タイトル:ベビーキメラ研究会マスター:竹科真史

シナリオ形態: ショート
難易度: やや易
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2009/10/24 16:12

●オープニング本文


 たぷたぷ先生こと時任 健三郎、金子 雄二管理下のもと、研究部に所属する部員達はキメラの研究、生態調査等に勤しんでいる。

「あの‥‥これは、本当にキメラなのですか?」
 研究生の申 永一(gz0058)は、苦笑交じりに疑問を口にした。
 彼がそう思うのは無理もない。何故ならそのキメラは‥‥。
「可愛い〜♪」
 女性研究員達が群り、そう言いながら見ているのは小型動物‥‥というよりは赤ちゃん動物。
 動物だけでなく、人間の赤ちゃんもいる。
 もぞもぞと手足を動かし、か弱い声で鳴くキメラは可愛いもの好きにはたまらないのだろうか?
(「俺は、どうもこういうのは苦手だ‥‥」)
 苦手意識が無いと思われる永一だが、赤ん坊だけは苦手だった。
 寝顔は天使のように愛くるしいが、泣き出すと手がつけられないうえ喧しい。
 しかし、研究対象となれば「苦手だ」と言っていられない。責任持って研究しなければ。
 苦手意識を克服、というよりは腫れ物に触れたくない故、永一は研究協力者募集というかたちで生徒、聴講生達に協力要請することにした。
 
 そう考えている時、赤ん坊キメラ1体がぎゃん泣きしたので研究室は大騒ぎ。
 可愛らしい小さなキメラ研究は、一体どうなることやら‥‥。

●参加者一覧

ドクター・ウェスト(ga0241
40歳・♂・ER
ホアキン・デ・ラ・ロサ(ga2416
20歳・♂・FT
ルシオン・L・F(ga4347
19歳・♂・ER
櫻杜・眞耶(ga8467
16歳・♀・DF
美空(gb1906
13歳・♀・HD
大槻 大慈(gb2013
13歳・♂・DG
桂木菜摘(gb5985
10歳・♀・FC
紅月 風斗(gb9076
18歳・♂・FT

●リプレイ本文

●集いし研究者達
「けひゃひゃ、我が輩がドクター・ウェスト(ga0241)だ〜。それにしても、幼体キメラとは珍しいものだね〜」
 私設研究グループ・ウェスト研究所所長で傭兵経験豊富、趣味ともいえる研究対象は多岐にわたるウェストは、巨大な仔猫や鮭が爬虫類系の手足を生やした姿に変態したキメラ相手に戦ったことはあるものの、幼い形態のキメラは初めて見たので興味津々。
「かわいい外見なのは、バグアの戦略かもしれないであります。ここは、慎重に調査するのでありますよ。それを抜きにしても、かわいいでありますね〜♪」
 気負ってはいるものの、愛らしい外見のキメラに骨抜きな状態な美空(gb1906)。
「うん、可愛いよな〜」
 美空と一緒に研究する大槻 大慈(gb2013)も、キメラの可愛さに骨抜き状態。
「赤ちゃんキメラの研究か。滅多にない機会だし、面白そうだ」
 ホアキン・デ・ラ・ロサ(ga2416)はウェスト同様、興味深く赤ちゃんキメラを見ながらそう言うが、従来より強固なフォースフィールドを備えたキメラが増えてきたので、フォースフィールド発生の面から色々と調べてみたいと参加。
「今回のキメラ研究だが、珍しいキメラが対象なので驚いたことだろう。キメラを退治しなければ、どのような研究を行ってもいい。では、始めてくれ」
 研究会参加者達は、どのような赤ちゃんキメラを選ぶのだろうか?

●美空と大槻 大慈の研究
「美空、何だよその格好!?」
「研究用衣装であります」
 美空の衣装は、カンパネラ学園制服を改造して作ったあるアニメのコスプレだった。
 研究対象が人間の赤ん坊型キメラなのに、何故、新妻のような衣装なのか?
 大慈が不思議がっていた時、赤ん坊キメラが泣き出した。
「泣かないで、であります。泣いたら美空まで悲しくなるのですよ」
 赤ん坊とはいえ、キメラである。
 泣きやませようとすれば攻撃するかもしれないが、美空はそっと抱っこしてあやしている。首がすわっているようなので、高い高いもしてみたが泣き止まず。
「べろべろべろ、ばあ〜♪」
 百面相をして笑わせようとしたが、これでも駄目。
「恥ずかしいですが、これしかないようであります‥‥」
 顔を赤らめ、胸を出そうとしたが
「待て美空っ! それは駄目だーっ!!」
 大慈が慌ててストップ! これはさすがにまずいでしょう‥‥。
「冗談でありますよ、兄上。泣いているのは、おむつが原因であります!」
 研究員に頼み、替えのおむつを用意してもらった美空はぎこちない手つきで交換。
 すっきりしたのか、ぎゃん泣きしていたキメラは徐々に泣き止んだ。
 
