タイトル:聖夜のサンタ服披露会マスター:竹科真史

シナリオ形態: イベント
難易度: 易しい
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2008/12/25 02:16

●オープニング本文


 入学式を終えたカンパネラ学園は、クリスマス行事の準備に大忙し。
 手芸部では、9月から毎月恒例となった『衣装披露会』を開催することにした。衣装は『サンタ服』と決まっているのだが、それだけでは何か物足りないような気がする手芸部部長の糸井・創璃(いとい・そうり)。
「部長、そういう時こそ『ヒエダ貸衣装店』の出番です! 今回も、主催者をヒエダ夫人に頼みましょう!」
 手芸部の1人がそう言い出すと、残る部員も賛成! と挙手。
「そうですね‥‥。ヒエダ夫人のご厚意があればこそ、この企画が毎回成功しているんでしたね」
 話し合いにより、今月も『ヒエダ貸衣装店』の力を借りることにした。

 数日後。カンパネラ学園に訪れたヒエダ夫人を出迎える手芸部員達。
「ヒエダ夫人、今月も宜しくお願いします」
「任せといて〜。私も、どんな衣装を着る参加者が来るか楽しみだし〜」
 それもあるが、ヒエダ夫人の目当てはUPC軍とカンパネラ教師を兼任しているUPC軍中尉、ソウジ・グンベ(gz0017)であるがそれは内緒♪
「今回も、着ぐるみで参加される方がいると思いますのでトナカイの着ぐるみを用意していただけますか?」
「トナカイねぇ〜。申し訳ないけど〜この衣装会のために1つしかキープしてないのよ〜。ごめんなさ〜い。サンタ服は、特大サイズとキッズサイズしかないの〜」
 ラスト・ホープもクリスマスは賑わい、サンタクロース+トナカイ出張サービスもあるのだから仕方がない。
「でしたら、馬はありますか? 角をつけたり、色を塗り直せばトナカイの代わりとして十分使えると思うんです!」
 創璃の案に「それ、いいわね〜」と乗り気のヒエダ夫人。
「でも〜中には傷みが酷いものもあるわよ〜。それでもいいの〜?」
 手芸部員達は、口をそろえて『自分達が修繕します!』と力強く宣言!

 手芸部員達は、ヒエダ夫人が送り届けてくれた馬の着ぐるみを丁寧に、心を込めて修繕した。
 サンタ服は、誰が参加しても良いように各サイズ、各種を部員達が手連日の徹夜で作成。部員数が少ない故の苦労である。
「部長、今回の衣装披露会は1人2組での参加になりますね?」
「そうですね。トナカイがいてこそのサンタですから。この1人と1匹が揃わないとクリスマス気分が出ませんから。それと、ひとつ提案があるのですが‥‥」
 創璃の企画とは、トナカイ役の参加者に着ぐるみをカスタムしてもらおうというものであった。
 トナカイ役の参加者がミリタリー風に武装した場合、サンタクロースもそれに合わせて軍人風に、というものである。
「それ面白そうだけどさぁ、人数が奇数だった場合はどうするのぉ?」
 問題はそれだ。奇数だと、サンタかトナカイのみの登場になってしまう。
「その場合は、私達手芸部員が穴埋め参加します!」
 えぇーっ! と不満を漏らす部員達だったが、創璃の必死の説得で渋々全員、人数が足りない場合のみ参加することとなった。
「部長、クリスマスケーキ奢ってくださいよ? 大きいの」
「わかりました。無事、終わってからご馳走します」
 こうして、12月は『サンタクロースとトナカイ』というテーマに。

