タイトル:赤く燃え盛る白い兎マスター:竹科真史

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2007/12/30 02:58

●オープニング本文


 中国地方の小さな町で、出火原因不明の放火事件が起きた。
 全焼したことで家を失った家族の証言によると、家の中に一羽の兎が窓ガラスを割って侵入した。
 小学生の長男が捕まえようとした瞬間、白い兎の体毛が赤くなり、燃え出した。
 熱さに耐え切れなくなり長男が離した瞬間、家に火がつき、あっという間に部屋に広がったとのこと。
 家族は、辺りが火の海になる前に避難したので全員無事だった。
 その日は強風だったため、両隣の家に引火した。
 駆けつけた消防員の必死の消火作業により、火災は出火元である家と両隣二軒のみの被害で済んだ。
 残念ながら、出火元の家は全焼だった‥‥。

「本当なんです! 部屋に兎が入ってきたかと思ったら‥‥」
 出火元の家の主人がそう証言するが、警察が信じるわけがない。
「僕も見た。その兎さん、背中が赤かったよ。毛が無いみたいだった」(長男の証言)
「私も見ました。背中の皮が剥がされたような‥‥そんなカンジでした」(妻の証言)
「弟が捕まえた瞬間、その兎が急に赤くなって火達磨になったの。あたし、ちゃんと見たんだから!!」(長女の証言)
 その一家の証言が、最近世間を騒がせている「キメラ」とかいう化け物の仕業ではないかと睨んだ放火事件を担当した刑事は、最寄りのULTを通じてUPCに依頼を要請した。

●依頼内容:放火の際に現れるという兎の調査。キメラであった場合は、退治すること。
●ウサギの特徴:背中の皮がむき出しになっている白い兎。

 刑事は、このウサギがキメラではないかと睨んでいる。
 そうであれば、素人である自分や警察では解決できないため、依頼を引き受けてくれる能力者に頼るしかない。

 これ以上放火事件が起きないためにも、能力者達には早期解決をしてほしい。

●参加者一覧

鯨井昼寝(ga0488
23歳・♀・PN
愛輝(ga3159
23歳・♂・PN
ゴールドラッシュ(ga3170
27歳・♀・AA
北柴 航三郎(ga4410
33歳・♂・ER
オリガ(ga4562
22歳・♀・SN
緑川安則(ga4773
27歳・♂・BM
クラーク・エアハルト(ga4961
31歳・♂・JG
アルヴァイム(ga5051
28歳・♂・ER

●リプレイ本文

●白兎を探せ
「この寒いのに、家が無くなるなんて辛すぎる。教科書やアルバム等、思いでも全て燃えてしまったんだから‥‥。こういうことは、絶対に繰り返してはいけません」
 北柴 航三郎(ga4410)は、全焼した火災現場を見て、同じ過ちを繰り化さないよう努めることにした。
「今回のキメラは、炎属性の兎ですか。動きが素早いので、探すだけでも一苦労しそうですね」
 ふぅ、と溜息をつく、ビーストマンの緑川安則(ga4773)。
「確認するが、まずは四人一組で周囲に聞き込み、その後、白兎を追い込むために、追い込む追撃役、足止めの壁役、遠距離からの支援役に分かれて壁役の所まで追い込むというのはどうだろう? そして、動きを止めて叩く」
 そう言うと、安則は予め調達した無線機を人数分配布した。
「厄介な敵ではありますが、確実に仕留めないといけませんね」
 ネットで該当地域周辺での放火事件に関する情報を調査し、プリントしたものを持参し、能力者達に配るアルヴァイム(ga5051)。
「相手が小さからと言っても、油断は大敵だ。油断は隙を作る。どんな姿だろうと、相手がキメラである事に変わりはない。悪いが、容赦はしない。その見た目に惑わされる程、俺の中身は可愛く出来ていないからな」
 兎型のキメラであっても、全力で倒す気でいる愛輝(ga3159)。
「あたしは、白兎を発見した際は壁役として動くわ。倒すために剣を振るうのではなく、威嚇、牽制目的の剣舞をするわね。可燃物の多い住宅街、森に逃げないよう、そちら側を死守するわ」
 豹柄スーツの長身美女で、金さえ貰えるのであればどんな目に遭おうが文句は言わない性格で、プロ意識は高く、見た目に反して地味で確実性のあるバトルスタイルを好む ゴールドラッシュ(ga3170)は、仲間が攻撃するための隙を作るべく、注意を引く役を引き受けた。
「無線機があれば、皆さんと連絡が取れますね。僕は警察、消防署との協力体制と町民へ注意呼びかけ、火の用心を行うよう説得してみます」
「それじゃ、私も住宅街を死守するわ」
 航三郎に続き、ゴールドラッシュも、自らの行動を報告し、班分けを決めた。

