タイトル:【手芸部】仮装なお茶会マスター:竹科真史

シナリオ形態: イベント
難易度: 易しい
参加人数: 2 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2009/10/29 18:20

●オープニング本文


 カンパネラ学園手芸部は、真面目な部長を含めても部員の人数は一桁台。
 手芸部部長、糸井・創璃(gz0186)は部員を増やすべく、頭を捻ってあれこれ必死に考えている。
「手芸に興味があるといっても、お裁縫が苦手な人もいますよね‥‥。デザインが得意な人もいるでしょうし、ビーズアクセサリのようなアクセサリ作りが得意という人もいるでしょうし‥‥」
 腕組みをして何を中心に活動すべきかを創璃が考えていると、部員の1人がこう提案。

「部長、今月末はハロウィンですよ。体験入部活動の一環として『ハロウィン仮装パーティ』というのはどうでしょう? デザインが得意な人に衣装を考えてもらい、裁縫が得意な人が衣装作成できますよ。あ、衣装アイデア提供というテもあります♪」
 仮装はわかるが、パーティとはこれ如何に?
 提案した部員曰く。
 体験入部だけでは面白味が無いので、慰労会としてお茶会を催したいとのこと。
「良い心遣いですね。では、体験入部はその案でいきましょう」

 こうして、手芸部体験入部が開催されることに。

●手芸部体験入部のお知らせ
 10月31日、手芸部部室において体験入部の一環として『ハロウィンコスチュームパーティ』を開催致します。
 性別、年齢、生徒、聴講生、一切問いません。
 ご希望の方は、手芸部部長の糸井・創璃にお申し出ください。

●参加者一覧

/ マルセル・ライスター(gb4909) / エリノア・ライスター(gb8926

●リプレイ本文

●ようこそ手芸部へ♪
 10月31日、ハロウィンとカンパネラ学園手芸部体験入部当日。
 手芸部員達は各々お化けや魔女の仮装をし、飾り付けした部室で今か今かと体験入部希望者をわくわくしながら待っている。
 座敷童子の仮装をした部長の糸井・創璃(gz0186)に部室に案内してもらっている体験入部希望者は、漆黒のムンクローブに身を包み、パンプキンの提灯を片手に持っている魔法使い姿のマルセル・ライスター(gb4909)と、黒のゴシックドレスに身を包み、頭部側面にホッケーマスク、小道具としてチェーンソーを持っている小悪魔チック少女姿のエリノア・ライスター(gb8926)の2名。
「ったりぃなぁ。兄貴、体験入部に付き合ってやってんだから明日の昼食奢れよ。あと掃除当番な」
 小心なマルセルに付き合い嫌々ながらに体験入部に参加するエリノアは、軽く裏で蹴りを入れながら交換条件を要求。
「わ、わかってるよ‥‥」
 ライスター兄妹のやりとりを見て、創璃はクスリと笑った。

「皆さん、体験入部希望の生徒さんをお連れしました」
 創璃が部室に入るなり「待ってましたぁ!」とクラッカーを鳴らす部員達だったが‥‥希望者が2名だけという事実に唖然。
「あ、あの‥‥」
 何か話さなければと思ったマルセルは、身にまとっている衣装は自分が作ったことを説明した。
「この衣装‥‥俺が作ったんです。デザインしたのは妹のエリノアですけど‥‥。申し遅れました、ドラグーンのマルセル・ライスターといいます。宜しくお願いします。ドレスを着ているのが妹のエリノアです」
「宜しくな!」
「ご覧のとおり双子なんですけど、性格は真逆で‥‥。あはは‥‥」
 余計なこと言うな! とエリノアに蹴られ涙目になるマルセルだったが、手芸部員達にお手製のパンプキンパイとパンが入ったバスケットを差し入れた。
「あの‥‥お茶会を催すとのことなので、パンプキンパイと、パンを焼いてきました」
 うわぁ、美味しそう♪ ありがとう♪ と喜ぶ部員達。現金だね、きみ達。
「マルセルさん、エリノアさん、部室へどうぞ。お茶会の前に、実際に手芸部の活動をしてみましょうか」
 マルセルは失礼します、とペコリと頭を下げて入室。後に続いてエリノアも入室するかと思いきや
「んーと、何つーんだっけ? 『ギブミー・チョコレート』だっけ?」
 と一言。
 はぁ!? となる部員達。
「エリノア、それを言うなら『トリック・オア・トリート』じゃ‥‥」
「そーだっけ? ま、どうでもいいじゃん。邪魔するよ」