 問題は、司会を誰にしてもらうかである。
 ソウジは、入学式関連で忙しいと聞いたし、特別研究生である申 永一(gz0058)は関連性がない、食堂のおばちゃん、稗田・盟子(gz0150)も忙しいことだろう。
 どうしましょう‥‥と考えながら歩いていた創璃は、誰かにぶつかった。
「す、すみませんっ!」
「そんなに謝らなくてもいいって。顔上げな」
 ぶつかった相手はソウジだった。
 創璃は思い切って、ソウジに司会者を誰にすれば良いか悩んでいると相談した。
「司会ねぇ‥‥。やってもらえるかどうかわかんねぇけど、1人、心当たりがいる。今、聞いてみるから待ってな」
 ソウジは携帯を取り出すと、ある人物に連絡した。

 その人物がいるのはULT(未知生物対策組織)だった。
「グンベ中尉、ご無沙汰しております。私に何かご用でしょうか?」
 対応しているのは、ULTオペレーターのシェリル・クレメンス(gz0076)。
「私が、カンパネラ学園で行われる催し物の司会‥‥ですか? そちらに行けるかどうか、上官に訊ねてみます。折り返しこちらからご連絡しますので、お待ちください」
 そう言うとシェリルは携帯を切り、上官にUPC本部所属で現在はカンパネラ学園教師であるソウジ・グンベ中尉から司会要請の指令があると伝えた。
「グンベ中尉も忙しい身だろう。彼の代役、というのであれば仕方が無い。行ってきたまえ」
「ありがとうございます!」
 上官に敬礼した後、深々とお辞儀をして感謝するシェリルだった。

 こうして、クリスマスの衣装披露会司会はシェリル・クレメンス嬢が担当することに。

●参加者一覧

/ 夏 炎西(ga4178) / 崔 南斗(ga4407) / 羽鳥・流(ga5232) / 那智・武流(ga5350) / 火絵 楓(gb0095) / 滝岡海(gb0746) / 美環 響(gb2863) / 羽鳥・明(gb3843

●リプレイ本文

●集まったサンタとトナカイ達
 主催者である『ヒエダ貸衣装店』がクリスマス時で多忙なため、今回の衣装披露会は主催・企画ともに手芸部員となった。
 衣装合わせ場所である手芸部部室に集まった参加者は、聴講生8名。
「手芸部の皆さん、神様衣装披露会の時はお世話になりました。子供さんを喜ばせたいという崔さんに、お付き合いして参加します。今回も、よろしくお願い致しますね」
 丁寧に微笑し、挨拶するのは夏 炎西(ga4178)。
「若者の祭りに、俺みたいなのが紛れて申し訳ないんだが‥‥プレゼントに添えて、娘にクリスマスの楽しい写真を送ってやりたくてね」
 それが参加動機なのだが‥‥と申し訳なさそうに言う崔 南斗(ga4407)に、娘さんに楽しい写真を送ってあげましょうと微笑む手芸部部長の糸井・創璃(gz0186)は、南斗さんは優しいんですねと思った。
 いとこ同士の羽鳥・流(ga5232)、羽鳥・明(gb3843)は、どちらがサンタで、どちらがトナカイをするのかまだ決めていなかったのでジャンケンで決めることに。
「最初はグー! じゃんけんぽん!!」
 結果、明の勝ち。
「やったぁ、俺がサンタ役ね。創璃ちゃん、ひとつ聞いていいかな?」
「何でしょうか?」
「サンタ服披露会なのに、何でトナカイもいるのかな? 子供の夢を壊さないため?」
 それもありますが、サンタとトナカイは切っても切れない縁ですからと答える創璃。
 那智・武流(ga5350)、美環 響(gb2863)は単独出演ではなく、手芸部の誰かにサンタかトナカイのどちらかを演じてもらうつもりでいる。
「俺は着ぐるみでトナカイ役として参加するから、相方のサンタは、是非、手芸部部長の創璃ちゃんにやってもらいたい。ミニスカサンタで。シチュエーションは考えてあるが、それは当日のお楽しみな♪」
 頼まれるとNOと言えない性格の創璃は、武流の頼みをきくことに。
 子供でもなく、大人でもないアンバランスな魅力を持つ響は、中性的な容姿の少年という外見を活かし、優雅な仕草と人の心を魅了する微笑を浮かべる手品は特技だ。
 楽しんだ者が勝ちがモットーなので、今回の衣装披露会でも思いっきり楽しんで手品を披露してくれることだろう。
 そんな響パートナーとして選んだのは、手芸部員の可愛らしい女子生徒。
 過去、2回参加した衣装披露会で親しくなったうちに友達以上、恋人未満の関係になったようで‥‥。
「良かったら、僕と一緒に出てくれませんか?」
 指名された女子生徒は「は、はい‥‥」と照れて参加OKした。 
 火絵 楓(gb0095)は、同じ小隊に所属している友人の滝岡海(gb0746)と組んで参加。
「海、頑張って盛り上げよう!」
「は〜い♪」
 全員が揃ったところで、サンタとトナカイに別れて衣装合わせをすることに。

