タイトル:ヒエダ夫人変身計画!マスター:竹科真史

シナリオ形態: イベント
難易度: やや易
参加人数: 5 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2009/01/24 05:50

●オープニング本文


 手芸部部長の糸井・創璃(gz0186)は、1月の衣装披露会をどのようなものにしようか考えていた。
 手芸部員達も頭を捻って考えているが、良い案がまったく浮かばない。
 今月は成人式があるので、ヒエダ夫人が経営する『ヒエダ貸衣装店』も多忙を極めているだろうと思い、企画・主催は手芸部にすることにしたのだった。
 全員でどうしようか考えている最中、放送で創璃が職員室に呼び出された。

「失礼します」
 何事だろうと思い職員室に入った創璃は、教師の1人から「きみにお客様だよ」と言われ、職員室の奥にある応接間に案内された。
 そこにいたのは、ヒエダ貸衣装店の女性店員・カスミだった。
「すみません、急に学園に訪れたりして。実は、手芸部の皆さんにお願いがあって‥‥」
 カスミの話だと、男性店員が撮影した11月23日に行われた職業衣装披露会のVTRを見せたところ、食堂のおばちゃんである稗田・盟子(gz0150)の変身振りを見て激怒したことを話した。
「店長、姪御さんの結婚式があるとはいえ、盟子さんばかり綺麗に変身させてもらうのはズルイ! と怒り出してしまって‥‥。そこで、手芸部やかつての衣装披露会の参加者の皆さんのお力で、店長を綺麗に変身させてもらえませんでしょうか?」
 お願いします! とカスミは頭を下げ、創璃に必死に頼んだ。
「わかりました、やれるだけやってみます。ヒエダ夫人のご希望とか、窺っていませんでしょうか?」
 カスミは、ヒエダ夫人は交通事故に遭い成人式に出席できず、振袖を着れなかったことを今でも残念がっていることを話した。
 振袖は未婚女性が儀礼的な場面で着用する正装であるが、最近では演歌歌手以外でもまれに既婚女性が振袖を着る人がいるようだ、ということを創璃は知っていた。
 普通に振袖を着せても良いのだが、ここが思い切ってカスタム振袖を着せては良いのでは? と思いついた創璃はある提案をした。
「あの‥‥差し出がましいようですが、ヒエダ夫人が着る振袖のデザインを私達にお任せさせてもらえないでしょうか? もちろん、メイクも致しますので。協力してくださる皆さんには、ヒエダ夫人をいかにして和風に綺麗にするか、ということでお願いします」
 創璃の意見に、それに関しては関わる皆さんの一存にお任せしますと頭を下げてお願いするカスミだった。

 こうして、ヒエダ夫人の願望である『綺麗な変身』計画が実行されることとなった。

●参加者一覧

/ ナレイン・フェルド(ga0506) / アルヴァイム(ga5051) / 百地・悠季(ga8270) / 櫻杜・眞耶(ga8467) / 美環 響(gb2863

