●リプレイ本文
●第2回ヴァーチャルバグアごっこ開催
アプサラス・マーヤー(gz0032)作成のシミュレーション『ヴァーチャルバグアごっこ』に参加するため、カンパネラ学園地下3階のシミュレーションルームに集まったのは10名の男性能力者。
簡単な説明を終えると、暗視スコープ貸与希望者はアプサラスからそれを受け取ると装備準備を始めた。
「ヴァーチャルな世界でバグアと鬼ごっこか‥‥風変わりで面白いゲームだ。上手くクリアしたいものだな」
やるからには『目標・王バグアを15分以内打倒』と決めたホアキン・デ・ラ・ロサ(
ga2416)。
「シミュレーションだから危険はないとは言え、かなりシビアな内容だから油断しちゃいけないね。皆さん、互いの役割をまっとうして、必ずシュミレーションをクリアしましょう!」
油断大敵と言いますし、と付け加えて頑張ろうと励ます山崎・恵太郎(
gb1902)。
「アプサラス先生がすごいもん作ったって聞いたんで、遊びに来たぜ。へぇ、シミュレオションで鬼ごっこか。やるからには、鬼に捕まらずに親玉を撃破するぜ!」
興味本位で参加したヒューイ・焔(
ga8434)だったが、アプサラスの説明、実際のシミュレーション画面を見て「真剣にやらないとヤバいな」と気を引き締めた。
「シミュレーションで鬼ごっこですか。面白そうですね。リアルでないにしろ、鬼に捕まらないよう頑張ります! しかし、鬼バグアが99体なんて数が多すぎです」
少し自信なさげだが、参加したからにはやらないといけませんねと気を取り直す千祭・刃(
gb1900)。
「今回の条件はかなり厳しいものだが、これだけの人数が揃ったのだから何とかなるだろう。皆、クリア目指して頑張ろう。よろしく頼む」
唯一の前回参加者、風閂(
ga8357)は厳しい条件下でいかに自分の実力が発揮できるかが楽しみな様子。
「ところで、鬼ごっこ‥‥とは何だ?」
参加したのはいいが、鬼ごっこが何かを知らないロック・スティル(
ga9875)に詳しく説明をしたのは、同じく初参加の抹竹(
gb1405)だった。
「鬼ごっこというのは、日本の伝統的な遊びのひとつです。外での遊びとしては最もポピュラーなもので、鬼は逃げる人を追いかけ、逃げる人は鬼に捕まらないように逃げるという単純なルールです」
「なるほど。要するに『鬼』であるバグアに捕まらなければいいんだな。わかった、やってみよう」
指を鳴らし、軽く身体を動かすロック。
食堂に美味しい定食があると聞き、それを食べに来た那智・武流(
ga5350)は、食事終了後に飛び入り参加。
「ヴァーチャルバグアごっこってのは、追っかける鬼がバグアなんだな。面白そーじゃん!」
意気込んで参加したのは良いが、全員男性だったので「女の子でもいりゃ、ちったぁ頑張れるんだけどなぁ」とぼやいた。
「聴講生の那智・武流だ、よろしく頼むぜ!」
とりあえず、参加者達に自己紹介する武流だった。
「シミュレーション開始前に、舞台となる廃墟病院の見取り図を配ります。これを頭の中にしっかり入れるように」
アプサラスから手渡された見取り図を受け取ると、参加者達は、自分達がどの役割につくか相談し始めた。
話し合いの結果、1階囮班はヴァレス、ロック、抹竹が担当し、2階囮役は刃、恵太郎、Y・サブナック(
gb4625)が担当。
ホアキン、武流、風閂、ヒューイは3階にいる王探索を2班に分けて行うこととなった。
「皆さん、準備はいいですか? 開始しますので、ただちにシミュレーションルームに入室してください」
暗視スコープを装着し、10名は打倒・王バグア目指してシミュレーションルームに入室。