 研究結果その1:キメラとはいえ、人間同様、排泄後は気持ち悪い模様。

 次なる研究は、いかにして知識を習得するか。
「兄上、ご飯にしますか? お風呂にしますか? それともみ・そ・ら?」
「そのための格好だったのか‥‥」
 美空の一言で、衣装の意味がようやく理解できた大慈。
 どうやら大慈を愛しい旦那様に見立て、美空は幼な妻というシチュエーションのようで。
 ままごとのような家族ごっこで、キメラの知識習得が研究できるかはさておき、美空の研究熱心さに申 永一(gz0058)永一は感心していた。
「あなた、抱っこするであります♪」
「あ、ああ‥‥」
 大慈にキメラを抱っこさせると、美空は絵本の読み聞かせを始めた。
 読み聞かせの間、キメラは意外にも大人しくしていた。どうやら興味を示しているらしい。
「知識を習得している、と考えていいのか?」
 大慈の疑問に「そのようだな」と答える永一。
 その後、2人は積み木を組み立てたり、お馬さんごっこをして遊んでみたが、人間の赤ん坊のようにかわいらしい笑顔で笑ったりはしなかった。
「赤ん坊とはいえ、やっぱりキメラなのですね。残念であります」

 研究結果その2:知識欲はあるようだが、遊んでも笑わず。

●桂木菜摘(gb5985)の研究
「私は、仔犬型キメラと一緒に遊びたいと思います♪」
 菜摘が研究対象に選んだのは、くりくりおめめの仔犬キメラ。
「何を食べるんだろう? ドッグフードかなぁ?」
 とりあえず、研究室に置いてあったドッグフードを食べさせてみることに。皿に盛り付け「はい、どうぞ」と差し出すと、仔犬キメラは匂いをかいで食べ始めた。
「食べました♪」
 美味しそう、というよりはがっついているが、食べている様子を見て喜ぶ菜摘はミルクも差し出した。これも綺麗に完食したので嬉しかった。
 次は運動能力テスト。
「かけっこで調べます」
 研究室はそれなりに広いが、他のキメラが騒ぎ出さないよう、慎重に。
 一緒に走ったり、じゃれあったりしているうちに擦り傷がいくつもできたが、菜摘はお構いなしで研究を続けている。
「大丈夫かね〜?」
 様子を見かねたウェストは、呆れた様子で救急セットを持ってきた。
「大丈夫です。他の子が騒いじゃうかもしれないから我慢するよ」
 そうはいかないね〜、と手っ取り早くウェストは手当てを始めた。

 研究結果:キメラとはいえ、普通の仔犬と変わりないようである。

●ルアム フロンティア(ga4347)の研究
 研究対象は、小型犬程度の大きさの黄色い不死鳥型キメラ。ひな鳥なので攻撃力はさほどないだろうが、全身が燃え盛っているので要注意。
「火の威力は‥‥ないだろうけど‥‥再生能力は‥‥高い‥‥かも‥‥」
 鳥には鳥、ということで覚醒したルアムは、挨拶しながらゆっくりキメラに接近すると、キメラの上に影があるかないかで反応が違うかを検証。
 影があり、白と黒の軍手をはめた手をゆっくり動かすと反応したので餌をあげることに。
「何‥‥食べる‥‥?」
 声をかけるが無反応。腹がへっていないのだろうか?

 研究結果その1:覚醒した姿を見て同類だと思った模様。影には反応アリ。

 次に【OR】不死鳥?の羽根で色を認識するかを実験。色彩認識能力はないようだが、興味を示したのか首をかしげながら見ている。
 その途中でこけたので、おっちょこちょいな一面もあるようだ。

 研究結果その2:色彩認識は無いようである。

 次に翼ごと両手で包むように持って広い場所に降ろし、自分に気を引かせ、キメラが近づいたらゆっくりと移動し、付いてくるかどうかを研究。
 ルアムに慣れたのか、キメラはゆっくりと近づいてきた。
「嬉しいな‥‥」
 近づいてきたのは良いが、落ち着きが無いようなので【OR】記憶の傷痕 I(鞄)の中の楽器で子守唄を奏でたところ、少し大人しくなった。
「キメラでも‥‥音楽がわかる‥‥のかな‥‥?」