●リプレイ本文

●ヒエダ夫人のお願いを叶えましょう
 手芸部部室に『ヒエダ貸衣装店』の店長、ヒエダ夫人こと稗田・令子の願いを叶えるために手芸部の協力者として集まったのは5名。
「皆さん、今回の衣装披露会の主役は私達手芸部員の衣装披露会のお手伝いならびバックアップしてくださっているヒエダ夫人です。皆さん、ご協力よろしくお願いします」
 一礼し、改めて協力してくれるよう頼む手芸部部長の糸井・創璃(gz0186)。
「皆〜、今日は私の無理なお願いをきいてくれるそうね〜。わがままを言ってごめんなさ〜い‥‥」
 いつも明るいヒエダ夫人だったが、今日は少し大人しい。
 寂しそうな彼女を元気付けようと、ナレイン・フェルド(ga0506)が最初に声をかけた。
「あなたがヒエダ夫人ね? 私、お礼を言わなきゃね〜。盟子さんに施したメイクを見て、あなたの変身願望依頼に繋がるなんて思ってもみなかったわ。次に出会った時、是非メイクさせてもらおうかなぁ〜って思ってたから」
 ありがとうございました、と礼を述べた後「今回も頑張るからよろしくお願いしま〜す♪」とウィンクするナレイン。
「ありがと〜う、ナレインさ〜ん♪」
 ヒエダ夫人は、嬉しさの余りナレインに抱きついた。男性であっても、女性であっても嬉しくなると相手に抱きついてしまうのはヒエダ夫人なりの感謝表現である。
「今月の衣装披露会は、ヒエダ夫人の振袖姿の飾りつけね。今まで主催者さんに変身させる機会なんて無くてできなかったから、ヒエダ夫人の気持ちが盛り上がってうちにやりたいと思うのは良いことよね? 衣装披露会ではお世話になっていることだし、盛り上げ役を務めるのはやぶさかじゃないしね」
 ちゃんとコーディネートしてあげるわね、とやる気を見せる百地・悠季(ga8270)。
「ヒエダ夫人、あたしと振袖姿の揃い踏みをしない? 良いかもしれないわよ。あたしの想い人も、賛同して手伝って撮影してくれるしね」
「それはいいわね〜♪」
 貸衣装店の宣伝をしてくれた恩人の申し出を、ヒエダ夫人は喜んで承諾した。

 その頃、悠季の協力者アルヴァイム(ga5051)は、協力者達から聞いた必要な衣装、材料、装飾品調達に奔走中。
「参加者が拘る品に関しては、そちらを優先しないといけませんね。手助けまでに留めますか」
 衣装等と調達終了後、手芸部部室に届けた。それだけでなく、姿見、撮影機材等の衣装以外の資機材も調達済みであった。すべてのものを届け終えた黒子姿のアルヴァイムは、会場となるカンパネラ学園講堂に向かい講堂周辺の高所を事前調査。
 どの位置が写真写りが良いか調査するためである。

「ヒエダ夫人、衣装披露会ではいつもお世話になっております。今日は、感謝の気持ちを込めて私達が綺麗にしますね」
 衣装披露会の常連、櫻杜・眞耶(ga8467)も協力を申し出た。
「足袋と肌襦袢、草履は持ってきてくださいましたか?」
「勿論よ〜♪」
 ニッコリ微笑み、紙バッグに入っている必要なものを眞耶に見せるヒエダ夫人。
「ごきげんよう、ヒエダ夫人」
 微笑のポーカーフェイス、優雅かつ気品ある仕草で礼儀正しく挨拶するのは美環 響(gb2863)。彼も衣装披露会の常連だ。
「今日は、あなたのためだけに行われる成人式ですよ。精一杯美しく着飾り、面白い演出にしましょう」
 少年でもなく、大人でもない響の口調に胸がときめいたヒエダ夫人だったが、当の本人は子供っぽく目をくりっとさせきょとんとしていた。
 響の目的は言うまでもなくヒエダ夫人を綺麗に変身させることだが、かなり遅くなった成人式の気分と衣装披露会に参加し、変身する楽しさ、喜びを知ってほしいという考えもある。当然、演出は彼お得意の方法。

●振袖合わせを始めましょう
 アルヴァイムが持ってきた各衣装、装飾品を揃え始めた変身協力者達は、それぞれヒエダ夫人のコーディネイトを始めた。
 トップバッターは、今回の披露会考案者と言っても良いナレイン。
「まずは、着物から合わせましょう〜」
 振袖の柄は『闇夜に浮かぶ枝垂れ桜』をイメージした夜空に三日月、桜の花びらは粉雪が舞うようなものをチョイス。
 帯は淡い桃色、帯紐は軽く金箔で飾られているものを使用し、肩が冷えないようにファーを掛けた。
「普段は明るいおば様だけど、成人式だもの。落ち着いた大人の雰囲気を出してみたいのよね〜」
 メイク次第では、ふくよかな大和撫子に変身する‥‥かもしれないのでどうなるか楽しみだ。