●サンタ服はどうしましょう?
「サンタ服のアレンジですが、中華風でお願いできますでしょうか?」
 どのようにしますか? という創璃の質問に「ちょっと変則的なんですが、私の自前の『四象八卦衣』にサンタクロースっぽいアレンジをお願いします」と注文する炎西。
「わかりました。中華風に仕上げますので、その衣装を貸してくださいませんか? 当日までには仕上げますので」
 では、お願いしますと炎西は自前の衣装を創璃に手渡した。

「海はね、ミニサンタに変身するよ」
 そう言うものの、海が着ている衣装は大き目のサイズだった。
「う〜! ブカブかだよ〜! でも、付け髭付けたらサンタさんっぽいよね? どう? サンタさんぽい?」
 袖直しと裾直しをどのくらいしようか考えている手芸部員に嬉しそうに訊ねる海に、かわいいサンタさんねと褒められた。
「えへへ〜」
 大き目の衣装は、袖直しとズボンの裾上げで補正することに。
 響のテーマは『王子様サンタとお姫様トナカイ』なので、サンタカラーの煌びやかなスーツに、腰に小さいサンタクロースの袋を装備することに。
 スーツは赤なので、袖と裾に白いふわふわの縁取りをしてもらい、帽子もできればチャイナキャップに白いポンポンをつけてサンタ帽っぽくしていただければという注文だった。靴はブーツではなく、自前の白いカンフーシューズ。
「スーツの袖と裾に白いふわふわ縁取りと、カンフーシューズに鈴をつけてもらえませんか?」
「サンタマジシャン、ってとこね? OK! 楽しみにしてるわよ」
 響のマジックファンである手芸部員は、張り切って作成することに。
 問題は‥‥明が注文したサンタ服をどうするかだった。
 明と流のテーマは『金貸しサンタとミナミのトナカイ』という物騒なものだった。
「あのさ、赤いサンタ服に白い縦縞模様縫い付けることってできるかな? ズボンにもね」
「は、はあ‥‥。やれるだけやってみます‥‥」
 サンタ衣装の中で一番苦労しそうですね、と創璃は大きな溜息をついた。

●トナカイの衣装はどうしましょう?
「サンタやればと相方が言ってくれたんだが、大きい方がトナカイやるほうがリアルなんじゃないかと思ってな。子供は結構、そういう部分にリアリティを求めるしな」
 これを元にアレンジして欲しいと南斗が差し出したのは缶ビール。
「瑞獣『麒麟』風にしたい。トナカイの手足に金色の瑞雲をつけ、角と鼻面と、尻尾を金色にしてもらえないか? こんなカンジで」
 缶ビールは「飲め」と差し出したのではなく、そこに描かれているパッケージイラストを参照にしてくれと言いたいらしい。
「材質は、段ボールを形に切って金紙を貼ったのでもいい。金色のサテンは、縫ったり綿詰めたりが難しそうだしな。首輪もちょっとアジアン風味に、赤青‥‥か、水色とピンクの組み紐細工にしてもらえると嬉しいかな。丸い鈴をつけてもらってね」
 細かい注文だったが、手芸部員は快く引き受けてくれた。
「ありがとう、感謝するよ。ところで、ヒエダ夫人はどうしたんだ?」
「ヒエダ夫人? 今は忙しいそうです」
 クリスマスだからか、と納得する南斗だった。

