●リプレイ本文
●翔幻での正月行事開催
「さーて、何人集まるかねぇ‥‥」
翔幻の試運転を兼ねながら、ソウジ・グンベ(gz0017)はグラウンドで着々と準備を行っていたものの、慣れない機体だからなのか、時々転倒していた。
それでも、たった1人で準備をしているのは実行委員長たる責任感からだろう。
準備が終わった頃、6人の能力者がソウジの呼びかけに応じ参加希望した。
「ソウジさん、皆さん、あけましておめでとうございます。今日は、おもいっきり楽しみましょうね」
日本男児らしく、礼儀正しく挨拶する千祭・刃(
gb1900)。
「あけましておめでとうございます。普段扱えない翔幻に乗れるということで参加しました。乗れるだけでも面白いかなー? と来てしまいました。練習でどれくらい動かせるようになるか分かりませんが、勝負する以上勝てるようになりたいですね」
ソウジの知り合いである奉丈・遮那(
ga0352)は、翔幻に興味を持ち参加したようだ。
「翔幻での正月遊び、面白そうじゃん! あ、お年玉がもらえるってホントか?」
唐突にお年玉に関する質問をする志羽・翔流(
ga8872)に「勝負に勝てば、の話だからな?」と即答するソウジ。
「そうとあっちゃ、参加するっきゃないな。この歳じゃ、お年玉なんてもらえねぇからな!」
早くもお年玉ゲットに燃える翔流。
「本人公認でせびれると聞いて参加しました! よろしく!」
待てやコラ! と常世・阿頼耶(
gb2835)の挨拶に心の中で突っ込むソウジ。これも参加動機のひとつだと思い、寛大な心で楽しませてあげましょう。
「さぁ〜思いっきり楽しもう♪ 休みの日も学園に居る暇人だから参加しました☆」
手当たり次第、飲み物とお菓子を持ってきた黒羽・ベルナール(
gb2862)は、皆で集まって遊ぶ時にはこれがなくっちゃねと楽しんでいる。
グレン・アシュテイア(
gb4293)は『狙うは一番! お年玉!』という野望を秘め参加。
「皆、参加してくれてありがとな! お年玉だが、成績優秀者には宣言通り進呈する。お年玉目指して頑張るように。以上!」
こうして、お年玉争奪戦ともいえる正月行事が始まろうとしたが、翔幻初騎乗の能力者には操縦練習タイムが与えられた。
●翔幻操縦練習
遮那、翔流、グレンの3人は、初乗りとなる翔幻の操縦練習を始めた。
見た目は他のナイトフォーゲルと変わらないが、コックピットはAU−KVを纏ったドラグーン仕様となっているので多少扱いづらい点も。
「勝負する以上、勝てるようになりたいですね。そんなに時間もないでしょうから、普段の操縦の経験が頼りですね。1分も持たずに自滅、みたいな事態はできれば避けたいものです」
ソウジより上手く操縦できれば、十分戦えるかもしれないと遮那は練習に励む。
「俺、自分のナイトフォーゲルすら操縦したことねぇんだよなぁ」
これがナイトフォーゲル初騎乗となる翔流は、免許取立ての自動車運転手以上に操作がぎごちない。操作をミスったので、前から派手に転倒してしまった。
「ソウジさーん、ドラグーンにはハンデないのか? 翔幻に慣れているんだから、素人有利にしてくれよな?」
翔流の問いに、拡声器で『却下!』とあっさり断るソウジ。
グレンは翔流ほどではないが、どことなく操縦がぎこちない。
30分の練習が終えたところで、第一の競技が始まった。
●巨大羽根突き開始
ソウジがあみだで決めた結果、対戦相手は以下の通りに。
第1試合 奉丈・遮那VS黒羽・ベルナール
第2試合 志羽・翔流VSVS千祭・刃
第3試合 常世・阿頼耶VSグレン・アシュテイア
初戦の遮那とベルナールは、それぞれの位置につくと翔幻サイズの羽子板を持ち礼をした。
「よろしくお願いします」
「よろしくな〜♪」
ベルナールは、いつものへらっとした笑顔を遮那に見せようとしたが、その作戦は翔幻越しでは通用しないのに気づき、羽根をヘロヘロ〜と強くない様に装い打つ作戦に。