 ナレインと手芸部員達による着物合わせが終わるまで、アルヴァイムは退室して廊下で手芸部部室に不埒な輩が来ないかと警戒していた。
「アル、次はあたし達の番よ。飾りつけと衣装の合わせ手伝って」
 悠季に呼ばれ、手芸部部室に入ったアルヴァイムは心の中であったかい部屋に戻れる‥‥とホッとした。
「衣装関連はあたしに任せて」
 ヒエダ夫人の干支が未年と聞いたので、従姉妹である食堂のおばちゃん、稗田・盟子(gz0150)の誕生日花である百合を引用し、蒼地に沸き立つ白い雲の上に散らばめたように飾り立てている赤い百合という柄の振袖をチョイス。
 白くたなびく豊かな雲はヒエダ夫人、盟子の干支である羊に見立てている。
「当然、職柄的に着付けはできるでしょうけど、良家の嗜みとしてあたしも会得してるワケだし、他の人の兼ね合いもあるからテキパキと手伝っておくわね」
「ありがと〜う、悠季ちゃ〜ん。私、嬉しいわ〜♪」
 着物合わせが終わった後は、アルヴァイムと手芸部員達によるヘアセット、髪飾りの打ち合わせ。
「髪型はカットせずに、エクステンションやウィッグで長さを変更しながら調整したほうが良さそうですね」
「私もそう思います」
 創璃も、アルヴァイムの意見に賛成。

「ヒエダ夫人、これはいかがでしょうか?」
 眞耶が当日ヒエダ夫人に着せる振袖は、大柄の桃花の模様の入った朱鷺色の小振袖。
 帯は金糸と銀糸で梅の枝花の模様の入った袋帯を花結びにして締め、帯揚げや帯紐は淡いピンク色を使用。帯留や簪は、桜の花の飾りが付いた物を使うことに。
 着物・帯・小物は眞耶が持っている物を持参し、ヒエダ夫人に着付けることに。
「素敵〜♪ 眞耶ちゃん、いいの〜?」
「はい。髪型は後頭部で結い上げ、メイクはピンク・オレンジ系の色合いでまとめみようと思いますがどうでしょう?」
 細かいことは、眞耶に任せることにしたヒエダ夫人。

 響が用意したのは、青地に薄紅色の牡丹柄の振袖とファー、白い紙にデフォルメタッチに描かれ、濃茶の骨組みの三毛猫柄の扇子の3点。
「ヘアセットとメイクですが、ナレインさんに若々しいイメージにしてもらうようお願いしますね」
「ええ、お願いね〜♪」

 後は成人式当日を待つのみ。ヒエダ夫人は、どのような和風美人に変身するのだろうか?

●念願の成人式を開催致します
 成人式当日は、雲ひとつ無い晴天に恵まれた。天も、ヒエダ夫人の念願を叶えるために協力しているのだろう。
「大変お待たせ致しました。只今より、手芸部主催・企画の『成人式振袖披露会』を開催致します。今回の出場者ですが、カンパネラ学園生徒、聴講生ではなく、これまで手芸部企画の衣装披露会の主催者を務めてくださった『ヒエダ貸衣装店』の店主、稗田・令子女史のみとなります。皆様、振袖姿の稗田女史がご登場されましたら盛大な拍手でお出迎えください」
 創璃の挨拶の後、しばらくしてから美しく着飾ったヒエダ夫人が舞台上手に現れた。