●第2回ヴァーチャルバグアごっこ・廃墟病院1階
「作り物の夜ってのも、悪くないかも」
ヴァレス・デュノフガリオ(
ga8280)が楽しんでいる時、けたたましいサイレンが鳴り響き、アイドル風の明るい機械音声のアナウンスが流れた。
『皆ー、第2回ヴァーチャルバグアごっこを開始しまーす♪ 廃墟病院に残っている生き延びている皆さーん、元気良く、思いっきりバグアから逃げ延びて屋上にいる王バグアを倒してくださいねー♪』
「ふざけたアナウンスだ。風閂、以前もこうだったのか?」
「いや」
気を取り直し、ホアキンは病院の見取り図をじっくり見て3階への階段を確認。
その後、建物外側を通る外部階段、縦樋、非常用梯子を伝い登れる外壁等の有無を念入りにチェック。
「那智、風閂、ヒューイ」
3人を呼び出し、ホアキンは3階に向かうメンバーとミーティング。
「3階をそっと覗き、鬼の分布を確認しながら2班に分かれて王バグアを探す。俺はヒューイと、那智は風閂とだ」
コクンと頷くヒューイ、武流、風閂。
「そこ、のんびり話してる暇なんてないよ。鬼が来ちゃったよ」
ヴァレスの言葉に、急いで行動開始した王バグア探索班4人は一気に階段を駆け上がった。
「さってと、1階囮班頑張ろうか。ゆっくり歩いて敵にこちらを見つけさせ、数が少なければ倒して多ければ逃げるでいこうかな?」
どうしても逃げ切れない場合は、あえて壁をぶち抜いて外に出てまとめて相手という戦法も考えているヴァレス、抹竹、ロックは即座に覚醒。
「俺は囮と同時に何体の鬼バグアを倒せることを目的にしてるからあえて危険な行動をするけど、やられるつもりは無いからね」
「おまえがやられてしまっては困る」
見取り図で1階の構造を頭に入れた抹竹は、相棒のヴァレスは倒す気満々だが果たしてどうなるかと心配だった。
「大勢での戦闘は、マフィア時代で慣れている。鬼バグア、どこからでもこい! かつての通り名『ロード・レオン』は伊達じゃないことを教えてやる!」
ロックは、早速自分に近づいた鬼バグアを容赦無くフランベルジュで叩きのめした。
(「3階に向かう連中、王バグアを俺達の代わりに倒してくれ!」)
多勢に無勢な状態なので、1階囮班メンバーが3階に駆けつけるのは無理がある。
それを承知で、ロックは囮という自分の役割を果たすことに。
「あの人、なかなか強いね」
鎌を構えるように見せ掛け、大きく振りかぶって鬼キメラの視界を遮り、その間に斬る戦法を繰り返すヴァレス。2体程度なら、刃渡り1.2mという大鎌「戮魂幡」を利用しては纏めて薙ぎ払い、力が足りない時は『両断剣』を使用した。
「逃げるだけではつまらん!」
大鎌「戮魂幡」の飾り布を掴んで鎌を振り回し、そのままぶつけて吹き飛ばす攻撃も繰り出したが、接近した鬼バグアの剣と鍔迫り合いになったので、抑えるように鎌を地面に刺して封じた後、懐からナイフを抜いて胸に突き立てた。
「あと何体?」
ナイフを懐に仕舞うと、ヴァレスは再び鎌の柄で相手の攻撃を弾き、返す刃で斬り捨て、刃を斜めに受けて受け流しては蹴りを加える等の攻撃を繰り出す。
縦の攻撃は体を横に逸らし、横の攻撃はしゃがむなど、大きく避けず次の攻撃に繋げられる距離を保っているのは見事である。
「ヴァレスには負けていられねーな」
抹竹は、なるべく見つからないように移動し、見つかった際は可能な限りヴァレスと共に迎撃という行動を繰り返した。
「こりゃ『ごっこ』ってファンシーなもんでもねーな」
通路を利用しては囲まれないよう、2階囮班、3階王探索班が床を抜いた場合、鬼バグアが落ちてくる可能性があると思い、鬼バグアが大勢来た場合は逃走しつつ、追いすがってきた鬼バグアのみを迎撃。