 明とのジャンケンに負け、トナカイ役に決まった流は悔しがっていたものの決まったからにはするしかないかと諦めた。
「俺は、つぎはぎだらけのトナカイの角がついた茶色の全身タイツで。あ、赤い鈴付きの首輪も忘れずに」
 金貸しの相棒は、貧乏と相場が決まっているのだろうか?

 武流は、創璃にサンタをやってくれ! と交渉中だったが‥‥創璃は渋った。
 何故なら、サンタの衣装はボンテージ風サンタ服と赤いロングブーツ、黒い蝶マスクという怪しげな服装だったからだ。
「頼む! イヤだろうけど協力してくれ、創璃ちゃん! 手芸部の皆と一緒にケーキセット奢るからさ!」
「‥‥わかりました」
 手芸部員を労うため、嫌々ながらも武流の頼みをきくことにした創璃だった。
 そんな彼の着ぐるみは、ボロそうなのにあっさり決まった。

 楓はカスタムトナカイに扮装。
 無駄に大きい角、自分の顔を赤く塗ることで赤い鼻に見立て、全身に色とりどりの豆電球を付け、目つきを釣り目にすることでサンタを乗せたソリを引くらしい。
「頑張るわよ〜!」
 この時点でハイテンションな楓だった。

 響のパートナー役の手芸部員の衣装は、全体的に可愛らしくカスタムした茶色のタイツで、でその上に豪華なドレスを着せ、頭にトナカイの小さなツノをつけたカチューシャをつけることに。
 マジックの相方として相応しい衣装ではないだろうか。

●衣装披露会当日
「シェリルさん、今日はお忙しい中ありがとうございました」
 ULTからはるばる来た司会担当のシェリル・クレメンス(gz0076)に、礼儀正しく挨拶する創璃。
「いえ、グンベ中尉の頼みですから。皆さん、今日はお互いに頑張りましょうね」
 部長ー、準備できましたよー! と手芸部員の合図で、舞台準備は整った。
「では、司会のほうよろしくお願いします」

 披露会開催前、ステージ中央にへそ出しミニスカサンタ姿のシェリルが登場するなり男子生徒と歓声が響いた。
「ただいまより、クリスマス衣装披露会を開催いたします。どのようなサンタクロースとトナカイが登場するのでしょうか? それは見てのお楽しみです。司会は私、シェリル・クレメンスが担当します。よろしくお願いします」
 サービス♪ と言わんばかりに会場に投げキッスするシェリル。ちなみにこれは、手芸部員の指示だったりする。
「では、最初のサンタクロースとトナカイに登場してしていただきましょう」

●中国雑技団風
 麒麟風トナカイ南斗が多数のナイトフォーゲルぬいぐるみが入った箱を持ってきて登場した後、炎西サンタはバック転、宙返り等を披露しつつ登場。
 2人は舞台中央に揃うと一礼し、舞台の右端と左端に別れた。
 炎西サンタは舞台袖に用意しておいた袋の口を広げ、南斗トナカイが投げるナイトフォーゲルぬいぐるみを次々と器用にキャッチし、袋の中へ。
 次から次へと投げられるぬいぐるみを立て続けに袋に入れたが、あるぬいぐるみだけ袋の中に入れず、炎西サンタは受け止め損ねて顔面でぽふっとキャッチしてしまった。
 それは『みゆのぬいぐるみ』だった。
「メ、メリークリスマース!」
 照れながらも、挨拶は忘れない礼儀正しい炎西サンタだった。

