タイトル:サンタキメラ研究会マスター:竹科真史

シナリオ形態: ショート
難易度: やや易
参加人数: 5 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2009/01/09 20:56

●オープニング本文


 クリスマスに、カンパネラ学園のキメラ研究室にUPC本部があるキメラを運び込んだ。
 檻に入れられたそのキメラは、赤い帽子、赤い服、赤いブーツという衣装、長い白髭を生やしている「どこかで見たような‥‥」なものだった。
 まぁ、言うまでもなく『サンタクロース』なのだが。
 捕獲したUPC軍の話によると、世界各地の幼稚園や養護施設で『サンタなどいない!』と鳴きまくって大暴れ。建物を破壊しまくり、いたいけな子供達を泣かしまくりだったそうで。
 子供達にプレゼントをあげて喜ばせる存在であるサンタクロースが、子供を泣かせてどうするんだ!? と呆れるキメラ研究員一同。
 UPC軍は、このサンタキメラの生態を研究して報告書を本部に提出してほしいと頼んだ。

「頼まれたのは良いが、他のキメラの研究もしなければならないし‥‥」
 申 永一(gz0058)は困った。
「仕方がない。サンタキメラの研究をしてくれる協力者を募集するか」
 責任者にそれを提案したところ、きみが責任者になるならいいよと言われた。

 こうして、サンタキメラの研究を手伝ってくれる臨時研究員を募集することに。
 

●参加者一覧

リディス(ga0022
28歳・♀・PN
カルマ・シュタット(ga6302
24歳・♂・AA
櫻杜・眞耶(ga8467
16歳・♀・DF
八坂・佑弥(gb2037
11歳・♂・FT
舞 冥華(gb4521
10歳・♀・HD

●リプレイ本文

●実物を見た感想
「‥‥何なんでしょうか、このキメラは。見ていて、うわぁ‥‥という言葉しか出てこないのですが」
 キメラの生態をあれこれ調査したい、というのが参加動機のリディス(ga0022)は、研究対象であるサンタキメラを実際に見た感想がこれだった。
「本来、子供の夢をぶち壊すような輩は問答無用で排除すべきでしょうが、今回は仕方がありませんね。いっそ普通に敵として出てきてくれれば良かったのですが」
 そのほうが倒しがい、もとい、研究しがいがあると思っているようで。
「噂で聞いたことあるサンタクロースのキメラって、ホントにいたんだ。しっかし、メタボだな。ということは‥‥好物は肉だな! うん!」
 大きなリュックサックを背負った八坂・佑弥(gb2037)は、キメラサンタのポコッとした腹を見てそう思っている。
「ん、冥華‥‥本物のさんたさん初めて見た。ん? さんたさん違う? にせものさんたさん? じゃあ、さんたさん違う‥‥ぷれぜんとはくれないの? う〜、だめだめさんた‥‥使えない‥‥」
 舞 冥華(gb4521)は、サンタキメラはプレゼントをくれない偽者サンタと認識し、完全に子供の夢ぶち壊しのサンタキメラをじーっと見ていた。
「子供の頃はサンタがいるって信じていたけど、思わぬとこで実物に合えるとはな‥‥メタボなキメラだが」
 キメラの生態調査ということなので様々な実験材料を持ってきたカルマ・シュタット(ga6302)は、責任者の申 永一(gz0058)にこれらを使ってもいいか? と訊ねた。
「実験だが、キメラを死亡させない程度であれば何をしても構わない。好きに研究してくれ」
 それを聞いたカルマと櫻杜・眞耶(ga8467)、佑弥は安心した。
「どうでもいいですが、入学式にあれだけの騒動があったにも関わらず研究室のキメラは逃げなかったんですね?」
 白衣を着用しながら、眞耶は永一に疑問を投げかけた。
「ここには、何があってもいいように常に研究員が滞在している。騒動があったとはいえ、決戦地はグリーンランドだったのだから学園には影響がないだろう?」
 研究室に籠もっていた永一は、グリーンランド会場が壊れたので、入学式は学園で執り行われたことを知らない。
 研究室には防音装置があるので、周囲が騒がしくても問題はない。
 騒がしい環境では、キメラが暴れだす危険性があるという問題点は解消している。
「臨時研究員が集まったことだし、早速研究を始めよう」
 永一にファイルを渡された5人は、早速研究を開始した。

