タイトル:食材:ビーフマスター:タカキ

シナリオ形態: ショート
難易度: やや易
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2007/12/23 08:27

●オープニング本文


 日本で、良い感じの牛肉を作る場所は結構あるが希少だ。徹底した管理やたどり着いた技術によって日本人好みの肉が出来る。狭い土地環境さえも克服し、上等な食肉牛を作るというのはなかなか出来る物ではない。

 そんな、ある日の酪農の草原。

 一際大きい、牛が寝そべっていた。7メートルかそこらの。

「き、キメラだ!」
「うちの牛がさらわれてキメラになった!」
 酪農の人は驚いた。
 一夜のうちにここまでやったバグアを憎むべきなのだが、耳に付けている札を見ると、今季の商品価値のあった1頭だったのだ。
「でかくなって大味になってないか?」
「たしか、北米では‥‥鶏が食えたようだよな?」
「ためすか?」
 農協の方々会議中。
「このまま放置して、あの牛キメラが暴れ出すのはダメだ。UPCに依頼しよう」
 一般時には越えられない壁がある。
 まだまったり眠っている牛キメラを退治してもらおうと思うのだ。このでかい怪物を。

 情報を得た日本人達は、
「おでんダネには良い食材になるな」
「霜降りがきになるよなぁ。どう、なんだろ」
 かなり適当な会話で盛り上がる。
 能力者には依頼がくるのだが。
「牛を倒して牛を食べよう。料理アイデア募集。」
 と、なっていた。
 筋張ってしまった、高級牛キメラ肉。おそらく、あの憧れの「あの肉」も出来るのではないか?

「メイドさんはいないだろうな。日本だし」
「いや、今ではあってしかるべきだろ?」
「ないない」
 あさっての会話をする奴らもいた。
 しかし、予想をあさってに方向に‥‥
『メイドさんする人も募集。バイト代あり』
「あほだ」
「あほだな」
 おまえら‥‥。

●参加者一覧

アルフレッド・ランド(ga0082
20歳・♂・FT
ラン 桐生(ga0382
25歳・♀・SN
ヴァルター・ネヴァン(ga2634
20歳・♂・FT
潮彩 ろまん(ga3425
14歳・♀・GP
軽井 羽澄美(ga4848
16歳・♀・GP
サクヤ(ga5064
12歳・♀・SN
シリウス・ガーランド(ga5113
24歳・♂・HD
槇島 レイナ(ga5162
20歳・♀・PN

●リプレイ本文

●できるのか?
 会議室。
「牛は肉の王様です」
 ラン 桐生(ga0382)が拳を握りしめて言った。
 その通りである。牛は何となく高級感溢れる食材だ。
 味、ジューシーさ、柔らかさなどを考えると、涎が止まらないだろう。ああ、そうに、違いない。
「でも、一寸可哀想なので安楽死作戦がいいのですけど」
 軽井 羽澄美(ga4848)が手を挙げて言う。
「どういう風に?」
 アルフレッド・ランド(ga0082)が尋ねる。
「テントを張って、練炭で窒息死を‥‥」
「あー」
 ランが非常に疑わしい目で見ていた。
「できるかな?」
「やってみないことには、分からないよな。途中で起きるかもしれないし」
 ヴァルター・ネヴァン(ga2634)が肩をすくめた。
 シリウス・ガーランド(ga5113)も困った顔をしている。
「もしだめだったら、皆でフルボッコだ!」
 潮彩 ろまん(ga3425)が元気な声で言う。
「たぶん、ろまんの言うとおりになりそうだけどねぇ」
 ランはため息を吐いた。
(「だって、これで始末できたら、能力者要らないよ?」)
「まず、料理すると言うことでは、優先事項として、あの肉だ!」
 そう、あれだけの巨体、出来る可能性がある!
 時代によっては、名前が変わっているようだが、かなり昔の漫画などで表現されてきたため、こう言われている。

 『まんが肉』

 これこそ食いしん坊や子供の頃の夢が叶うのだ。それはとてもおいしい話なのだ。まるまる再現は難しいとしても限りなく近い物は出来るだろう。

「ところで‥‥」
 槇島 レイナ(ga5162)が、女性陣に尋ねた。
「メイドする人はいるかしら?」
 と。
 自然に手を挙げたのは、彼女本人と、軽井だった。
「お肉も食べられて、メイドすることで特別ボーナス。これはやるしかないでしょ!」
 ノリノリな2人であった。
「あ、わたしはお金がないからですけどね」
 軽井は恥ずかしそうに答えた。
 大きなテントと七輪などを持ち込み、依頼主の場所へ高速艇で飛んでいった。
「ボクのご飯、待ってねー♪ 美味しく戴くから〜♪」
 潮彩は鼻歌まじりで、窓から景色を眺めていた。


