●リプレイ本文
●KVコスプレ模擬戦前
KVコスプレ対決会場であるカンパネラ学園闘技場に集まった能力者は7名。
「コスプレやるのも久しぶりね。今回は模擬戦かー。私の愛機S−01に、身も心も一体化させてる感じで良いかも」
「俺もだ。こういうのも、たまには悪くないね」
前髪をかき上げてふふっと微笑む皇 千糸(
ga0843)と鹿島 綾(
gb4549)の意見が合う。
初依頼、コスプレ初挑戦のヒルダ・エーベルスト(
gb9489)は、口にしないが容姿には自信があるので資料で調べ、気合いを入れて衣装を作成。
「人を模して作られた機械であるKVを、今度は人が模して着飾ると言うのは面白いですね」
「面白いってのは、僕も同じ意見だね。僕はイグレット(
gb7850)、これが能力者になって初めての依頼だよ。コスプレとはいえ、実戦に近い模擬戦闘だから緊張するなぁ」
「KVのコスプレでの実戦訓練ですか‥‥。まぁ、将来的な事を考えても体験してみてもいいかと。勝てるかどうかは別として、頑張ってみようかと思います」
元武闘派俳優の辰巳 空(
ga4698)は、模擬戦であっても実戦同様に本気で戦うつもりでいる気十分。
その近くでは、巫女服の胸元が気になって仕方が無い王 憐華(
ga4039)の姿が。
「このたび、カンパネラ学園に編入した伊鷹 旋風(
gb9730)と申します。先輩方、これからのご教授の方をよろしくお願いします!」
ヒルダ、イグレット同様、これが初依頼となる旋風は参加者達に礼儀正しく挨拶。
コスプレ対決実行委員顧問代理の三崎・裕士(gz0096)が参加者を確認後、対戦相手の希望を1人ずつ聞いた。
「私は誰と当たってもそれなりにやれるように頑張るつもりだけど、強いて挙げるなら、空さんか綾さんあたりかしら?」
それなりの経験を積んでいる者なら、相応の戦いが期待できそうと思う千糸。
「私のレベル的には選択肢は無いので、皇さんと対戦することになりますね。やるからには最大限で‥‥という訳で、基本戦術は間合いを見切ってそれに合わせた戦いをする事になります」
「千糸と空は決まりだな。俺は誰でもOKだ」
どんな相手でも対応してみせる意気込みで参戦した綾。
「私は‥‥できれば男性は避けたいです‥‥。視線が気になるので‥‥。あとは、銃を使った新しい戦い方に慣れる為にも同等の実力な人がいいです」
三崎の視線を気にしつつ、恥じらいながら希望を述べる憐華。
「私の希望は、対戦相手の希望は強い方です。胸を借りる形でお願いしたいですね。戦闘のコツを掴みたいので」
強者と対戦することで己の腕に磨きをかけたい旋風。
●対戦相手決定
話し合いの結果、対戦は以下の通りに。
皇 千糸VS辰巳 空
王 憐華VS 鹿島 綾
イグレットVSヒルダ・エーベルスト
伊鷹 旋風VS三崎・裕士
イグレットとヒルダだが、希望者がいなかったので自動的に決定。
「お互いに初陣だけど頑張ろうね! 女の人だけど手加減しないよ」
イグレットのコスプレは擬人化した人型ナイチンゲール。
ピンクのナース服の上にKVを模した鎧らしきものを装着しているのは、白衣の天使であるナイチンゲールにちなんでだろう。
(「女装は恥ずかしいけど、盛り上げるためだ‥‥」)
KVコスプレ対決を盛り上げるため、羞恥心を捨てる彼の心意気に拍手!
「よろしくお願いします」
ヒルダのコスプレは阿修羅の擬人化。
サンダーホーン、テールを装着し、それにビキニの形で装甲。手足には阿修羅の手を模したグローブとスリッパ。いうなれば『KV仕様ケモノ少女』というカンジ。
「どうでしょう、似合っていますか?」
「うん!」
女装青年とケモノ少女の対戦はどうなる?
「私のS−01改は、旧機体とはいえまだまだ現役バリバリよ」
千糸の衣装は、S−01の人型形態をイメージした濃紺系のインナースーツの上に各種パーツを装着した感じのもの。右肩部に機体エンブレムを付けた肩パーツとスカートのようなパーツを大きめにし、存在感を出している。脚の可動域を考慮したパーツは苦心作だ。
対する空は、鮮やかな赤に要所に金色を配し『西遊記』の孫悟空といった感じに仕上げた斉天大聖。形状も装具としてメトロニウムのフレームをモデルを参考にし、変形を考慮しないことを念頭に体の構造や使い勝手を考慮して動き易くアレンジ。背部は、視野の確保の為に極力小型化している点が拘り。
憐華は愛機『純天銀穹姫』を模したアンジェリカ。
【OR】SESリンクファクタースーツの上にメタトリウム装甲を頭部、胸の前、両腕、膝より下、腰回りに装着。頭部はヘルメット状、両腕、膝より下は腕に装着できるように調整。胸の前と腰回りはスーツの上に装着。
綾は愛機『モーニング・スパロー』を模したディアブロ改。
ベースカラーは白、エッジ部を中心に山吹色のラインがあり胴、肩、前腕部、膝から下の脚にパーツを装着。動き易さを考慮し、関節部や腹部は生身である。
「ごめんな、ミカエル‥‥」
AU−KV初装着でこのような使い方なので、旋風はAL−011「ミカエル」に謝る。
そんな彼のコスプレはビーストソウル。写真を見つつ、動きを阻害しないように追加で装甲。
「装甲、ブリキあたりで良いんですかね? ドラグーンはAU−KVがある分、楽かもしれませんね」
追加の装甲を付けたら、青く塗って外観はこんな物かな? と試行錯誤しながら衣装作成したのはここだけの話。
●KVコスプレ無双開始!