1階囮班は、逃走の際は確認した1階構造を思い出し、なるべく袋小路に行かないように通路の挟まれないようにし、どうにもなりそうにないと判断した場合は壁を破壊して外に出て、それ以降はヴァレス、ロックと共に追ってくる鬼バグアを迎撃をすること
に。
「囲まれたら、私が背中合わせで可能な限り時間を稼ぐ。しかしアレだ‥‥何とか無双ってのを思い出すな!」
「同感!」
ピンチな状況下であっても、気が合うヴァレスと抹竹だった。
●第2回ヴァーチャルバグアごっこ・廃墟病院2階
2階囮班は恵太郎、刃、サブナックの3名。
全員ドラグーンということもあり、AU−KVを装着している。
「ドラグーンの班だから『ドラグナーズ』なんちて♪」
「サブナックさん、呑気なこと言っている場合じゃないですよ」
そんな会話をしつつ、恵太郎の後に続くサブナックと刃。
2階に辿り着くと、各自、3階王バグア探索班へ鬼バグアが向かわないよう囮となり引き寄せた。
「鬼バグアが2階へ上ってきそうになったら、探索班がいる方向とは別方向に向かって逃げましょう。その際、俺が呼笛を吹いてバグアを誘いますので」
あらかじめ弾頭矢を分解し、鏃の中につまっている火薬をとりだしてまとめた小型の簡易爆弾を作っておいた恵太郎は、鬼バグアが階段に迫ってきたところに狙いを定め爆弾を床に設置し、エマージェンシーキットの中にあるマッチを放って爆破させ、床を崩した。
「これで鬼バグアの手を少しは免れるでしょう」
「油断は禁物です。来ましたよ!」
刃は、階段が崩れたにも関わらず迫り来る鬼バグアを長刀「乱れ桜」で1体ずつ切りかかった。追いかけるのはルール違反なので、待って攻撃する戦法しかない。
「1階囮班の皆さんも頑張っていると思いますが、僕達も3階にバグアを行かせないようにしないと!」
サブナックは、棍棒で接近を許さない程度に鬼バグアを攻撃し、距離を詰めらた場合は三節棍に持ち替えて反撃に出た。
「前方に大量発生か。『竜の咆哮』で一気に弾き飛ばしてやるぜ。こっから先は通行止めだぜ! お通りになる方の身の安全は保証しないぜ? 我が名はサブナック! ソロモン72柱の一角、俺の邪魔する奴は容赦しねー!」
恵太郎、刃とは連携を取りたいと思っているが、サブナックは少し離れて行動した。
攻撃の時は、鬼バグアの腕の剣を弾いて薙ぎ払った。
仲間2人が追い詰められて危なくないかと思い様子を見たが。間合いを取りつつ、接近してきた鬼バグアを撃退しているので問題ないと判断。
「敵の接近が感じられないな。3階に行って援護に駆けつけるか?」
「1階の皆さんも頑張っているようなので、僕達もここにいて追っ手の鬼を食い止めたほうが良いと思います」
「きみの意見には、俺も賛成です」
刃の意見に同意した恵太郎の意見を尊重し、サブナックは「上の奴らの面を拝みに行きたかったんだがな」とぼやきながら囮役に徹した。
●第2回ヴァーチャルバグアごっこ・廃墟病院3階
暗視スコープで策敵しつつ、ホアキンは武流、風閂と無線機で状況を連絡し合っていた。
「こちらホアキン。王バグアの気配なし。ヒューイから王バグア発見できていないと連絡があった」
「こちら武流。こっちにもいねー」
「風閂だ、同じく」
ホアキンとヒューイは、できるだけ敵を避け、発見されぬように崩れかけの病室、瓦礫等に身を潜めつつ王バグアを探索中。
「いないようだな‥‥って!」
ヒューイが指差した方向には、医師の格好をした人間がゾンビにようにふらついていた。
「あいつが王バグアか。『王』というから、それらしい格好だと思ったんだがな」
