●リプレイ本文
●銅像なれど要人なり
ソウジ・グンベ(gz0017)が連れ出し、もとい、銅像護衛協力を頼んだのは8名の能力者。
8人が集まったところで、4人の不良が銅像にイタズラしようと企んでいることを、4人の特徴を話した。
「学園長の銅像に落書きをするだなんて‥‥なんてことを考えているのですか、その4人は! 懲らしめて差し上げなくてはいけないですね!」
晴れの入学式に行われる除幕式の邪魔をされるのもだが、記念すべき作品に悪戯しようとする不良グループに憤る大曽根櫻(
ga0005)。
「要人護衛っていうから聴講生として慌てて学園に来たのによぉ‥‥。要人って、銅像!? こんなのも俺ら傭兵の仕事か!? 護衛するほどだからすっげぇお偉いさんの銅像なんだよなぁ?」
要人、と聞きつけたので偉い人の護衛と思い大慌てで来た羽鳥・流(
ga5232)だったが、護衛対象が銅像と知り呆れた。
それに関しては、説明を誤魔化したソウジが完全に悪いので流が怒るのは無理もない。
「学校のモノにイタズラするなんて、闇の生徒会の一員として許さんっ!!」
これが参加動機の大槻 大慈(
gb2013)だったが、本音は「温泉旅行を台無しにしやがって!」である。
大慈は、同じ兵舎に所属している霧山 久留里(
gb1935)と共に銅像護衛をすることに。
「バケツは学園にあるんだろ? それに水を入れて用意しておいて、書道部から分けてもらった墨汁も一緒に混ぜておいて‥‥と。これを何に使うかのかって? ソイツは見てのお楽しみだぜ」
フッフッフ‥‥と笑いながら、墨汁水を作っている大慈。
「しかし、銅像に落書きとは‥‥。何と言うか、僕より年上の割りに子供じみた悪戯をしようとする人がいるモンなんですねぇ」
呆れますね、と肩を竦めて溜息をつく久留里。
「銅像護衛‥‥私には、理由なんていりません」
メイフィア(
gb1934)は、最初は疑わない素振りをしつつ銅像に悪戯しようとする不良達が行動に出たら、百地・悠季(
ga8270)と共に即行動開始をすることに。
各々の長所を活かし、不良捕縛といくつもりだ。
「近頃の学生の本気と実力がどの程度か、見せていただきましょう。学園長の銅像に悪戯しようと企むほどですから、本気なんでしょうがね」
不良がどこまで本気なのかを確かめたい、というのが参加動機のナッシュ(
ga9055)は、本気であろうとそうでなかろうと捕縛する気でいる。
負傷中の身でありながら参加したドライツェーン(
gb2832)は、苦しげに呟いた。
「悪い‥‥ごとは‥‥しちゃ、いげないと思う‥‥」
そんな状態でありながら、カンパネラ学園の生徒や聴講生にも色々な人がいるんだなと思っていないわけではない彼は、戦闘はかなり厳しいので積極的な戦闘は避け、説得に徹することに。
「俺はこのお方(銅像)をお守りしないといけないから、不良4人のお仕置きはキミ達に任せる!」
不良捕縛に向かった能力者達に手を振り、銅像前で待機している無責任なソウジだった。
●疾きこと風の如く
「私はチョイさんの対応をします。羽鳥さん、『瞬速縮地』でチョイさんを捕まえてくれませんか? 私もできる限り捕まえる努力はしますので」
「ああ、そのつもりだ。さて、そのチョイってのはどこに‥‥」
2人が銅像の周囲を注意して見ていると、何かが素早く動いたように見えた。
「来た!」
そう言うなり、流は『瞬速縮地』でチョイを追いかけたが、グラップラーであるチョイは『瞬天速』で逃げ出した‥‥のだが、流のほうがほんの少し早かったので捕まったしまった。
「つっかま〜えたっ♪ 逃がさねぇぜ、お仲間さん」