「相手の機動力を削ぐことが戦法の基本!」
いの一番に攻撃を始めたのは千糸。
一定距離を取りつつ小銃「S−01」で空の脚を狙い撃ち。
その後、素早く攻撃、移動、攻撃という基本動作を行いつつ、脚と腕を交互に射撃。
「なかなかやりますね」
エンジェルシールドで千糸の攻撃を防御しながら接近し、空は『真音獣斬』で牽制。
隙あらば足払いを交えたいところだが、背後を狙いつつ『円閃』を駆使して体力を削ることに。
その動きは、まさに斉天大聖と呼ばれる孫悟空そのもの。
「コスプレ通りの動きね、お見事」
「あなたこそ」
ベテラン同士ということもあり、決着はなかなかつかず。
「こうしていても埒が明かないわね。いくわよ、ブレス・ノウ、起動!」
ここぞと言う時の目晦ましとしてのエネルギーガンでの攻撃をS−01改の機体依存特殊能力に見立て、素早く『影撃ち』を使用。
「動きまわりながら、手数で相手を攪乱する戦い方を試してみましょう」
憐華の戦法は今まで後方からの狙い撃ちばかりだったが、相手に狙いを定めにくくするように無闇に立ち止まるのはやめ、動き回りながら武器をランダムで切り替えながらの手数攻めでいくことに。
それを知ってか知らずか、綾の戦闘スタイルは、銃と脚甲を用いた遠近両立型。
「遠距離、接近、どっちからの攻撃も考えられるね。どうしようか‥‥」
とりあえず様子見、ということで真デヴァステイターでの脚や腕部に牽制射撃。
銃撃の際、綾の動きが若干止まったのを見逃さなかった憐華は小銃「S−01」を構えて狙いを定めたが、一瞬の隙が生じた。
「隙あり!」
それを見逃さなかった綾は、脚甲による『ソニックブーム』で憐華の脚を削った。
「‥‥っ! 遠距離での攻撃は駄目なようですね」
憐華は接近戦に切り替えると、綾の側面に回り込むように動き足払いを仕掛けて体勢を崩すことを重点に狙いを定めた。
(「あまり激しく動くには、私のこの胸が邪魔になってしまう可能性が‥‥。スーツの固定圧縮率を上げておくべきでしたでしょうか?」)
「何を考えている? がら空きだ!」
脚甲で足払い、膝への突き蹴りをする綾の咄嗟の攻撃がヒット!
体勢を崩されたが、憐華は素早く立て直し武器を切り替えながら反撃。
愛機対戦も目が離せない展開に。
「お注射しますね。ちっくんするけど我慢してくださいね♪」
レイ・バックルでカデンサの攻撃力を上昇させた後、イグレットはそれを注射器に見立ててクネクネ動きながら宣戦布告。
「治療されるのは、あなたのほうですよ?」
覚醒するとテンションが上がり、口数が増えやや好戦的な感じになるヒルダ。
「いくよ!」
相手が女性ゆえ、顔面を狙う攻撃をしないイグレットの戦闘スタイルは突き、払い攻撃。
ヒルダはそれらをかわし、『練成強化』で【OR】エネルギーストライカーを強化すると一気に間合いを詰めて攻撃。
「シュートッ!」
ヒルダの武器は【OR】なので、相手に攻撃方法がわからないという利点がある。
接近戦で蹴りつける武器と見せかけ、間合いに入る前に一撃という作戦は成功し、放たれたエネルギー弾はイグレットに命中。
それに油断することなく、ヒルダは攻め続けた。
「やるね、でも負けないよ!」
「それは私も同じです」
共に初陣の2人は、どこか楽しそうに見える。
「三崎先生、ご教授願います。胸を借りる感じで全力でいきます」
「戦うからには、手加減は一切しない。覚悟するんだな?」
三崎のコスプレはヘルヘブン750。実行委員の生徒に任せたのでこれになった。
旋風はルベウスをサーベイジクローとして装備。
「いきます!」
覚醒するなり『竜の爪』『竜の瞳』を使用し、短期決戦を狙う。自分より実戦経験豊富な三崎相手では長期戦は不利になるが、AU−KVの機動力と防御性能ならば、多少無理をすれば三崎相手でも十分に戦えるだろう。
隙を狙いつつ、位置を絶えず変えつつ、死角からの攻撃をするように激しく攻め込んだ。
「ヒットアンドアウェイ狙いか、考えたものだ。実力が如何ほどか、とくと拝見させてもらうぞ」
向きを変えつつ、三崎は移動せず旋風を正確に狙い撃ち。
(「さすがは三崎先生。でも、負けられませんよ!」)
新人とベテランの対戦は如何に?