「まずは百地・悠季さん、アルヴァイムさんコーディネイトの振袖をご披露します」
 裾から襟に上がるにつれて桃色から次第に薄くなっている生地の上に白・桃色・赤の三色の椿をあしらった振袖と帯、髪型はシニョン風に纏め、多少紙がこぼれているようなカンジにし、振り飾りが大きい花柄簪を纏めて髪に刺した和風美人に変身した悠季にエスコートされたヒエダ夫人の振袖は、青空にたなびく瑞雲を思わせる印象がある。
 メイクと髪結いはナレインが担当。
 落ち着いた大人の女性を演出したものの、濃くならないよう目をハッキリさせるために濃いめにアイラインをひき、薄く紫のアイシャドー、明るさを出すためにオレンジのチークを塗り、桃色の口紅とグロスで、唇のふっくら感と若々しさを表現。
 ウィッグを付けてボリュームを付け、髪はおろしたままだが軽く全体的にふんわりと巻き、毛先は前方(肩の前)に持ってくるようにアレンジ。髪全体には。小さな桜の花の飾りが散りばめられている。
「振袖だからって、アップにするとは限らないのよ〜♪」
 というのがナレインなりの拘りたった。
 観客達は、美しく着飾った美女と熟女の競演に盛大な拍手を送った。
「あれ、食堂のおばちゃんじゃない?」
「そういえば、そんなカンジが‥‥」
 男子生徒2人がそう話していると、盟子がひょこっと顔を出し「呼んだ〜?」と軽く驚かせた。
「「お、おばちゃん、双子だったのか!?」」
 アナウンスで『稗田・令子』と言っていたが、食堂のおばちゃんの名前なんてわかりっこないので男子生徒が驚くのは無理ない。
 アルヴァイムは、ポーズや光源を何度か変えて複数撮影し、本日中に現像し、全員と茶飲み話がてら1つの衣装につき1枚選考し、製本してからヒエダ夫人に手渡すことにした。そのために、良い写真を撮ろうと大張り切りしている。

「盛大な拍手、ありがとうございます。これ以降は、着付けに時間がかかりますがどうかご容赦願います。その間、櫻杜・眞耶さんの日本舞踊と小唄をお楽しみください」
 着付けだが、振袖と帯を変えるだけでもかなりの時間を要する。それにメイクチェンジも含まれればなおのこと。
 観客を長いこと待たせるわけにはいかないと、協力者達はヒエダ夫人の衣装替えが終わるまで各自何かをして時間潰しをすることを創璃に申し出たのだった。
 元・舞妓ということもあり眞耶の日本舞踊は見惚れるほどで、小唄も評判だった。
 それでも時間潰しにはならないので、手芸部員数名が自分がデザインしたカスタム振袖を着てファッションショー風に登場。
 袖無しだったり、ミニスカのように丈が短かかったり、胸に晒しを巻き、時代劇に登場する浪人の如く着流しを粋に着飾ったりと様々な創意工夫がこなされていた。
 手芸部員達のメイク、ヘアセットはナレインが担当。

「皆、なかなか上手く着こなしているわね〜。メイクのし甲斐もあったし、私、嬉しいわ♪ ヒエダ夫人、そろそろ出番よ。いきましょう」
 普段はちゃきちゃき江戸っ子風おばちゃんのヒエダ夫人だが、憧れのナレインに変身させてもらったことでしおらしくなっている。
「続きましては、ナレイン・フェルドさんコーディネイトの振袖です」
 ナレインにエスコートされ、しずしずと歩いてご登場のヒエダ夫人。
 
 おおーっ!
 