『どうもありがとうございました!』

 呼吸を合わせて挨拶した2人は、舞台下手に去っていった。
「ありがとうございました。アクロバッティングなサンタさんでしたね。次のサンタクロースとトナカイの登場です、どうぞ!」

●女王様と下僕
 続いて登場したのは、トナカイの武流だけだった。
(「これ、読まないといけないのでしょうか‥‥?」)
 事前に武流に手渡されたカンペを見て、これも仕事です、と割り切るシェリル。
『昔々、カメ並みのスピードしか出せないドジでマヌケなトナカイがいました。それを見かねたサンタクロースの孫娘は、お仕置きと称した調教をして、スピードアップさせようと考えました』
 シェリルのナレーション後に登場したのは、ボンテージ風サンタ服に赤いブーツ、黒い蝶仮面に鞭を持った所謂『SMの女王様』スタイルの創璃だった。
「この役立たずのトナカイ! いや、豚! おまえにはお仕置きが必要ね!」
 ビシッ! と鞭を床に叩きつけ、トナカイ武流を容赦無く調教しようとする女王様サンタ創璃。
 武流トナカイは、両手を合わせて土下座し『やめてください、女王様!』と許しを乞うているようなジャスチャーを。これが受けたのか、観客の一部は大笑い!
 その後、女王様サンタ創璃のお仕置きは容赦なく続いた。
 調教の結果はというと‥‥。
『お仕置きと称した特訓のおかげで、トナカイは超スピードアップしました』
「もっと早く走りなさい、豚トナカイ! オーッホッホッホッ!」
 トナカイ武流は、鞭で叩かれてお仕置きされたことに快感をおぼえてしまい、もっとぶって! というジェスチャーをしながら猛烈な勢いで武流手製のソリを引いて退場。
「あ、ありがとうございました‥‥。このようなサンタとトナカイというのもアリなんですね‥‥。次のサンタクロースとトナカイの登場です、どうぞ!」

●金貸し帝王とその舎弟
 明扮するサンタは、赤い服に白い縦縞という何ともいえない不自然な衣装だったが、本人はまったく気にしていない。
 そのやや後ろには、つぎはぎ付きの茶色い全身タイツでトナカイに扮した流がいる。
 サンタ明の正体は子供にプレゼントを配るが、プレゼント代金を親にせびるというある意味悪徳闇金業者チックサンタだった。
「親から金せびるやなんて、そない殺生なことしたらあかんでアニキ!」
 トナカイ流は止めようとするが「じゃかぁしい!」とサンタ明に足蹴に。
(「振りだっていったのに、本気で蹴ったな、にーちゃん‥‥」)
「子供の夢、ぶち壊しにするワケにゃいかんやろ? せやから、親がプレゼント代払うんが当たり前やろが! それがこの業界の常識じゃ!」
 これでは、借金取立て屋ではないですか!?
「なあ、親御さん、払えんようやったらなぁ、トイチで金貸したるで?」
「トイチは忘れてへんのか!」
 トナカイ流がそう突っ込むと「常識じゃろがボケェ!」と殴るサンタ明。これは手加減したのか、流は痛がらなかった。
 貧乏な家族には金を貸すが、利子をしっかり請求している点はいかにも悪徳業者っぽい。
「なんなら、このねーちゃんにさむ〜い中、マグロ漁船で働くか、中身(臓器)売るかして稼いでもらおか?」
 そう言うと、サンタ明はステージ端に立っているシェリルを舞台中央に引っ張り出したではないか!
「な、何するんですか!?」
 突然の出来事に「こんなの、打ち合わせにありませんよ!」と言うシェリル。
「あるに決まっとるやろ? 姉ちゃん。あんたがしっかり金稼いでや」
 明がますます鬼畜に見えてくる観客達だった。
「こないなべっぴんさんに酷いことさせんといてや!」
 サンタ明に泣いてすがりつくが、またしても足蹴に。
「もうあんたとはやってけへんわ! ほな、さいなら!」
 腹を立てたトナカイ流が立ち去ろうとした時、明が背後から『ドッキリ企画』と書かれた看板を掲げた。
「嘘だよーん。俺は、本当は優しいサンタさんなんだよ? 司会のお姉さん、ごめんね?」
 素に戻った明は謝るが、突然の出来事に驚いたシェリルは泣き出してしまった。
『さ、さいならー!』
 シェリルを引き摺り慌てて舞台を去る明と流だったが、シェリルがなかなか泣き止まないので、やむを得ず10分間休憩することに。