 聞き込み班:緑川安則、北柴 航三郎、鯨井昼寝(ga0488)、クラーク・エアハルト(ga4961)。
 捜索・戦闘班:愛輝、ゴールドラッシュ、オリガ(ga4562)、アルヴァイム。

●聞き込み
 一連の放火事件解決を調査にしにした能力者達は警察署に赴き、UPCから火災事件の調査をし、解決しに来た者であると告げると、警察は全面的に捜査に協力し、詳細と必要事項を全て教えてくれた。
「白い兎が突然全焼した家に乱入し、放火したというのは本当かい?」
 昼寝の言葉に、頷く刑事。放火事件は、あの後も何軒も起きているが、皆、背中の皮が剥がされた燃え盛る白い兎を見たという。
 厳重注意していた消防車が緊急出動したため、大事には至らなかったのが不幸中の幸いだった。
 刑事が言うには、最初の被害者一家の発言は妄言の類にしては荒唐無稽過ぎるうえ、余りにも状況証言が鮮明に想像できるほどだったので、家族全員に嘘発見器をかけて反応を窺ったが、反応は全く無かったという。
 白い兎が出没する推論は、あながち間違いではないと航三郎は判断した。
 燃える白兎=炎属性キメラの説を最大限に受け入れつつ、三人は調査活動に臨んだ。

「件の白兎がキメラだった場合、今回一番の難関は倒すことよりも発見することが需要ね。季節柄、ちょっとした小火が大火を招くことは想像できるしな。一刻も早く、対象を発見し捕縛、撃破することが肝要と心得て町を歩かないと」
 昼寝が言うには、調査地域は住宅街を中心に、家屋が固まっているエリアから、というのは推論だ。そこから徐々に周囲に燃えるものの少ない、河川や開けた部分へと包囲を狭めるのが理想的と考えた。
「その考えは、正しいかもしれませんね。状況から言えば、キメラは日本神話に出てくる「因幡の白兎」かもしれないな」
 安則はそういうが、神話の兎の皮は、全身がむき出しになり裸に近い状態だ。
 その理由は、白兎が因幡国に渡るため、海の上に並んだワニザメ(山陰地方では、現在でもサメのことをワニと呼んでいるので、ワニザメとされている)達を欺いて背中を跳んで渡ったが、騙されたことを知ったワニザメ達は、白兎の皮を剥いだという逸話があるからだ。
「僕は、白兎の活動時間と思われる時間帯に聞き込みを行おうと思います。刑事さんの話だと、夕方から夜にかけて放火は起きるそうですし。二班に分かれて手分けして、発見次第、他班へ連絡をするのはどうでしょう? 捜索範囲内か近辺の、可燃物の少ない広い場所で捜索・戦闘班の皆さんが先回りして、追い込みを待って戦闘開始するのが良いでしょう」
「それは良い考えだな。では、分かれて聞き込みに行くか」
「では、自分は地図と無線機を使い、聞き込みと平行し、白兎を追い込みやすい狭く、袋小路等、可燃物が少ない場所や学校のグラウンド等に目星をつけて探します」
 航三郎、昼寝、クラークは、それそれの行動に移った。
「私はどうするんだい‥‥?」
 一人、取り残された安則だった。

●捜索
 愛輝、ゴールドラッシュ、オリガ、アルヴァイムの四人は、概要を刑事から聞いているので、複数同じ事情を聞くことを行った。
「賞金稼ぎのあたしとしては、ターゲットを安全かつ確実に倒すことができればそれで良いの。それほどの大物でもないことだし、できれば楽して倒したいわね」
 同じ事情を聞き出そうと言い出したのはゴールドラッシュだった。
「事前の調査段階では、最初の被害者を含む放火現場付近の住民に聞くのが良いかもしれない」
 既に為されている発言内容と齟齬が生じる場合は、その情報の信憑性は薄いが、その反面、刑事から受けている内容と同様の報告を受けた場合、信頼できる情報といえる。
 その際は、件の白兎がキメラであると考え、追跡行動を開始するべきだと同意する四人。
 その時、オリガが兎の足跡らしきものを見つけた。
 本来の習性を考えて、近くにある雑草林地に来たのだろうが、普通のものにしては少し大きい。
「確かに大きいわね。大きめの兎なのかしら?」
「これで、あの白兎がキメラである証拠が掴めたわね」
 ゴールフラッシュとオリガの言葉で、キメラは近くにいる可能性があるとわかった。
 