●サンラキメラの攻撃
 リディスは巨大ハリセンを手にすると、ギリギリに届く位置からすぱーん! と殴ってみることに。SES搭載武器ではないので、思いっきり叩いても大丈夫。
 ダメージを与えることはできないが、手加減は一切無用。
 檻に近づいたサンタキメラが『サンタなどいない!』と大声で鳴いた後、おもいっきりツッコミの如くどついた。
「あぁ、これは意外に爽快ですね。なるほど、日本の芸は奥が深い‥‥などと納得してる場合じゃないですね。どのような反撃を見せてくるでしょうか」
 反撃に備え、1.6メートル程離れてモップの柄等に巨大ハリセンを括ると、更にリーチを延長し、何処まで届く確認した。
 その結果、2メートルが限度であることが判明。
『サンタなどいない!』
「それはもういいです!」
 2メートルまで伸ばした巨大ハリセンで更にどつく!
「快感‥‥」
 つい、うっとりしてしまうリディスだった。
 佑弥もリディスと同じことを考えていたのか、ヴィアを長い棒に結びつけて軽くサンタキメラを突いた。
「本気で突くワケないじゃん。死ぬし」
 メタボの象徴であるポッコリ腹を中心的に突くと、サンタキメラは『サンタなどいない!』と突然鳴き出した。
 しゃがれた老人の声かと思いきや、ヤのつく職業のいかつい男を連想させる野太い声だった。
「げっ! これじゃ、いたいけな子供の夢ぶち壊しじゃん!」
 攻撃はパンチ、キック、体当たり等を期待していたが、檻を掴んで「出せー!」と言わんばかりに暴れるだけだった。時たま、担いでいる白い大きな袋をぶつけたが。
(「永一兄ちゃんに止められるかと思ったけど、大丈夫だったな‥‥」)
 怒られたらどうしよう? と心配した佑弥だったが、永一に何も言われなかったので一安心。
「ん、最初は攻撃‥‥」
 サンタキメラの攻撃はどんなものだろう? と考えながら、冥華は自分が攻撃すればサンタキメラも攻撃するのではないかと思い拳銃で威嚇してみることに。
「ん、当てちゃったら痛いし、可哀相だから、当たらないように、にさものさんたの近くに『ばーん!』ておどろかせよう。にせものさんたの攻撃は、檻があるからきっとだいじょうぶ? なはず‥‥」
 拳銃の銃口をサンタキメラに近づけ威嚇するものの、攻撃する気配なし。
 佑弥の実験同様、ここから出せ! といわんばかりの行動をとるだけだったので「つまんない‥‥」と呟く冥華。
 カルマはサンタキメラの攻撃ではなく、防御面を確かめようと火属性のミルキアと水属性のセリアティスでサンタキメラを突いてみようと考えた。
「火属性武器の後で、水属性武器で突けば死んでも大丈夫だろう」
 さっそく始めるか、というところで永一が「ちょっと待った!」とストップ!
「頼む! そんなこと言わないでくれっ! そいつが死んでしまっては元も子もなくなってしまうっ!」
 両手を合わせて必死に頼む永一に根負けしたカルマは仕方ないな‥‥と言いつつ、実験を諦めた。

