タイトル:丸い野球場破壊者マスター:竹科真史

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 9 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2010/03/16 14:36

●オープニング本文


 四国にある松山中央公園野球場、愛称『坊っちゃんスタジアム』で、四国アイランドリーグの練習試合が行われることになったので関係者が準備中。
 その最中、突然、丸い何かが数体坊っちゃんスタジアムに転がり込んだ。
「あ、あれは‥‥!」
 それは、1メートルほどある水軍をイメージした甲冑姿や野球のユニフォーム姿のみかん‥‥のような生物だった。
 それらは、右手に持っているバットやボールを投げつけ破壊活動を始めた。中には、丸い身体を活かして体当たりするものも。
「やめてくれー! 球場が壊れるー!!」
 みかん連中を止めたいのはやまやまだが、一般人の関係者達にはどうすることもできない。
「け、警察っ! いや、ULTに連絡をっ!」
 あたふたしている間にもみかん達は破壊活動を続けていた。

「へー、ここが松山中央公園野球場か。修学旅行ん時には試合やってるのかねぇ」
 来年度のカンパネラ学園修学旅行の下見を兼ねて四国にやって来たソウジ・グンベ(gz0017)は、ULTに報告しようと慌てている関係者にぶつかった。
「すみません、急いでいるものですから!」
「何かあったのか?」
 みかんが暴れて球場を壊しているんです、という説明に「はぁ?」となったソウジだが、それキメラか? と思いつくと事情を説明しろと詰め寄った。
「俺は軍学校のカンパネラ学園教師兼UPC軍の軍人だ。みかん退治の指揮は自分がする。OK?」
 わかりました、とすべてをソウジに任せることにした。

「カンパネラ学園教師兼UPC軍中尉のソウジ・グンベだ。能力者諸君に伝える。松山中央公園野球場にみかんもどきキメラが出現、球場内で暴れている。あ、野球のユニフォーム着て来なくていいからな。以上!」

●参加者一覧

鳴神 伊織(ga0421
22歳・♀・AA
御山・アキラ(ga0532
18歳・♀・PN
リュイン・グンベ(ga3871
23歳・♀・PN
麻宮 光(ga9696
27歳・♂・PN
美空(gb1906
13歳・♀・HD
大槻 大慈(gb2013
13歳・♂・DG
アンジェラ・D.S.(gb3967
39歳・♀・JG
御守 剣清(gb6210
27歳・♂・PN
守剣 京助(gc0920
22歳・♂・AA

●リプレイ本文

●しまっていこー!
 松山中央公園野球場で大暴れするキメラ『みかん球児』9体は、バットやボール、自らの身体を駆使して球場を破壊しまくっていた。
 球場関係者と共に逃げ回っているソウジ・グンベ(gz0017)は「援軍はまだかよ!」とぼやいていたその時。
「情けないぞ、ソウジ。汝はそれでも軍人か」
 駆けつけるなり、ため息をつくリュイン・カミーユ(ga3871)。
「おっ、待ってたぞ! あいつらを何とかしてくれっ!」
 俺、武器が無いから戦闘には参加しないというきっぱり言うソウジに「丸腰でも避難誘導はできるだろう」と御山・アキラ(ga0532)に鋭く突っ込まれた。仰るとおりです。
「ソウジ‥‥遊びに来ていて巻き込まれるとは、とんだ災難だったなぁ」
 背伸びしながらポンと肩を叩き慰める大槻 大慈(gb2013)が小銃「S−01」を貸す。
「これ貸してやるから、避難誘導は任せた。壊したらちゃんと弁償しろよ?」
 俺も貸しますと御守 剣清(gb6210)は小銃「S−01」と救急セットを手渡した。
「小銃ですが、使ってなくても整備はしてあります。救急セットは怪我人が出た時のために一応‥‥」
 駆けつけてくれた能力者、特にリュインの前ではカッコ悪いことはできないなと大慈、剣清から借りた小銃を手にすると、ソウジは逃げ遅れた関係者の避難誘導を始めた。
「俺も避難誘導をする。自分で考えるのは苦手でな、あんたの指示に従うよ」
 初依頼のキメラはチョコレート、今回はみかんなので「心のどこかで食べ物を求めているのかね?」と思う守剣 京助(gc0920)も誘導に加わった。
「みかんもどきと聞いちゃいたが‥‥実際見るとやっぱ脱力モンだな。食いたい人いませんよね? アレを‥‥」
 剣清の言葉に「俺は絶対に食わないぞ?」と麻宮 光(ga9696)が困った表情で答える。
「食う奴がいるならどんなものかは聞いてみたいが。まだ寒いが、コタツにみかんの時期はそろそろ終わりだ。野球チームを模して9体のみかんか? コタツキメラもいたらちょっと面白いような‥‥」
 アンジェラ・D.S.(gb3967)は、松山中央公園野球場に到着するなりグランドに侵入し、外野と内野の境界線沿いに進んで二塁付近で待機。
「いつもながらのキメラ退治だけど、野球場に巣食った地元名物の果実を模した集団を相手取りね。コールサイン『Dame Angel』、球場マウンドに集う9体のキメラ群を速やかに殲滅敢行するわよ」