●微笑ましい兄妹のやりとり
 体験入部活動は、ボタン付けや様々な縫い方の実践という簡単なものだった。これは、裁縫が苦手な希望者にできるよう創璃が配慮して考えた内容だった。
 始めはちまちま、根気良く活動していたエリノアだったが、暫くすると疲れてきたので壁際に置いてあるソファにどかっと腰掛けると寝転んだ。
「あー疲れた。ビール飲みてぇ‥‥」
 エリノアさん、あなた、未成年では?
「エリノア、お行儀悪いよ」
「あー、はいはい、わかったよ」
 尻を掻きながら気だるそうに謝るエリノア。
「すみません‥‥」
 ペコペコ頭を下げ、創璃に謝るマルセル。
「妹はやんちゃなのでよく服を破いたり、ボタンを無くしたりするんです。それを繕っているうちに上達しちゃったんです」
 それで上手なんだ、と感心する部員の1人。
「家事全般は得意なんです。部活動は料理部か手芸部かで迷っているのですが‥‥。編み物も好きです。あっ、これ編み初めなんですけど‥‥」
 恥ずかしそうに、緑色の毛糸で編まれた編みかけの手袋を取り出した。
「妹さんのために編んでいるんですか?」
 創璃の質問に「勿論です‥‥」と答えるマルセルを見たエリノアは、ソファからむくっと起き上がると「馬鹿兄貴!」と照れながら怒ると頭をグーで一発。
 怒鳴られても足蹴にされても、殴られてもマルセルは妹が大好きである。
「もう、女の子なんだから‥‥。あ、リボンが解けてるよ」
 エリノアの粗相に注意を垂れながらも、甲斐甲斐しく妹の髪を結ってあるリボンを結び直し、手櫛で髪を梳くマルセルは面倒見が良い。
「ったく、照れるだろーが。兄貴は教科書に忠実に生きているようなモンだから、頭がカテェんだよ。私は型紙作ったり、ちまちま縫ったりするのは苦手だけどデザインは得意だ。兄貴は私とは逆で、みみっちい作業が大好きだけどな。兄貴は女だったら、いい嫁になれるんだけどなぁ」
 うんうんと頷くエリノア。

●デザインはいかが?
 デザインが得意というエリノアの話に、部員の1人が自分のデザインを見てと相談をもちかけた。
 デザインをスケッチした用紙には、マントにボディコン姿の魔女のイラストが描かれていた。
「こうすると面白そうな気がするんだけど。あ、ちょい手ぇ加えてもいい?」
 許可を得たので、ペンを借りると衣装のラフ画に若干のアレンジを加えた。
「なかなか良いですね」
 ラフ画を見た創璃に褒められ「いやぁ、それほどでも」と頭を掻いて照れるエリノアを見て、マルセルは可愛いと思った。
 デザインセンスの良さを見込まれたエリノアは、他の部員達のデザイン画も見ては「この方がバランスよくね?」とか言いながらアレンジを施した。
「ま、暇潰しにはなるべぇな。楽しいもんだね、結構」
 そう言っているが表情は楽しげで、ラフ画アレンジは、鼻歌を歌いながら行っている。
「エリノアさん、デザインに興味おありでしたら手芸部でデザイン活動してみませんか?」
 創璃の誘いに「考えとく」と素っ気無く返事するエリノアだった。

●姿は違えど思いは同じ
 体験入部が一通り終わったので、慰労会を兼ねたお茶会に。
「待ってましたお茶会っ! 兄貴、お茶淹れてくれ」
「‥‥わかった」
 部員達が用意したクッキーやチョコレート、ケーキ等のお茶菓子、マルセルお手製の季節のクルミとクランベリー入り、砂糖控えめの甘酸っぱいライ麦パンがテーブルに並んでいる。
「あの‥‥お茶淹れましたので、冷めないうちにどうぞ」
 ティーカップに注がれたのは、良い香りがするローズヒップティー。
「マルセルさん、お手伝いありがとうございます」
 緑茶を注ぎながら礼を言う創璃は、エリノアの言うとおり、女の子だったら良いお嫁さんになれますねと思った。
「皆さん、お茶にしましょう。マルセルさんが差し入れてくださったパンもいただきましょう。では‥‥トリック・オア・トリート!」
 創璃に続き、部員とライスター兄妹も「トリック・オア・トリート!」と声高らかに言った。

 美味しいお茶と甘いお菓子は、時間が経つに連れて減っていった。マルセルは作ったパンは大好評。
 また作ってくれる? という部員の一言にマルセルは「喜んで」と応えた。自分が作ったパンを美味しく食べてくれた部員達に感謝。
「ホント、私と兄貴は何もかも正反対だな。私達みたいなのをミラーツインズっつーのかな? 兄貴が右なら私は左、兄貴が白なら私は黒、ってなカンジでさ。ひとつだけ、たったひとつだけ同じことがあるとしたら、それは‥‥」
 それは‥‥何?
「‥‥それは、互いに大切な兄妹だって思っていることかな?」
「え‥‥? エリノア、今、何て‥‥」
「何だっていいだろ!?」
 素直な気持ちを隠すためか、照れ隠しなのかマルセルを足蹴にするエリノア。
「痛いよ、エリノア‥‥」
 痛む身体をさすりながら「エリノアの言うことは俺も同じだよ‥‥」と心の中で呟くマルセル。

 楽しい時間はあっという間に過ぎた。
 お茶会が終わると、部員達は後片付けを始めた。
「あ、俺も手伝います。エリノアも手伝って」
「へいへい」
 ライスター兄妹の協力もあり、後片付けは早く終わった。

「手芸部体験入部ならびお茶会は無事終了しました。マルセルさん、エリノアさん、お疲れ様でした。どうでしたか?」
 口調は違えど、感想は「楽しかった」と同じだった2人。
 入部するかはどうかは本人達の意思次第だが、体験入部は良い経験になったことだろう。
 今後も、この日と同じように仲の良い兄妹でいて欲しいと願う創璃だった。