●草原にある記念碑の如く
 牧草地。それは草原である。北海道よりかはそれほど広くはない。しかし、牛が放し飼いにされているというならば、言葉は間違ってはないだろう。
「あ、あれかー」
 桐生は双眼鏡で、視認する。
 記念碑のようにその巨体はあった。
「象の剖検はどうしているのか気にはなっておざりましたが、これは血抜きなど色々苦労しますなあ」
 ヴァルターは感心する。
 今のところその場で眠っているだけなので実害はないが、いつ動き出すか分からないので、早急に片を付けなければならないだろう。
「さて、前もって決めたフォーメーションで‥‥良いか?」
 シリウスが全員に確認をとる。
 テントを張るために必ず5m以内は牛キメラの近くに近づかなければならない。テント設置を手伝うのがアルフレッド、軽井とヴァルターで、その間に練炭を熱しておく。遠くでフォローするのは、ラン、潮彩、シリウスは遠くで待機している。まず、軽井が羽で眠っている牛キメラの鼻をくすぐってみた。
「むううう」
「ひゃう!」
 軽井は驚いて飛び退くが‥‥、
 牛キメラは横に寝返りを打ってから、再び体勢を整えいびきをかき始めた。足は腹の下に折り曲げて眠っている。
「凄い眠ってるなぁ」
「だ、大丈夫のようです」
 OKサインが出た。
 ちなみに、クレーン車などで殴りつけても、フォースフィールドで昏倒までいくダメージは期待できないと、聞かされているし、逆にクレーンが壊れでもしたら、依頼料がパーになるので却下されている。
 そして、テントを組み立てている時だった。流石に、静かに組み立てることは出来ない。規模がでかい。牛キメラの大きさは7m。車1台以上である。それを密閉レベルで囲むとなるには音が必ずするものだ。
「もう?」
 牛キメラが起きる。
「あ、起きた!」
 軽井と牛キメラの目が合う。
「‥‥もう、だめ」
 軽井涙目。
「もおおおおおおおおお!」
「きゃあああああああああ!」
 完全に目を覚ました牛キメラが信じられない素早さで立ち上がり、蹄で地を蹴っている!
 これは軽井にむかって突撃する。危険だ!
「だから! ムリだって!」
 ランがすぐに銃を構え2発全射撃!
 一発は狙い通り足を打ったが、もう1発はあさっての方向に飛んでいく!
「焦りすぎた!」
「まかせて!」
 髪の毛がリボンで結ばれた潮彩が駆け、一瞬にして、軽井と牛キメラの間に入る!
「ボクのご飯!」
 叫んで剣をもって急所を突く!
 一寸肉が焼けた匂いがする。
「戦いながら調理するんか!」
 誰か分からないが突っ込みが入った。
「あああ! ごめーん!」
 急所突きで狙った箇所は脳天なので、今のところ問題ないが。あやうく、部位を台無しにするところであった。
 ヴァルターが駆け寄って、すぐに牛キメラの後ろに回り込み、別の足を切る。牛キメラはそれで蹌踉めいた。空かさず、槇島が槍で足を狙う。ここで、牛キメラは膝を地に着いてしまう。
 最後に、アルフレッドの強力な斧の一撃が、牛キメラの脳天を打ち砕いた。
 ものの10秒。
 潮彩の言ったとおりフルボッコだった。
 ああ、牛キメラがのんびりしていて良かった。本当に。
 しりもちをついている軽井は、我に返って、牛キメラの死体に手を合わせ拝んでいた。
「美味しく食べますから、成仏してください」


●下ごしらえと、熟成まで時間がかかる←暇
 まずは解体。普通の刃物で、皮を剥いでから肉を捌く。これは農家の人のレクチャーなどで簡単に進んだ。
「お疲れでしょう。しばらくこの牛キメラを寝かせてから調理、お食事と言うことで」
「異論はないでおざりますよ」
 と、後は自由時間。

 農家にある厨房では‥‥槇島が胸を強調したメイド服で‥‥、ご飯を炊いていた。
「えーっと、それ何合?」
 潮彩がその大きさに目を丸くしている。
「たぶん合じゃなく、1升」
「‥‥1人で? そうなんだ。よく食べられるね」
「大きくなるわよ? 胸が」
 前に、とんでもないミスをしていたランは‥‥その言葉に何かを感じたようだが、
(「それは、何かが違う!」)
 思いとどまった。
(「しかし、レイナも羽澄美もその辺、育ちすぎだよねぇ」)
 一寸、自分の体のコンプレックスでいじけてみたラン桐生であった。
 軽井もメイド服に着替えて、農家の家の手伝いをやっている。
 他の人は武器の手入れ、田舎の空気を満喫したり下準備したり、そろそろであろう、晩餐に心躍るのであった。
「さて、晩餐だ!」
「お帰りなさいませ、ご主人様♪」
 メイド2名が他の自由時間を過ごした5人を迎え入れた。


