る崔 南斗(ga4407)は、迷子の保護や落し物や探し物の受け付けをしながら、盗難被害が無いか警戒している。
その合間に、初めて学園を訪れて迷っているHANCK(gc5436)、CATASTROPHE(gc5548)、グリフィス(gc5609)に学園祭のチラシを渡し「これを参考に、どこを見るか決めるといい」とアドバイス。
「とりあえず、学園祭を巡るか‥‥」
 まずは何を見ようか、チラシを手にグリフィスは歩き出した。
 チラシをくれないかとキメラ、シルヴィーナ、紅夢、なつめ、鬼天狗、東條院リリア、御堂天宮、じぇんがー、虚空歌姫、アフランシ、木枯が南斗に声をかける。
 11人にチラシを渡し終え、次にどこを警備しようかと考えているところで申 永一(gz0058)を見つけた。
「永一君、久し振りだな」
「お久し振りです、南斗さん。学園祭に来たんですか?」
「ああ。良かったら、一緒に学園祭を見て回らないか」
 手持ち無沙汰にしているようなので、催しを一緒に見ようと声をかけた。気分転換になると、永一は誘いに応じた。
「学園祭か‥‥随分懐かしいな。遅くまで居残りでセット作ったりしたもんだ。バグアやキメラと戦うこんな時代でも、こういう行事が変わらず行われてるのを見ると何だかほっとするよ」
 戦いが無かった頃を思い出したのか、南斗は物思いに沈んでいた。
「‥‥ああ、すまない。最近ちょっと依頼で落ち込むことがあってね。もう大丈夫だよ。そういえば、腹が減ったな。何か食べ物系の屋台にでも行くか」
 歩きながら何を食べようか相談する2人とすれ違ったワックスで固めたハイパーツンツンヘアーの一匹狼の水原 秧鶏(gc5452)は、シガレット菓子を銜え、愛用のメリケンサックを忍ばせたポケットの中に小遣いが入っているくまさん財布があるか確認している。
「ったく‥‥面倒臭えな‥‥。何で、俺がこんな行事に参加しなきゃならねえんだよ‥‥」
 適当にブラブラしていると、屋台でりんご飴を見つけた。
「りんご飴か‥‥」
 甘いものが大好物な秧鶏は迷わず購入。
 食べながら広場に出ると巨大な人だかりが。面倒臭いと回避しようと迂回するが、巻き込まれてしまい、踏んだり蹴ったりと揉みくちゃにされた。
「っておい! お前ら、俺を押すなぬわぁぁああ!!」
 命からがら抜け出し、満身創痍になるかと思ったと木陰で休んでいると10人ほどの不良が近くの屋台で怒鳴り散らしているのを目撃。全身はまだ痛むが、秧鶏は立ち上がると不良達に歩み寄る。
「ちっ‥‥面倒な奴らが現れやがったな。さあて、派手に遊ぶとしようか」
 ポケットから取り出したメリケンサックを手にはめ、不良達の前に立ちはだかると挑発し始めた。彼らは人目のつかない場所に行き喧嘩を始めようとしたが、背後から誰かに叩かれた。
 ピコッ♪ という音がした方向を振り向くと、フリーマーケットで買ったピコピコハンマーを持っている譜琶がいた。
「うーん、お仕置きですねー。喧嘩はいけませんよー」
「落ち着いてください、まずは話し合いからです」
 ため息をつきながら双方に割り込む隼人だったが、いきり立っている彼らは聞く耳持たず。
「やむを得ませんね」
 はったりをかけ、力ずくで解決しようとしたしたところ、不審者を見つけたとFZR400ゴラ01(gc5570)からの通報で警備員が駆けつけた。不良達は「捕まってたまるか!」と退散し、秧鶏はもう一度りんご飴を買いに行った。
 野外特設ステージに飛び入り参加したFZR400ゴラ01は、ステージで思いっきり歌い、落ち着いたら模擬店に向かい腹一杯食べ歩きをして楽しんだ。

●体育館での催し物
「にゃ! 体育館でヒーローショーなりか! 見に行くなり! ひゃくしろ、龍ちゃん、早くー♪」
 リュウナ達が体育館に入ると、カンパネラ学園黎明期より活動している『闇の生徒会』が行っているヒーローショー『カンパネラエンジェル』の最中だった。
 ショーが始まる1時間ほど前、闇の生徒会会長の鬼道・麗那(gb1939)は、人手が足りないので困っていた。困ってばかりでは埒が明かないと、率先して協力者を捜しまわっていたところ永一に会い、是非協力してほしいと頼んだ。
「お願いします! 悪役としてヒーローショーを手伝ってください!」
「突然そんなことを言われても‥‥」
 断ろうとしたが、何事も経験だと南斗に説得されたので永一は自分のできる範囲で手伝うことに。
 本番までのわずかな時間、永一はセリフと立ち回りを必死に覚えた。