小さいチョイの服の襟首をつかんで、仔猫のような捕獲をする流。
何故、そのようなことを言うかと説明すると、彼は捕まえた後は説教も懲らしめもせず、自分を仲間だと思い込ませようと考えているからだ。
やっとの思いで2人を追いついた櫻は「何を考えているんですか!」と説教したが、まぁ、俺に任せなって♪ とウィンクして言う流に何か考えがあるのだろうと思い、それ以上何も言わなかった。
「なぁ、あんたにとって落書きは『芸術』なんだろ? だったらさ、こんなチンケな銅像より、もっとでかいことやればいいじゃん? たとえば、あそこにあるカンパネラ学園校舎全体にあんたお得意のアートとかさ。そっちのほうが、よりビッグになれると思わね?」
仲間意識を強調させるために用意した様々な色の油性マジックを見せ、協力者であることを強く印象づけた流の策にはまり、チョイはその通りかもと納得したようだ。
「そうだろう? もっとすげぇことして『落書きはゲージツ! 爆発!』といこうや? な? さ、学園校舎に思いっきりゲージツといこう!」
自分はすごいと勘違いしてる傾向にあるチョイに対しては、頭ごなしに叱るよりはおだてるほうがてっとり早いという流の作戦は見事に成功し、共に校舎に向かおうとしたが‥‥。
「そうはさせません!」
手にしていた竹刀で、地面を思いっきり叩きつけて2人を制止する櫻。
チョイが自分に反撃するようならある程度手加減して叩きのめすつもりでいたが、流の足にしがみついて怯えてしまっている。不良でありながら小心者であるチョイは『虎の威を借る狐』タイプとみた。
「あなたにとって『芸術』とはなんですか? 子供の落書きでは、芸術とは言えませんよ? 私は、万人に受け入れられてこそ『芸術』だと思っています。もちろん理解しがたい物もありますが、それはちゃんとした『場所』に描かれた物であり。あなたがしていることは‥‥」
櫻は巫女服の懐から筆ペンを取り出すと、流から強引に引き剥がしてロープでグルグル巻きに捕縛した後、チョイの顔に『へのへのもへじ』を描いた。
「あなたがしていることは、私は今したことと同じことなんですよ? あなたがされて嫌なことは他の人も嫌なんです!」
これで言うことを聞いてくれるだろうと思いきや、簀巻きにされているにも関わらず「落書きはゲージツだ!」と言い張るので手加減して竹刀で叩いた。
「やりすぎでない?」
「言うことを聞かない場合は、このくらいのお仕置きが必要です!」
チョイ捕縛、流のヨイショと櫻のお説教により成功!
「騙されるほうがバカなんだよ。子供のラクガキ程度じゃ立派な『ゲージツ』だなんて言えないぜ? もっと精進しな!」
●徐かなること林の如く
メイフィアは、最初は疑わない素振りをし、相手が行動に出たら自分も即、行動できるよう悠季と連携しながら各々の長所を活かし、紅一点のベニーを捕縛することに。
ベニーが囮役なのは一目瞭然。射撃の腕はかなりのものとソウジから聞いたので、是非、その挑戦を受けてみたいと思いAU−KVを装着している。
銅像の物陰に潜み、その前で待機しているソウジを狙撃しようとしているのを発見するなり、メイフィアは『竜の瞳』を発動させ脚を狙い撃ちし、その後『竜の翼』で素早く近づき、自分達のもとに連れ去った。
メイフェアがベニーを惹きつけてる隙を狙い、悠季はベニーの背後でワイズマンクロックを爆破し、接近してから『流し斬り』で張り倒した。
メイフィアが脚を狙い撃ちしたのは、脅しと脚を封じるための作戦なので怪我はかすり傷程度だったものの、自分の脚を傷つけられたベニーは激怒!
