●リプレイ本文
●山へ!
「そんな、国産松茸の産地がキメラにおさえられるなんて。国産松茸なんて食べたこともないけど、きっとすごい物に違いない。すごい物をキメラになんて荒らさせるわけにいかないね!」
山崎・恵太郎(
gb1902)が気合いを入れて、バハムートを装着し、山登りの準備をする。
旅館の宴会場に大きな地図を広げ、出没場所を、依頼主の相川メグに色々尋ねて、メモをとるのはルノア・アラバスター(
gb5133)と上月 白亜(
gb8300)とリティシア(
gb8630)である。
「山、を傷つけない、ように、するの、むずかしいですね」
「だよね、お猿さんもいるから、各自持ち物はしっかり持っておこうね」
「私と、白亜さんがその辺注意をしようか」
「はい、よろしく、おねがいします」
ポイントを、携帯できる大きさの地図に書き入れていくが、
「私も、この山は余り入ったことがないのであやふやなんです」
そう、彼女は相続して間もないために、全体を見ているわけではないのだ。なので、猟友会の人や、UPC調査団の情報を纏めるぐらいしかできないのである。
ただ、途中まで山道があるだけで、戦闘区域になりそうな部分は、すでに獣道だけになっているそうだ。余り人の手を入れてしてしまうと、松茸は育たないとも言われている。松茸はデリケートなキノコなのだ。
「お鍋が、まってます」
ルノアが、お仕事の後の事を思うと、心なしか浮き浮きしていそうだ。
「我が輩は、松茸は苦手だけどね〜。でも、キメラの肉がなければ鹿鍋は食べてみたいね〜」
ドクター・ウェスト(
ga0241)も山の装備を調えて、言う。
「もっともサンプルは多いに越したことはないね〜」
研究者然として、相手のキメラを狙うつもりだ。
「お猿の警戒は、私とリティシアさんでよろしいでしょうか?」
「おまかせー!」
白亜とリティシアが、猿の悪戯を警戒して警告するという担当で、ドラグーン2名が壁になり、鹿の群を抑えているところを、遊撃のルノア、獅子河馬(
gb5095)が仕留める形である。ドクターは強化と時には近接戦に入ることにし、白亜は治癒専門だ。
登山にふさわしい装備なのか不安はある物の、
「枝で服が破けなければいいのですけど」
鹿鍋と松茸のために、一行は山を登るのであった。
●鬱蒼と生い茂る
確かに途中までは山道があって歩きやすかったが、鹿がでる区域は手入れがされて折らず道が途切れた。山を管理するには今の時勢大変なのだ。
借りた鉈で、茂みなどを切って進むと、鹿が踏み荒らした後を見つける。
ルノアが、足跡を見て覚醒すると、小さな体が徐々に背の高くなって、大人びた姿になった。
「近いですね。鹿の群は。見てください。糞もあります」
辺りを見ると、松の森は急勾配になっており、走ると必ずこけるだろう。通常に移動すると、足下をすくわれかねない、枯れ草や雑草の枯れ草、露で滑りやすいと思われる。
「気をつけてね」
白亜が注意を促す。
よく、山に向かっていた、能力者は山についての危険性はある程度経験で知っている。木を支えにしたり、ロープで結んで降りたりと、ゆっくり、進む。
山の中ではバイク形態は無謀なので、すでにAU−KV装備はしている。エミタの同調でそれほど動きは阻害されないが、狭い場所は少し面倒だ。
「服が破れないのは良いけれど。動きにくいよ〜」
リティシアが、愚痴る。
白亜とリティシアが、何か上を通り過ぎる気配を知る。
「‥‥お猿さん発見‥‥ちゅう‥‥きゃあ!」
どこからともなく、松鞠を投げつけられた。その拍子で、彼女はごろごろ勾配を転がり居落ちる。
「リティシア君!」
ドクターが叫ぶと、後ろから猿がおちてきて、彼の眼鏡を奪っていった!
「わあ! 我が輩の眼鏡が! か、かえせ!」
猿を追いかけるドクターに
「うわ、皆落ち着いて! って‥‥きゃあ!」
ルノアにもお猿さんがくっついて、スカートの中に入ってくる小猿。
「‥‥この、いい加減にするのですよ。猿如きが私の物を取れると思ったら大間違いなのです」
白亜が覚醒し、ルノアにへばりつく小猿を追い返す。
転がり落ちたリティシアは、猿に怒って追い返し始めるが、また近寄っては松毬を投げつけられる。端から見て、じゃれている(弄られている?)風景に見えた。AU−KVがなければ大怪我だったが。
「きい! お猿さんもう!」
「我が輩の眼鏡を返せー!」
ドクターは、何とかこけずに猿を追う。猿は眼鏡を加え低木に登ろうとするところ、ルノアがねらいを定めて松毬を投げて眼鏡を落とした。お猿さんはそのまま逃げていった。
さすがレベル32伊達眼鏡。それぐらいで壊れない。
「さすが野生の猿‥‥。侮れません。しかし、恥ずかしいです」
真っ赤になって俯くルノアであった。
10分ぐらいは白亜が警戒はして猿と格闘し、恵太郎もフォローに回る。6人総出で、猿と格闘するハメになったわけだが、猿はいきなり警戒の悲鳴を上げると一目散に逃げていった。
ドクターはそれで気が付く。
「キメラが近いな‥‥」
彼は、眼鏡をかけ直し、最後の良心の十字架を外した。すると、狂気に満ちた目をその先に向けるのであった。
●悪い足場、狭い間隔
10頭の牡鹿に混じって2頭、無駄に筋肉隆々な鹿が睨んでいた。その鹿の目は、夜でもないのに白く光っている。確かにこれはどう見てもキメラだ。
「あまり、鹿も山を傷つけずに‥‥難しいね」
ドラグーンの恵太郎とリティシアがドクターと白亜の前に立ち、やや構えやすい地面にどんと構えた。 タイミングを見計らって、ルノアと河馬が遊撃散開する準備をする。
鹿キメラがいななく。すると、一気に洗脳されている雄鹿が突進してきた!
