●リプレイ本文
●今年もやります正月遊び
「おばちゃ〜ん、あけおめ〜。今年も美味しいもの食べさせてくれよ〜!」
おなじみの竜のきぐるみ、背中に巨大ハリセン姿で元気良く学食のおばちゃん達に新年の挨拶をする大槻 大慈(
gb2013)は、ソウジ・グンベ(gz0017)の放送を聞き正月遊びに参加することに。
「ソウジせんせー、あけおめー。お年玉が貰えるんだぁ、太っ腹だな〜」
お年玉だが、期待しないでいただきたい。
「貴様という奴は‥‥暇を持て余しているのなら、連絡の一つくらいよこせ」
わざわざ出向いてやったのだから、ありがたく思えよと目線で訴えるリュイン・カミーユ(
ga3871)の振袖姿を見てソウジはドキッとなった。
「ナイトフィーゲルでの正月遊び? 面白そうだな。お年玉も出る、と。それは乗らん訳にはいかんな。我も参加するぞ」
正月遊び会場である学園グラウンドでは、一足先に来ていたキムム君(
gb0512)が正月の歌を口ずさみつつナイトフォーゲルで赤地に『夢』と書かれた凧を揚げて事前訓練中。
「張り切っていますね、あの人。年、明けましたね‥‥」
やっと実感できました、とじーんとしている真上銀斗(
gb8516)。
ミク・ノイズ(
gb1955)は、大規模作戦でしかナイトフォーゲルを使用していないため陸戦演習を兼ねて参加。
「『一人身』の暇つぶしに付き合ってやろうじゃないか」
そう言うミクの瞳にはソウジとリュインが映っていた。
愛機『アニキ・ザ・リヴァイアサン』を購入してから初のナイトフォーゲル依頼となるカンタレラ(
gb9927)は、本格的な戦闘に赴く前に肩慣らしをしたいと参加。
目的はリヴァイアサンの肩慣らしだが、本音は目指せヤンキー道。白ランを意識した塗装が施されているのがその証拠である。
「ナイトフォーゲルでお正月行事ですかぁ〜。ほぉぉ〜面白そうですね〜」
ヘルヘブン250で参加したアルストロメリア(
gc0112)。
参加者達がお年玉ゲット目指して燃えている頃、ソウジはビーストソウルに騎乗しせっせと正月遊び準備。
『準備終わったぞー! 皆ーお年玉欲しいかー?』
ほしーい! という全員の声は綺麗にハモっていた。
●巨大羽根突き開始
ソウジがくじ引き決めた結果、対戦相手は以下の通りに。
第1試合 リュイン・カミーユVSキムム君
第2試合 ミク・ノイズVS真上銀斗
第3試合 最上 憐(
gb0002)VS大槻 大慈
第4試合 カンタレラVSアルストロメリア
「行くぞ、夢見幻想【妖夢突】!」
生身での模擬練習で変化する一発を披露したが、ナイトフォーゲルでは使用不可なので不戦敗。
「勝負にならんな」
落書きされるの上等! デコに! とため息をつくリュインに『肉』と書かれるキムム君だった。
「はなっから機体性能じゃ勝ち目がないからな。走り回ってもらうぜ?」
テニスやバドミントンと違い、羽根つきはラインアウトがない。ミクはそれを逆手にとり、銀斗が打ってきた方向と逆方向へ可能な限り緩急をつけて打ち返してミスを誘う戦法を。
「長所を使いませんと負けますからね‥‥お年玉目当てで張り切っちゃいます!」
翻弄されながらも、直感力重視でガンガン打ちまくる銀斗。
2人の羽根つき勝負は、僅差で銀斗の勝ち。
「機体になら落書きしても良いぞ」
では‥‥と銀斗はミクの愛機『ロックシューター』の顔面に○×の落書きを。
「‥‥ん。この羽根を。相手に。ぶつけて。倒せば。良いの?」
詳しいルールが良くわからない憐に『ちーがーうー!』と思わず突っ込んだソウジは開始前に説明しておけば良かったか? とこめかみに手を当てた。
羽子板で羽根を打ち返すんだ、と説明を受けた憐は全力でガンガン大慈に向かって打ち返した。
「なかなかやるな。ハリセンで鍛えたこの腕、見せてやるっ!」
最初は様子を見るため無難に受け打ち返していた大慈だったが、その後ガッツンガッツンと打ちまくり。
双方、怒濤の攻めで押し切っていたが、軍配は憐に上がった。
「くっ! む、無念っ!」
大慈のロジーナには大盛りカレーの絵や、カレー食べたいというカレーに関する絵や文字の墨でのカラーリングが施された。
アニキ・ザ・リヴァイアサンは、カラーリングのポケット的なところに手を置き「ガンたれんなや‥‥」と言っているかのようにヤンキー座り。その姿は、アルストロメリアにメンチを切っているかのように見える。
アメストロメリアは死角を狙って打ちまくろうとしたが、手違いで高速二輪モードが発動したためヘルヘブン250が暴走!