「輝く白は乙女の純心! 純情可憐、エンジェルホワイト!」
 純白の花をモチーフにした白い戦闘ヒロイン風コスチュームを纏った麗那の凛々しい声が、体育館全体に響く。
「この私に勝てると思っているのか、小賢しい。戦闘員共、やれ!」
 宝塚然りの衣装を着て敵の幹部になりきった永一は、エキストラの下っ端戦闘員にエンジェルホワイトを倒せと命じる。
 可憐ヒロインの戦いにオタクな観客は大興奮。ステージに上がり、間近で麗那の写真を撮ろうとするするカメラ小僧は警備中の南斗に取り押さえられた。
 最前列で見ていたソウマが攻撃の巻き添えになるが、その場の勢いで敵役として飛び入り参加。演劇経験もあるので、アドリブで乗り切ることができるだろう。
「フッ、良くぞ見破った。流石は我が宿敵エンジェルホワイト!」
 不敵に笑い、幹部を背後で操る黒幕であることを告げると永一に接近。
 こんなの台本に無いぞ! と困惑する永一に構わず、ソウマは麗那と力を合わせショーを盛り上げた。
「くっ‥‥! 今日のところはこれで勘弁してやる!」
「学園の平和を乱すものは、このカンパネラエンジェルが許さないわ! 正義は勝つのよ!」
 麗那が狙い撃ちのようなキメポーズをビシッっと決めると、カメラ小僧達は我先にとステージ最前列を陣取り撮影開始。
「お、終わった‥‥」
 何とかトチらずにショーを終えることができた永一は、下手に着くと一気に力が抜けた。

●ファッションショーに参加
 闇の生徒会のヒロインショーが終わった30分後、手芸部主催のファッションショーが行われた。
「そこのあなた、ファッションショーに参加してみませんか?」
 何が気に入られたのかわからないまま、司会の糸井・創璃(gz0186)に指名されたソウマは勢いでファッションショー出演することに。
 手芸部制作の衣装と自前の変装セットを使い、服装に合ったポーズで演じるソウマはファッションモデルになりきって舞台の中央へ。
 最初はスーツ姿。銀縁眼鏡のブリッジを人差し指でクイっと上げ、涼やかな眼差しで観客を見る姿は知的なサラリーマンといえる。
 お次は獰猛な笑みを浮かべ、ライオンをイメージしたワイルドな衣装。知的リーマンから百獣の王への変化は見事だ。
 最後は満載の猫の着ぐるみ。
「みゃお〜ん♪」
 猫のようなしぐさは、可愛いもの好きなお姉様達のハートを鷲掴み。
 飛び入り参加したのは、ソウマ同様、創璃に出演してと頼まれたリュイン。もちろんソウジも一緒に。
 手芸部主催の衣装披露会を思い出しながら、手芸部員制作のイチョウをあしらったパーティドレス姿で軽快な足取りでワルツを踊りながら登場。
 その際、枯葉をイメージしたタキシード姿のソウジに「ちゃんとリードしろ」と念を押すが、途中でステップを間違えたうえ転倒した。
 最後は決まらなかったが、観客は2人に盛大な拍手を送る。
 数日後、手芸部にはリュインが着ていたようなドレスを作ってほしいという要請が多く寄せられたとか。

●食堂でお手伝い
 ファッションショーが盛り上がっている頃、譜琶は食堂の手伝いを。
「いらっしゃいませー! ご注文は何でしょうか?」
 食堂のお勧めは何かと聞かれたので「お勧めは石狩鍋です♪」と看板娘スマイルで客に勧めた。その後も注文、配膳、調理、洗い物と大忙し。
「はぁ〜、おばちゃん達はやっぱり手際がいいですねー。でも、私もなかなかのものでしょう?」
 そうね、食堂のおばちゃん達に手際の良さを褒められた譜琶は、最後まで明るい笑顔を絶やさず手伝いを。
 客足が落ち着いたところで手伝い終了。テーブルに突っ伏し「疲れたー!」とダウン気味の譜琶に、隼人が大丈夫ですか? と心配する。
「疲れを吹き飛ばすのに甘いデザートなんでどうでしょう?」
「甘いもの食べたいです! お勧めは何ですか?」
 食堂のおばちゃんに訊ねると、ぜんざいを勧められたのでそれを2つ注文。湯気が立つできたてのぜんざいを、2人は舌を火傷しないように少しずつ食べる。
「甘いもの、美味しいですね〜」
「美味しいですね。疲れ、吹き飛びました?」
 口元にあんこをつけたまま、ニッコリ微笑む譜琶を嬉しそうに見つめる隼人だった。