●プレイボール!
「思ったより、足場が安定しているようだな」
 足場が安定しているルートを選び、外野に一番近いみかん球児に『瞬天速』で接近するなり、アキラは勢いにのせてミラージュブレイドを突き刺し、すかさず至近距離からエネルギーガンを数発連射してからミラージュブレイドを引き抜いた。
 その際注意しているのは、これ以上の芝が傷まないよう配慮し外野の横に来るみかん球児、自分の後にも誰も外野が来ないようにする位置取りだ。
 バットを振る、ボールを投げる等で隙ができたのを見計らい、真後ろからミラージュブレイドを突き刺して動きを止め、倒れるまで0距離からエネルギーガン連射。
「極力避けようと考えていたが、余計な心配だったようだ」
 なぜなら、アキラの攻撃が見事にヒットし、みかん球児達は避けられないから。
 同じく外野寄りのみかん球児殲滅に乗り出した光は、味方の行動に合わせ人手の手薄な方面に周り戦闘を行っている。『疾風脚』を使用しつつ月詠での近接戦闘、敵との距離と味方の攻撃の状況に合わせ拳銃「ラグエル」で遠距離攻撃。
「ま‥‥コールドって訳じゃないが、さっさとゲームセットといきますか」
「そうですね。それにしても、相変わらず変な物を作りますねバグアも」
 光と共に、外野に近いキメラからぼやきながらも鬼蛍「常世」で順次撃破していく鳴神 伊織(ga0421)。
 アキラ、伊織との連携行動を密にし、光はみかん球児の側面、背後の攻撃を行うに際し有利な位置取りを積極的に狙い急所突き、注意を自分に引き付け、仲間に有利な位置で攻撃を行えるよう足の速さを活かして撹乱。
「コールド殲滅、とはいかないな‥‥」
 同感です、とため息をつきながら止めを刺す伊織。

「ソウジ、武器を借りたのだから指揮だけでなく働け。怠けていると中年太りするぞ? 担当する用兵もいるのだから、2人でしっかりやれよ。三十路手前は色々と気を抜くな」
 そう言うと視野を広げ、みかん球児の状況を把握したリュインは『瞬天速』で駆けつけ、脚甲での跳び蹴りを食らわせて1体吹っ飛ばした。
 それを見た別のみかん球児が反撃! と言わんばかりにボールを投げつけたが、リュインは即座に鬼蛍で一刀両断。
「能力者の動体視力をなめるな!」
 反撃後にローリング体当たりで接近したみかん球児を点で押さえて回転を止め、『急所突き』と鬼蛍でぶった斬った。
「手ごたえは‥‥みかんだな。中身もやっぱりみかんなんだろうか?」
 ちゃんと房に分かれていたら、これを作ったバグアはかなり芸が細かい。
 