「あわわわ‥‥大変です誰か止めて〜! どいて〜!」
グラウンドは阿鼻叫喚、恐怖のどん底になるかと思ったが、アルストロメリアは付近の電柱に衝突させることで何とか停止。
「きゅう〜」
そのショックで気絶したため、カンタレラの不戦勝に。
第1試合勝者のリュインと第2試合勝者の銀斗の勝負は、力の差でリュインの勝ち。
第3試合勝者の憐と第4試合勝者のカンタレラの勝負は、圧倒的に憐の勝ち。
決勝戦はリュインと憐の一騎打ち。
とにかく打って、拾って、打っての応酬を力押しでしているリュインは「ソウジの甲斐性なし!」「ソウジの鈍感!」と言いながら気合注入。
「‥‥ん。全力で。行く。てぇい」
「なんの!」
白熱したラリーが続いたが、パワーの差で憐の勝利。
落書きされそうになったリュインは雷電にのみOK。
「我の分は、代理によろしく頼む」
と言いつつ、爽やかな笑みでソウジを指差す。
「振袖姿の恋人が墨を塗られるのを、まさか黙って見ているつもりはないよな?」
しゃあねぇなぁ‥‥と憐のカレー落書きを顔にされるソウジだった。
その後の3位決定戦、銀斗対カンタレラは接戦だったが、アニキ・ザ・リヴァイアサンの「パチキかますぞゴルァ!」と叫んでいるような勢いに銀斗が圧倒されたためカンタレラの勝利に。
●ナイトフォーゲルで書き初めを
『羽根つき、白熱した展開だったねー。次、書き初めいってみよー!』
どんなこと書くのか楽しみだねぇ、とソウジはワクワク。
各機、苦戦しながらも黙々と書き初めを始めた。
「書けました」
一番乗りの銀斗が書いたのは『八雲』。
『それ、何か意味があるのか?』
ソウジの質問に「座右の銘に八雲が入っていたからです!」と力強く回答。
「我もできたぞ」
リュインが書いたのは、元気いっぱいの『へたれ』の3文字。フランス出身の彼女には漢字は難しいので、このくらいが良いだろう。
「誰のことだかわかるのよな? わかるよな?」
『な、何となく‥‥な』
わかるよな? を2度も言うことは俺だ、ということを強調しているんだよな? と思うソウジ。
「うん、我ながら結構上手く書けたと思うぞ」
ミクは『KVの強化金属漬け』。
「これが『えーす』の条件なんだそうな。そうなのか?」
『さ、さあ‥‥』
ソウジは返答に困った。
「‥‥ん。カレーを。かきかき。大盛りで。かきかき」
カレーを、と言っているが、憐が書いたのは『餅食べたい』。
横には小さく『大盛りで』と書き加えられ、更にその横には、名前が元気良く書かれている。
「‥‥ん。お腹。空いた。ナイトフォーゲルで。餅つきは。ないの?」
『残念ながらそれはない。その代わり、夕飯は食堂のおばちゃんに雑煮を用意するよう頼んだからそれで我慢してくれ』
本当か!? と大慈は書き初めの手を止めた。
『本当だ。キミ、まだ途中だろ。ちゃんと書けよ。でないと、雑煮抜きだぞ?』
そりゃ困る! と書いたのは良いが、余白が無いのが残念。
大慈が書いたのは『ハリセン命』。
本当は『竜のきぐるみ最高!』と書きたかったようだが、用紙の都合上変更。
「‥‥ん。これを。笹に結ぶと。願い。叶う?」
