●リプレイ本文
●急を要する(ロス20:00)
夜。小さな明かりで、待つジェームス・ブレスト(gz0047)。
「応援に来た、ジェームス」
「おう、白鐘か。今回も頼むぞ」
白鐘剣一郎(
ga0184)をはじめとした、傭兵の応援達がジェームスに声をかけた。
「初対面もいるが、時間が1時間弱、挨拶は後だ。端的に作戦で言うと、お前らの作戦を実行する。つまり、瓦礫の道を進む5名、迂回路でバイクを走る2名。工事中の交渉とそこでの足止めが1名だな?」
「そうですね。ジェームスさんも付いてきてくれますよね? 瓦礫の方面に」
「もちろんだ」
須磨井 礼二(
gb2034)の言葉に、当然のようにジェームスが答えた。
インデーズに乗り込むジェームスに続いて、各種車両ジーザリオやバイクで向かう傭兵達が各方面に向かっていった。
●工事中
鳳 湊(
ga0109)が工事中の看板と、警備員を発見すると、車を止めて、
「UPCです。緊急事態発生のために通してください」
「どういう事だ?」
「この近辺にキメラが出没してその退治に向かっています。先回りして叩くので」
「‥‥おっと、大きな声で叫びそうだった‥‥そう言うことならしかたないな。いいぞ。こっちでも避難するが、道がほとんど無いから気をつけろ」
「ありがとうございます。感謝します」
バリケードを取り除いている最中に、一人の作業員と警備員が話しかけていた。
「おっと、まってくれ。壊れはしないだろうな?」
何か言い争っているらしいが、作業員が渋々、何かを渡した。
「ああ、すまない、やっと出来た部分が壊れないか作業員が心配してな。そうそう、これが予定開通通路の地図だ、その地図は古くてね」
「ありがとうございます」
バリケードが取り除かれた後、湊はジーザリオを走らせるのであった。
しばらく、舗装された道が続くが、徐々に未舗装の砂利道になる。もし、高級車だったら、タイヤをとられていただろう‥‥。
「戦闘の音も聞こえないですね。‥‥こちら湊、こっちに敵は来ていません」
視界には、瓦礫の道が見える。しかし、蜘蛛型ロボの影を発見するには至っていない。
彼女はそのまま道無き道を走り続けた。
●渋滞をかいくぐる
「覚醒はしなくても良いとしても、これはきっついなぁ!」
鹿島 綾(
gb4549)がバイクで渋滞の車間をかいくぐっていく、楓姫(
gb0349)もそれに併せて、縫うように走っている。夜のために、そんなにスピードは出せないが、早くたどり着かないといけない。
再建のためにひっきりなしに車が行き交うため、自然と渋滞になる。今回のように瓦礫に埋もれて使い物にならないところもあるためだ。交通整理の警察もイライラしている。
それを、横目にみながら、綾と楓姫は渋滞を縫って進むのだが‥‥、
「うおお!」
「‥‥っ!?」
いきなりの車が迫ってくる! 何とか接触を避け、2人は運転手に怒鳴り声を背中に走っていった。普通ならここで思いっきりとばされていただろう。それだけ急がないといけないのだ。
「間に合ってくれよっ!」
「間に合わせましょう‥‥」
ハンドルを握る手に汗が滲むのを感じる。しかし、先は闇。不安を振り払うように走った。
●瓦礫の道
「うへぇ。これはひでぇ‥‥っと」
ビル1階分のコンクリートの破片が道の2/3を遮断している。車1台通ることはできるが、かなりスピードは落とさなければならない。しかし、ジェームスは愛車インデーズであいている空間を通り抜けていく。
ドラグーンの礼二が先行して、敵がいないかを見る。
「あ、あんな所に」