拍子抜けだとぼやいた後、武流と風閂に王バグア発見したので自分達のところに至急向かうよう無線機で連絡した。
そうしている間に、ヒューイに王バグアが接近! その後ろには、数体の鬼バグアが王バグアの動きに合わせてゆっくりと歩いている。
「ちぃっ!」
鬼がこちらの数を上回っていので、逃げ道が限られたしまった。
苦肉の策とし、ヒューイは瓦礫の壁を破壊し、退路を確保してホアキンと共に一時撤退することに。
撤退している途中、2人は武流、風閂と合流。
「おっ、敵さんのお出ましだな。先手必勝といくか。攻撃するからには容赦しない!」
今にも突進しそうな武流だったが、風閂に鬼バグアを倒す時のルールを忘れたかと注意された。
「そうだったな。そこの2人、王退治は任せたぜ! 鬼は俺らが倒す!」
「早く王のもとに迎え! 鬼共、恨みはないが倒さねば鬼ごっこが終わらぬ。全力で相手致すゆえ覚悟せい!」
武流と風閂が鬼を食い止めると買ってでたので、ホアキンとヒューイは王バグアを倒すことに専念できる。
「悪いな、頼む」
「王は必ずやっつけるからな!」
「鬼は接近せねば倒せぬのは辛いな‥‥。王は我らと行動パターンは変わらぬようなので、追いかけても問題なかろう」
王バグアに向かって走る2人を見ながら、風閂はイアリスとヴァジュラの二刀流で迫り来る鬼バグアを斬った。
「宮本武蔵になった気分だな」
気分が高揚しているが、ルールは忘れていない。
「琉球傭兵魂にかけて、今回も成功させてみせる!」
「気合い入ってるなー。おっと、こっちもお出ましだ。喰らえ、マシンガン突き!」
接近する鬼バグアを、ケイブルクで乱れ突きする武流。
王バグアに追いついたホアキンは『先手必勝』で逃走ルートを断った後、イアリスと天剣「ラジエル」で一撃ずつ交互攻撃。物理と非物理、いずれの攻撃が有効か見極めるためだ。
ヨリシロなので、物理攻撃が有効と判断したホアキンはイアリスで『急所突き』。
武流、風閂が近くにいないことを確認したヒューイは、鬼バグアに当てないよう、王バグアに照明銃を撃ち目潰し効果を狙った。目潰しは見事に成功!
目潰しされたことで暴れ出した王バグアは目は見えないものの、直感で2人に襲い掛かろうとしたので、ヒューイは逃げ道の天井当たりに向かって『ソニックブーム』を放ち、王バグアの退路を塞ぎ、反撃に出た。
鬼バグアをすべて倒した武流と風閂が合流したことで、王バグアは探索班4人同時に止めを刺された。
『第2回ヴァーチャル鬼ごっこ終了ー♪ 皆ーお疲れ様ー♪』
残り時間、3分33秒33というところでシミューション終了。
●総合評価
参加者全員がきになるのは、アプサアスの評価だった。
「予想外の展開でしたね‥‥。条件がシビアだったにも関わらず、全員無傷、無捕縛でクリアだなんて‥‥」
このような結果になるとは思いませんでした、と肩を落とすアプサラス。
「コホン。第2回ヴァーチャルバグアごっこの総合評価ですが、優良とみなします」
理由としては、各自の役割がちゃんと果たせていたこと。
連携攻撃ができていた、連絡をまめにとっていたこと。
以上3点を重視した上での結果だった。
「やったな! 皆!」
評価に気を良くした武流は、残りの参加者達にハイタッチ。
「残念だったのは、倒した鬼バグアの剣の腕ををいっぱい刺して剣の固有結界作れなかったことかな。教官、次回があるとしたらそれやってもいい?」
「次回ですか。検討します。その時は、あなたがやってみたいことをしても構いませんよ」
アプサラスの許可が下りたので、飛び上がって喜ぶヒューイ。
終了後、アプサラスは実践レポートを作成し、次回プログラム作成時の反省点を考えていた。