七夕じゃないぞー、と小声で突っ込むソウジ。
カンタレラは『地球人類皆平和』。
ナイトフォーゲルはバリバリなヤンキーだが、皆のことを考えている。
夜露死苦、と書くかと思っていたソウジは意外だ‥‥と小声で言った。
「俺の悪筆っぷりを見よ!」
胸を張ってきっぱり言うキムム君の書き初めは‥‥読めないため何が書いてあるのか理解不能だった。
「題字は『夢オチ』! まさに夢見幻想!」
何を思ったのか、書き終わった直後にコックピットを展開。その瞬間に滑って落下。
「これぞ本当の『夢』オチだ!」
こういう時の彼は不死身なので、奇跡的に無傷だった。
「で、できた〜」
かなり苦戦したアルストロメリアが書いたのは『ドジっ子脱却』。
喜んだのも束の間。巨大墨汁バケツに蹴躓き、本日2回目の大惨事に。
『大丈夫かー?』
「とほほ〜今年も無理っぽいです‥‥」
頑張れ、アルストロメリア! 次のかるた大会で名誉挽回だ!
●疾風怒濤のかるた大会
「俺はっ! スペシャルでっ! 2000回でっ! 百人一首なんだよぉ!」
キムム君曰く、高校生時代に校内百人一首で優勝した経験がある‥‥らしい。
『張り切ってるなぁ、キムム君。んじゃ、始めるぞー』
皆、耳を澄まして待機。
『骨折り損のく‥‥』
はいっ! と勢い良くかるたを取ろうとしたアルストロメリアのヘルヘブン250だったが、書き初めの後、片付け中に付いた墨汁だらけの手で奪取しようとして本日3回目の大惨事に。
「とほほ‥‥もう隅っこでおとなしくしています‥‥」
自主退場するヘルヘブン250の背面は、ものすごい哀愁が漂っていた。
『お、お疲れさん‥‥。気を取り直して次いくぞー。 下手の‥‥』
「これだぁー!」
全神経を目と耳に集中させ、良く聞いて良く探した大慈が取った。
カンタレラも取ろうとしたが、一歩遅かったようだ。睨みつけているのがそれを物語っている。
『月‥‥』
「自信無いですが‥‥攻めますよ!」
直感を活かした銀斗が素早く取った。お手つきでないのは見事。
『楽あれば苦‥‥』
序盤では札取りは行わず、札の配置を頭に叩き込んだミクが巻き返しに賭けた。
「やりぃ。羽根つきでもそうだったが、機体性能じゃまず勝ち目がないからな。頭で勝負するしかねぇわけだ」
中盤以降、突撃をしてくる他機をうまくいなして札を回収するロックシューター。
『油断大敵』
全機、一歩も動かず。全神経を集中させているのだろうか?
「サイエンティスト的にここは勝ちたいっ!」
覚えられる範囲で場所を記憶したカンタレラが取った。
『身から出た錆』
いち早く動いたのはキムム君。
「【夢見幻想】、幻影戦車(ファントムチャリオッツ)!」
「押しのけてでも札を取るっ!」
お手つきに注意し、しっかり聞いたリュインは雷電でスライディング。試しにやってみたそれは、ナイトメアを転倒させた。
「ふっ、簡単に渡すものか!」
ああ、勝負とは非情なり‥‥。
『芸は身をた‥‥』
「マッポなんざこわないんじゃ、こますぞワレェッ!」と叫んでいるように見えるアニキ・ザ・リヴァイアサンが突進!