「2人がかりで卑怯じゃないか!」
「そう怒らないでください、お詫びしますから。悠季、準備はできてますか?」
救急セットを取り出してベニーの手当てをしながら、悠季の作戦準備ができているかどうか訊ねるメイフィア。
「ええ、できてるわよ」
悠季の側には、折り畳みテーブルと椅子が3つがセッティングされ、テーブルの上には紅茶セットと多種多様の洋風ケーキ類が置かれていた。
ベニーを用意した席に着かせると、お詫びにお茶をご馳走するわと紅茶をティーカップに注ぐ悠季。
「‥‥ということなの、傷つけてごめんなさいね。あたしはダークファイターで聴講生の百地・悠季よ、よろしくね。お詫びに色々ケーキ類取り揃えたから召し上がれ。あたしの奢りだから気にしないでね」
鬱憤があるのか、警戒しているベニー。
「ねえ、どうしてこんなことをしたのか理由を聞かせてくれない? あ、口元に生クリームがついているわよ?」
ベニーの口元のクリームをナプキンで丁寧に拭きなららも、悠季は会話を続けた。
「それと、あなたと一緒に行動している男子組のことを詳しく解説してくれると有り難いわね。あたしはドラグーンじゃないから、スキルとか詳しくないからね。ねえ、教えてくれない? 駄目?」
瞳を潤ませながら頼まれては断れないと、ベニーはリーダーである『ドラゴン』と自分のスキルを少しだけ話した。
「教えてくれてありがとう。そうそう、男子と一緒なのは、あの中で好きな人がいるからなのかしら? ここだけの話、内緒で教えてくれない? あたしも最近想い通じ合う人が出来てね‥‥毎日がうふふっ♪ て感じなの。だから‥‥告白できないけど、一緒にいて楽しい気持ちはわかるわよ」
何だったら応援するわよ、と茶化す悠季とメイフィア。
「あ、あたいは‥‥ドラゴンが好き、だから‥‥一緒に行動しているんだ‥‥」
そう言うと赤面し俯いてしまったベニーは硬直。動けなくなったのを見計らい、2人はロープで拘束。
「こっちが勝った結果になったからには、もう悪戯しないって誓える? せっかく自腹切ってまで奢ったんだから。ヤ・ク・ソ・クよっ♪」
「成功しましたね、悠季」
揺れる女心を巧みに利用したベニー捕縛、成功!
●侵掠すること火の如く
大慈と久留里は、銅像に向かって改造AU−KVバイクで突進してきたドラゴンの前に立ちふさがった。
「さて、捕まえるか。こいつをぶっかけてやるぜっ!」
大慈はバケツに入った墨汁水をおもいっきりドラゴンにかけた。ダメージは無いが、ノーヘルだったため目潰しとなり、バランスを崩して転倒。
「いてぇ‥‥」
起き上がったのを見計らい、『竜の瞳』で命中を高めた風天の槍柄の部分で『竜の咆哮』を使って容赦なく吹き飛ばす!
「初めまして、霧山と言います。どうやら銅像に何かをしに来たようですが‥‥残念ながら、ここを通すわけには行かないのですよ」
久留里はレイシールドを構えつつ、『竜の瞳』を発動させたファルシオンでドラゴンをペチペチと叩いたが、分が悪くなってきたので『竜の咆哮』で吹き飛ばして仕切り直そうとしたところ、大慈が巨大ハリセンを持ってドラゴンに向かって猛ダッシュ!