 研究結果その3:心地よい音に興味を示すようだ。

 研究終了後、ルアムはキメラを檻の中に戻すと【OR】モップで後片付けを始めた。

●ホアキン・デ・ラ・ロサの研究
 ホアキンの研究対象はヒヨコキメラ。ヒヨコは、ニワトリの赤ちゃんともいえるので研究対象になる。
「ベビーキメラとは何か、それを調査してみるのも悪くないな。キメラの生態は、未だに謎だらけだ。幼体として生み出されて成体へと成長するのか、初めから成体として生み出されるのか」
 赤ちゃんキメラが生まれたての幼体なら何が危険か判断できないだろうし、外見が赤ちゃんでも成体なら、何が危険か判断できるはず。
 何にせよ、キメラは身の危機を感じてフォースフィールドを発生させると思われると考えてるホアキンは、フィールドの発生状況からベビーキメラの正体を探ってみたいと思っている。
 最初の実験は催眠術。鳥類の中でも、ニワトリは催眠術にかかりやすいらしいということで。
 ヒヨコ数羽を診察台に横に寝かせ、眼を紙片で覆って視界を閉ざすと反応を観察。意外にもキメラ達は大人くなったが催眠術にかかったわけではないようだ。
「催眠術はきかないか‥‥。まぁ、キメラだからな。大人しくなったのには驚いたが」
 確認したホアキンは最初の1羽に至近距離で両手を叩き、大きな音で驚かせた。これに驚いたのか、大人しかったキメラは羽をばたつかせて暴れだした。どうやら攻撃されたと思ったようで。
 次のキメラには軽くデコピンをかまし、痛みを与えて驚かせる。これも両手を叩いた時と同じ反応だった。
 最後に消しゴムの欠片を飛ばし、フォースフィールド発生有無の調査。弾かれると思ったが、消しゴムの欠片はキメラの嘴に命中。
「攻撃されたと思っていないのか?」
 この結果には拍子抜けだった。

 研究結果その1:催眠術は効果無し。

 その他に学習効果の有無、個体差の有無を研究。
「さて、どんな結果になるかな?」
 学習効果は、攻撃の有無のみアリ。個体差は無かった。

 研究結果その2:攻撃に関しては学習効果があるが、その他は無関心。

●紅月 風斗(gb9076)の研究
「遊んだり、じゃれたりはいいみたいだから助かるな」
 そう言うと、風斗はすぐ近くにいる仔猫型キメラ2体を連れてきて側に置いたが若干干警戒している。
 研究目的はキメラの警戒心を探る、というものなのでこうなることは予測済み。
 ずっと警戒されたままかと思ったが、数十分経過すると安心したのか「ニャ〜」と鳴いてなついてきたので交互に抱っこしたり、猫じゃらし等の道具で遊び始めた。
「大分警戒心が無くなってきたな。小さいだけあってか、撫でたり、道具で遊んでるだけで警戒心が無くなるとは。しかし、可愛いもんだ」
 キメラではあるが、赤ちゃんのうちから育てれば凶暴化も防げるのでは? と考える風斗が次に試みたのは、覚醒した場合、警戒心がどうなるかだった。
 瞳の色が赤に変わり、若干髪が逆立ち普段より凶暴性が増した風斗にただならぬ気を感じたのか、雰囲気が変ったことに驚いたのか、大人しかったキメラ2体は毛を逆立て「フシャー!」と威嚇し始めた。
「‥‥やっぱ、そうだよな」
 小さいのに雰囲気が変ったことがわかるキメラに「たいしたもんだ」と感心。
「大丈夫だ‥‥。危害は加えないからおいで」
 微笑みながらゆっくりと手を差し出したが、警戒心が強いキメラは強く噛みついた。
「大丈夫、怖がらなくていい」
 噛み付かれても微笑みを絶やさない風斗を見て、雰囲気が違うことに気づいたのか、キメラは噛み付くのをやめてニャ〜と可愛い声で鳴いた。
 成長後はどうなるかわからないが、身体も大きくなるし、凶暴性も増すだろう。
 とはいえ、今は自分に甘えている。
(「生きてるんだな、こいつらも‥‥。残りは覚醒を解き、こいつらと一緒に遊ぶとしよう」)
 いい研究になったと、覚醒を解いた風斗は仔猫型キメラ達と遊び始めた。