●あこがれのまんが肉
「まんが肉を作る」
「もう、霜降り肉の縦だか横だか分かんないステーキ! だめ?」
「すき焼きもいいですねぇ。後牛丼」
「ステーキはまず、叩いて、筋を切った『シャンピリアン・ステーキ』がいいよ」
「じっくり肉汁をかけて焼いた、ローストビーフはいかがでおざりましょうか?」
「タンは無事だったな。塩タンにするか」
「わーい」
 大喰らいが居るから、食い尽くしてくれるだろう。
 ちなみに、日本法律上で食べては行けない部位は農家の人が処分する。
 下ごしらえして、出来た『シャンピリアン・ステーキ』と、もつ鍋、牛丼、ローストビーフ、そしてカレー、バーベキューともう豪華。流石に生で食すには筋がきつかったのでタタキなどは断念。
「みよ! 暗黒ステーキ!」
 ランが焼いたステーキは‥‥黒こげだった。
「きみだけだよ? それ‥‥ちゃんと食べてね?」
「うわあああああ!」
 ラン絶叫。
 アルフレッドは元から料理趣味。シリウスは、サバイバル料理が得意であり、軽井はカレーしか作れないがなかなか美味しそうなカレーを作っている。良い香りがしていた。
「食べられるかな?」
 軽井はその料理の種類、単品の量に、驚いていた。
「なに、農家の家族の分と我らの分しか作ってないし、後は薫製にして農家の人に分けたら済む」
 シリウスが言う。
「ラスト・ホープに卸さないことを願うだけだよねー」
 潮彩がトンデモナイことを言うが、まずそれはしないだろう。1頭しかいないのだし。
 そして、牛肉づくしパーティが始まるのであった。

 大喰らいの槇島開口一番、皆に突っ込まれる前に、また言った。
「食べると胸が大きくなる」
 と。
 そんな彼女は、丼3杯を軽く平らげた。並べられた肉料理で。
 比率的には、『肉を食う』レベルであった。僅差であるが‥‥。
「日本人は米だから」
 と、いう意見が強いのである。
 実際、そのへん関係なしに皆は食べる。ランだけは、暗黒ステーキを何とか食べて、他の人が作った料理に手を出していた。
「うう、上手くなるべき?」
「それは焦ってなれるもんじゃないさ」
 慰めは必要かもしれない。
 一方、
「これが、あの憧れの!」
 潮彩が目をきらきらさせて、超巨大霜降りダイスステーキを頬張っていた。ソースが口に付いているが、目が夢見る乙女である。軽井は、塩をかけすぎて、しょっぱいと泣いていた。涙の味かもしれない。
 どんどんはしゃぎ始める。料理談義やら、今まであったことを話すとか、そう言う和やかなムードの中‥‥。
 シャッターを切る音。
 ランが、メイド姿2人の写真を撮っているだ。
「いいね! いいね!」
「こんなすがたはどお?」
 ノリノリなのは槇島。恥ずかしがっているのは、軽井。
「おお、それは大胆だ! OKOK!」
「そ、そんな‥‥あたし、恥ずかしいです!」
「それ萌えだね!」
 親指たてるラン。
 あさっての方向で楽しんでいる人がいた。それもまた良しとして。


●終わりに
 勢い余って、今回の牛キメラをほとんど食い尽くしたような、そんな感じだった。
 特に、まんが肉を食べられた感動もあるし、思い思いの料理を幸せそうに食べる姿は、全員見ていると気持ちが良い物なのだ。
「でも」
 誰かが言う。
「?」
「何で、こんな物おいていったのかな?」
 大きな疑問。
 でも、やっぱり異星人の考えていることは分からない。今考えるだけ、謎だけができるだけだ。
「ご馳走様!」
 気が付けば夜。
 後片づけをして、一晩泊まって、明日帰ろうと言うことになるが、
「メイドさんはお仕事なのよ」
「では、がんばってきます」
 と、槇島と軽井は、夜遅くメイドの仕事をこなしていく。
「うん、これはこれで萌えだね!」
 ランは親指を立てて、2人が働く姿を写真に収めていた。


 翌日。
「おせわになりましたぁ!」
 7人は、農家の人に挨拶する。
「こちらこそ助かったよ。また、アレが来たら頼むかもしれないが」
「あはは〜。かんがえておきます〜」
 と、ずっと和やかなムードで、能力者はこの地を後にしたのだった。