それに対し、遮那は細かい作戦を考えず、とにかく羽根をきちんと狙い、ベルナールに返した。
「いただきぃ!」
遮那が打ち返した羽根をスマッシュで一直線に飛ばすベルナールだったが、勢いがありすぎたのか、遮那騎乗の翔幻の顔面ガラスにヒビが入った。
翔幻の操縦慣れの差もあり、ベルナールのストレート勝ちという結果に。
「やっぱり、ここは翔幻乗りとして負けるわけにはいかないぜっ!」
翔幻で負けたらドラグーンの名折れだもんな‥‥と考えるベルナールだった。
「参りました。でも、他では負けませんよ」
まだ書き初めとかるた大会が残っているので、遮那にはそれで頑張ってほしい。
第2戦は、ナイトフォーゲル初心者の翔流と翔幻レベルが高い刃。
「ナイトフォーゲル初心者だがガンガンいくぜっ! 覚悟しな、兄ちゃん!」
「僕だって、日本男児として負けられません」
そう言うものの、羽根突きの練習が無かったのでちょっと自信が無い刃だった。
(「ナイトフォーゲルは戦闘向きだから、細かい作業には不向きかも‥‥」)
そう考えるが、勝負するからには負けられない。
打って打って打ちまくり! 戦法で攻める翔流に対し、慎重に打ち返しては死角を狙い打ちする刃。
勝負は互角かと思われたが、確実に狙いを定めて打ち返した刃が1本目先取。
その後は何度かラリーが続いたが、慎重さに長けた刃の作戦勝ちという結果に。
第3戦は、お年玉ゲットに燃える阿頼耶とグレン。
「お年玉は私がもらいます!」
「俺だってほしいんです!」
阿頼耶の戦法は、始めは自分が慣れるために慎重に打っていたが、何回かラリーが続くとゆっくりな返球に慣れ、頃合いを見計らってリズムを変えてガンガン打ち返した。
「よっと!」
グレンの戦法は『あせらずゆっくり打ちまくり』。
打ち返された羽根をじっくり見ては、阿頼耶の足元を狙う等の打ち返しに。長時間ラリーが続いていたので決着がつかないかと思いきや、阿頼耶がおもいっきりスマッシュし1本先取。
「まだまだいくよ〜! 勝負はまだ終わっていない!」
「次も私がいただきます!」
2回目もラリーが続いていたが、グレンが打った羽根が地面に落ちそうになったので阿頼耶がとった行動は‥‥ヘッドダイビングでの打ち返し。
「諦めたらそこで試合終了です、ってどこの部か忘れたけどそこの顧問の先生が言ってたんです!」
ネバーギブアップ精神の賜物で第3戦は阿頼耶のストレート勝ち。
羽根突き終了後、グレンがソウジに訊ねた。
「羽突きって、羽根を落とした人に落書きをするって聞いたんだけど‥‥」
「ああ、あるぜ。罰ゲームでな」
「墨で落書きはお約束だよなぁ?」
自分もされると言うのに、他人事のように説明する翔流。
「そうだろうと思いまして、墨と筆を持ってきました。勝負に勝った人は、ソウジさんに墨を塗れますよ」
ニッコリ微笑んで言う遮那に「それはやめてくれ‥‥」と睨むソウジ。
「いえ、冗談ですから。塗るなら、負けた人にですよ?」
というワケで、お約束の罰ゲーム開始。
ベルナールは遮那の顔にちょこっとお化粧を施す程度に墨を塗り、刃は翔流の額に達筆な『褌』の文字を書き、阿頼耶はグレンの両頬に渦巻きを描いた。
●巨大書き初め
罰ゲームで落書きされた3人が顔を洗い終えると、次の行事が待ち構えていた。
翔幻で書き初め。こんなことを思いつくのはソウジしかいまい。
遮那が書いたのは『愛』の1文字。
上手に字を書こうと思っても難しいと思ったのか、おもいっきりその字に見えれば良いという勢いで書いた。
翔流は『美味い飯』と『こめこめ』の2種類を書いたが、迷った挙句『美味い飯』を選んだ。料理人である彼らしい抱負といえよう。
刃は、尊敬するある人物の影響がモロに出ていた。
今年の抱負が『褌で平和』とはどういうことか?