 多くの歓声が、会場に響き渡った。
 闇夜に浮かぶ枝垂れ桜が描かれている柄の振袖は、50代という年齢を感じさせないほどの気品を漂わせ、ナレインお得意のメイクは、『脱! 明るいおばちゃん』を強調するかのような落ち着いた大人の女性を見事に演出している。
 髪は下ろしたままでふんわりヘアで、着物と合うように小さな桜の花の飾りを全体に散りばめられている。
 闇に映える枝垂桜、それがナレインがイメージした20歳のヒエダ夫人である。
「レイちゃん、良かったわね〜♪」
 観客席で思わず感涙する盟子だった。
「大人の女性を思わせる変身振りに盛大な拍手を!」
 創璃のアナウンス後、ヒエダ夫人とナレインに喝采が送られた。
 これはいい写真になると、アルヴァイムは満面の笑顔のヒエダ夫人を撮影。

 次は、眞耶コーディネイトの着付け。
 その間の時間潰しは、響お得意のイリュージョンマジックに合わせてカスタム振袖を着こなした手芸部に協力してくれたカンパネラ学園女子生徒、聴講生が入れ替わり立ち替わりで舞台に登場。

「続きましては、櫻杜・眞耶さんコーディネイトの振袖です」
 ヒエダ夫人が、太っている自分が着られるのかと心配していたが着物は洋服と違い、横幅は帯と紐で調節できるので大した問題にはなりませんよと眞耶に説明してもらったので一安心した。
「大丈夫ですよ、私に任せてください」
 眞耶の微笑を信じ、着付けの一切を任せることにした。
 その結果が、今ステージで明らかになる。
 大柄の桃花の模様の入った朱鷺色の小振袖、金糸と銀糸で梅の枝花の模様の入った帯、花結びにして締めた小帯、淡いピンク色の物を使用した帯揚げや帯紐。
 帯留、簪は桜の花の飾りが付いた物を使用しているため、ナレインの枝垂桜とは一味違う『桜』の演出のなっている。
 髪はエクステンション後頭部で結い、メイクはナレイン直伝のメイク法でピンク・オレンジ系の色合いでまとめてみた。
「退場の前に、ヒエダ夫人の後ろ姿もご覧ください」
 眞耶の指示でクルリと回れ右したヒエダ夫人。後ろ姿にしたのは、その美しさを観客に披露するためである。
「振袖用の帯の結び方には花結び、文庫結びのような一般的な物があります。今回は桜のイメージを強調させるため、帯は花結びにしてみました」
 簡単な帯の結び方、振袖の説明の後にヒエダ夫人の手を取り眞耶は退場した。
 アルヴァイムは、前後両方の写真をバッチリ撮影。横のアングルも撮影済み。

 響のコーディネイト着付け終了までの時間潰しは、悠季をモデルとしたナレインによる『より美しく見せるためのメイク講座』が開催されていた。
 この企画は女子生徒、女性観客、女性教師陣に大好評!
 観客席にいる盟子に至っては、メモ帳とペンを取り出しマメにメモする徹底さだった。

「お名残り惜しいですが、稗田女史最後の変身となります。コーディネイトしてくださったのは美環 響さんです」
 フリルつきのシャツ、貴族風衣装という出で立ちで青地に薄紅色の牡丹柄の振袖、肩にファーをかけ、帯に白い紙に濃茶の骨組み、デフォルメタッチの三毛猫柄が描かれた扇子を刺したヒエダ夫人を上品にエスコートした響は、手芸部員が鳴らした琴のCDに合わせて紳士らしく振る舞ってステージ中央に登場。
 メイク、髪結いはナレインに頼み、若々しく見えるようにしてもらった。
「これから、ヒエダ夫人の成人式をはじめます。皆様、最後までお楽しみください」
 上品な笑みを浮かべながら指をパチンと鳴らすと、一瞬ステージは暗くなったがすぐに明るくなったかと思うと、ステージ一面に紋付袴、振袖を着た人影が現れたではないか!
 この演出に驚くヒエダ夫人をよそに、響は僕は大きな黒い布を取り出すと頭から被ってカウントダウン。
「1・2・3!」
 カウントが終えた後に黒い布から現れたのは、響ではなく20歳の女性版響『響子』だった。
「令子ちゃん、前に出て皆さんにご挨拶しましょう」
「え、ええ‥‥」
 ステージ前に並んで歩んだ響は、再び指を鳴らした。すると、先程まで紋付袴、振袖姿の多くの人影が崩れ、風船となり講堂内に上っていった。
 風船が一斉に割れると、色とりどりの紙吹雪がステージと講堂内に降り注がれ、ヒエダ夫人をより美しく表現した。
「令子ちゃん、成人おめでとうございます!」
 上品な笑顔の響、いや、響子は拍手して祝福。それに釣られてなのか、響の魔術の素晴らしさにか、観客達は盛大な拍手を送った。
「これは、良い記念になりますね」
 様々なアングルから撮影したアルヴァイムも、黒子覆面越しに満面の笑みを浮かべた。