●ベンチでも試合?
 関係者を避難誘導しているソウジ、京助に近いみかん球児を攻撃するのは剣清。
「接近させません!」
 出口に近づきすぎるみかん球児に『迅雷』で接近して自分に注意を向けさせ、内野に押し込めるよう仕向けた。
 内野に押し込まれたみかん球児達を確認したアンジェラはマウンド方向を見据え、足止めとして『制圧射撃』を使用。足止めされたみかん球児はアサルトライフルで仕留められたが、数は瞬時に減らない。
「数は少なくなりつつも、前衛陣に圧力かかっているようね。射撃弾幕にて注意を惹きつけ、隙が生じるようにして決して外野に逃がさないのを心得て反撃ね」
 気を引き締め、近づいてくるみかん球児を冷静に狙い撃ち。
「ワタシの銃撃から逃げられると思わないことね、みかんキメラ」

 避難中、関係者の1人が転倒し膝をすりむいた。ソウジは関係者を起こし、すぐに安全な場所に避難させると京助に手当てを頼んだ。
「たいしたことないが、念のためだ」
 エマージェンシーキットから消毒薬と絆創膏を取り出すと、京助は関係者の手当てを始め、終えるとすぐに避難誘導へ。
 全員避難したか確認中、出口に向かうみかん球児1体と遭遇。逃げ遅れた関係者をバットで殴ろうとしたが、寸でのところで京助の大剣が攻撃を防いだ。
「怪我は無いか? 気をつけろよ」
 京助に礼を言うと、関係者は逃げ出した。
 バットを防いだのはいいが、反撃できない。困っていたところ、ソウジの援護射撃でみかん球児は倒された。
「関係者は全員避難終わった。とはいえ、まだ油断できないからキミは出口で見張っててくれ」
 
 剣清はみかん球児を押し込めるように仕向けたが、全部が内野に向かったわけではない。残りは『疾風』でスピード上昇させ回避、防御し『刹那』『迅雷』を駆使し自身がもっとも信用している抜刀術で懐に入り込み決定打を与えた。

●最強の兄妹バッテリー?
「美空は、一度キメラと野球をしてみたいと思っていたでありますよ。図らずも夢がかない嬉しいのであります」
 大慈が依頼をサボり、リュインとソウジにちょっかいかけないように監督するため参戦したやる気マンマンの美空(gb1906)。そんな彼女のやる気は『殺』る気‥‥らしいが。
 大慈とバッテリーを組み、みかん球児抹殺、もとい、退治計画開始。
「美空と兄上は最強のバッテリーなのでありますよ。兄上、いきますよー」
「おうっ!」
 能力者チームの攻撃。ピッチャー美空、キャッチャー大槻 大慈。
「みかん球児、美空の魔球が打てるでありますかー? 美空大リーグポール1号ならぬ大口径ガトリングボール、喰らうのであります!」
 ガトリング砲をピッチングマシーンに見立て、デッドボールを狙う気マンマンで次々とホームベース付近のみかん球児を蜂の巣に。
「美空〜! 俺を巻き込むなぁ〜!」
 大慈が蜂の巣にならないよう細心の注意は払っているが、大口径ガトリングボールはマウンドを抉っている。大慈はそれを避けつつ【OR】バトルハリセンで止めを。
「俺達兄妹の愛情パワーをくらえ〜っ!」
 愛情パワー満タンなバッテリーに、みかん球児1体は反撃する間もなく倒された‥‥かと思いきや、ボールを持ちゆっくりと立ち上がった。
 ビーンボールを投げてくるだろうと、大慈は背中に背負った勝利のバットを取り出しみかん球児の反撃に備えた。
 予測通り、みかん球児はボールを投げつけた。
「バカヤロー、危ねーじゃねーかっ!!」
 間一髪で避けるとみかん球児に駆け寄り、勝利のバットとハリセンを交互に持ち替えタコ殴りに。