●気分直しといきましょう
「先ほどは大変失礼いたしました。次は、華麗なるマジシャンサンタとアシスタントとトナカイの登場です。どうぞ!」
 泣き止み、司会続行できるようになったシェリルは次の出場者の紹介を行った。

 マジシャン風サンタに扮した響が、ドレスを着たトナカイ手芸部員をエスコートしながら優雅に登場。
「今日は、いつも一生懸命働いてくれるトナカイちゃんにプレゼントをします」
 そう言うと、小さなサンタクロースの袋から、袋以上に大きくて綺麗なティアラを取り出す手品を披露。ついでにドレスも一緒に取り出した。
「では、トナカイちゃんをお姫様に変身させましょう。1、2、3!」
 大きな袋をカーテン代わりにし、3カウント後、トナカイは美しいお姫様に変身!
「愛らしいトナカイお姫様の出来上がりです。お姫様、私と踊っていただけますか?」
 優雅に片手を差し出して微笑するサンタ響の手を取り、ワルツの音楽に合わせて軽やかに、優雅に踊るマジシャンサンタ響とお姫様トナカイ手芸部員。
 踊り終えると、最後にとても小さな袋を上に放り投げると破裂し、様々な色の紙吹雪がステージに舞い、その下でダンスフィニッシュ。
 観客達に観客に満面の笑顔で一礼し、手を取りながら退場する2人だった。
「綺麗なサンタクロースとトナカイでしたね。クリスマス衣装披露会ですが、最後の1組となりました。最後のサンタクロースとトナカイが登場します、拍手でお迎えください」

●もうどうにも止まらない
 ブカブカなサンタ服を着た海は、探していたトナカイを見つけた模様。
「アレって楓ちゃん、もとい、トナカイだよね‥‥? 何してんだろ」
 最初の内はまじめに登場していたトナカイ楓だったが段々テンションが上がり、サンタ海の赤い衣装をみるなり突進しはじめた。
「‥‥‥」
 思わずトナカイ楓と目が合ってしまったサンタ海は、ただならぬ雰囲気に後ずさったが、いきなり突進し出したので追いつかれまいとダッシュで逃走! 何故かケーキが載った皿とフォークを手にすると、いきなり食べ始めたではないか!
「ケーキケーキ〜、甘くて美味しいな〜♪」
 そんなサンタ海を「赤赤かああ〜! がぁぁぁ〜!」と叫びながら猛ダッシュで追いかけるトナカイ楓の表情が怖い! 本気で興奮しているだけに余計!
 見かねた警備員に扮した炎西と南斗(事前に打ち合わせして決めた)に補導されるものの、暴れて脱走を試みた。
「イヤァ〜〜〜〜〜〜!」
 暴走は警備員にも止められず、トナカイ楓はそのままステージ下手に突進していったが、サンタ海はそれにお構いなしでケーキを堪能中。
「美味しいです♪」
 それでいいんですか!?