 愛輝は、火災が多く発生している地域周辺で近くの住人に聞き込み調査を行っていた。場所は、最近小火が起きた家の付近。
「最近、物騒だねぇ。火災が立て続けに起きるなんて。しかも、皆、赤く燃え盛る白い兎を見たっていうんだから信じられないよ」
 玄関の掃除をしていたおばさんに例を言い、別の場所に聞き込みに行った愛輝。
 オリガは、残りの仲間と一緒に兎による放火現場付近の住民に、白兎の目撃情報や出没する時刻などを聞き込み、活動時刻及び通り道などを調査する。
「兎が出没するのは、どうやら夕方から深夜にかけてのようね」
「別行動している聞き込み班や、愛輝様に連絡したほうが良いのではないのですか?」
 アルヴァイムの指示に従い、オリガは愛輝に連絡を取った。

「愛輝、聞こえる? 近くの雑草林地付近から双眼鏡等使い探索したところ、白兎キメラらしきものを発見した。その前に、大きめだが兎の足跡を発見した。私は、これから聞き込み班の連中と連携するから、すぐに雑草林地付近に来て頂戴」
 連絡を受けた愛輝は、雑草林地付近に向かい走り出した。

 白兎の活動時間を予測し、探し続けていた航三郎にもオリガからの連絡があった。
「わかりました、今すぐそちらに向かいます。他に皆様には報告済みですか?」
「既にしてあるから大丈夫よ」
 それを聞いた航三郎は、駆け足で仲間の元に向かった。

●合流
 合流地点だある可燃物の少ない広い場所には、既に聞き込み班全員が揃っていた。
「な、何だいそれは?」
 昼寝が驚くのは無理も無い。
 クラークが言うには、白兎発見後に目星をつけた後、可燃物が少ない場所に向かい戦闘準備を整えてから前衛を支援する様に遠距離戦闘を行い、目標を壁際に追い詰めるように攻撃し弱体化を狙う、とのこと。
 この照明機材は、彼が説得して消防と警察に照明機材を設置してもらったのである。
「たしかに厄介な相手ではありますが、これだけの人数が集まっていれば問題は無いでしょう? 後はいかに被害を出さずに倒すかだけです」
「件の白兎がキメラだった場合、今回一番の難関は倒すことよりも発見することにあるだろうね。季節柄、ちょっとした小火が大火を招くことは想像し難くない。一刻も早く、対象を発見し捕縛、撃破することが肝要と心得ないと。ここは調査地域、住宅街中心、家屋が固まっているエリアから離れているから思う存分暴れられるね」
 白兎キメラを倒すマンマンの昼寝。

「グラップラーとビーストマンの方は追い込み攻撃を、スナイパーとサイエンティストである僕は遠距離攻撃を、ファイターの昼寝さんは進路妨害をお願いします!」
 航三郎の意見に「了解!」と各行動に移る能力者達。

 皆が待機している間、燃え盛る一羽の白兎が出現した。
「白兎キメラのご登場だね。あたしは、壁役として動くから倒すには皆に任せるよ! 倒すために剣を振るうのではなく、威嚇、牽制目的でね。兎が住宅街や森に逃げないよう、注意するのを忘れないでね!」
 ゴールドラッシュは、同時に仲間が攻撃するための隙を作るべく、白兎キメラの注意を引いた。
 追い込み地点に近づいた愛輝は素早く覚醒すると、兎キメラに距離を縮め『瞬天速』を使って距離を詰め、攻撃を仕掛けたが、火炎をもろにくらい右腕を火傷したが、それでも攻撃を止めず『疾風脚』で急所突き攻撃を行った。
「皆! 足止め頼みます!」
 愛輝の元に駆けつけた航三郎は『練成治療』で素早く治療を行った。
「まったく‥‥無理しすぎですよ」
「そういうおまえも、無理しすぎだ。自分の火傷にも気づかないとは‥‥。早く治療するんだな」
 そう言われ、自分も火傷を負っていることに気づいた航三郎は、素早く治療を終えると警察と消防員に声をかけた。
「警察の皆さん、安全上、無理にとは言いませんが広場をもう少し照らして下さると助かります。もうすぐキメラがこちらに向かってきます! 点灯したら現場を離れて下さい!」
 航三郎の合図と共に、警官、消防員は素早く避難した。
「ま、キメラにもいろんな奴がいるみたいだし、案外良い線いってんじゃない? この時期に家が無い人のことを考えるとちょっと心が痛むけど‥‥見逃すワケにはいかないんだよね」
 昼寝はルベウスを構え、交戦状態に突入し、とにかくキメラを逃さないことを最重要視していた。大打撃を与えることより、仲間との連携を崩さぬよう配慮し、適宜各種能力で応戦することに。発火能力に関しては、取り立て気にしていないようだ。
「全く痛み無しで勝とうなんてことは、端から思っていないよ!」
 昼寝は白兎キメラを発見するとルベウスで一刀両断しようとしたが、素早い動きで逃げられた。