●ゲームセット!
 みかん球児は残り少なくなったが油断は禁物。
 アンジェラは狙いを定め『強弾撃』『影撃ち』で連携集中、ファールゾーンよりに牽制射撃。
「スーパー返球、というところかしらね」
 撃破確認後、肩を竦めてクスリと笑った。
 挟撃されないよう見計らって立ち回り、みかん球児の顔向き、手癖等に注目して射線延長線上、攻撃範囲内に立ち入らないよう避けつつ攻撃したため反撃されることはなかった。
「このようなもので我は倒せん!」
 バットを脚甲「ペルシュロン」の回し蹴りで粉砕したリュインにスライディングで仲間を助けようとするみかん球児。
「なんの!」
 それに気づきジャンプで回避、着地するなり容赦無くゲシゲシ足蹴、グッサグサに。
「我に攻撃を仕掛けたのが間違いだ、阿呆が!」

 能力者の猛撃により、コールドとはいかなかったがみかん球児との試合は圧勝。
 みかん球児撃破:成功!

「‥‥で、こいつらはどういう仕組みになっているんだ?」
 戦闘終了後、光は調査をしてみたいと思った。彼の友人の話によると、キメラを調理して食ったとかなんとか。そういうワケで、みかん球児がどれだけミカンに近いのかを検証することに。
 剣清が原形を保てるよう頑張ったこともあり、みかん球児達はみかん状で残っている。
「それ、食べるのか?」
 気持ち悪いものを見るかのような顔のアキラにそう訊ねる。
「いや、俺は絶対に食わない。食う奴がいるなら、どんなものかは聞いてみたいが」
 光はそう言うが、食べる猛者はいなかった。美味しいのだろうが、熱血な顔のキメラを食べるのは勘弁してほしい。

 大慈はパイドロスから 【ZOO】竜のきぐるみに着替え、関係者達とグランド整備。
「練習試合とかやるって言ってたっけ? 人手が足りないんだったら、グラウンド整備手伝うぞ?」
 とはいえ、大慈1人では大変なので全員で整備を行うことに。特に張り切っていたのは、自分達も多少は荒らしたからと率先して行っていた剣清だった。
 京助は近いうちに試合するなら見て帰るのもいいと思っていたが、関係者から練習試合延期を聞き残念がった。
「ソウジ、その‥‥まだ修学旅行の下見とやらがあるのなら、一緒に行ってはダメか? いや、たまたま暇なのでなっ! たまたま!」
 上目遣いで「‥‥ダメか?」と聞くリュインに「しゃあねぇなぁ、ついてこい」と照れて言うソウジ。
「ただし、球場の後片付けが終わってからだそ」
「わかっている」
 そんな2人のやりとりを見てちょっかいを出そうとした大慈だったが、アキラに引き止められた。
「他人の恋路は邪魔せず、騒がず、傍から眺めてニヤニヤするのが正しい楽しみ方だそうだ」
「そうなのでありますよ、兄上。お2人の邪魔をしてはいけないのであります」
 気を利かせた美空であったが、後でソウジ達の様子をこっそり窺おうとしていた。
 整備終了後、球場管理者から能力者全員を練習試合に招待したいという申し出があった。これには、全員快く承諾した。

●場外試合?
 解散後、大慈と美空はソウジとリュインの見送りに。
「ヌフフ‥‥後は若いお二人で〜♪」
「兄上、冷やかしはいけないであります」
 キミもだ! と心の中で突っ込むソウジに気づき「放っておけ」と肘鉄を食らわすリュイン。
 松山中央公園野球場を後にしたソウジとリュインが向かったのは松山駅。
 ここから坊っちゃん列車に乗り、松山市内の景色を楽しんでいた。夏目漱石の『坊つちゃん』ではマッチ箱のような汽車として登場し、四国の中学教師として赴任した主人公が乗車したことからこう呼ばれるようになった。
(「リュインが甘いもの好きだったら、一緒に『坊ちゃん団子』食えたのになぁ」)
 ま、いっか、と割り切るソウジ。
 いい雰囲気の2人から離れた席を陣取り、尾行している大慈と美空は様子を見ていた。
「ほぇ〜いい雰囲気だね〜。ちょいとおとなしいカンジだけど。そのうち、アツアツの展開になるだろうからもうちょい様子見といこうか」
「はいです」
 
 その後の展開は、大慈の予想通りアツアツとはいかなかった‥‥というのは、別の話ということで。