 実験結果:攻撃はただ単に暴れるだけ。袋が武器と判明。

●サンタキメラの好物
「トナカイが好物とか言いませんよね?肉類、魚類、野菜類その他ジュースやくず鉄など色々と与えてみましょうか」
 研究所での強化失敗の産物、くず鉄が好物なら処分に丁度いいかもしれないと考えたリディスは早速与えてみた。
 サンタキメラは手にした後に匂いを嗅ぎ始めたが『サンタなどいない!』と急に鳴き出したかと思うと、くず鉄を放り投げたではないか!
 どうやら、これは食べ物ではないことが理解できているらしい。
「肉、魚、野菜をあげますから機嫌を直してください」
 仕方ありませんねぇ、と、リディスは肉、魚、野菜を生のまま差し出した。これは食べ物であると認識したのか、手掴みするとガツガツ食べ始めた。
「すっげぇ食欲‥‥。俺が持ってきたターキーの丸焼き、ローストチキン、焼肉各種も食うか? 俺の小遣いはたいて買ったんだからな! 残さず食えよ!」
 リディスが差し出した食料をペロリとたいらげた後、サンタキメラは佑弥が差し出した肉も手掴みで食べた。
「サンタたるもの、飲酒運転でも大丈夫かどうかも確かめたいな。とりあえず、ワインとスブロフを飲ませてみるか」
 カルマは小さめのボウルにワインとズブロフを入れると、サンタキメラの檻にそっと入れた。反応はというと‥‥ワインだけ見事な飲みっぷりで飲み干した。
「ズブロフは拒否されたか」
 舌打ちしながら、ズブロフを染み込ませたレポート用紙にジッポライターで火をつけて瓶に差し込んで檻に投げ入れようとしたが、これまた永一に止められた。
「やめてくれー!」
 どのように止めたかとたとえるなら、『忠臣蔵』の「殿、殿中でござる!」のあの名場面を想像してほしい。
「これなら飲むだろう」
 と、取り出したのは牛乳。
 これは飲ませるのではなく、ぶっかけて嫌がるかどうかの実験に使用するものだ。これに関しては、永一は止めなかった。
「人間なら嫌がるけど、サンタキメラに『嫌がる』という感情があるのか‥‥興味深いよな? なあ、皆?」
 うんうん、と頷く他の能力者。
 その結果、サンタキメラは『サンタなどいない!』と激怒しているかのように鳴き出した。
 これに関しては牛乳の匂いを嫌がっているのではなく、かけられたことに怒っているのだろう。
 眞耶は、機嫌直しにとブッシュ・ド・ノエル、ジンジャークッキー、マカロン等のクリスマス用の菓子をサンタキメラにあげた。これは食べ物と認識したのか、ガツガツと食べ始めた。手掴みで食べたので、彼女の手作りと思われる菓子類はすべて原型をとどめていなかった。
「ん、にせものさんた、冥華のらむねあげる。ちょうど支給品でもらったから。べ、べつに冥華がたんさんいんりょう飲めないからじゃないから。押し付けじゃないから‥‥ないからね‥‥」
 冥華はそっとラムネを檻の隙間から入れたが、サンタキメラは無関心。どうやら、これは食べ物、飲み物の類とは思ってないらしい。
「らむね、飲んでくれなかった‥‥。にせものさんた、きらい‥‥」
 泣き出しそうになる冥華を見ても、無関心なサンタキメラ。

 実験結果:食べ物、飲み物に関しては好き嫌いは無いが、匂いが嫌いなものは別。
       梱包されている飲食類に関しては関心を示さない。

●サンタキメラは何に興味を示すか
 好物に関しては、食べ物以外でも実験してみることに。
 カルマは、ロッタ・シルフスとミユ・ベルナールのデュエットシングル『ミラ☆クリ』のCDをプレーヤーにセットすると、早速聞かせてみた。
 クリスマスソングだからなのか、サンタキメラはメタボな身体をリズムをとっているかのように動かしている。その間、熊のぬいぐるみを見せたがこれには興味を示さなかった。
「クリスマスソングは好きみたいだな」
「その実験、俺もしようと思ってたのにー! カルマ兄ちゃんのいけず! だったら、俺はこれだ!」
 佑弥は手にしていたグラビアアイドル写真集を広げると、サンタキメラに見せつけた。内容は、グアドルたちがへそ出しミニスカサンタコスをしているものだった。
「それ、どうやって手に入れたんだ?」
「落ちてたの拾った」
 サンタキメラは『サンタなどいない!』と柵を手にし、いきなり興奮し始めた!
「キメラでも、美人のねーちゃんに興味あるんだな‥‥」
 いや、違う。同類キメラだと思っているのだろう。
「私は、匂いの好みの実験もしてみましょう」
 ラベンダーや柊等のアロマオイルを数種類用意すると、火をつけて香りを漂わせた。
 嫌がるかと思いきや、サンタキメラはウトウトし始めた。リラックス効果があるアロマオイルはキメラにも効果があるのか、それとも満腹になったので眠たくなったのかは謎である。

 実験結果:音楽はクリスマススングのみ興味を示す。
       サンタ服を着ている人物に関しては、同類キメラと思っている様子。
       アロマに関しては人間同様の反応を示した。