●祭りの後
「にゃ〜‥‥たくさん楽しんだら眠くなってきたなり〜‥‥。ひゃくしろ〜‥‥おんぶしてほしいのら〜‥‥」
 思いっきり遊んで疲れたのか、へたり込むリュウナを「‥‥仕方ないな」と言いつつ百白は背負う。
「にゃ〜‥‥むにゃむにゃ‥‥」
 背負われると同時に、リュウナは眠ってしまった。
「‥‥楽しめたよ‥‥感謝する」
「私も楽しめました。‥‥西島さん、戦争が無かったら、リュウナ様は普通の女の子として学校でお友達と仲良く過ごしていたことでしょう。ですが、戦争が起こったから私はリュウナ様と出会いました。戦争で今でも泣いてる人達がいるのに‥‥出会えて良かったと思うのは不謹慎でしょうか?」
 俯き、今にも泣きそうな顔をする龍牙。
「‥‥これ以上‥‥泣く奴が増えないように‥‥するのが‥‥俺達の‥‥仕事じゃないのか?」
「そう‥‥ですね。戦争が終わっても、私達は、今のように楽しく笑っていられるのでしょうか?」
 不安がる龍牙に、背負っている楽しい夢を見ているのか時折笑うリュウナの寝顔を見て「今は‥‥笑ってろ‥‥セルフィンのために‥‥」と自分なりに励ます百白だった。
 
 帰り際、流叶はヴァレスに呼び止められた。
「流叶、ちょっと目を閉じてもらえるかな?」
「ん? ‥‥これでいいの?」
 言われるがままに眼を閉じると、何かが耳についた感覚が。触れると、それは先ほどヴァレスが買ったイヤリングだった。
「ん、これで良しっと♪ やっぱり似合う♪ これ? さっきフリマで見つけてね、流叶に似合いそうだなぁと思ってさ♪」
「これ、私に‥‥? ありがとう、大事にするね」
 プレゼントに眼を丸くしながら礼を言うと、ヴァレスの顔が間近に。
「流叶、これからも、ずっと宜しくね♪」
「うん、こちらこそ‥‥んっ‥‥♪」
 ヴァレスは優しく微笑むと、静かに唇を重ねた。奪われた流叶は少し驚いたが、抵抗せずに受け入れ、優しく抱きしめる。
 唇を離すとイヤリングに触れ、不機嫌さが吹き飛んだかのような柔らかい微笑みに。
「絶対に‥‥離さないよ‥‥♪」
「うん、絶対‥‥離さないで‥‥」
 赤くなった頬を隠すように少し俯いた流叶は、今度は自分から唇を重ねた。
(「私は戦うのは怖い。けど、キミとなら‥‥私はまだ、戦えるから‥‥」)

「‥‥トラブル続きでしたが、楽しくなかった一日ではありませんでしたね。むしろ‥‥」
 学園祭最後の様子を楽しそうに眺めながら、それなりに楽しんだソウマだった。

「忙しいのはわかるが、たまには二人の時間を作れ。いいな?」
「わ、わかりました!」
 緊張しているのか、強気な彼女に普段使わない敬語で返事するソウジ。
「今日は楽しかったぞ‥‥またな」
 優しく微笑むと、ソウジの頬にキスするリュイン。ソウジはというと、顔を赤らめたままボーッとしている。
 本来なら男性であるソウジがすべきなのだが、恋愛に疎いこともありしなかった。これを機に、少しはリュインをリードしてほしいものだ。

「ああ、楽しかった‥‥。夕暮れになると、一杯やりたくなってしまうな。永一君、すまんが出歩きついでに夕飯付き合ってくれないか? 珈琲と料理の旨いカフェバーで奢るから」
「いいですよ」
 南斗に誘われていろいろなものを食べ、ヒーローショーに出演したり、楽しそうな表情の生徒や一般客を見たりと、学園祭での出来事は研究一筋の永一にとって学園祭は新鮮な行事だった。
「今日はいろいろと楽しかった。たまには、こういうのも悪くないな‥‥」

 来年も、今日のように賑やかで楽しい学園祭であってほしい。