恵太郎もリティシアは、竜の鱗を発動。淡い光を帯びて、鹿の群を防ぐ。しかし多勢に無勢で、押されていく。
「いたい、いた、いたい!」
「おとなしくしてくれ!」
2人は耐える中、ドクターから強化済みの武器を持ったルノアと河馬が散開。2頭に向けてSMG「スコール」で撃つが、鹿キメラは大きな角を分回して弾く。その影響が周りに銃弾が飛び散って、木に当たる。
「しまったっ!」
「ならこれでどうですっ!」
ルノアの超機械「ブラックホール」を使っての電磁波攻撃。コレはかわすことが出来ず、直撃し、悲鳴を上げた。
「近接武器か、超機械での攻撃が良いかもしれませんね」
「そのようだな!」
河馬はイアリスを持って流し斬りで鹿の突進をかわし、首を切り裂いた。
そして、2頭の鹿を沈黙させる。
ずっと壁を作っていたドラグーンに押し寄せる鹿は我に返ったようで、驚いて逃げたり、餌をねだり始めたり、様々な動物らしい仕草をするが、角で怖い。
「いや、ごめん、餌もってないの」
リティシアがそう言うと、通じたのかどうか分からないが、ションボリして帰っていく。
「さて、我が輩のやるべき事を今のうちに」
鹿キメラの肉体の一部を採取し、化学用の容器に保存する。その間の能力者は、辺りを警戒する。
「いないかな?」
「いや、この騒ぎを聞きつけて、来るはずだ。待ち伏せておこうか?」
相談していく。その結果、余り先を進むと遭難する畏れもあるため、おびき寄せて、叩く方向にした。あらかじめ、ロープなどでルートの目印は付けているが山の危険は油断できない。あと7頭を始末する為に、慎重に動く。足場を確保し、そこまで引っ張ってくるのだ。
ルノアが偵察して、辺りに数頭いることを確認すると、作戦通りに、各個撃破を目指す。しかし、キメラを囲む洗脳鹿の数は多くなっており、ドラグーンの壁も破られる。
「うわあ、これはむりー!」
「ぎゃああ!」
ドラグーンの盾が鹿に蹂躙され、リティシアに恵太郎はそのまま傾斜を転がっていく。しかし、木に捕まって最悪の事態は免れている。体勢を整えるのには少し時間はかかりそうだ。
「こんな事もあろうかとっ!」
ドクターは超機械「白鴉」を掲げ、電磁波を洗脳鹿の群の一歩手前に着弾させる。その電磁波の轟音が洗脳された鹿はそれに怯むと、ドクターは一気に隙を付いて走っていく。白亜も、横に飛び退いて難を逃れ、リティシア達に練成治癒を施していく。
ドクターは機械剣αに練成強化を施して、目の前で河馬と戦っている鹿キメラを切り裂いた。同時に河馬のイアリスも鹿キメラの額に突き刺す。おぞましい悲鳴とともにキメラは倒れる。
「我が剣術に死角はなし。魔剣聖に刃向かうとは愚か!」
と、ドクターは格好をつけてみた。
ちょうどルノアと立ち直った恵太郎が別のキメラを倒している。
恵太郎もリティシアも、徐々に接近戦に持ち込んで、木を傷つけずに慎重に残りのキメラを倒していくのであった。
その結果、予想よりは被害は少ない程度で、松の被害は抑えられた。まずまずの成果であろう。
●鍋!
「後は鍋だね!」
恵太郎と河馬、リティシアが、山にあったゴミを拾ってゴミ袋いっぱいにして戻ってくる。
白亜が治療し、旅館の湯に浸かってからの一服で、あとは、宴会が待っているだけだ。
「たのしみ、です」
おとなしい少女に戻ったルノアは、浴衣姿で正座してわくわく待っている。未成年が多いので今回はジュースや、ドロームコーラとかソフトドリンクである。最年長のドクター自身、酒にめっぽう弱いからもあるが。
旅館の板前さんが、猟友会が獲ってきた鹿を受け取り、捌いて、野菜と盛りつける。そして、仲居さんが、鹿鍋を作ってくれる。良い感じに出汁や野菜で鹿の臭みが消えて、煮立ったときの鍋の姿は、涎が出そうなおいしさを見せていた。
「わおお!」
「これは、はやく‥‥でも、まだ、がまん、です」
「そうだ、まだ乾杯もしてない」
「しょ、諸君待ってくれ、あまりの湯気で、我が輩の眼鏡が曇ってしまった。まさか、我が輩の眼鏡は鹿の旨さには負けるのかね〜っ!?」
ドクターが眼鏡をとって拭く。
「皆さん、本当ありがとうございました。これで、山の管理が出来ます」
と、依頼人のメグが、三つ指突いて頭を下げた。
「いやいや、能力者として当然ですよ」
恵太郎と河馬が、ニッコリ微笑むと、メグはまた頭を下げた。
「では、ごゆっくりお楽しみください」
「はーい!」
「では、かんぱーい!」
と、ジュースで乾杯し、松茸尽くしのフルコースと鹿鍋を堪能した。
「さすがに、我が輩はこの香りは苦手だね‥‥」
味覚が違うために、ドクターには松茸は好きになれなかったらしい。しかし、残すのは忍びないので、ほしそうなルノア達にあげるのであった。
国産うめー! とか叫ぶ男達もいる。
こうして彼らは休息を得て、戦いの疲れを癒したのであった。