●成人式は無事終わりました
「以上を持ちまして、カンパネラ学園手芸部企画・主催の振袖衣装披露会を終了いたします。コーディネイトしてくださった皆様、モデルとしてご登場してくださった稗田女史に盛大な拍手をお送りください」
 ステージにヒエダ夫人と協力者一同が登場すると、ステージに盛大な拍手が送られた。
「レイちゃん‥‥良かったわね〜」
 ウルウルと感涙する盟子は、ハンカチで鼻をかんでいた。

 披露会終了後、ナレインは振袖を着てヒエダ夫人と記念撮影したいと申し出た。
 男性であるが、女性以上の美しさの彼なら、振袖を着ても違和感無しなので大丈夫。
 数十分後、眞耶と悠季の協力を得て青薔薇を用いた振袖に着替えたナレインが登場。
「どう、似合う〜♪」
 似合いすぎる!! と驚く手芸部員達と女性陣。
「ナレインさん、素敵〜♪ 一緒に写真撮って〜♪ あ、悠季ちゃんもね〜♪」
「嬉しい♪ 一緒に写真撮りましょ〜♪」
「もちろん、そのつもりよ。そのために振袖に着替えたんですからね」
 まずは、ヒエダ夫人とナレインのツーショットから撮影。
 次は悠季とのツーショット。
「最後に、手芸部の皆さんにも振袖に着替えてもらい、全員揃った記念撮影を撮りましょう」
 創璃を除いたカスタム振袖を身に纏っている手芸部員達は、そのままの姿なのでいつでも撮影ができる。
 全員記念撮影に写るため、アルヴァイムはセルフタイマーをセットし駆けつけた。
「1+1は‥‥」
『にーっ!』
 全員の声が揃ったところで、シャッター音が。
「ふふ、アッと言う間に七変化ね♪ 今日は楽しかったわ〜。ヒエダ夫人、こういう企画があったら協力させてもらうわ」
 ニコニコと協力を申し出たナレインに「ありがとう〜♪」と抱きつくヒエダ夫人。

 衣装披露会は終了したものの、手芸部員と協力者達の仕事はまだ終わっていない。
 カスタム振袖から制服に着替えた手芸部員達は、創璃、アルヴァイム、響は講堂の後片付けをし、眞耶と悠季は、使用した着物を丁寧に畳んで畳紙に直し、ナレインはメイク道具一式を片付けている。
 それらが終了すると、全員でアルヴァイムが撮影した写真の中で製本にできそうなものを選ぶ作業に。
 あれだこれだと揉めたものの、製本用の写真数10枚が選ばれた。

●後日談
 数週間後、ヒエダ貸衣装店に小包が届いた。宛名はカンパネラ学園手芸部員一同。
「何かしら〜?」
 ヒエダ夫人は小包の包装を解くと、中身は『稗田・令子の成人式』というタイトルの製本だった。
 パラパラと捲ってみると、そこには美しく変身した振袖姿のヒエダ夫人と協力者達が写っており、ページの最後には、集合写真が掲載されていた。
 その下には、手芸部員、協力者達の寄せ書きがあった。
「皆‥‥ありがとう‥‥」
 感激のあまり、ヒエダ夫人は泣き出してしまった。

 ヒエダ夫人変身を兼ねた振袖披露会は、大成功を収めた。