「これは、尊敬する師匠と共に褌を締めてバグアやキメラから地球を守る、という願いをこめて書きました。ウケ狙いではなく、真剣に書いたんですからね!」
阿頼耶は『今年は落ち着いて空を眺められる日が増えますように』。
お題には『青空』も含まれている。
とめ、はねを意識して機体と筆を動かすよう意識し、書き初め用紙に墨汁が染み込み過ぎないように注意しながら勢い良く書いた。
ベルナールは『強くなる!』。
定番の抱負だが、力だけでなく心も強くなりたいと願う彼の正直な気持ちが良く表現されている。
「1人でもたくさんの人を助けられるように、どんな戦場でも救護にいけるように、もっともっと強くなるっ!」
真面目に抱負を語るベルナールだった。
「ふむ、これは会心の出来だ」
グレンが書いたのは『愛別離苦』のオモシロ変換で『愛別裏貢』。
「この意味はですね、恋人や奥さんがいるのに裏でコソコソ他の女性に貢いだりしている大人の男の様子です。こういうのは駄目ですか? あ、ソウジ先生はこんなことしていませんよね?」
「そんなことするかぁー!」
そのようなことをしようものなら、彼女の美しいおみ足でボコにされてしまう! と身震いするソウジだった。
●巨大かるた大会
最後の競技は、押し合いへし合いとなるだろう巨大かるた取り。
「質問! かるたは江戸いろはかるたかい?」
翔流の質問に「へ?」となるソウジ。
知らないソウジのために説明すると、諺を使ってるいろはかるたは江戸、上方(京、大阪等)、尾張の3種類があり、内容はそれぞれ異なっている。
「んなこたぁどうでもいいだろ! かるた取り、始めるぞー!」
詠み手のソウジは、拡声器を持つと札を詠み始めた。
『犬も歩けばぼ‥‥』
全て読み終えないうちに、翔流、阿頼耶、グレンの3人がかるたを取り合ったものの‥‥全員お手つきだった。
「間違いは気にしねぇ! もう一回!」
口惜しがる翔流の言葉の後、ソウジが最後まで読み、札を取ったのは冷静に飛びついた遮那だった。
『次いくぞー! 臭いものに‥‥』
「はいっ!」
右手で取る振りをして、右手で寸止めしてから左手で正解の札をちゃっかりゲットというフェイント作戦に出たベルナールが、見事にかるたゲット。
『頭隠し‥‥』
「俺の直感では、これだー!」
途中だというのに、ヤマ勘を頼りにかるたを取ったグレン。
お手つきか? と思われたが、偶然にも正しいものだったので大喜び。
同じタイミングで飛び出した翔流は「ちきしょー!」と口惜しがった。
『ちりも積もれば山となる』
今度は全員、最後まで聞いてから一斉にかるた奪取!
札取りを制したのは、強引な取り方を好まない刃だった。
「こういう戦法はあまり好みませんが勝つためです。僕だって、お年玉が欲しいんですっ!」
刃、きみもお年玉が欲しかったんだね。
『花よりだ‥‥』
「はぁぁー!!」
阿頼耶は最初の一語を聞き取った時点で、その一語を叫びながら機体ごと突っ込みそうな勢いで札を取りに行き札をはたいた。
横方向にすっ飛ばす要領で狙えたので、その後素早く取った。
『負けるが勝ち』
負ける、ということばに敏感になっているのか、6機の翔幻はしばし動かなかった。
「その札、俺がもらったぁー!」
「僕がいただきます!」
「俺が取るんですー!」
しばらくして翔流が動き出すと、刃、グレンも取ろうと必死になった。
三つ巴取りを制したのは、強引に2機を押しのけた翔流だった。
「よっしゃー!」
やっとで札を取れた喜びにガッツポーズする翔流だった。大人げないね。
『‥‥かるた取りでムキになるな。次いくぞー。聞いて極ら‥‥』
他の翔幻より少し早く動くことができた遮那が、札を取った。
その後も押し合いへし合い、激しいバーゲンセールを連想させるかるた取りが続けられた。
●お年玉をもらえるのは誰?