 研究結果:攻撃を仕掛けないことがわかれば警戒心を解くようだ。

●ドクター・ウェストの研究
 ウェストの研究はただひとつ、フォースフィールドの調査だった。
「こんなチャンスを逃す手はないね〜。思う存分、調査させてもらうよ〜」
 研究対象は、全長50センチほどの仔猫型キメラ。
「成長といっても、この姿のまま2mくらいまで育つのかね〜?」
 2メートルの巨大仔猫型キメラがいるのだから、その考えは間違ってはいない。
 キメラを入れる特殊合金檻と通信可能な防音ヘッドホン、光波・電波各種様々な観測装置を用意すると、冷めた視線で仔猫型キメラを見た。
 どんな姿であれキメラはキメラ。我輩にとって心が動かされる物ではないが、貴重なサンプルである。
 キメラは憎悪の対象でしかないため、可愛らしい外見であっても心動かされることがないウェストはフォースフィールドを生体的な物とも想定し、平時から肉眼で見えない弱いものを張っていると推測、観測。
「まずは、殺虫剤で観測だ〜」
 仔猫型キメラめがけて殺虫剤をかけるが、フォースフィールドに遮断された。
 他にも濃硫酸等で同様の観測をしたが、結果は同じ。
「空気、水中では水を通すけど、有害物質を通さないんだね〜。デタラメだね〜」

 研究結果:フォースフィールドは液体を弾く効果アリ。

 手がかりがあればフォースフィールド無効化装置を練りたいところだが、結果に呆然としやる気が失せた。
「キメラ研究はもういいよ〜。ソレより、我輩が考案中の無効化装置ができれば前線で戦うUPCの兵士の損害も減るだろうね〜」
 頭痛い‥‥と、こめかみに手を当てるウェストだった。

●櫻杜・眞耶(ga8467)の研究
 眞耶の研究対象は、大きさも外見も、生まれて間もない茶色い毛並みの仔犬のような外見の犬型キメラ。
 キメラ用に作ったヤギミルクで作ったプリン、小魚の煮物やモツ煮込み、犬用の骨ガムや玩具、ペット用ミルクを用意すると覚醒し始めた。
 まずは、犬用の骨ガムと玩具を与えてみて反応を見ることに。歯はまだ生えていないので、ガムと玩具を銜えて舐めた。
「ふん、キメラといえど『犬』だねぇ? 普通と変わりないじゃないか」
 次は、キメラが腹を空かしてくる時間帯を見て持参した料理を少量ずつ与えていき、味覚の好みを確かめ、一番気に入ったと思われるものを追加した。
「お座り! これをして利口にしなけりゃ、餌もご褒美もないよ!」
 容赦ないな、眞耶くん‥‥と永一は冷や汗をかいていた。
 餌付けが終わったら覚醒を解き、犬用の玩具を与えて遊ばせみた。
 キメラは玩具で遊ぶのかどうか疑問だったが、武器でないことがわかったのか、よちよち歩きで玩具に近づくと遊びだした。
 眞耶は遊び疲れたキメラを抱っこすると、子守唄を歌いながら背中をそっと撫でた。
「キメラとはいえ、こうして見ると可愛いものです」

 研究結果:攻撃を仕掛けなければ、キメラとはいえ普通の犬と大差無し。

●研究終えて
「皆、ご苦労様。幼い姿のキメラは珍しかったか? とはいえ、良い研究材料になったと思う」
 能力者達が研究している様子を見て、自分も研究したかった‥‥と後悔する永一。
「珍しいキメラの研究ができたのはいいけど〜、ちょっと物足りなかったね〜。我輩としては、このようなキメラがどこから調達されるのかが気になるね〜」
 ウェストの疑問だが、極秘ということで‥‥。
 大慈、美空、菜摘の3人は研究対象外の赤ちゃんキメラを見て「可愛い♪」とうっとりし、ルアムは研究した不死鳥をじっと見て「また会えるといいな‥‥」と別れを惜しんでいる。
 風斗は貴重な体験ができたことに満足、ホアキンはまだ研究の余地アリと思っている。
「あの‥‥これ、研究員の皆さんで召し上がってください」
 眞耶はキメラ用、ということを伏せ、プリン、モツ煮込みの残りを研究員達に差し入れた。
「永一兄はんにはこれを‥‥」
 そう言って差し出したのは、手作りの弁当。
「ありがとう、眞耶くん」
 彼なりに微笑んだ永一に弁当を受け取ってもらえたのが照れくさかくなったのか、眞耶は少し顔を赤らめた。

 研究室の清掃を終え、研究は滞りなく終了したが‥‥。
「これから忙しくなるな‥‥」
 能力者達の研究レポートをまとめ、研究主任に提出しなければならない永一の仕事はまだ終わらない。