●サンタキメラの弱点
 最後の実験は、サンタキメラの弱点を探ること。
「ん、にせものさんたの弱点‥‥お腹がめたぼ? 違う?」
 むむ‥‥と考え込む冥華と佑弥の手をとると、リディスはいきなりサンタキメラの檻に近づけた。
「サンタキメラの弱点は、案外子供かもしれません。子供自体が嫌いとかいうことはないでしょうが、反応を確かめるだけでもいいかもしれません」
「‥‥ひどい」
「リディス姉ちゃんの鬼!」
 恨めしそうに「どのような反応を示すのでしょうか?」とクスクス笑うリディスを睨む子供2人。
「弱点はなくても、子供を泣かせるようなキメラはさっさと潰してしまえば‥‥いえ、何でもありません。そんなことはやりませんよ? ええ、勿論」
 永一も睨みだしたので、子供2人を檻から遠ざけるリディスは「残念です」とぼそっと呟いた。
 解放された冥華は、サンタキメラを怪我させないように火属性の壱式でビシビシ突くことに。
「にせものさんたを怪我させるのはあんまり良いことじゃないけど、依頼だから‥‥」
 火属性武器に弱いだろうと思いきや、まったく効いていないようだったので、冥華はつまらなさそうな表情に。
「永一さん、研究室の窓を全開にしてくれないか? 他の皆は防寒具着用してくれ」
 カルマの実験は、水鉄砲で水をかけてみるという耐寒テスト。
 フィンランド、グリーンランドなどの極寒の地にいると言われているサンタならキメラであろうと寒さに強いはず! と考えての実験だった。
 窓を全開して水鉄砲発射すると、サンタキメラは『サンタなどいない!』と鳴き出した。声のトーンがやや高めだったので、すごく喜んでいるものと思われる。
「予想どおりだったか」
 カルマの実験が終了すると同時に、研究員達は素早く窓を閉めた。開けっ放しだと寒いんだもん!
 実験結果が不明となったため、後ほど研究員達が調査し直すこととなった。

●サンタキメラ大暴れ!
 様々な実験をされたこと=攻撃された、と認識したサンタキメラが急に暴れ出し、檻から脱走しようと無駄な足掻きを始めだした。

『サンタなどいない!』

 鳴き声は今までにない大音量だった。
「まずい、このままでは檻を破壊して脱走してしまう!」
 風林火山を装備して戦闘に備える永一を見た能力者達は、各々の武器を装備して攻撃準備を。戦闘開始! かと思いきや‥‥。
「メタボジジイ! ここから逃げ出そうなんて甘い考えは100年早いんだよっ! わからないようだったら、頭に叩き込んであげるわっ!」
 三節棍を装備していた眞耶が、柵越しから容赦ない打撃攻撃をしている。しかも情け容赦なく!
「眞耶姉ちゃん、こわ‥‥」
「‥‥こわい」
 怯える子供2人。
「そこまでしなくてもいいんじゃないか?」
「キメラだから大丈夫でしょう」
 心配するカルマに対し、問題ないとしれっというリディス。
「ま、眞耶くん‥‥その程度にしてくれないか? こんな奴だが、貴重な研究キメラなんだから‥‥」
 落ち着かせようと必死に説得をする永一の言葉に反応したのか、攻撃をピタリと止めた眞耶。
「永一兄はんがそう言うなら、これまでにしておきます」
 良かった‥‥と心の中でホッとする永一と研究員達だった。

 その後、サンタキメラは攻撃を恐れたのかすっかり大人しくなってしまった。
「ん、冥華‥‥できることちゃんとできたよね‥‥?」
「ああ、ちゃんとできていたよ」
 頭を撫でられたことで、皆の手伝いができ、役に立てたことに安心して微笑む冥華。
「実験の結果、何かといろいろなことがわかりましたね。しかし、この時期にキメラ研究とは、自分事ながら何となく泣けてきますね」
 散らかった周囲を見て、研究員は苦労しますねとリディスは心配に。
「サンタキメラだが、放っておいても問題ないな」
 実験データをまとめながら無害と判断したカルマ。
 眞耶は研究員達と研究用のキメラの餌入れの器、研究機材の片付け、洗浄を行った後に研究レポートをまとめ、佑弥は悪戦苦闘しながらも研究レポートを書いていた。
 能力者達は研究レポートを書き終えると、責任者の永一に手渡した。
「皆、協力感謝する。この研究レポートは俺がまとめ、UPC本部に提出する」
 サンタキメラ実験は終わったが、永一の気苦労はこれから始まるのであった。