「‥‥ん。かるた。奪い取る。とぉ」
それに呼応した憐のナイチンゲールは、アニキ・ザ・リヴァイアサンの手の上から強引に札を奪い取った。
「‥‥ん。全員。倒せば。自動的に。私の。勝ち?」
『そ、そうだな。勢いが良いのは構わんが、相手に怪我させんなよ。次いくぞー。貧乏暇なし』
読み終えると同時に7体が一斉に取ろう動いたが、全力でタックルしたナイチンゲール、雷電のスライディングに数体吹っ飛ばされた。
「‥‥ん。札。取る」
「させるか!」
憐とリュインの取り合いとなったが、圧倒的パワーで憐が取った。
その後も押し合いへし合い、修羅場なかるた大会は続いた。
●お年玉という名の栄冠は誰の手に?
全競技終了後、ソウジと参加者達は全員で後片付けを。
「祭りの後は片付けが付き物ですよね。後片付けが終わるまでがお祭りなのです!」
家に帰るまでが遠足です、のノリで、銀斗は率先して。年始からドジ炸裂なアメストロメリアは、泣きながら後片付けをしていた。
「楽しかった‥‥と言ってもいいのかな? あう、何か、荒らしただけで終わったような気がします‥‥」
愛機に落書きされたミクは、語りかけながら清掃に精を出している。
「‥‥お疲れさん。これからもよろしくな、相棒」
キムム君は、後片付けそっちのけで自作のナイトフォーゲル独楽を歌いながら回して遊んでいた。
後片付けが終わると、お楽しみの結果発表。
「皆、お疲れさん。今年もかるた大会、派手だったねー。楽しませてもらったよ。んじゃ、成績優秀者の発表とお年玉進呈だ」
羽根突きの結果
1位:最上 憐、2位:リュイン・カミーユ、3位:カンタレラ
書き初めの結果
達筆賞:真上銀斗、オモシロ賞:キムム君
かるた大会の結果
1位:最上 憐、2位:ミク・ノイズ、3位:大槻 大慈
ドジっ子振りを発揮しながらも全競技に参加したアメストロメリアは『敢闘賞』を授与。
「いいんですか!?」
「キミは最後まで頑張ったからな」
結果的には、今年も参加者全員にお年玉が進呈されることに。
「最後に参加賞進呈な」
昨年の参加賞は『みかん』だったが、今年は食堂から失敬した『餅』。これに喜んだのは、お年玉で餅を買おうと決めていた憐だけだった。
「俺、腹減った! 学食に行って雑煮食おうぜ!」
「‥‥ん。雑煮」
すべてが終わった時間は丁度夕飯時。腹ごしらえにはグッドタイミングだった。
「おばちゃ〜ん、お雑煮ちょうだーい!」
一番乗りに着いた大慈が食堂に着くと、テーブルには人数分の雑煮が用意されていた。
雑煮を食べながら、ソウジも交えて今日の出来事を話し合った。
「遊んだ後の雑煮、最高!」
「‥‥ん。雑煮。美味しい」
腹ペコ2人は雑煮を堪能。
「皆さん、今日はすいませんでした!」
失礼なことをしてしまったかも、と不安だったカンタレラだったが、内心ではヤンキーって楽しいと満足気。
「私も皆さんにすいませんでしたです‥‥」
落ち込んでいるアメストロメリアに「気にするな」と励ますソウジだったが、餅をほお張りながらなので説得力ゼロ。
リュインはそんなソウジを見て「行儀が悪い」と睨み付け。
「遊んだ後のお雑煮は美味しいですね」
眼鏡の曇りを気にしつつ味わう銀斗。熱い料理は、眼鏡をかけている人にとって食べづらいものである。
ミクは一口ずつ黙々と味わい、キムム君は「美味いっ!」と競技が終わってもテンションが高かった。
食堂解散後、リュインがソウジに詰め寄った。
「貴様、我に何か言うことははないか?」
「言うことって、何‥‥。あ‥‥!」
どうやら、言うことに気づいたらしい。
「その格好、似合ってるな。わりぃ、遅くて」
「ようやく気づいたか、馬鹿者。ソウジに見せるために着たのだからな。この後、暇なら初詣に行かんか?」
リュインの振袖姿を褒めることが遅くなったお詫びとして、この後とことん付き合うかと腹をくくったソウジだった。
こうして、ソウジ・グンベの正月は終わったのであった。