瓦礫にそってある、半壊全壊している建物の影から、足が見えているのだ。隠れて移動していることがわかった。夜と言うこともあり、運良く見つけたとも言える。ただ、耳を澄ませば、いびつな機械音が聞こえているのだ。それが幸いして、見つけることが出来たとも言う。
「これでは、ねらい打ちも出来そうにないですね。もう少し良い位置に向かいたいです」
赤宮 リア(
ga9958)はアルファルを持ちながら、悔しそうに言った。
「あいつらは気が付いてないのか?」
アンジェリナ(
ga6940)が不思議そうに双眼鏡から見ている。
「それならこっちが好都合だ」
剣一郎はアンジェリナに答えた。
一方、荒れた路面で必死に運転している流 星刃(
gb7704)は、
「うおおお!」
「大丈夫、避けるで!」
瓦礫の悪路を必死に運転する星刃であった。
しかし、途中、道に真ん中に大きな瓦礫があり、後わずかで衝突しかける。夜の状態のために、視界が悪いのだ。ドラグーンは登ってもいけるが、車では難しい。
「うおお。なんてこった!」
ジェームスが瓦礫に拳をたたきつける。何か大きな破砕道具でもあれば、一発な大きさである。ハンマーやそう言った物だ。
「ふふふ」
リアが、ニッコリ微笑んで、無骨なパイルバンカーを持っていた。
「こんな時のために、犀牙を用意してました♪」
リアがニッコリ微笑む。パイルバンカーの大きさから細身のリアが持つと、異様である。
「急いでくれ頼む」
アンジェリナが運転席でリアに頼んだ。
「まかせてください♪ ジェームスさん離れてくださいね♪」
彼女は一気に犀牙を発動して、見事に轟音とともに瓦礫を粉砕するも、リアが反動で吹っ飛んだ。
「きゃああ!」
運良くジェームスが居たので、彼が受け止める。
「たすかったぜ、リア」
「あ、ありがとうございます‥‥。私には会わない武器でした」
「いそいで!」
インデーズは乗り捨て、アンジェリナのジーザリオに乗るジェームスと、流のジーザリオに乗り直すリアを確認してから、再出発した。
皆の推測は的中し、一段と大きな瓦礫のところまでいくと、先ほどの蜘蛛の群が向かう予定ルートに先にたどり着いた。瓦礫と言うよりビルが横倒しになっており、死角も多く、ああいったロボが物を運ぶという事では良いルートとも言える。
迂回路の交差とちょうどであるようだ。しかし、工事中の道路の交差は工事の変更により、ずれてしまっている。
「よし、車をおいて、隠れて待ち伏せるぞ」
瓦礫班の各人が配置に付いた。時間は十分にある。
●アンブッシュ(20:15)
それから2分後、偵察に辺りをキョロキョロしている数機の蜘蛛型ロボが姿を現した。
まず、護衛機と運搬機を引き離すことが肝心だ。しかし夜のために、判別が難しい。
徐々に近づく蜘蛛の集団‥‥。中央に月の光で黒光りする物がみえた。あれがステアーの破片だと分かる。
8機で持ち上げて移動しているのを、囲んで、前に4機、後ろに4機と護衛がいるようだ。
襲撃ポイントにロボがたどり着く。
「いくぞ!」
ジェームスが叫んだ。
一気にジェームスと剣一郎とアンジェリナが走り出した。
別方向から礼二と星刃も接近し、リアが兵破の矢で、一体を狙い撃った。FFの反応があったがそのまま矢は貫通し、蜘蛛型ロボが軋むような悲鳴を上げる。
星刃がそこを急所突きで破壊し、一体を無力化した。
剣一郎とアンジェリナ、ジェームスの3人は、蜘蛛型ロボの足を狙って、移動を妨げる戦法である。
「はああ! 斬鋼閃っ!」
「‥‥ふんっ!」
しかしさすがに8本もあると半分を斬るには骨が折れる。剣一郎とジェームスは一撃に体重を乗せる一撃で的の足を折り、アンジェリナは急所を突きながら、手数の多い斬撃である。的の蜘蛛型ロボは異様な装置を出して、電撃を三人に浴びせたり、ガトリングをぶっ放したり反撃にでた。回避するために、距離をとるしかなかった。