全行事終了後、ソウジが結果発表を始めた。
「皆、お疲れさん。最後のかるた大会は派手にやってくれたモンだねー。俺は見てて面白かったけど。んじゃ、お楽しみのお年玉進呈者を発表するぞー!」
羽根突きの結果。
1位:黒羽・ベルナール、2位:千祭・刃、3位:常世・阿頼耶。
書き初めの結果。
達筆賞:奉丈・遮那、オモシロ賞:千祭・刃。
グレン・アシュテイアには、特別賞が進呈された。
かるた大会の結果。
1位:黒羽・ベルナール、2位:奉丈・遮那、3位:志羽・翔流。
結果的には、参加者全員お年玉が進呈されることになった。
「やった〜! お年玉ゲット〜♪」
お年玉が欲しかったグレンは嬉しかった。
「いただけるとは思いませんでしたね」
そう言いつつ、嬉しそうな表情の遮那。
「やったぜっ!」
ガッツポーズをしながら、年甲斐もなく飛び跳ねて大喜びする翔流。
「これでおニューの褌が買えます。師匠とお揃いのを買うのです!」
お金が足りなかったら、刃はどうするつもりなのだろう?
「リッジウェイの貸出権を買ったからこれをバージョンアップするのと、現在開発中で開発に関った発売予定の機体の貸出権を買うために貯金します。少しは、実家に送金かなぁ‥‥?」
刃同様、金額不足だったらどうするつもりかが心配です、阿頼耶さん。
「やったぜー!」
ルンルン気分のベルナール。
「全員お年玉ゲットしたけど、参加賞も進呈するからな」
「参加賞だけど、手にピンポン玉かパチンコ玉を落として『落とし玉』ってのはナシだかんな?」
翔流の突っ込みに何故わかった! とビビったソウジだったが「そんなことするわけないだろう」と何とか冷静に言い切った。
ちなみに、参加賞は参加者全員にビタミン補給をして欲しいということから『みかん』を進呈。
正月行事終了後、翔流がカンパネラ学園の食堂の厨房の一角を借り、温かい汁粉を作り始めた。餡子を煮るのは時間がかかるので、スーパーで売られている既製品を使用することに。餅は、雑煮の残りを食堂のおばちゃんに分けてもらったものを使用。
参加者全員、ソウジ、食堂のおばちゃん達を交え、翔流が作った汁粉に舌鼓を打った。
体があったまったところで、翔幻正月行事はお開きとなった。
●気になるお年玉
参加者達は、それぞれの自宅、寮の部屋に戻るとポチ袋を開けて中身を確認。
「な‥‥! これでは、お小遣いじゃないですか!」
貯金と実家の送金を計画していた阿頼耶は、金額の少なさに愕然となった。
「ガキの小遣いかよ‥‥」
翔流は呆れ果てた。
「これなら、何とか新しい褌が買えますね」
ホクホク顔の刃は、明日にでも買いに行こうと決めた。
「ソウジさんの苦労が窺える金額ですね‥‥」
中身を見て、ソウジの財政状況を納得する遮那。
「ま、まぁ、もらえただけでも良しとしましょう」
自己満足するグレン。
「こんなにもらえるなんてラッキー♪」
予想以上の金額に1番喜んだのはベルナールだろう。
その頃のソウジはというと‥‥。
「参加者人数、増やさなくて良かったぜ」
人数が多かったらソウジは破産していただろう、多分‥‥。