「この馬鹿チンが〜っ! おまえのせいで温泉に行けなくなったんだぞっ!」
八つ当たりといわんばかりに容赦なくバシバシ叩く大慈であった。
「何しやがる!」
頭にきたドラゴンは反撃しようとしたが、覚醒したことで危険で慇懃無礼な新聞記者と化した久留里の質問攻めが始まった。
「さあ、答えてもらいますよ! 一体、なぜこの銅像に悪戯と落書きをしようとしたのですか!? そして、あなたはどんな落書きをしようとしたのですか!? それによって学園をどうするご算段で!? あとリーゼントの手入れは何日おきに!?」
「どうでもいいだろう! そんなこたぁ!」
メンチ切って凄むが、久留里には効果無し。
「怒鳴らないでください! 僕達には『知る権利』と言うものがあるのです! 時間が押してるんですから、さあ! さあ!」
マイク代わりに突きつけたファルシオンにビビったドラゴンは、もう勘弁してくれ! と許しを乞うたが無駄だった。
「タバコは灰皿のあるところで吸えっ! おまえみたいなのがいるから、周りの喫煙者は肩身が狭い思いをしていることが何故わからんっ!」
大慈、きみ、未成年でしょうが。こっそり喫煙しているのかい?
その間も、久留里のマシンガン質問攻めが続いたのでドラゴンは「もうやめろー!」と叫んだ後に気絶。
「まったく、肝っ玉の小さい人ですね。これで良く不良リーダーが務まったもんですね。ちょっと取材しただけで驚いて気絶しちゃって‥‥」
覚醒を解いた久留里は、大慈と気絶したドラゴンを確保し、ロープでグルグル巻きにしてソウジに引渡した。
「ソウジ、後は任せた」
無責任な引渡しだったが、リーダー・ドラゴンの捕縛成功!
「墨汁、やめておけば良かった‥‥」
ぶちまけたのは良いが、飛沫が制服についてしまったので涙目で後悔した大慈。
●動かざること山の如し
残りは、巨漢マッチョのマウンテンのみ。
いつ出現するかわからないので、ナッシュは『探査の眼』を使用し、感知次第、ドライツェーンと行動をすることに。
「物を壊しても‥‥いいことなんか、ひどつも、ない‥‥。楽しいのは、その時だげだがら‥‥」
「負傷しているんですから、無理に話さないほうがいいですよ」
「‥‥わがった」
「マウンテンは防御力や攻撃力、背丈に自信があるようなのでその自信がどれ程のものか、確かめさせていただきましょうか」
ナッシュがマウンテンの実力を見たいと言った頃、グッドタイミング! と言わんばかりに本人登場。『自身障壁』を使用し攻撃にそなえたナッシュは、攻撃されるのを覚悟で説得開始。
「生半可な本気で俺達を突破しようと考えているのでしたら、俺はあなたに本気を見せなければなりません。この場合の本気とは何か考えてみれは? 大人しく投降しなければ、命はないと思ってください」
ナッシュは常に本気だ。死ぬ覚悟もできているので突破されることも辞さない。
「俺は、あなたが本気なほど容赦しません。まあ、せめてもの慈悲に急所だけは外してさしあげますが。投降するというのなら攻撃はしません。どうしますか?」
筋肉バカ、破壊魔のマウンテンはナッシュを無視し、銅像めがけてドスンドスンと突進したが、銅像の前には覚醒したドライツェーンが仁王立ちしていた。
「銅像‥‥ごわざぜない‥‥!」
怒りのこもった視線で接近するマウンテンを『獣突』で一気に突き飛ばした。
負傷しているものの、体が大きく身長もあるドラウツェーンにはさすがのマウンテンも敵わなかった。
倒れこんだマウンテンは、残りの仲間全員でロープで捕縛。何重にもしないと怪力で切られそうなので、慎重に縛り上げた。
●不良達の処分はいかに?
「俺は、あなた達のような人間は嫌いでしてね。どんな環境で育っていたにしろ、微笑みかけるなんて甘いこともしませんよ。今の世界の厳しさは、この程度ではすまないことを覚えておくように」
冷たくそう言い放つナッシュは、ソウジに後の処分を任せると言って去った。
不良達の処分だが、ドラゴン、ベニーは停学処分。チョイ、マウンテンに関しては1ヶ月間学園立ち入り禁止処分を言い渡された。
翌日、学園長銅像の除幕式が無事執り行われた。
銅像を見た能力者達は「この人!?」と驚いたが、流のみ「誰?」という反応を示した。
銅像護衛:成功!