「数が数で、大変だっ!」
「そこを、根性で! うおっ!」
「ジェームス!」
剣一郎はさけんだ。銃弾がジェームスの脳天に直撃したとおもったが、彼は、大剣で見事に受けきっていた。
「不可能を可能にするんだぜ! さあてこっちの反撃だ!」
「ああ!」
「‥‥わかったっ!」
不敵に笑うジェームスはまた蜘蛛退治を開始し、剣一郎もアンジェリナも同時に動く。
前方で詰まったために、運搬のロボは、迂回し始める。横からの銃声。そこで足が1本急に無くなったため、バランスを少し崩した。
「ふう! 間に合ったな! 配達ご苦労さん! しかしそこまでだ!」
「ここで逃がすわけには、いかない!」
綾がバイクを止めて、真デヴァステイターの両断剣を乗せた全弾射撃。楓姫も同じように狙撃眼をのせた狙撃銃「狩姫」で、足を打ち抜いたのだ。
他の方向に向かおうとする蜘蛛が居るのだが、音速を超えた銃撃音で、不意を打たれ、星刃、リア、礼二の挟撃で、行動不能になる。
そう、見晴らしの良い工事中の道路から、狙撃眼と鋭覚狙撃をつかった、湊のライフルが、見事な牽制をしているのだ。夜でも、戦場では光があること、目標が大きいことが、スナイパーである彼女にとって格好の的となるのだ。悪を撃つ銃弾から逃れることは出来ないだろう。
足を無くし、バランスを崩した蜘蛛型は、必死に抵抗を試みるが、近接で動く天馬の隊長と剣の道を行く女性剣士の斬撃に沈黙し爆発する。
「こっちも負けていられない!」
「そうだね!」
礼二と星刃も中央部分にエネルギーガンや急所突きの一撃を与え、リアが上からの強弾撃の三連で無力化していく。
回収蜘蛛には、護衛に付いているような武装が少なく、足による攻撃しかできなかったため、楓姫が血桜で斬り、綾が援護で銃撃のコンビネーションで3体破壊したときから、ステアーの破片を棄てるしかなく、攻撃に転じる。しかし、連携のとれた傭兵達の前に、運搬型はタダのでかいくず鉄になるだけだった。
●甲虫の印象(20:45)
黒光りするステアーの破片。装甲部分の一つらしい。元から生物的なものが多く使われている印象が強いので、あながち間違いではなかった。
怪我を少し治し、UPC回収班が来るまで、追撃が来ないか周辺を調べる一行だが、無事、回収することに成功したのであった。
トラックなどがやってきて回収作業が行われている中、包帯を巻いているジェームスが傭兵一行に話しかけた。
「では、改めて聞こうかな? 自己紹介、俺は大尉のジェームス・ブレストだ」
初対面の人から順に挨拶する。そして握手をしていった。
「はじめまして」
「おう、今回は助かったぜ。お前達のお陰で、回収できてミッションもクリアだ。夜の中ごくろうだったぜ」
「そう言ってもらえると嬉しいです」
礼二は、笑顔で答えた。
「しかし、今回は厄介だったな」
同じように包帯を巻いている剣一郎は、ジェームスと一緒にコーヒーを飲んで、談笑する方向になり、元から明るい性格の星刃や礼二も加わっていた。
応急手当をしているなか、トラックに運ばれるステアーのパーツを見送るリアが、
「これが何かの役に立てば良いのですが‥‥」
不安と期待を混ぜたつぶやきをついた。
しかし、アンジェリナは、
「‥‥あとは研究所へ託そう。私たちの役目はここまでだ。これ以上は傭兵の出る幕では無い」
そのつぶやきに答えた。
「あとは親父の仕事だな! 間違ってくず鉄にしなきゃ良いけどな。お前らもこっちでコーヒー飲みな!」
「‥‥戴こう」
「あ、はい、頂きます!」
ジェームスが笑いながら2人を呼んだので、2人はそちらに戻ったのだった。