「以上をもちまして、クリスマス衣装披露会を終了致します。面白いアトラクションから優雅なものまで、様々なサンタクロースとトナカイの催し物がありましたね。それでは、最後に出演者の皆様に登場していただきます。盛大な拍手でお迎えください!」

 シェリルの合図で、サンタクロースとトナカイに扮した出場者達がステージに終結し、観客達に手を振りながらお礼を述べた。
「皆様にとって、クリスマスが良き日でありますように。司会はシェリル・クレメンスでした。それでは、さようならー」
 シェリルも手を振り、観客達に別れを告げた。

●打ち上げ会
 出場者とシェリルを労うため、手芸部部室で打ち上げが行われた。
「皆さん、グラスを持ちましたか?」
 創璃が確認すると、全員グラスを持っていたので乾杯の音頭を取ることに。
「今日は皆さんのおかげで成功しました。成功を祝して、乾杯!」
『乾杯!』
 乾杯後は、オードブルやケーキを食べたり、飲んだり騒いだりと楽しんだ。
「あれ? 楓ちゃんがいない‥‥」
 海が相方の楓を探していると、部室の電気が急に消えた。

「はははっはははははっははははははっははあはっはっは‥‥はぁ‥‥はぁ‥‥」
【OR】怪人変装セットで変身して思いっきり高笑いして登場したのは良いが、勢い欲笑いすぎたため息がつまり、むせてしまったようだ。
 赤いマスクをつけ『怪人レッドファントム』として登場した楓は、クリスマスツリー付近から華麗に登場!
「私の名は、愛と正義とあとは‥‥ええい、省略! 幼女の使者、怪人レッドファントム! 今日はきみ達のすべてを見せてもらった! 実に! 実に良かったぞ‥‥」
 涎垂れかかり、息を荒くして興奮している模様。
「はぁはぁ‥‥はっ! べ、別に興奮してなんかして無いだからねっ! 立ち去る前に。私から良い子の皆へクリスマスプレゼントだ〜! 受け取るが良い〜!」
 ぽちっとな! とスイッチを押すと‥‥外から何か音がしたので、皆は窓の外を見た。外では、小型だが綺麗な打ち上げ花火が。
「はぁーっはっははぁぁぁっぁっぁぁ! はぁ!」
 花火の成功を見届けた怪人レッドファントムは満足して立ち去ろうとしたが、油断大敵、クリスマスツリーのコンセントでつまづいてしまった。慌てて立ち上がり脱走したものの、名前の書いてあるハンカチを落としてしまった。
「あら? ハンカチが落ちているわ。名前が書いてあるわね。滝岡さん、これ、あなたのお友達のじゃない?」
「楓ちゃんの? あ、ホントだ〜。でも、楓ちゃんいないみたいだよ〜」
 その頃、楓は慌てて元の服装に着替え、部室に紛れ込んでいた。
(「はぁ〜危なかったぁ〜! でも楽しかった♪」)

 楽しい時間はあっという間に過ぎ、お開きの時間となったので後片付けをすることに。
 女性陣は手芸部の整頓、男性陣は食堂側のゴミ捨て場にゴミを捨てに行った。
「雪、ですね‥‥」
 炎西の一言に、空を見上げる男性陣。
「どうりで冷えると思った」
 肩を竦め、ブルッと震える南斗。
「俺は雪、好きだぜ?」
「俺、流はてっきりコタツのほうが好きだと思ったけどな」
 こういう場でもボケツッコミを忘れない流と明。
「早くゴミ捨てにいこうぜ、風邪ひいちまう!」
「急ぎましょう」
 早く暖かいところに戻りたいので、ダッシュでゴミ捨て場に向かう武流と響。

「部長、雪降ってますよー」
 手芸部員の一言で雪が降っていることに気づいた女性陣達は、暖房がきいた部室でしんしんと降る雪を見ていた。
「きれ〜い♪ あ、楓ちゃん、どこに行ってたの〜?」
「ちよっ、ちょっとトイレに‥‥」
 あはは‥‥と誤魔化す楓に「コレ落ちてたよ〜」とハンカチを手渡す海。
「あ、ありがと‥‥」
(「あたしがやったこと、バレてないよね」)
 内心、焦る楓。
「ホワイトクリスマスですね。綺麗‥‥」
 シェリルの言葉に「そうですね」と相槌を打つ創璃。

 皆様のクリスマスも、良きものでありますように。メリー・クリスマス。