 到着と同時に覚醒した航三郎は、超機械一号で白兎キメラを狙い撃ちしているが、全然当たらない。
「凄く素早いですね‥‥」
「感心している場合じゃないだろ!」
 昼寝に突っ込まれた。

 オリガは、白兎が予定通り追い込まれてきたら狙撃班と一緒に射撃開始をしている。足止め、弱体化狙いなので急所に拘らず、どの部位でも構わず狙い撃ちしている。後は、無理せず射撃を止めて仲間に任せる。

「確かに厄介な相手ではありますが、これだけの人数が集まっていれば問題は無いでしょう。後は、いかに被害を出さずに倒すかだけですよ!」
 スコーピオンで確実に兎キメラを狙うクラーク。

 アルヴァイムは『鋭覚狙撃』を併用して遠距離班として行動している。
 追い込み位置周辺に待機し、双眼鏡を使って周辺を警戒ながら仲間が確認できたら小声で伝え、自分は『隠密潜行』を使用し、策がばれない様に警戒している。
 追い込みが完了次第、タイミングを合わせて白兎キメラに射撃を開始。
 初弾で命中したのは強弾撃だった。
 武装はヴィアを二本という物で二刀流を気取ってみようか、と構える昼寝は、戦闘時の担当は機動性を生かして追撃役に徹している。

「龍の傭兵、緑川安則、推参! 私を信じてくれた一般市民と子供達のためにも負けられん!」
『獣の皮膚』を発動後に『瞬速縮地』で突撃、そして二振りのヴィアによる流し斬りで強烈な一撃を食らわせた。
「退治するのに成功すれば、鹵獲し、サンプルとして提供するのも良いかもな。コードネーム「因幡の白兎」と名づけたキメラを倒してUPC本部に連れて行けば、発火能力を有するという点では良いサンプルになるかもしれない」
 捕獲して連れて行けば、何らかの役に立つだろうと真面目に思いきや‥‥サンプルに余裕があれば焼くか、鍋にして食べたいと考えている安則であった。
 余談だが、キメラも素材となる生物が食用に足れば食べる事が出来るが、戦闘用に改良されているものに関しては、多少筋張っている。兎も神話上では食べられていたので、食べられないことはないのだが‥‥。
「兎の肉は美味いらしいが、キメラはどうなんだろうねー」
 等、呑気に考える安則。

 発火能力が収まり火が消えたのを確認した能力者達は、一斉攻撃を仕掛けた。
 
 こうして、放火騒ぎを起こした白兎キメラは、黒焦げの状態で倒された。

●戦闘終了後
 警察の協力もあり、能力者達は炎属性のキメラを退治することに成功した。
 安則は、発火しないことを確認してから黒焦げの兎の耳を持ち、舌なめずりをした。
「安則、それ、どうするつもりだい?」
 昼寝の問いに「兎鍋にしようと思ってさ。美味しいんだよ」と答えた。
「キ、キメラを食べるんですか!? 野蛮です!!」
 反対する航三郎。
「‥‥Я люблю Кролик запеканка」
 オリガは、ロシア語で「私は兎鍋が好きです」と救急セットで負傷している仲間の治療を行いながら言った。
「オリガの言うとおり、兎は美味しいんだよ〜? 食べてみたいと思わないかい?」
 安則は薦めるが、オリガはUPC本部がサンプルにするだろうと言った。
 兎鍋の話の途中だが‥‥。
 これ以降、赤く燃え盛る白い兎の姿を見ることは無くなり、放火事件は二度と起こらなくなり、事件は無事解決した。
 これで、市民達は安心して普段どおりの生活を送れるだろう。

 そんな中、陽気な人物が一人だけいた。
「事件解決したお祝いに兎鍋食べようよ〜。ねえってば〜! すっごく美味しいんだよ〜!」
 しつこく皆に兎鍋を進める安則に、能力者一同と協力した警官達は「不味そうだからいらない!」と声を大にして揃えて断った。

 ついでに、兎焼きも作ったが、これも評判がよろしくないようで‥‥。