●コスプレ無双、終了!
1時間の激闘は、学園祭実行委員の合図で終了。
「ありがとう、楽しい時間を過ごせたわ」
「私もです。また、あなたと対戦したいものです」
ベテラン同士の対戦は引き分け。互角の実力がこのような結果となった。
「楽しかったね」
「ええ、綾様。今回は、戦法を変える良い経験になりました」
愛機体同士の対戦は、接戦であったが綾に軍配が上がった。
「お大事に♪ 手当て、マーヤー教官にしてもらう?」
「いえ、大丈夫です。今日はどうもありがとうございました」
初陣同士の対戦は、僅差でイグレットの勝利。
「なかなかだった。この模擬戦での攻撃、実戦でも活かせるようにな」
「は、はい!」
三崎との勝負に敗れたが、旋風にとっては忘れられない一戦になったことだろう。
『以上で、KVコスプレ対決を終了致します。観客の皆様、盛大な拍手を』
アプサラス・マーヤー(gz0032)のアナウンス後、カンパネラ学園闘技場は歓声と拍手で沸いた。
●戦い終わって
「あの‥‥シャワーを浴びてきても良いですか? 汗かいたので‥‥」
憐華がそう言うと、千糸と綾も浴びたいと言い出した。
「そうだな。汗をかいて気持ち悪いだろうし。すぐシャワー室に行って来ると良い。着替えたらミーテジングルームに集合だ」
こうして、三崎を含む参加者達は着替えることに。
「今回は動き回ったりと大変でしたし、締め付けがきつかったです‥‥。ああ、やっぱり胸がまた大きくなっています‥‥着替えのサイズが合いません‥‥」
覚醒の度に胸が若干成長していく王 憐華嬢のお悩み。
「私の胸部装甲は薄いな、ちくしょーめ」
「千糸様、何か仰いましたか?」
「い、いや‥‥」
体型、特に胸にコンプレックスがあると思われる千糸の独り言。豊満な憐華、綾に挟まれているので余計そう思う。
綾の隣には、これまた豊満なヒルダがいるが気づいていない。
男性陣は、互いの体型を見比べてはいたようだが何も言わず。
●反省会
30分後、ミーティングルームでコスプレ対戦の反省会が行われた。
「今回の対戦で思ったんだが、移動系スキルを自分流の戦術に組み込んでいる人もいるだろうからその制限を緩和できないか?」
実戦さながらの模擬戦であるとはいえ、移動系スキル使用禁止はおかしいと思う綾の意見。
「うむ、たしかにそうだな。それは検討してみよう」
「そうしてくれると助かる」
「KVコスプレですが、互いに動きが鈍重になりそうなので製作から注意して挑み、今後の参考になりそうな戦いをしたいですね」
コスプレに凝った空の意見。製作に関しては、重量や費用は一切告知されていなかった。
重量制限があれば、戦闘がより楽しめるかもしれない。
「いやー、慣れてないせいもあるんだろうけど、一対一っていうのは大変ねぇ。でも楽しかったわ。来年も開催してほしいものね」
予想以上の激戦ということもあってか、疲労の色が隠せない千糸。
「私にとって、今回は非常に勉強になりました。三崎先生、皆さん、ありがとうございました」
「僕も。勝ったけど、負けてもこのコスプレ対戦は良い経験になったよ。参加して良かった。来年もやるのかな?」
「それもルール改正同様、検討中だ」
礼を述べた後、旋風は三崎やベテラン能力者達に自分の戦いの注意点、戦闘の有り方を質問して『戦闘』とは何かを学習し、イグレットは「来年もやろうよ」とせがみ始めた。
模擬戦とはいえ、これが初めての実戦のヒルダは満足だった。
「皆さん、お疲れ様でした。打ち上げの用意ができました。飲み物はジュース類やお茶、お酒といろいろあります。未成年の方の飲酒は禁止ですよ?」
飲み物や食べ物が載ったワゴンを押し、アプサラスが実行委員の生徒達とミーティングルームにやって来た。
「打ち上げー!」
わーい、と大喜びのイグレット。
「すまない、マーヤー教官。皆、お言葉に甘えて打ち上げを始めるぞ。各自、飲み物を手にしろ」
三崎にそう言われ、参加者達は各自好きな飲み物を手にした。
反省会後、盛大な打ち上げが行われたがアプサラスの監視下なので羽目を外せずじまい。
来年度、ルールを新たにコスプレ対戦が開催されるかどうかは未定。
生徒、聴講生の要望があれば開催されるだろう。
2009年度コスプレ対戦:結果的には成功だが、改良の余地有り。